人とくるまのテクノロジー展2016 三五 製品インタビュー

株式会社三五 執行本部長 常務執行役員 開発本部 岡田 登氏

株式会社三五 執行本部長 常務執行役員 開発本部 岡田 登氏

 三五は5月25~27日に開催された「人とくるまのテクノロジー展2016横浜」において、トヨタ向けで実績の高い排気系部品やハイブリッドカー向けで搭載が進む排熱回収器を展示するとともに、量産化を見据えた板金タービンハウジング、さらには独自生産技術で今までにない鋼管曲加工を実現する「ちょうつがい式曲型」技術等を展示し、エンジン系、排気系部品メーカーとしての高い実績をアピールした。












ハイブリッド車時代に向けたエンジン技術の開発を進める


写真1 排熱利用技術の紹介


写真2 熱電発電ユニット


写真3 板金タービンハウジング


写真4 ちょうつがい式曲型


写真5 三五の音色づくりの歴史

 「ハイブリッド車が主流の時代になっても、エンジンはまだまだ長い間使われ続ける」と三五 執行本部長 常務執行役員 開発本部 岡田 登氏は述べる。電動化が進んでも、エンジンの搭載車両はまだまだ増加する傾向で、2030年で現在の1.5倍のボリュームに達すると予測されているという(同社調べ)。しかし、ハイブリッド車主流の時代では、エンジンの使われ方が変わる。そして、同社が扱う排気系エンジン部品も簡素化されていく方向にある。このため、新しい部品技術の開発が急務だ。

 その筆頭にあるのが、排熱利用技術だ。同社は排熱を利用したヒートコレクターで先行しており、生産実績も同製品の中ではトップクラスだという。同社ヒートコレクターはトヨタ「Prius」に搭載。体積を減らして、9.4%の実用燃費向上に寄与できた。この世代の製品では抜本的に考え方を変えて、そして革新的に小さくしたという。同社では、自動車メーカーも排熱回収技術を認め始めており、搭載車両も増えていくと考えている。

 同社が2008年に製品化した第1世代ヒートコレクターはトヨタ「Yaris」に搭載され、2010年からの第2世代製品では、トヨタ「Highlander-HV」、レクサス「CT200h」、「Prius α」、「アクア」、現行の第3世代製品では新型「Prius」に採用された。トヨタ以外においても起亜「Niro」に搭載されている。

 そして今回の展示会では、次世代製品となる、サイズを50%低減した新世代のヒートコレクターを紹介した(写真1)。性能の向上には、小型化が大きく寄与。排熱回収技術では、今後は制御系の開発にも力を入れていくという。すでに開発を進めており、トヨタのTNGAプラットフォームを採用したハイブリッド車への搭載が期待されている。
 

排熱回収技術の次の一歩

 既存のエンジンが発するエネルギーの30%ぐらいは、排気熱エネルギーとして捨てられてしまっている。ヒートコレクターはこの熱を 回収することで、燃費向上に寄与する。同技術により、エンジンの暖機の時間を短縮することができる。特に冬場は暖機運転時間を短縮することで 燃費を向上できる。しかし、現在のヒートコレクターの使われ方は、暖機後に走行している際の熱利用ができていない。この熱を常に使おうというのがこの展示製品(写真2)。蓄熱による熱の時差利用や、熱エネルギーの変換利用技術の開発を進めている。変換利用では、排気熱を熱電素子を介して回生発電する技術開発を進めている。熱電素子は温度差を与えて電気を発生させるため、効率的に発電するためには排ガスに適した温度帯の素子を使わなければならない。このため、新しい素子の開発も必須だ。「まだまだこれからの技術だが、先んじて進めている」(三五)という。

 燃費規制で自動車メーカー各社に課されたハードルは高い。2020年、2025年ぐらいまでの燃費規制への対応は見えてきた。しかし、2025年以降には何らかのブレークスルーが必要であり、現在は捨ててしまっている熱の活用が必須となる。一方で、発電機のみで駆動する車など、必要な熱が足りなくなるケースも考えられる。今回の展示は2020年までを見越した直近のハイブリッド車用の技術であり、量産に近いものを展示した。熱の回収、回生、蓄熱技術、同社ではさらにその先を見据えての開発を進めている。

ターボの熱を触媒に送り貴金属量を低減できる

 板金タービンハウジングは、今まで鋳物製だったタービンハウジングを板金製へ置き換えたもの。板金製とすることで低熱容量化ができ、また、2重構造とすることで保温・断熱性能が向上する。それによって排気ガス温度の低下を抑制することができ、下流にある触媒の浄化性能が向上するという。

 現在、自動車メーカーからは、将来の排気規制強化に備え触媒の浄化性能をあげる必要があるため、排気ガス温度の低下を抑制することで触媒の活性温度を維持したいという要望があるという。それを受けて三五は、温度効果の高い板金タービンハウジングを2020年を量産のターゲットとして開発を進めている。(写真3)

今まで不可能であったパイプの「曲げ」を実現

 既存の加工法ではパイプの径と曲げのRが現状1D曲げが限界とされてきた。内側は圧縮されしわが出やすく、また、外側は割れやすい。しかし、自動車メーカーから小さな曲げを実現しさらに軽量化したいという要望があるという。今回、パイプ曲加工技術で独自のちょうつがい式曲型を開発した。パイプの「回転引き曲げ加工」において、「曲型ユニット」を提案する。従来の金型では耐えられない加工力でパイプ曲げができる。これにより自動車メーカー設計者の技術的な選択肢を増やすことができる。すでにエキマニ用の部品として量産を開始している。(写真4)

レクサスのFシリーズ、スバルのレヴォーグSTI、音作りは三五によるもの

 同社はトヨタ向けの排気システムで高い実績を誇る。排気系部品は、「性能は良くて当たり前」の世界であり、近年は排気音、サウンドにこだわった車両が登場している。車に合った音作りを標榜しており、排気音質にこだわった製品を開発している。排気音で有名なのが、レクサスのF-Sports系の音。レクサスのFシリーズではIS-Fから始まり、ハイエンドのLFAも含めて三五がエキゾーストシステムを提供している。スバルのSTIオプションであるハイレスポンスマフラーも同社が提供しているという(写真5)

三五の製品情報写真