ZF Friedrichshafen AG 2013年12月期の動向

ハイライト

業績

 (単位:百万ユーロ)
  2013年
12月期*
2012年
12月期*
増減率 (%) 要因
グループ
売上高 16,837 15,526 8.4 -
EBITDA 1,703 1,531 11.2 -
*ZF Lenksystemeを除く

企業買収

-2014年9月、米国のパッシブ・アクティブセーフティメーカーTRWの買収に関して両社が合意に達したと発表。買収額は12,400百万ドル規模で、2015年第1四半期に買収が完了する見通し。この買収によりZFは世界第2位のサプライヤーになる。

事業概況

<自動車関連部門別>
パワートレインテクノロジー部門
-2013年12月期の売上高は、トランスミッション、アクスル、トルクコンバーターなどの需要好調により前年比15%増の5,704百万ユーロ。

シャシーテクノロジー部門
-2013年12月期の売上高は、前年比11%増の5,509百万ユーロ。西ヨーロッパは低調に推移する一方、高級車向けを中心にアジアで需要が拡大。北米も引き続き好調だった。

商用車テクノロジー部門
-2013年12月期の売上高は、Euro6導入前の駆け込み需要から前年比7%増の3,249百万ユーロ。
 
<地域別>
欧州
-2013年12月期の西ヨーロッパの売上高は、前年比7.6%増の8,907百万ユーロ。東ヨーロッパの売上高は、前年比14.1%増の920百万ユーロ。

北米・南米
-2013年12月期の北米の売上高は、前年比5.5%増の3,095百万ユーロ。南米の売上高は、前年比1.7%増の704百万ユーロ。

アジア・太平洋
-2013年12月期のアジア・太平洋地域の売上高は、前年比15.1%増の2,998百万ユーロ。特に中国の自動車事業が大きく伸びた。

事業計画

-日系自動車メーカーとのグローバル市場での売上高を、2018年に現在の3億6千万ユーロ (約446億円) から約3倍となる10億ユーロ (約1240億円) へ引き上げる計画。自動変速機 (AT) やサスペンションなどのシャシーシステムなど低燃費と軽量化を実現する技術力の高さをアピールし、受注拡大を図る。ZFは、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダを始めとする各乗用車メーカーや商用車メーカー4社とグローバルで取引があり、ショックアブソーバーやスタビライザーバーリンクといったシャシーシステムなどを供給する。最近では、11年にトヨタ「レクサスIS-F」、12年に日産「アルティマ」「NV350キャラバン」にショックアブソーバーの供給を開始している。取引拡大に向けて、燃費性能が向上する縦置きエンジン用8速ATと今年から量産を開始する横置きエンジン用9速AT、連続可変ダンパーなどのサスペンションシステム、プラスチック製ペダルボックスなどの提案活動を積極化する。 (2013年2月22日付日刊自動車新聞より)

受注

<ハンガリー>
-2013年12月、ハンガリーの公共交通機関が導入するシティバス172台に、同社のドライブラインおよびシャシーシステムと、ZF Lenksystemeのステアリングシステムが搭載されていると発表。今回導入されるのは、MAN 「Lion's City」が106台とVolvo 「7900」が66台で、Budapest市とPecs市を運行する予定。全てのバスにZFの6速オートマチックトランスミッション「ZF-EcoLife」および低床式アクスル「AV 132」が搭載される。さらに、Volvoの連節バスには、ポータルアクスル「AVN 132」とZF Lenksysteme製のボール&ナット式パワーステアリングシステム「Servocom」も採用されているという。(2013年12月19日付プレスリリースより)

<オランダ>
-2013年10月、オランダの公共交通機関が新たに導入するバス405台に、同社のトランスミッション、フロントおよびリアアクスル、ZF Lenksysteme製のステアリングシステムが採用されたと発表。このうちUtrecht市で運行する135台には、ZFの6速オートマチックトランスミッション「ZF-EcoLife」が搭載される予定。この405台のバスは、Utrecht市、Arnhem市のほか、南ホラント州やフリースラント州などの地域で運行する予定で、ZFの低床式アクスル「AV 132」が採用される。このなかには、フロントアクスル「RL 75 A」やZF Lenksysteme製のボールナット式パワーステアリングシステム「Servocom」を搭載する車両もあるという。(2013年10月14日付プレスリリースより)

<ロシア>
-2013年9月、ロシアのサンクトペテルブルグ (Saint Petersburg) で新たに運行するシティバス282台に、同社のドライブラインおよびシャシーシステムと、ZF Lenksystemeのステアリングシステムが採用されていると発表。今回導入されるLiAZ製バス183台とVolgabus製の連節バス99台全てに、6速オートマチックトランスミッション「ZF-EcoLife」が搭載。また、シャシー技術としては、低床式ドライブアクスル「AV 132」、フロントアクスルシステム「RL 85」、ZF Lenksysteme製のボール&ナット式パワーステアリングシステム「Servocom」が採用された。(2013年9月9日付プレスリリースより)

<中国>
-2013年4月、済南トラック (Sinotruck) との間で商用車用マニュアルトランスミッション「ZF-Ecosplit」などを含む供給契約を締結すると発表。同社は既に、中国の浙江省杭州 (Hangzhou) で生産した16速トランスミッション「Ecosplit」を、6x4トラクタートラック「Sitrak C7H」の現行モデルに供給している。また、2013年中に北京工場で乗用車用アクスルシステムの生産を開始する計画。従業員は350名。生産能力を年間数千セットまで引き上げる予定。同工場の主な納入先は、北京奔馳汽車 (BBAC) となる。さらに、ZFと商用車メーカー包頭北奔重型汽車 (Beiben) の合弁会社ZF Beiben Drivetech (Chongqing)は今年、商用車用トランスミッションの生産を開始。同社は、ZFが51%を保有する合弁会社。中型トラック用の9速マニュアルトランスミッションのほか、バス用の5速・6速マニュアルトランスミッション、大型トラック用の16速マニュアルトランスミッションを生産している。(2013年4月20日付プレスリリースより)

-2013年1月、北京公共交通公司 (Beijing's Public Transport Corporation BPTC) より低床バス2,200台分のアクスルを受注したと発表。Boschとの折半合弁会社 ZF Lenksystemeが供給する。数量は5,000セットを超える見込みで、2013年より供給を開始する。受注したのは床面を350mmまで低くすることが可能なRL 85 EC フロントアクスル、AV132ドライブアクスル、AVN132タグアクスルなど。このほかZF Lenksysteme製ZF-Servocom ボールナット式ステアリングシステムも供給する。またこのZF-Servocom ステアリングシステムは、今回の2,200台の低床バスとは別にBPTCから800台の市営バス向けにも受注を獲得している。現在BPTCは28,000台の市バスを運行しており、ZFはすでに15,000セットのアクスルシステムと800セットのオートマチックトランスミッションを、ZF Lenksystemeは18,000セットのZF-Servocom ステアリングシステムを供給している。(2013年1月28日付け各種リリースより)

<フランス・日本>
-2013年3月、日産自動車・ルノー向けに乗用車用プラスチック製エンジンマウントを受注したと発表。既に、日産・ルノーグループが生産する小型車6車種と、電気自動車 (EV) プロジェクトで開発したEVに供給している。エンジンの振動に対する安定度や耐久性は、金属製と同等の性能を持たせるとともに、リサイクル率は100%を実現した。モジュラー化した部品構成のため、様々な種類のエンジンや車種に対しての組み合わせが可能で、メーカーの設計自由度を高めている。(2013年3月27日付日刊自動車新聞より)

<米国>
-2013年2月、英ランドローバーの新型「レンジローバー イヴォーク」に9速AT (自動変速機) を受注。共同開発によりオン・オフロードの走行性能を高めるとともに低燃費を実現している。9速ATの量産車への搭載は今回が初めて。ZFは今年から、米サウスカロライナ州に新設したグレイコート工場で量産を始める。(2013年2月28日付日刊自動車新聞より)

<イタリア>
-2013年2月、同社の8速オートマチックトランスミッション (8HP) が、Maserati「Quattroporte」の3.8L V8 Biturboエンジンに採用されていると発表。また、このモデルにはZFの電子制御式ダンパーシステム「CDC」も搭載されている。(2013年2月21日付プレスリリースより)

事業再編

<中国>
-2013年12月、上海を本拠とする株洲時代新材料科技 [TMT:Zhuzhou Times New Material Technology] に、防振ゴム・プラスチック事業 (Rubber & Plastics Business Unit) を売却することで合意したと発表。TMTは、鉄道・自動車・建設・風力などの産業向けに、NVH製品やポリマー複合材料を生産している。売却手続きは2014年上半期に完了する予定。現在、ZFのシャシーテクノロジー部門 (Car Chassis Technology Division) に属している同事業の2013年売上高は、約7億ユーロとなる見込み。欧州・米州・アジア・オーストラリアの9拠点に約3,300名の従業員を雇用している。(2013年12月11日付プレスリリースより)

<南アフリカ>
-2013年11月、南アフリカ子会社のAuto Industrial Brake & Chassis Holding Johannesburg (AIBC) をTrinitasへ売却すると発表。AIBCは、鍛造工場および鋳造工場を保有しているほか、ブレーキディスクなどの自動車用部品を生産している。4つの工場に約900名の従業員が勤務しており、2012年の売上高は71百万ユーロ。売却期日は2013年12月31日を予定している。ZFは、1999年にAIBCを合弁会社として南アフリカ市場に参入。2006年にAIBCは完全子会社化され、ZFのCar Chassis Technology部門の現地サプライヤーとして事業を行っていた。(2013年11月21日付プレスリリースより)

累計生産台数

-2013年12月、商用車用マニュアルトランスミッション「Ecomid」の累計生産台数が、世界で約75 万基に達したと発表。大部分がフランスのBoutheon工場で生産されたもの。また、同工場では2013年12月初旬に9速トランスミッションの累計生産数が50万基を達成している。なお、同社はブラジルのSorocaba拠点、インドのPune拠点、ロシアのNaberezhnye Chelny拠点でも「Ecomid」の生産を行っている。(2013年12月4日付プレスリリースより)

-2013年6月に商用車用のリターダー内蔵トランスミッション「Intarder」の累計生産数が80万ユニットを記録したと発表。(2013年6月4日付プレスリリースより)

受賞

-2013年2月、同社の豪州MelbourneにあるDingley拠点がGMより「Quality Excellence Award」を受賞したと発表。同拠点はZFのシャシーテクノロジー部門に属しており、ラバーメタル部品の生産に特化している。豪州では、GMのほかにFordも同社の主要顧客の1つとなる。また、同工場はGM Holden「VE Commodore」向けのエンジンマウントを、GM Holdenの生産工場 (Melbourne近郊) のV6エンジンおよび自動車組立工場 (Adelaide) のV8エンジン用に直接供給している。Adelaide のZFのアクスル組立工場は「Commodore」向けにフロントおよびリアアクスルを組み立て、近隣のGM Holdenの組立ラインにジャストインタイムで納入している。(2013年2月1日付プレスリリースより)

開発動向

研究開発費

 (単位:百万ユーロ)
  2013年12月期* 2012年12月期* 2011年12月期
合計 836 770 754
*ZF Lenksystemeを除く

研究開発体制

-約6,244名がZFの世界各国の開発拠点に従事。このうち約960名がZFグループの本社開発部門 (独Friedrichshafen) に、290名がチェコ共和国のPilsen、上海、東京に勤務している。

-2013年12月、子会社「上海采埃孚転向機有限公司 [ZF Shanghai Steering Co., Ltd.]」は、同社のR&Dセンターが中国の国家認可委員会 (China National Accreditation Service for Conformity Assessment、CNAS) の認可を取得したと発表。同認可を取得した国内ステアリングメーカーは同社が初めてとなる。また独ZFにとっても唯一のISO17025を取得したR&Dセンターとなるという。(2013年12月30日付け各種リリースより)

-2013年7月、ドイツのSchweinfurt拠点に技術センター「ZF Composites Tech Center」を開設。同センターでは、繊維強化プラスチック (FRP) 製品の量産技術の開発を行う。また、同拠点では、試作品向けにFRP複合部品の少量生産も行うことができる。同社は、2012年から総額3.1百万ユーロを新センターの建屋および設備向けに投じているという。(2013年7月30日付プレスリリースより)

研究開発拠点

<主要研究開発拠点>
所在地 主な研究内容
ドイツ Friedrichshafen -グループ研究開発
-先行開発
-トランスミッション
ドイツ Dielingen -シャシーシステム
-シャシー部品
-シフター
ドイツ Schweinfurt -パワートレインモジュール
-サスペンション
ドイツ Passau -デファレンシャル
-アクスル
-テストシステム
ドイツ Schwaebisch-Gmuend -乗用車・商用車ステアリング
米国 Northville -トランスミッション
-シャシークラッチ
-サスペンション
チェコ共和国 Pilsen -
中国 上海 -
東京 -

製品開発

エネルギー回収機能付フルアクティブサスペンションシステム
-2013年8月、米国マサチューセッツ州を本拠とするLevant Powerと提携し、エネルギー回収機能付きのフルアクティブサスペンションシステムを開発すると発表。両社は、乗用車用のフルアクティブシステム「GenShock」を開発し、量産・販売を目指す。この回生サスペンションシステムでは、ダンパーの外側に装着する新型バルブシステムが特徴。このバルブシステムがダンパーピストンの伸縮運動から自動的にエネルギーを回収するという。(2013年8月27日付プレスリリースより)

研究プロジェクト「EMiLE」
-2013年7月、同社の研究プロジェクト「EMiLE」がドイツ連邦教育・研究省より約10百万ユーロの助成金を受けたと発表。このプロジェクトは、EVのパワーエレクトロニクスを直接駆動システムに統合することが目的。通常、EVの電動ドライブラインシステムに使用するパワーエレクトロニクスは、別のハウジングに取り付けられ、電気駆動システムとケーブルで接続されている。このプロジェクトにより効率性とパワーウェイトレシオが向上し、欠陥の特定も容易になるほか、量産の費用を大幅に削減することが可能となる。これらの技術に関しては、Robert BoschやVolkswagenなどと共同で研究を行う予定。(2013年7月17日付プレスリリースより)

特許

-2013年4月、2012年にドイツにおいて740件の特許を申請したと発表。2011年と比べて約10%の増加となった。なお、同社は2012年、研究開発に総額861百万ユーロを投じている。(2013年4月29日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

 (単位:百万ユーロ)
  2013年12月期* 2012年12月期*
パワートレインテクノロジー部門 541 596
シャシーテクノロジー部門 158 188
商用車テクノロジー部門 113 100
インダストリアルテクノロジー部門 50 77
電子システム部門 32 14
ZFサービス部門 14 11
グループ研究開発、グループ本社、サービス会社 46 39
グループ合計 954 1,025
*ZF Lenksystemeを除く

海外投資

<中国>
-2013年12月、2013年にアジア太平洋地域事業に10億ユーロ超を投資したと発表。中国においては、北京の乗用車用アクスルシステム工場の開設や、遼寧省瀋陽 (Shenyang) の乗用車用アクスル組み立て工場の拡張をはじめ、さまざまな事業の拡大を行っている。(2013年12月13日付プレスリリースより)

-2013年9月、子会社「上海采埃孚変速器有限公司」 [ZF Transmission Shanghai Co., Ltd.] は新工場の開業式を行った。同社は2004年6月9日設立以降、2013年8月末までに51万台超のオートマチックトランスミッションを生産、販売している。今後は3年間で40万台を生産、販売する計画。新工場の第一期建設の敷地面積は約6万平方メートル。(2013年10月14日付け各種リリースより)

-2013年9月、中国・北京に乗用車用アクスルシステムの生産工場を開設したと発表。投資額は約15百万ユーロで、面積は32,000平方メートル。新工場は、北京奔馳汽車 (Beijing Benz Automotive) 向けに、年間数万ユニットの乗用車用アクスルシステムを生産する。現在、「Mercedes C-Class」および「Mercedes E-Class」の現行モデルに、フロントおよびリアアクスルシステム一式をジャストインシークエンス方式で納入している。今回の新工場開設により、ZFの中国生産拠点は21カ所となった。(2013年9月25日付プレスリリースより)

-2013年6月、国家発展改革委員会 (National Development and Reform Commission) よりリサイクル (再製造) モデル事業の承認を得たことから、上海に敷地面積2,500平方メートルのトランスミッションリビルト拠点を建設すると発表。2016年には年間リビルト能力4600万台の、中国初の8速、9速乗用車用ATトランスミッションリビルト拠点とする計画。(2013年6月24日付け各種リリースより)

<マレーシア>
-2013年11月、マレーシアのKulimに乗用車用アクスルを生産する新工場を開設したと発表。従業員数は74名で、まず近隣のBMWの工場に供給する。ノックダウン生産方式でフロントアクスルおよびリアアクスルを生産し、BMWおよびMiniの複数のモデル向けに納入する予定。(2013年11月27日付プレスリリースより)

<米国>
-2013年7月、米サウスカロライナ州に、年産120万基の能力を持つAT工場を開設。乗用車用の8速ATを年間40万基、同9速ATを同80万基生産する。総投資額は4億7千万ユーロ(約612億円)で、同社が一つの事業に対して実施する投資では過去最大。(2013年7月30日付日刊自動車新聞より)