Mahle GmbH 2015年12月期の動向

業績

(単位:百万ユーロ)
2015年
12月期
2014年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 11,486.1 9,942.4 15.5 1)
純利益 122.4 279.2 (56.2) -
部門別売上高
エンジンシステム・部品 2,698.1 2,529.8 6.7 2)
フィルター・エンジン周辺機器 2,196.0 1,981.4 10.8 3)
サーマルマネジメント 3,761.2 2,995.5 20.5 4)


要因
1) 全社売上高
-2015年12月期の全社売上高は前年比15.5%増加の11,486.1百万ユーロで、同社として過去最高を記録した。主な増収要因として、買収効果が720百万ユーロ、為替の好影響が625百万ユーロ、2.0%の販売増加などが挙げられる。

2) エンジンシステム・部品
-2015年12月期のエンジンシステム・部品事業の売上高は前年比6.7%増加の2,698.1百万ユーロ。為替の影響を除くとほぼ横ばいであった。成長市場であるアジア・太平洋地域の売上増が寄与。スチールピストンの需要増加や欧州における生産設備の拡張なども貢献。さらに通年でカムシャフトとバルブの需要が好調だった。

3) フィルター・エンジン周辺機器
-2015年12月期のフィルター・エンジン周辺機器事業の売上高は前年比10.8%増加の2,196.0百万ユーロ。為替の影響を除くと2.2%の増加であった。シリンダーヘッドカバー、オイルポンプ、オイルセパレーターおよびフューエルフィルターの売上が好調だった。

4) サーマルマネジメント
-2015年12月期のサーマルマネジメントの売上高は20.5%増加の3,761.2百万ユーロ。主な増収要因は、Delphiのサーマル事業部門を買収したことによるもの。買収と為替の影響を除くと3.1%の増加で、エアコンシステムおよびパワートレイン向けサーマルマネジメントの需要増が寄与した。

買収

-2015年7月1日付でDelphiのサーマルシステム事業を買収したと発表。サーマルマネジメント部門の強化につなげる。今回の買収により、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、米国、メキシコ、ブラジル、中国、インドにおけるDelphiの13工場と、米国およびルクセンブルクの研究開発センター3拠点が、Mahle Groupの約150の生産拠点に加わることになる。また、買収にはDelphiのサーマル部門の従業員約7,500名も含まれており、Mahleの従業員数は2015年末までに75,000名を超えるという。両社は次の段階として、中国合弁会社の上海徳爾福汽車空調系統 [Shanghai Delphi Automotive Air-Conditioning System] のDelphiの持分をMahleが取得するとしている。取得手続きは2016年に完了する予定。(2015年7月1日付プレスリリースより)

-2015年5月、同社日本法人マーレジャパンは、持ち分法適用会社の国産電機の株式を公開買い付けにより取得すると発表した。5月1日から6月16日までの30営業日の間、1株当たり370円で買い付ける。発行済み株式の11.01%を買い取りの下限とし、保有済みの39.09%と合わせた出資比率を過半数に引き上げる。完全子会社化に向けた取引の一環として実施する。(2015年5月7日付日刊自動車新聞より)

-2015年5月、ドイツのBerlinを本拠とするAmovisの全株式を取得したと発表した。効力発生日は2015年1月1日付に遡る。これにより、効率性を高めながら天然資源の消費や汚染物質排出を低減する製品・生産プロセス・サービスなど、クリーンテクノロジー分野における戦略的コミットメントを推進する。Amovisの従業員数は25名。有機ランキンサイクル (Organic Rankine Cycle:ORC) を採用した高度な排熱回収システム技術を有している。ORCシステムは新しい蒸気サイクルで、内燃エンジンの排熱を排出ガスによって未使用のまま外に放出するのではなく、電気や機械エネルギーを生成するのに使用する。これにより、商用車における燃費を最大4%向上させるほか、CO2の大幅な削減にもつながるという。(2015年5月5日付プレスリリースより)

受注

-2015年10月、Renaultに納入したスチールピストンの累計が、生産を開始して1年以内で100万ユニットを達成したと発表した。Renaultの1.5Lおよび1.6Lのディーゼルエンジンは、スチールピストンを採用した世界初の乗用車用ディーゼルエンジンとなる。この 「Monotherm」 ピストンは、エンジンの摩擦を軽減しながら、熱力学を考慮し約3%の燃費向上を実現している。また、Renaultより2014年 「Outstanding Innovation Performance」 も受賞した。同社は2014年11月に生産を開始したドイツのRottweil工場に完全自動組立ラインを導入し、この製品の生産に対応している。2015年末までにトルコのIzmir工場でもこのピストンの生産を開始する予定。これにより、2016年の生産量は200万ユニットを優に超えるとみられる。(2015年10月27日付プレスリリースより)

受賞

-同社のエンジンシステム・部品部門がガソリンエンジン向け軽量ピストン 「Evotec 2」 で2015年 「Automotive News PACE Award」 を受賞した。(2015年4月20日付各種リリースより)

-2015年1月「Ward's 10 Best Engines」 に選出されたエンジンのうち9基に同社の部品およびシステムが採用されたと発表した。採用された製品には、ピストンシステム、シリンダー 部品、バルブトレインシステム、エアマネジメントシステム、リキッドマネージメントシステム、サーマルマネージメントシステムなどが含まれる。同社製品を採用したエンジンは以下の通り。

  • GM 「Chevrolet Corvette Stingray」 の6.2L OHV V型8気筒
  • FCA 「Dodge Challenger SRT Hellcat」 の6.2LスーパーチャージャーOHV V型8気筒
  • Ford 「Fiesta」 の1.0Lターボチャージャー DOHC 3気筒
  • 現代のFCV 「Tucson」 の100kW燃料電池
  • BMW 「Mini Cooper」 の1.5LターボチャージャーDOHC 3気筒
  • FCA 「Ram 1500 EcoDiesel」 の3.0LターボディーゼルDOHC V型6気筒
  • スバル 「WRX」 の2.0LターボチャージャーDOHC 4気筒
  • Volkswagen 「Golf」 の1.8LターボチャージャーDOHC 4気筒
  • Volvo 「S60」 の2.0LターボチャージャーDOHC 4気筒

(2015年1月15日付プレスリリースより)

研究開発費

(単位:百万ユーロ)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
全社 657 552 336


-2015年12月期、全社売上高の約5.7%にあたる657百万ユーロを研究開発費に投資した。

研究開発体制

-2015年末時点、世界で約6,000名が研究開発に従事。

-2015年末時点、世界で15カ所の研究開発センターと12カ所のコンピテンスセンターを配備。

製品開発

ガソリンエンジン用ピストン
-最新世代のガソリンエンジン用ピストンであるEvoliteとEvotecの開発を継続している。EvoliteピストンはCO2排出量を約0.5g/km削減、Evotecピストンは圧力と熱に高い耐性を持つ。両ピストンは従来製品と比較して、約15%の軽量化、摩擦軽減、高強度化を実現。

過冷却インタークーラー (iCAS)
-エンジン冷却および空気冷却システムに空調システムの冷媒回路を組み込んだ過冷却インタークーラーシステムを開発した。このiCASシステムは、あらかじめ冷却した空気を熱交換器を通して送り込み、さらにエアコンシステムに直結している専用回路によって冷却される。このプロセスにより空気の過給量が増大し、ダウンサイズされたガソリンエンジンのトルク性能を最大19%アップさせる。

キャビンエアフィルター
-95%以上の微粒子を吸収できるエアフィルターを開発中。現行製品の微粒子吸収率は60%。

リチウムイオン電池用ヒートポンプ
-従来のバッテリー温度調節機能の代替として、リチウムイオン電池用のヒートポンプを開発した。

圧縮天然ガス (CNG) エンジン
-独自のダウンサイジング3気筒エンジンを使用して、圧縮天然ガス (CNG) エンジンを開発中。このエンジンは出力130kW以上、トルク286Nmで、通常のガソリンエンジンと比べてCO2排出量が30%低減される。燃費は1kWhあたり247g。

設備投資額

(単位:百万ユーロ)
部門 2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
全社 564 488 397


-2015年12月期、同社の欧州における設備投資額は約265百万ユーロで、全体の47%を占めた。とくにサーマルマネジメント工場の立ち上げが含まれる東欧への投資が集中した。また、ピストンとカムシャフトASSYの生産関連プロジェクトにも投資。

-北米向け投資額は約141百万ユーロで全体の25%。内訳は新工場の建設、メキシコ拠点の統合、エアコンコンプレッサー事業の立ち上げなど。

-アジア太平洋地域への投資は約118百万ユーロで全体の21%だった。 内訳は韓国既存工場の拡張、中国十堰 (Shiyan) 工場の建設、中国成都 (Chengdu) のサーマルネジメント工場開設など。