人とくるまのテクノロジー展 2011:部品サプライヤーの出展(2)

省燃費・環境対応、コストダウンや、快適性・利便性向上を目指す技術の出展

2011/06/14

要 約

 以下に、2011年5月18日~20日に開催された「人とくるまのテクノロジー展2011」における、部品サプライヤーの、トランスミッション、電動パワーステアリング、照明機器など様々な分野にわたり出展された、省燃費など環境対応やコストダウン、また快適性・利便性の向上を目指す技術・部品についてレポートする。

 (同展示会の、EV/HEV関連とアイドリングストップ関連の出展については、6月3日付けレポート(1)をご参照ください。)

 アイシンAWは、2010年12月発売の新型Vitzが搭載する新型CVT、ジヤトコは、日産が中国で生産するMarchに搭載する新型4速ATを出展した。

 豊田自動織機は、トヨタのプリウス αが設定した樹脂パノラマルーフを出展した。

 スマートフォンにカーナビの機能を持たせ、またはカーナビと連携させるなど、スマートフォンの活用が始まっている。デンソーはスマートフォンの情報をカーナビに送るアプリケーションNaviConを開発し、アイシンAWはスマートフォン自体をカーナビとして使うNAVIeliteのサービスを開始した。

 小糸製作所は、開発を進めている「次世代ハイビーム可変ヘッドランプ」のデモンストレーションモデルを出展した。



小型ガソリンエンジンの出展

 Schaefflerグループは、多くの構成部品を供給している、GMの1.4L Turbo Ecotecエンジンと、Fiatの1.4L FIREエンジンを出展した。


Schaefflerグループが出展した、GMの1.4L Turbo Ecotecエンジン
Schaefflerグループが出展した、GMの1.4L Turbo Ecotecエンジン
(吸気・排気両側に、バルブタイミング連続可変システムを搭載)

小型ガソリンエンジンの出展

Schaeffler Opel 1.4L
Turbo
Ecotec
 2010年11月に欧州で発売されたOpel Astra Sports Tourerが搭載する4気筒 1369cc ガソリンエンジン。Schaefflerは、吸気側および排気側のバルブタイミング連続可変システム、動弁系システム、ベルトドライブシステムなどを供給。5速MTと組み合わせて、CO2排出量は139g/km。
 Ecotecは、"Emission Control Optimization TEChnology"の略で、GMの省燃費・低エミッション型ガソリンおよびディーゼルエンジンの総称。
Fiat FIRE
エンジン
 Fiatの、MultiAir技術を搭載する4気筒1368ccガソリンエンジン。Schaefflerは、MultiAirアクチュエーター(吸気側)、油圧式タペット(排気側)、デュアルマスフライホイール、クラッチなどを供給。(FIREはこのエンジンの呼称)
 Fiatと提携するChryslerは、2010年11月から米国でFIREエンジンを生産し、メキシコ工場で生産するFiat 500に搭載している。

資料:展示会での配布資料、展示資料、各社発表(後出表も同様)

 



トランスミッションの出展

 アイシンAWは、2010年12月に発売されたトヨタ新型Vitzが搭載する新型CVT、ジヤトコは、日産が中国で生産するMarchに搭載する新型4速ATを出展した。それぞれロックアップ領域の拡大などで燃費を向上させた。

 ZFは、Dual Clutch Transmissionと後輪駆動用8速ATを出展。また2013年から量産する予定の前輪駆動用9速ATを紹介した(パネル展示のみで現物の出展はなし)。


アイシンAWが出展した、新開発CVT(2010年11月発売のトヨタ新型Ractisと12月発売のトヨタ新型Vitzに搭載)
アイシンAWが出展した、新型CVT
(2010年11月発売のトヨタ新型Ractisと12月発売のトヨタ新型Vitzに搭載)


ジヤトコが出展した、新開発4速AT(日産が中国で生産するMarchに搭載する)
ジヤトコが出展した、新型4速AT(日産が中国で生産するMarchに搭載する)


ZFが出展した、Porsche Panameraに供給するDual Clutch Transmission
ZFが出展した、Porsche Panameraに供給するDual Clutch Transmission


Exedyが三菱ふそうに供給する、トラック用Dual Clutch Transmissionのクラッチとダンパー
Exedyが三菱ふそうに供給する、トラック用Dual Clutch Transmissionのクラッチとダンパー

トランスミッションの出展

アイシンAW 新型CVT  2010年11月に発売されたトヨタ新型Ractisと、12月に発売されたトヨタ新型Vitzが搭載する新型CVT。従来型比燃費を3.9%向上させ、新型Vitzでは1NR-FE型1300cc Dual VVT-i エンジンと組み合わせて(2WD車で)10・15モード燃費24.0km/Lを達成、さらに新開発のアイドリングストップ(Toyota Stop & Start System)搭載車は26.5km/Lの低燃費を実現した。
 燃費向上のポイントは、トルクコンバータを新開発し、スタート直後からのロックアップを可能にしたこと("フレックススタート制御"と呼ばれる)で、またそのための耐熱性強化や騒音対策強化も行ったとしている。
ジヤトコ 新型4速AT  小型FF車用4速ATを21年ぶりに刷新した。日産が中国で生産する新型Marchに搭載する。日本で販売するMarchは全仕様CVTを搭載するが、中国の顧客はまだCVTに馴染んでいないとのこと。
 部品の配置や組み合わせを見直すことにより、部品点数を16%、全長を11%、重量を15%削減。従来ATF(Automatic Transmission Fluid)内にあったリダクションギヤを上方に配置してATF攪拌抵抗を減らし、また従来よりロックアップ領域を拡大し、トルコンの伝達ロスを減らした。
ZF
Friedrichshafen
Dual Clutch
Transmission
 ZFがPorsche Panameraに供給する7速DCT(Dual Clutch Transmission)を出展。縦置きエンジンを搭載する高性能スポーツカー向け。Porscheは、Panameraの他に、911、Boxter、CaymanにもDCTを搭載している。
 ZFによると、DCTの最大のメリットは、奇数段と偶数段の二つのギアが同時に繋がっているため、切り替えは百分の数秒で可能で、実質的には駆動を途切らせることなくできることにある。
前輪駆動用
9速AT
 世界初の乗用車用9速AT(横置きエンジンを搭載する前輪駆動乗用車用)。米国サウスカロライナ州Greenvilleにエンジン工場を新設し、2013年から後輪駆動用8速ATとともに生産を開始する。(パネルによる紹介のみで、製品の出展はなかった)
 想像を超えた素早いレスポンスと短い変速時間を実現したとしている。2段続けての変速や、何段か飛ばしたギアに直接変速することも自在に行う。
 Chryslerは、ZF製9速ATを2013年から採用すると発表している。またZFの技術を導入し、2013年からChryslerのインディアナ州Kokomoトランスミッション工場で9速ATを生産する。
後輪駆動用
8速AT
 コンパクトカーからフルサイズの上級セダンまで対応可能で、Audi A8/A6/A4/Q5、Bentley Mulsanne、BMW 7/5 SeriesとX5/X6/X3/X1、Land Rover Range Rover、Rolls-Royce Ghostに搭載している。(なお、同じ8速ATベースのHEVトランスミッションは、BMW、Mercedes-Benz、Audiが搭載している)
Exedy トラックの
DCT用クラッチ
 三菱ふそうは2010年11月、ポスト新長期規制適合車として発売した新型Canterに、商用車として世界初のDCT(Dual Clutch Transmission)を搭載した。従来からAMT(Automated Manual Transmission)を採用してきたが、変速時のトルク抜けという問題があり、その解決策としてDCTを採用した。Exedyは、そのクラッチを供給する。
 湿式クラッチを採用したことにより、アクセル操作なしでの低速走行(クリープ走行)も可能とした。また、さらに摩耗の少ない湿式クラッチのメリットを生かして厳しい耐久性の要求を満たし、車のライフサイクルを通してクラッチ交換は不要。

 



電動パワーステアリングの出展

 JTEKT日本精工が、それぞれ最新の電動パワーステアリングを出展した。JTEKTが出展した「電動・油圧式パワーステアリング」は、モーターとECUの一体化で小型化・高性能化し、また作動しない場合にモーターをスタンバイ(モーターの回転を下げる)させることで、省エネを実現した。


JTEKTが出展した、電動・油圧パワーステアリング
JTEKTが出展した、電動・油圧パワーステアリング
(日産Elgrandなどに供給、写真中央部の現行品と開発品はポンプ部分の比較)


日本精工が出展した、小型・高出力ピニオンタイプ電動パワーステアリング
日本精工が出展した、小型・高出力ピニオンタイプ電動パワーステアリング
(米国仕様Fitが搭載)

電動パワーステアリングの出展

JTEKT コラムタイプ
C-EPS
 コラムタイプは車室内(高温になるエンジンルームの外)に配置されるので、モーターに優しいタイプ。展示品は従来品に比べ、コラムブラケットを廃止し搭載方法を簡素化。使用電流を65Aから45Aに変更し消費電力を削減した。
ピニオンタイプ
P-EPS
 モーターとコントローラを一体化して質量を15%削減。アシスト力が強く、主に2000cc以上エンジン車に搭載する。バリアブルレシオ式ステアリングギアと組み合わせて、さらなる高出力へも対応が可能。
電動・油圧式
H-EPS
 省エネニーズに対応した、小型、高性能の電動ポンプタイプ油圧パワーステアリング。緻密な制御により操舵感を向上させ、スタンバイ制御システム(作動しない時間は、低い回転に落とすこと)により通常の油圧式パワーステアリングに対して70%省エネした。日産Elgrandなどに搭載。
日本精工 コラムタイプ
EPS
 従来から、電動パワーステアリングのモーターとモーターを制御するECUが離れた場所に搭載されることが多く、ハーネスの取り回しが困難であるとか、ハーネスの配線抵抗による電力損失などの問題があった。
 日本精工は、モーターとECUそれぞれを小型化し近くに配置する「モーター・ECU近接配置コラムタイプEPS」を開発、高効率・高出力化を可能にして操舵感を向上させた。トヨタの欧州仕様Versoに搭載。
ピニオンタイプ
EPS
 高出力でありながら、小型化と低騒音を両立したブラシレスモーターとモーター制御技術により操舵感を向上させた、アシスト力の強い「小型・高出力ピニオンタイプEPS」を出展。ホンダの米国仕様Fitに搭載。

 



樹脂パノラマルーフやテクスタイルフォールディングルーフの出展

 豊田自動織機は、トヨタが2011年5月に国内発売のプリウス αに設定した樹脂パノラマルーフを出展した。

 Magna Steyrは、Fiat 500が搭載するテクスタイルフォールディングルーフ、Porsche 911 Targaに供給するパノラマスライドルーフを出展した。


豊田自動織機が出展した、トヨタ プリウスαが搭載する樹脂パノラマルーフ
豊田自動織機が出展した、トヨタ プリウスαが搭載する樹脂パノラマルーフ


Magna Steyrが出展した、Fiat 500 Cのテクスタイルフォールディングルーフ
Magna Steyrが出展した、Fiat 500 Cのテクスタイルフォールディングルーフ

樹脂パノラマルーフやテクスタイルルーフの出展

豊田自動
織機
樹脂
パノラマルーフ
 豊田自動織機は、2011年5月発売のトヨタ プリウス αが搭載する「樹脂パノラマルーフ」を出展した。樹脂ウインドウとして世界最大の面積を実現した(2011年5月16日現在)。豊田自動織機は、3,000tの大型2色成形機を導入し生産する。
 三菱エンジニアリングプラスチックスが、ポリカーボネート(PC)樹脂材料を開発し供給する。同面積のガラスルーフ(約20kg)より約8kg(40%)軽量化し、同時に独自開発のハードコートにより、耐久性を従来品比数倍向上させ、断熱性も優れる。
 スイッチ操作で簡単に開閉可能な布製電動ロールシェードを採用。ドアロックに連動したオートシェードクローズ機能も備え、駐車時等での室内の温度上昇を抑える。(なお、開閉するのはロールシェードのみで、ルーフは開閉しない)
LFA用
パーティションなど
 Lexus LFAが搭載する「樹脂クォータ-ウインドウ」と「樹脂パーティション(荷室とキャビンを仕切るための車内窓)」を展示した。素材はポリカーボネート。
Magna Steyr Fiat 500Cの
ルーフ
 Fiat 500 Cが搭載する大きな開口面積を誇るソフトトップで、名称はテクスタイルフォールディングルーフ。BピラーとCピラーを残したままルーフ前端からリアウィンドーの位置まで開くユニークな機構で、車両重量は、1.2 8V POP仕様の場合で、オリジナルモデル比40kg増(1,020kg)に留まる。耐候性/経年劣化の心配もないとしている。
パノラマスライド
ルーフ
 Porsche 911のオープンモデルTargaシリーズの1車種が搭載する可動式ガラストップルーフシステム。天井部分とハッチバック部分に分かれ、天井部分は自動スライド開閉し、内側のローラーブラインドも自動開閉する。ハッチバック部分も後方に向け自動開閉することができる。

(注) Magna Steyrは、ルーフシステムの有力メーカーで、Soft Tops、Retractable(折り畳み式)Hard Tops、Modular Roofs/Textile Folding Roofsを、1996年以来180万台分以上生産し供給している。日本自動車メーカーでは、日産が370Z RoadsterとMurano CrosscabrioletにMagna製ソフトトップを採用している。

 



スマートフォンとの連携やHUDなど映像の活用

 スマートフォンの情報をカーナビへ送信したり、スマートフォンにカーナビの機能を持たせるなど、スマートフォンを活用する動きが始まっている。

 デンソーは、スマートフォンの位置情報をカーナビに送り、目的地を設定できるアプリケーションNaviConを出展した。

 アイシンAWは、iPhone向けカーナビ機能のアプリケーションを開発し、iPhone自体をカーナビとして使用するNAVIeliteを開発した。

 日本精機は、スマートフォンの活用に加え、HUD(Head up display)、プロジェクション方式によるインパネディスプレイなど視覚情報も総合し、運転時の視認性や操作性を向上させるSpace Vision i3 NS2011コンセプトを提案した。


Space Vision i3 NS2011コンセプト
日本精機が出展した、"Space Vision i3 NS2011コンセプト" (前面ガラス面にHUD、インスト
パネルにプロジェクション方式によるディスプレイ、右下にスマートフォン画面が見える)

スマートフォンの活用や、HUDなど映像の活用についての出展

デンソー NaviCon  デンソーは、トヨタ車向け販売店オプション部品であるデンソー製カーナビとiPhoneを繋ぐアプリケーション・ソフトウェア、NaviCon、を出展した。2010年6月出荷分からサービスを提供している。使用料は無料。
 iPhoneとカーナビを無線通信Bluetoothで接続し、カーナビの地図のリモートコントロールや目的地の設定をiPhoneから行うことができる。目的地は、地図から直接選択したり、iPhoneの連絡先に登録されている住所やブックマークから選択することも可能。NaviConでGoogle検索機能を使って地点検索もできる。
 2011年6月には、「ぐるなび」のデータから検索したお店をNaviConを介してカーナビに取り込み、目的地として設定する機能も追加した。
 (なお、NaviCon自体にはナビゲーション機能はない。)
アイシンAW NAVIelite  アイシンAWは、iPhone自体をカーナビとして使用できるアプリケーション"NAVIelite"を開発し、2011年1月にサービスを開始した。「ウェアラブルナビゲーション = 身に着けられるナビゲーション」のコンセプトで、その媒体の一つとしてスマートフォンを利用するとのこと。
 具体的には、各種地図表示機能、検索機能、探索機能、案内機能など、車載ナビ並の機能を持つiPhoneアプリケーション"NAVIelite"を開発した。iPhone3GSとiPhone4に対応する。年額3,800円(簡易版のminiは2,800円)で使用できる。
 カーナビとほぼ同様の画面が表示され、位置検出もGPSや車速パルスなどカーナビと同様のロジックで行う。目的地の30m手前まで確実に案内し、また地図更新は年6回行う。
(注) 1. アイシンAWによると、一般にカーナビの購入については、メーカー装着は高級車を中心に全体の10%程度で、90%はディーラー装着とのこと(NAVI・AI-SHIFTなどの車の機能と連動するサポート機能は、メーカー装着ナビが必要)。高機能よりも、低価格カーナビへの需要が多い。
2. トヨタは、これまでトヨタ純正ナビゲーションで利用可能であったテレマティクスサービスG-Bookを、一般のスマートフォンで利用できる「スマートG-BOOK」を開発し、2010年12月からサービスの提供を開始した。iPhoneやAndroid搭載のスマートフォンで利用できる。G-BOOK会員またはGAZOO会員が対象で、利用価格は6カ月間900円(税込み)。トヨタ車以外のユーザーも、GAZOO会員に登録し、スマートG-BOOKの利用登録をすれば利用可。
日本精機 Space Vision
i3 NS2011
Concept
 日本精機は、(1)情報、(2)直感、(3)対話、の3要素を総合して、運転時の視認性、操作性の向上、コックピットデザインの自由度の向上を目指すコンセプト"Space Vision i3 NS2011"を、デモンストレーションモデルとパネルで展示した。
 (1)情報は、ヘッドアップディスプレイと、内部からのプロジェクション方式によるインパネディスプレイを導入、(2)直感は、3次元形状タッチセンサスイッチによる感覚的操作を行うことで、目は道路に向けることができる、(3)対話は、スマートフォンを大画面車載ディスプレイに出力、車載スイッチで操作し、様々なアプリケーションを車内活用する、などの構想。

 



照明機器の出展

 小糸製作所は、3代目PriusやLexus CT200hなどが搭載する、LED 3個で構成する第2世代のLEDヘッドランプを出展した。近くLED 2個で構成する次世代型を投入するとしている。また「次世代ハイビーム可変ヘッドランプ」のデモンストレーションモデルを出展した。


小糸製作所が出展した、次世代ハイビーム可変ヘッドランプのデモンストレーションモデル
小糸製作所が出展した、次世代ハイビーム可変ヘッドランプのデモンストレーションモデル

照明機器の出展

小糸製作所 第2世代のLED
ヘッドランプ
 3代目Toyota PriusやLexus CT200hなどが搭載する、左右それぞれにLED3個を搭載する第2世代LEDヘッドランプを出展した(2007年に、世界で初めてLexus LS600hに搭載した第1世代LEDヘッドランプは、5個のLEDを搭載している)。
 近く、LEDの性能をさらに向上させ、LEDを2個にした次世代型LEDヘッドランプを商品化する計画。次の段階では、1個のLEDによるヘッドランプの実現を目指す。
次世代ハイビーム
可変ヘッドランプ
(開発中)
 できる限り見通しのきくハイビーム走行することを基本としながら、前方監視カメラで前方車両と対向車両を認識し、ヘッドランプの配光を全自動で制御、対向車や前方車に眩しさを与えることなくドライバーの前方視認性を高める構想。
 具体的には、(1)通常のロービーム、(2)より遠方の路面を照明できる高速走行用ロービーム、(3)通常のハイビーム、(4)ハイビームを左右2分割し、前方車両がある場合は左側の照明を抑え、対向車両がある場合は右側の照明を抑える(左側通行の場合)、などを設定することを計画中。

 



その他、快適性・操作性、環境対応などの出展

 その他、快適性・操作性を高める技術・部品として、デンソーがリモートタッチコントローラー、カルソニックカンセイは、開発中の高機能キャビンフィルター、アドヴィックスは新開発ディスクブレーキ、NTNは、ステアバイワイヤシステムのコンセプトを出展した。


NTNのステアバイワイヤ操舵システム
NTNのステアバイワイヤ操舵システム

快適性・操作性を向上させる技術の出展

デンソー リモートタッチ
コントローラー
 センターコンソール上に設置した小型コントローラを、PCのマウスのように使い、ナビ画面上の必要な項目をクリックして、カーナビ、オーディオ、空調を制御する。操作に応じた反力が手に伝わり操作を確認できるので、視線・焦点の移動が少なく安全な運転に寄与する。トヨタが2009年1月に発売したLexus RX 450h/RX350に搭載した。
カルソニック
カンセイ
高機能キャビン
エアフィルター
 従来の集塵機能(フィルターによる車室内のチリ・ホコリの除去)と、花粉除去機能(帯電フィルターによる静電気の力で、ミクロの花粉まで吸着)に加え、抗ウイルス機能(フィルター表面に機能性材料を塗布し、様々なウイルスに対応する)をプラスした高機能キャビンエアフィルターを開発中。
アドヴィックス 新開発ディスク
ブレーキシステム
 新開発した、軽量FRスポーツカー向けディスクブレーキを国内初出展。従来片側ずつ製造しボルト締めしていたアルミ製キャリパ(ディスクブレーキにおいて、摩擦材をディスクの両面に押しつける機能を持つ)を、一体鋳造(モノブロック化)し剛性を高めた。また放熱性に優れたブレーキディスクと、スポーツ走行向けの耐フェード性に優れた摩擦材を使用。
NTN ステアバイ
ワイヤシステム
 高機能(操縦安定性および燃費向上)と、フェールセーフ機能を備えたSBW操舵システムの提案。小型サブモーターを備え、メインモーター失陥時には瞬時(0.1秒以内)に切替可能。
 NTNは、今後のEVが普及する時代に備えて、様々なモジュールを開発し提案していく計画で、本出展もその一環とのこと。

 

 また、ダウンサイズやコストダウンを主眼とする部品・技術として、アイシン精機はバックガイド機能付きカメラ、カルソニックカンセイが、塗装工程を省きコストを削減したインストルメントパネルを出展した。


カルソニックカンセイの低反射ハードインスト
カルソニックカンセイの、コストを削減したインストルメントパネル

コストダウンを目指す技術の出展

アイシン
精機
バックガイド
機能付きカメラ
(新開発)
 現行品は「CCDカメラ + ECU」だが、開発品ではCMOSカメラと描画ECUを一体化し、超小型・低コストを実現した。開発品は、一辺2.3~2.5cmのほぼ立方体で、この中にカメラとチップを納めた。ディスプレイも従来は専用品だったが、NTSC(テレビに使われる映像信号規格)入力のディスプレイに対応する。日本初出展で、2012年から実車搭載を予定。
 バックガイドは、車両後方画像に、車幅延長線と予想進路線を同時表示し、駐車をアシストする。
カルソニック
カンセイ
インストパネルの
コスト低減
 インストルメントパネルの塗装工程を省き、コストを削減する狙い(塗装は金型から出した後の別工程で行うためコストがかかる)。塗装の主目的は、樹脂のウェルド(線状の跡)を隠すことと、光沢を抑え窓ガラスへの写りをなくすことにある。
 そのために、(1)流動解析により、ウェルドの位置を予測し、発生しても目立たない場所になるよう調整し、(2)樹脂成形の最終工程で、細かい粒(マイクログレイン)による模様を入れて、乱反射光沢を消すようにした。既に、コストが特に厳しい小型車用インストルメントパネルに適用し量産中。

 

 デンソーは、法規に対応するイオン電流失火検出システム用スパークプラグを開発した。

 また環境対応の一環として植物由来樹脂製ラジエータタンクを開発した。主に、コスト面でも有利になる寒冷地仕様として出荷されているとのこと。

環境対応・法規対応技術の出展

デンソー イオン電流
失火検出
システム適合
スパークプラグ
 エミッション規制の一環として、OBD(On Board Diagnosis)によるエンジン失火検出が要求されており、既に規制が実施されている欧米に続いて、2010年以降日本でも義務づけられる。
 通常はエンジン回転変動方式(注)で行うが、10気筒以上のエンジンには適用できないため、デンソーは、10気筒以上エンジンの失火検出技術であるイオン電流検出システム(火炎中の燃焼イオンを電極部で捕集し、イオン電流として検出する)に対応するスパークプラグを開発した。
(注) 1. エンジン回転変動方式では、エンジンの回転状況をクランク角度センサにて常時計測し、検出パターンの時間変化量により、間接的に失火有無を判定する。10気筒以上エンジンでは、1気筒失火時のトルク変動が小さくなるため、この手法では適正な失火検出が困難になる。
2. トヨタの10気筒以上エンジン搭載車は、Century(12気筒エンジン)とLexus LFA(10気筒)。
デンソー 植物由来樹脂製
ラジエータタンク
 デンソーは、デュポンと共同開発した、植物のヒマから抽出した有機化合物を主原材料に使用する植物由来樹脂製ラジエータタンクを開発した。大気中のCO2量増加抑制に貢献する。
 また一部の寒冷地では、凍結防止剤として散布される融雪塩に塩化カルシウムを多く含むため、ラジエータも塩化カルシウムへの耐久性が求められ、その分コスト高になっていた。開発品は耐塩化カルシウム性が高く、同時に従来の寒冷地仕様に比べるとコストダウンになる。このため、寒冷地仕様や寒冷地向けを含むグローバル共通仕様車に採用されている。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>