分析レポート EV/HV駆動モーター(欧州市場編)
2021/08/27
関連企業
Bosch | Valeo | Continental (Vitesco Technologies) |
ZF |
Schaeffler | Mahle | Rheinmetall Automotive | GKN |
EV駆動モーター/ハイブリッド発電モーター (日本市場編)をみる
はじめに
このレポートでは車両が走行可能な48V、10kW以上のモーターを扱う。これらモーターはハイブリッドシステムのなかで発電も行うことが多くモーター・ジェネレーターとも呼ばれる。同様の構成と出力をもち発電専用のものが主にシリーズハイブリッドシステムに採用されており、この発電機(発電モーターと呼ぶOEMもある)も扱う。ベルト駆動で補機類とともにエンジン前部に搭載するオルタネーター/スターター応用製品は含んでいない。
I. 概要
駆動モーターはローターに永久磁石を内蔵する三相交流同期式で、ネオジム鉄ボロン(Nd-Fe-B)磁石を使用するものがデファクト・スタンダードである。本稿では特に言及がない製品はこの形式である。
冷却方式は水冷または油冷が通常である:
水冷:モーターケースの水ジャケットでステーター外周を冷却。ローターシャフト中空部に冷却水を循環させるものもある。
油冷:内部の潤滑油をローターやステーターの巻線部に直接かける。使用電圧は概ね次表に示すグループを形成する:
電圧, V | 電圧値の特徴と採用車例 | メリット |
---|---|---|
(12) | 軽と日産、スズキのマイクロ/マイルドHEVで例有り | 12Vオルタ/スターター応用製品で安価。退避程度のEV走行ができる |
(24) | マツダ 2LのMハイブリッドとSKYACTIV-Xで採用 | 低速でのエンジン効率低下を補うが、EV走行はできない |
48 | 電気安全規定の適用外で最高の電圧。10 kW出せる。 | 低コスト。比較的安全。通常MHEVだがEVも例あり(nanoFlowcell) |
100 | 小型モーター/バッテリー使用可能。SUBARU、スズキ | 実用面でのコスト対効果が高い。モード燃費は250V以上よりやや劣る |
250-450 | 車載バッテリーの電圧をそのまま適用 | 昇圧回路が不要。 |
650 | トヨタ、ホンダが採用する高電圧モーター | 高電圧による高い出力密度と効率が得られる |
≧800 | 相間絶縁紙を自動組立する技術が必要(高電圧化 参照) | いっそうの高電圧化で電流低減、出力増大。欧州市販車で例有 |
( )付の電圧レンジは本レポートでは扱わない。
製造工程のバリエーション
ローター・ステーターコア:電磁鋼板をカシメコーキング、溶接または接着で積層する。鋼板打抜き時のバリ・反り特性が一か所に積層されることを防ぐため、一定枚数を積層したブロックを、さらに回転方向にずらしながら積み上げる。この際、電磁的トルクムラ(コギング)を緩和するスキュー角を与えることができる。電磁鋼板に換え、磁性鉄粉と樹脂を混合し加圧成形・焼鈍する圧粉コアを提案する材料/部品メーカーもある。
巻線:丸断面のエナメル被覆線を巻線機でコアに巻き付けるものが主流である。複雑形状のコアは巻線しづらい部分が生じるため、コア形状を分割するものも多い。一方、角断面(隙間なく巻線でき占積率が向上)・ヘアピン形状の短いコイル線をステーターに多数差し込み、突き出た側を2本ずつ溶接接合→被覆することで一連の巻線とする構造が2012年頃からトヨタ・ハイブリッド車で多量に採用されはじめた。
II. 駆動モーターと部品を内製する欧州OEMのリスト
OEM | 国 | 工場 | 部品名 |
---|---|---|---|
Porsche, VW Group | ドイツ | Porsche AG, Stuttgart-Zuffenhausen | 電動ドライブ(2019-) |
Volkswagen, VW Group | ドイツ | Volkswagen AG, Salzgitter | MEB Base+ドライブシステム部品:ローター、ステーター(2019-)、バッテリーセル、セルモジュール |
Volkswagen, VW Group | ドイツ | Volkswagen AG, Kassel | 電気モーター(2013-) |
Audi, VW Group | ハンガリー | Audi Hungaria Motor Kft., Gyor | トラクションモーター「e-motor」(2018-) |
Daimler, Mercedes-Benz | ドイツ | Daimler AG, Stuttgart-Untertürkheim | 電動ドライブモジュール「eATS」(計画中) |
BMW, MINI, Rolls-Royce | ドイツ | BMW AG, Dingolfing | トラクションモーター、電動ドライブシステム「E-Drive」 |
BMW, MINI | ドイツ | BMW AG, Landshut | 電気モーター、BMW「i」用航続距離延長装置、電動ドライブモジュール |
BMW, Tata, Jaguar Land Rover | 英国 | Jaguar Land Rover, Engine Manufacturing Centre | 電動ドライブユニット「EDU」(2020-計画中) |
Opel, Vauxhall, Volvo, Renault Trucks | フランス | Emotors (旧 Nidec PSA emotors) | 駆動モーター(2018-)、インバーター(2018-) |
Stellantis | フランス | Stellantis, Tremery | トラクションモーター(2019-) |
Nissan, Renault, Volvo, Renault Trucks | フランス | Renault S.A., Cleon | 電気モーター |
III. 駆動モーターの主要サプライヤーの販売と戦略(全体動向)
Bosch
ボッシュ(Robert Bosch)の連結売上高は、2019年度(2019/1/1~2019/12/31)が777億2,100万ユーロ、2020年度が715億ユーロだった。2020年12月末時点で、子会社と地域会社を含め60ヶ国以上に約440カ所拠点を有し、従業員は39万8,150名。
ボッシュは2013年から2020年にかけて、eモビリティへの5億ユーロを含む約30億ユーロを新成長分野に投資する計画を立てた。さらに、2020年だけで研究開発に59億ユーロを投じた。同社のeモビリティ戦略は、48Vマイルドハイブリッドシステムから完全電動ドライブに至るアプリケーションに向けた、製品とシステムのポートフォリオ拡大に重点を置いている。ポートフォリオには電動自転車から大型商用車まで幅広い車両セグメントが含まれる。同社は2018年初めから2019年秋にかけて、eモビリティで約130億ユーロ相当を受注し、そこには乗用車や小型商用車向けの電動ドライブ量産プロジェクトも含まれる。同社は2025年までにeモビリティ分野の年間売上高を50億ユーロに増やすことを目指している。
Valeo
Valeoの連結売上高は2019年度が194億7,700万ユーロ、2020年度は16%減って164億3,600万ユーロだった。2020年上期の売上高は前年比28%減の70億5,800万ユーロ。2020年12月31日時点で33ヶ国265拠点を有し、従業員は11万4,700名。
Valeoはeモビリティのポートフォリオ拡大を狙って2017年から2019年の間に12の技術プラットフォーム(うち3分の2が電動化関係)に5億ユーロを投資し、パワートレイン電動化の主導的な地位を確立した。同社は高電圧システムと、特に48Vソリューションに焦点を当てており、48Vシステムは高電圧システムに比べて、さまざまなプラットフォームに適用可能で価格も手頃だと考えている。2018年のパリモーターショーでは最高速度100km/h、バッテリー航続距離150kmの48Vコンセプトカーを出展した。2019年10月には米国のサプライヤーDanaと、48V車の工業化促進及びエンド・ツー・エンドの48Vハイブリッド車と電気自動車(EV)システムの市場投入を図る国際協力契約を発表した。同社では2022年までに48Veマシンとeアクスルで市場シェア40%、年間売上高11億ユーロを超すと見ている。
Continental及びそのパワートレイン部門のスピンオフ企業Vitesco Technologies
Continentalの資本金は5億1,200万ユーロ(2019年12月31日)である。連結売上高は2019年度が444億7,850万ユーロ、2020年度が377億2,200万ユーロだった。2020年12月31日時点で58ヶ国561拠点を有し、従業員は23万6,386名。
Continentalは2019年、内燃エンジンのみに頼るシステムの成長機会は、今後、ごく限られると発表した。同社はこれに伴い、油圧部品への投資を順次削減し、中期的にはマイルドハイブリッドと完全ハイブリッドソリューションの包括的支援に集中する。2021年にはハイブリッド車のパワートレイン電動化の研究開発に3億ユーロを投じ、2025年までに純電動ドライブシステムの市場シェアを10%、ハイブリッドシステムのシェアを30%に拡大することを目指す。
パワートレイン部門のスピンオフ企業Vitesco Technologies
Vitesco Technologiesの連結売上高は2019年度が78億ユーロ、2020年度が80億ユーロだった。世界に50拠点を有し従業員は4万名。
Continentalは2019年初めにパワートレイン部門を独立グループとして再編し、2019年10月からVitesco Technologiesとして事業を開始した。しかし、新型コロナウィルス流行により独立事業としてのVitescoの自立は遅れ、Continentalは2020年に組織を自動車技術、ゴム技術、Vitesco Technologiesの3部門に再々編した。Vitesco Technolotiesは電子制御、電動化技術、センシングとアクチュエーターの3事業部門で構成される。製品ポートフォリオには48V電動化、電気エンジン、ハイブリッドエンジン及びバッテリーEV用電子機器が含まれる。
ZF
ZF Friedrichshafenの連結売上高は2019年度 が365億1,800万ユーロ、2020年度が326億1,100万ユーロだった。2020年12月31日時点で42ヶ国271拠点を有し従業員は15万3522名。
ZFはeモビリティに対して技術的中立性を保っている。次世代モビリティ戦略に従って、特定の技術や電動パワートレインタイプには偏らず、主に安全、クリーンで手頃なモビリティの提供に取り組んでいる。2019年から2022年にかけてハイブリッド技術の研究開発に30億ユーロを投じる。同社では、長期的には純粋な電動ドライブトレインがもっとも普及すると考えている。同社の電動ドライブ製品ポートフォリオは、マイルドハイブリッドシステム用の15kW一体型48Vソリューションから、プラグインハイブリッドのトランスミッション用の160kW強力電気モーターまで多岐にわたる。
Schaeffler
Schaefflerの連結売上高は2019年度が144億2,700万ユーロ、2020年度が前年比10.5%減の125億8,900万ユーロだった。2020年12月31日時点で23か国約170拠点を有し従業員は8万3,937名。
同社は自動車技術、自動車アフターマーケット、産業用品の3部門からなる。eモビリティを「Mobility for Tomorrow」戦略の重要な機会と見なし、2018年に自動車技術部門の一部としてeモビリティ事業部門を設置した。この部門は48Vマイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド、純粋なEVなどのアプリケーションに向けたさまざまな製品とシステムに焦点を当てている。48Vシステムを開発する上では他社との協力にも頼っている。同社では市内交通用の48Vドライブレンタカーの大規模な市場を想定しており、EVモジュールとハイブリッドモジュールを生産するための48V部品の調整と機械的統合に注力している。
Mahle
Mahleの連結売上高は2019年が120億4,920万ユーロ、2020年度が97億4,400万ユーロだった。2020年12月31日時点で32ヶ国176拠点を有し、従業員は7万2,184名。
Mahleのeモビリティ戦略は、熱管理分野と電動パワートレイン及び関連部品分野の2分野に集中している。同社は2017年にフランクフルトモーターショーで、48V電動シティカーのための独自のコンセプトカー「MEET(Mahle Efficient Electric Transport)」を出展した。コンセプトカーのパワートレインの中心は内蔵インバーター付30kW電気モーターである。同社は将来の成長と発展に備え、eモビリティ戦略の方向性を明確にするために、2020年1月1日、電気、アクチュエーター、ポンプ、コンプレッサー事業を含む新たなメカトロニクス部門を設立した。
Rheinmetall Automotive
Rheinmetall Automotiveの連結売上高は2019年度が27億3,600万ユーロ、2020年度が21億5,100万ユーロだった。2020年時点で世界に57拠点を有す。
Rheinmetall Automotiveは、小型配送車や街路清掃車などの地方自治体向け車両に、48V駆動システムの可能性を見出している。同社のeモビリティのポートフォリオにはEV用熱管理システムが含まれている。2019年の国際モーターショーに小型(商用)車用48Vシステムを出展した。同社は、すべての部品とソフトウェア制御システム(モーター、インバーター、ギアボックス、バッテリーシステム)を自社で開発、生産することにこだわっており、バッテリーセルのみ外部から調達している。
GKN
GKNの2020年度連結売上高は38億ポンドだった。2020年12月31日時点で20ヵ国51拠点を有し従業員は2万7,500名。
GKNは主に自動車市場と航空市場向けに設計、生産、サービス提供を手掛ける世界的なエンジニアリング会社である。2018年3月、GKN Aerospace、GKN Automotive、GKN Power Metallurgy、Nortek Air & Security、及びその他産業部門の5つの事業部門に再編された。GKN Automotiveは電動ドライブシステムで累積市場シェア14%を占めている。同社のeパワートレインのポートフォリオには、eDrive電動ドライブラインソリューションと全輪駆動ソリューションが含まれ、ボルボ「XC60」や「XC90」の電動リアアクスルドライブ(eRAD)など半一体型2-in-1 eMotorとトランスミッションシステムを提供している。同社は2019年12月、コスト削減と効率向上を目指して次世代電動化戦略を発表した。電気モーター、トランスミッション、インバーターを組み込んだEVとプラグインハイブリッド車向けの一体型3-in-1システムの標準化を図る。
GKNは2020年初めに英国政府による670万ポンドの助成金を獲得した1社で、航空宇宙から自動車まで、電動化の影響を受けるサプライチェーンの効率化を加速している。2020年12月、世界的ブランド10社から同社の製品を搭載した13の電動モデルが市場に登場したことで、電動ドライブ技術の主導権を強化したと発表した。
同社は2020年に電動ドライブの売上を前年比で23%伸ばし、現在電動ドライブシステムの世界的有力サプライヤーとなっている。
IV. モーター市場の動向
EV駆動とハイブリッド発電機に関連した技術、材料、生産プロセスの研究は、コスト削減及びEVトラクションモーターの効率と利用率の向上に関して、業界で重要な役割を果たしている。
市場と規制当局はこのモビリティ分野に大きな関心を寄せている。特に、よりコスト効率が高くエネルギー密度の高いバッテリーを採用することで、自動車の普及と低価格化を実現している。本レポートではモーター技術の動向に関する重要要素をいくつか取り上げる。
EUは過去数年間、2050年までに気候ニュートラルを実現する道筋をつけるために、自動車メーカーに低排出量車両への投資を促すことから充電施設の展開を支援することまで、さまざまな規制案を発表してきた。その中で最も関連性の高い規制は排出量上限を定めたユーロ6で、2014年9月に施行された。ユーロ6はEVの開発と生産には触れていないが、この規制の導入は電動ドライブ関連技術への投資に直接的な影響を及ぼした。
2021年の時点で、自動車メーカーの大多数は排出規制に対応するために、欧州でxEV車両を既に導入したか、しようとしている。ダイムラーに限っても2022年までに純粋なEV 10モデルを市場に投入する計画を発表しており、同社ではさらにメルセデス・ベンツの全製品を電動化する過程にある。また2025年までに売上の最大25%がEVになると見ている。
VWは「Accelerate Strategy(加速戦略)」の一環としてeキャンペーンに投資しており、2030年までに欧州市場でEVの販売比率が70%を超すと予測している。同社は最長2025年まで、eモビリティ、ハイブリッド化、デジタル化といった将来のトレンドに160億ユーロを投じる一方、Northvoltと提携して自社のバッテリー生産にも投資している。
テスラは欧州市場での大幅な拡大を狙って、2021年にベルリン近郊の新ギガファクトリーで生産を開始する予定である。同工場ではバッテリーパックとパワートレインも生産し、場内で生産される車両に使用する。
欧州委員会は2020年、欧州が2025年までにEVバッテリーを自給自足できるようになるだろうと述べた。また、欧州の新車の約19%がxEVモーターに分類されることになると見ている。
V. モーター技術の動向
リチウムイオンバッテリー:EVに関して言えば、リチウムイオンバッテリーの採用は自動車メーカーの投資対象としてごく一般的な選択肢である。最近では、低コストで高いエネルギー密度と貯蔵容量を実現できる、ニッケル含有量の多いリチウムイオンバッテリーを採用する傾向が高まっている。ニッケルを使うもう一つの利点は、リチウムイオンバッテリー採用の大きな要因となっている環境面にある。使用済みやリサイクルされたバッテリーの正極と負極からニッケルを回収できるからだ。もう一つの興味深い動向は、バッテリーのコバルト使用量の削減である。テスラは2020年9月、コバルトを含まないリチウムイオンバッテリーの開発を発表した。同様にGMも2020年、コバルトを現行バッテリーより70%減らした新バッテリーシステムを発表した。
リチウムイオンバッテリーの価格は過去数十年間で90%下がり、この種のバッテリーがEVで普及した一因となっている。
研究者の関心を集めているもう一つの重要な動向は、全固体リチウムイオンバッテリーを採用で、バッテリー寿命と車両の航続距離が延びる可能性がある。現在のリチウムイオンバッテリーは、液体か高分子ゲルの電解質を使って、負極と正極間のイオンを移動させている。液体電解質を固体電解質に置き換えれば、液体に弱い材料を利用してリチウムイオンバッテリーの寿命を延ばせる可能性があり、環境面でも望ましい。ただし、全固体バッテリーがリサイクルしやすいかどうかはまだ明らかになっていない。
トヨタは全固体バッテリー技術で先行している。1,000件以上の特許を取得しており、この技術を搭載した2021年発売の車両は、急速充電を提供し、安全上の懸念を払拭すると共に、充電1回で500kmの航続距離を達成した。フォードとBMWは2021年5月、Solid Powerという新興企業に投資すると発表した。全固体リチウムイオンバッテリー技術を獲得してEVコストの削減を狙う。日産も2028年までに独自の全固体リチウムイオンバッテリーを開発する目標を発表した。一方VWは、2025年までに米国の新興企業と合弁でバッテリーを本格生産する。サムスン電子総合技術院(Samsung Advanced Institute of Technology)もこの技術分野の研究を積極的に推進している。2020年3月には、全固体バッテリーの小型化及びライフサイクルと安全性の向上を図りつつ、充電1回で800kmの航続距離を達成できる可能性があると発表した。
高電圧化:出力密度向上や損失低減などの目的で800V以上への昇圧が今後進むが、高電圧の絶縁に必要な相間絶縁紙の組み込みを自動化する等、自動車規模の量産技術を開発する必要がある(鉄道用は手組みで 1100Vに対応している)。
永久磁石同期機→誘導機:永久磁石の代わりに電磁石を組み込む誘導モーターは、Tesla、Cadillac、Daimler EQC など採用実績が限られているが、安価なことなどから今後増加する可能性もある。
磁性材料:Nd-Fe-B磁石に使用するネオジムは資源量が限られる高価な材料であり、コストが数分の一であるフェライトに代替したモーターも市場に現れている。ただし磁力が1/3であり、磁石体格が大きくなるためHEVより搭載スペースが広くとれるBEVの方が搭載しやすい。
磁石添加材料:Nd-Fe-B磁石は100℃程度の高温でも磁力が著しく低下するため、ジスプロシウムを添加し磁力の底上げをすることが標準的である。また、プラセオジム、テルビウム、イッテルビウムなど他の重希土類も同様の効果があることが確認されている。次表に示す様にいずれも資源量が乏しいため、この使用をゼロとする例も出てきた(例えばホンダ2016年~ 。磁石の製法を焼結法から急冷→破砕→押出成形する熱間加工法に変え、Nd-Fe-B結晶を微細化することで磁力を向上した。磁石は大同特殊鋼が製造、開発は2社共同である。)
地球の大陸性地殻における元素存在度(岩波 理化学辞典 第4版による)
元素名 | 記号 | 存在度 | 元素の用途 |
---|---|---|---|
ケイ素 | Si | 28% | 土の主成分元素 |
鉄 | Fe | 6% | フェライト磁石の成分 |
ネオジム | Nd | 28 ppm | ネオジム磁石の成分 |
ジスプロシウム | Dy | 3 ppm | ネオジム磁石の磁力増大効果 |
プラセオジム | Pr | 8 ppm | ネオジム磁石の磁力増大効果 |
テルビウム | Tb | 1 ppm | ネオジム磁石の磁力増大効果 |
イッテルビウム | Yb | 3 ppm | ネオジム磁石の磁力増大効果 |
地殻内での含有量。採掘の難易度は考慮していないため可採埋蔵量ではない。
製造工程:溶接/被覆行程を避けるため、巻線機による角線自動巻きを提案するサプライヤーが複数あるが、コスト削減効果が大きければ普及する可能性がある。
VI. 車両モデル別駆動モーターサプライヤー
OEM | モデル | モデルイヤー | サプライヤー | 部品名 |
---|---|---|---|---|
Daimler | Mercedes-Benz EQC 400 4MATIC (Germany) | 2021 | ZF Friedrichshafen | 駆動モーター |
BMW | MINI Cooper SE (UK) | 2021 | BMW | 駆動モーター |
Volkswagen | CUPRA el-Born (Czech Republic) | 2021 | Volkswagen | 駆動モーター |
Stellantis | Opel Mokka-e (Germany) | 2021 | Vitesco | 駆動モーター |
Volkswagen | ID.Crozz (Germany) | 2021 | Volkswagen | 駆動モーター |
Renault | Mégane eVision (France) | 2021 | Renault | 駆動モーター |
Renault | Twingo (Slovenia) | 2021 | Renault | 駆動モーター |
Volkswagen | Skoda Enyaq iV (Czech Rep.) | 2020 | Volkswagen | 駆動モーター |
Volkswagen | Skoda Octavia iV (Czech Rep.) | 2020 | Volkswagen | 駆動モーター |
Volkswagen | Skoda Octavia E-TEC mild-hybrid (Czech Rep.) | 2020 | Volkswagen | 駆動モーター |
Volkswagen | Cupra el-Born (Germany) | 2021 | Volkswagen | 駆動モーター |
BMW | MINI Cooper SE (UK) | 2020 | BMW | 駆動モーター |
Jaguar Land Rover | Jaguar I-Pace (Austria) | 2020 | Jaguar Land Rover | 駆動モーター |
Daimler | Mercedes-Benz EQA (Germany) | 2021 | ZF Friedrichshafen | 駆動モーター |
Audi | Q4 e-tron (Germany) | 2021 | Audi Hungaria | 駆動モーター |
Volkswagen | ID.4 (Germany) | 2021 | Volkswagen | 駆動モーター |
Audi | e-tron (Belgium) | 2020 | Audi Hungaria | 駆動モーター |
Audi | e-tron S (Belgium) | 2020 | Audi Hungaria | 駆動モーター |
Audi | e-tron S Sportback (Belgium) | 2020 | Audi Hungaria | 駆動モーター |
Audi | e-tron Sportback (Belgium) | 2020 | Audi Hungaria | 駆動モーター |
BMW | i3s (Germany) | 2020 | BMW | 駆動モーター |
Citroen / DS | DS DS3 Crossback E-Tense (France) | 2020 | Vitesco Technologies | 駆動モーター |
Jaguar Land Rover | Jaguar I-Pace (Austria) | 2020 | Jaguar Land Rover | 駆動モーター |
LEVC | TX eCity (UK) | 2020 | GKN Automotive Limited | E-Axle |
Opel/Vauxhall | Corsa-e (Spain) | 2020 | Vitesco Technologies | 駆動モーター |
Peugeot | e-2008 (Spain) | 2020 | Vitesco Technologies | 駆動モーター |
Peugeot | e-208 (Slovakia) | 2020 | Vitesco Technologies | 駆動モーター |
Porsche | Taycan (Germany) | 2020 | マレリ (株) (旧 カルソニックカンセイ (株)) | 駆動モーター |
SEAT | Mii electric (Slovakia) | 2020 | Volkswagen | 駆動モーター |
Skoda | Citigo e iV (Slovakia) | 2020 | Volkswagen | 駆動モーター |
Volkswagen | e-up! (Slovakia) | 2020 | Volkswagen | 駆動モーター |
Audi | A8 (Germany) | 2019 | Bosch [Robert Bosch GmbH] | パワーコントロールユニット(PCU) |
Audi | SQ8 TDI (Slovakia) | 2019 | Continental AG | 非同期モーター |
Audi | e-tron (Belgium) | 2019 | Audi Hungaria | 駆動モーター |
BMW | i3 (Germany) | 2019 | BMW | 駆動モーター |
BMW | i3 (Germany) | 2019 | BMW | 駆動モーター |
BMW | i8 Roadster (Germany) | 2019 | BMW | 駆動モーター |
Jaguar Land Rover | Jaguar I-Pace (Austria) | 2019 | American Axle & Manufacturing Holdings, Inc. | 電動ドライブシステム |
Jaguar Land Rover | Land Rover Range Rover (UK) | 2019 | ZF Friedrichshafen AG | 駆動モーター |
Opel/Vauxhall | Corsa-e (Spain) | 2019 | Vitesco Technologies | 統合電動アクスルドライブシステム |
Peugeot | e-208 (Slovakia) | 2019 | Vitesco Technologies | 統合電動アクスルドライブシステム |
Porsche | Cayenne E-Hybrid (Slovakia) | 2019 | ZF Friedrichshafen AG | 駆動モーター |
Volvo Cars | Volvo V60 (Belgium) | 2019 | Aisin Seiki Co., Ltd. | eAxle |
Volvo Cars | Volvo XC90 T8 HEV (Sweden) | 2019 | Valeo Siemens eAutomotive Germany GmbH | 駆動モーター |
e.GO Mobile | e.GO Life 20 (Germany) | 2019 | Bosch [Robert Bosch GmbH] | 駆動モーター |
e.GO Mobile | e.GO Life 40 (Germany) | 2019 | Bosch [Robert Bosch GmbH] | 駆動モーター |
e.GO Mobile | e.GO Life 60 (Germany) | 2019 | Bosch [Robert Bosch GmbH] | 駆動モーター |
BMW | 740Le (Germany) | 2018 | ZF Friedrichshafen AG | 駆動モーター |
BMW | 740Le xDrive (Germany) | 2018 | ZF Friedrichshafen AG | 駆動モーター |
Jaguar Land Rover | Land Rover Range Rover P400e (UK) | 2018 | ZF Friedrichshafen AG | 駆動モーター |
Porsche | Panamera 4 E-Hybrid (Germany) | 2018 | ZF Friedrichshafen AG | 駆動モーター |
Porsche | Panamera Turbo S E-Hybrid Sport Turismo (Germany) | 2018 | ZF Friedrichshafen AG | 駆動モーター |
Volkswagen | e-Golf (Germany) | 2018 | Volkswagen | 駆動モーター |
Volvo | XC90 T8 Hybrid (Sweden) | 2018 | Valeo Siemens eAutomotive Germany GmbH | 駆動モーター |
BMW | i3 (Germany) | 2017 | BMW | 駆動モーター |
BMW | i8 (Germany) | 2017 | GKN Automotive Limited | 2速eアクスル |
Scania | Citywide | 2017 | BorgWarner Inc. | 電動モーター |
Volkswagen | e-Golf (Germany) | 2017 | Volkswagen | 駆動モーター |
Volvo | XC40 (Belgium) | 2017 | Continental AG | PHEV用フロントモーター |
BMW | 2 Series Active Tourer (Germany) | 2016 | GKN Automotive Limited | eAxle |
BMW | 2 Series Active Tourer PHEV (Germany) | 2016 | GKN Automotive Limited | eAxle |
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