日本の新型車の環境性能:アイドリングストップ機構の搭載拡大
吸・排気可変バルブ機構、エコ運転支援装備の採用が増加
2011/03/03
要 約
以下は、日本の自動車メーカーが2010~2011年 1月に国内発売した新型乗用車の環境性能の概要である (新規モデルとフルモデルチェンジ車で、他社からのOEM車は含まない)。
排出ガス低減では、ほとんどの新型車が2005年排出ガス基準値の75% 低減レベルを達成。燃費性能でも、一部仕様を除いて、大半の新型車が2010年燃費基準値に適合している。新型車のうち、ハイブリッド車と一部のガソリン車は、2015年度燃費基準を達成している。
燃費向上対策としては、新型車のエンジンの多くが、吸・排気に可変バルブ機構を採用している。また、燃費やエコ運転度を表示するインジケーター、燃費優先で駆動力やエアコンを制御するエコ走行モードなど、低燃費運転を支援する装備の設定も拡大した。
アイドリングストップ機構の搭載も拡大しており、トヨタ、日産、マツダ、ダイハツが計5車種の新型車に設定。エンジン再始動時間を短縮し、違和感なく使用できるシステムの採用が拡大している。
日本の自動車メーカーが 2010~2011年1月に国内発売した新型乗用車の排出ガス・燃費性能
モデル (発売年月) |
2005年排出ガス基準値 | 2010年燃費基準値 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
75%低減レベル (SU-LEV) |
50%低減レベル (U-LEV) |
+ 25% レベル |
+ 20% レベル |
+ 15% レベル |
適合~ + 10% レベル |
|
Toyota Vitz (10年 12月) |
全仕様適合 | 残りの全仕様 | 1.3L・4WD車 | 1.5L・MT車 | ||
Toyota Ractis (10年 11月) |
全仕様適合 | 2WD車 | 残りの全仕様 | |||
Toyota FJ Cruiser (10年 11月) |
全仕様適合 | |||||
Toyota Passo (10年 2月) |
全仕様適合 | 1.0L・2WD車 | 1.3L・2WD車 | 残りの全仕様 | ||
Lexus CT200h (11年 1月) |
全仕様適合 | 全仕様適合 | ||||
Honda Fit Hybrid (10年 10月) |
全仕様適合 | 全仕様適合 | ||||
Honda Freed Spike (10年 7月) |
全仕様適合 | 2WD車 | 残りの全仕様 | |||
Honda CR-Z (10年 2月) |
全仕様適合 | 全仕様適合 | ||||
Nissan Leaf (10年 12月) |
(排出量はゼロ) | JC08モード交流電力量消費率 124Wh/km | ||||
Nissan Serena (10年 11月) |
全仕様適合 | 全仕様適合 | ||||
Nissan Elgrand (10年 8月) |
全仕様適合 | 2.5L車 | 3.5L・2WD車 (車両重量 2,020kg以上) |
3.5L・4WD車 | 残りの全仕様 | |
Nissan March (10年 7月) |
全仕様適合 | 全仕様適合 | ||||
Nissan Juke (10年 6月) |
1.5L車 | 残りの全仕様 | 1.5L車 | 残りの全仕様 | ||
Mazda Premacy (10年 7月) |
全仕様適合 | 2WD車+i-stop (車両重量 1,520kg以上) |
2WD車+i-stop | 2WD車 (i-stopなし) |
残りの全仕様 | |
Mitsubishi RVR (10年 2月) |
全仕様適合 | 全仕様適合 | ||||
Suzuki MR wagon (11年 1月) |
全仕様適合 | 残りの全仕様 | ターボ・4WD車 | |||
Suzuki Solio (10年 12月) |
全仕様適合 | 全仕様適合 | ||||
Suzuki Swift (10年 8月) |
全仕様適合 | 残りの全仕様 | 5MT車 | |||
Daihatsu Move (10年 12月) |
全仕様適合 | 全仕様適合 |
資料:2011年 2月下旬の各社の車種別環境情報 | |
(注) 1. | 新規モデルとフルモデルチェンジ車 (他社からの OEM 供給車は含まない)。 |
2. | 2009年 4月 1日より適用の環境対応車普及促進税制 (エコカー減税) では、ハイブリッド車は、排出ガス性能が SU-LEV、燃費が2010年燃費基準値 +25% 以上であれば、重量税・取得税とも 100% 免税。ガソリン車は、排出ガス性能が SU-LEV、燃費が2010年燃費基準値 +25% 以上であれば、重量税・取得税とも 75% 軽減、2010年燃費基準値 +20% および +15% であれば 50% 軽減される。対象は、重量税が2012年 4月末まで、取得税が2012年 3月末までの登録車。 |
3. | 自動車税が軽減される自動車グリーン税制では、排出ガス性能が SU-LEV、燃費が 2010年燃費基準値 +25% 以上の場合、購入の翌年度に限り約 50% 軽減 (軽自動車は軽減なし)。対象は 2012年 3月末までの登録車。 |
4. | 2009年 4月10日から 2010年 9月 7日まで、環境対応車普及促進対策費補助金 (エコカー補助金) 制度を実施。車齢 13年以上の車を廃車し、2010年燃費基準達成車に買い替える場合、登録車は25万円、軽自動車は12.5万円が交付された。廃車を伴わない新車購入の場合、排出ガス性能が SU-LEV、燃費が2010年燃費基準値 +15% 以上であれば、登録車は 10万円、軽自動車は 5万円が交付された。 |
5. | 2007年 7月公布の2015年度燃費基準は、乗用車の平均燃費基準を 16.8km/L 以上とし (2004年度実績比 23.5% 改善)、燃費の試験方法を 10・15 モード走行から JC08 モード走行に変更する。2010~2011年 1月発売の新型乗用車で、既に2015年度燃費基準を達成しているのは、Toyota Passoの一部, Lexus CT200h, Honda CR-Z, Nissan Serena, Nissan Elgrand の一部, Nissan March の一部。 |
環境対策:吸・排気可変バルブ機構、エコ運転支援装備の採用拡大
2010~2011年 1月に国内発売された新型乗用車のエンジンは全て、可変バルブ機構を搭載している。その多くは、吸・排気の両側でバルブタイミングを連続可変制御するタイプで、軽自動車への採用も始まっている。
燃費向上対策として採用が拡大しているのは、低燃費運転をすると点灯するエコランプや燃費表示など、ドライバーのエコ運転を支援する装備。また、燃費重視で駆動力や空調を制御するエコ走行モードの設定も拡大している。
トヨタ:2010~2011年1月に国内発売した Toyota/Lexus ブランド新型乗用車の環境対策
モデル (発売年月) | 燃費向上、排出ガス浄化、低燃費運転支援等に関係する搭載技術 |
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Toyota Vitz (10年12月) | 【パワートレイン】 ・新搭載の 1.3L Dual VVT-i (注1) エンジンと、ロックアップ領域を拡大したトルクコンバーター付き Super CVT-i の組み合わせで、10・15モード燃費は 24.0km/L (2WD)。 ・1.3L・2WD車にアイドリングストップ機構 SMART STOP パッケージを設定。10・15モードでクラストップの低燃費 26.5km/L を実現。 |
【排出ガス浄化】 三元触媒、空燃比補償装置を採用。 | |
【低燃費運転支援】 走行中の瞬間燃費、平均燃費、航続可能距離などをメーター内のディスプレイに表示するマルチインフォメーションディスプレイ、環境に配慮したアクセル操作で点灯するエコドライブインジケーターランプを設定。 | |
Toyota Ractis (10年 11月) | 【パワートレイン】 ・新搭載の1.3L Dual VVT-i エンジンと Super CVT-i の組み合わせで、10・15モード燃費は 19.6~20.0km/L。 ・1.5L VVT-i エンジンと Super CVT-i (7速スポーツシーケンシャルシフトマチックに CVT SPORT モードを加えた応答性の高い ACTIVE CVT システム) の組み合わせで、2WD車の 10・15モード燃費は 20.0km/L、4WD車は 18.4km/L。 |
【排出ガス浄化】 三元触媒、空燃比補償装置を採用。 | |
【低燃費運転支援】 環境に配慮したアクセル操作で点灯するエコドライブインジケーターランプと、スイッチ操作で平均燃費を表示するドライブモニターを全車に採用。 | |
Toyota FJ Cruiser (10年 11月) | 【パワートレイン】 4.0L V6 エンジンは、Dual VVT-i を採用するほか、ローラーロッカーアームの採用によりフリクションを低減。5速AT (5 Super ECT) を組み合わせ、駆動方式はパートタイム4WDシステム。10・15 モード燃費は 8.4km/L。 |
【排出ガス浄化】 三元触媒、空燃比補償装置を採用。 | |
Toyota Passo (10年 2月) | 【パワートレイン】 ・1.0L VVT-i エンジンと CVT を組み合わせた 2WD 車の 10・15 モード燃費は 22.5km/L。"2010年度燃費基準 +25%" に加え、"2015年度燃費基準"も達成。 ・新搭載の 1.3L Dual VVT-i エンジンと CVT を組み合わせた 2WD 車の 10・15モード燃費は 21.0km/L。 |
【排出ガス浄化】 三元触媒、空燃比補償装置を採用。 | |
【低燃費運転支援】 環境に配慮したアクセル操作で点灯するエコドライブインジケーターランプと、スイッチ操作で平均燃費を表示するドライブモニターを全車に採用。 | |
Lexus CT200h (11年 1月) | 【パワートレイン】 1.8L アトキンソンサイクルエンジン (注2) とモーター、リダクションギヤで構成されるハイブリッドシステムを搭載。可変バルブタイミング機構採用。10・15 モード燃費は 34.0km/L。"2010年度燃費基準 +25%"に加え、"2015年度燃費基準" も達成。 |
【燃費向上対策】 排気熱再循環システムは、冷却水を排気熱で温めることにより、エンジン暖機時間を短縮する。新湿度センサーは、湿度・気温・フロントガラスの表面温度を検知し、ガラスが曇らない範囲で内気循環の比率を高め、暖房効率を向上させる。 | |
【低燃費運転支援】 エコ運転をサポートする "ハーモニアスドライビングナビゲーター" は、ハイブリッドシステムインジケーターにエコ運転状態をリアルタイムで表示。エコ運転の記録は、Lexus のテレマティクスサービス経由でセンターに送信・蓄積され、エコ運転の履歴確認・他のドライバーとの比較ができる。駆動力と空調を省エネ制御するエコモードの選択も可能。 |
資料:トヨタの2011年 2月下旬の車種別環境情報, 新車発表資料, On-line カタログ, その他 | |
(注) 1. | Dual VVT-i (吸・排気連続可変バルブタイミング機構) は、吸気バルブだけでなく、排気バルブの開閉タイミングも走行状態に応じて最適になるように変化させる。 |
2. | アトキンソンサイクルエンジンは、吸気バルブを閉じるタイミングを遅らせ、圧縮比より膨張比を大きくし、燃焼効率を向上させる。また、ポンピングロスが低減し、燃費が向上する。 |
ホンダ/日産:2010年に国内発売した新型乗用車の環境対策
モデル (発売年月) | 燃費向上、排出ガス浄化、低燃費運転支援等に関係する搭載技術 |
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Honda Fit Hybrid (10年 10月) | 【パワートレイン】 1.3L i-VTEC エンジン、軽量・小型な IMA (インテグレーテッド・モーター・アシスト)、アイドリングストップ機構等を組み合わせたハイブリッドシステム。エンジンを主体に走行し、発進・加速時のみモーターのアシストを受け、燃費を抑えるパラレル・ハイブリッドシステム。10・15 モード燃費は 30.0km/L。 |
【低燃費運転支援】 低燃費運転の状況を表示するアンビエントメーター、エコ運転を支援する "エコアシスト" を装備。燃費優先でエンジン、トランスミッション、エアコン等を協調制御する "ECONモード" を選択可能。 | |
Honda Freed Spike (10年 7月) | 【パワートレイン】 1.5L i-VTEC (注1) エンジンは、バルブタイミング制御に加え、DBW (ドライブ・バイ・ワイヤ) によってスロットルバルブを最適制御する可変吸気量制御により、燃費性能を向上。2WD にはトルクコンバーター付 CVT、4WD には 5速AT を組み合わせる。10・15 モード燃費は、2WD 車で 16.4km/L, 4WD 車で 14.0km/L。 |
【低燃費運転支援】 走行中の瞬間燃費、平均燃費、航続可能距離などをメーター内のディスプレイに表示するインフォメーションディスプレイ を装備。 | |
Honda CR-Z (10年 2月) | 【パワートレイン】 CR-Z のハイブリッドシステムは、1.5L i-VTEC エンジン、軽量・小型な IMA (インテグレーテッド・モーター・アシスト)、アイドリングストップ機構等で構成。1.5L i-VTEC エンジンは、低回転時には片側の吸気バルブを休止させ、燃焼室内に強い渦を起こすことで希薄燃焼を起こし、低燃費を実現。モーターは発進・加速時のみアシストし、2.0L エンジン並みの加速性能と低速トルクを実現。10・15 モード燃費は CVT 車が 25.0km/L、6MT車が 22.5km/L。 |
【低燃費運転支援】 エコ運転を支援する "エコアシスト" と、燃費優先で電子制御スロットルや電動パワーステアリングを制御する "ECONモード" を全車に標準装備。MT車には、燃費が向上するシフト操作のタイミングを知らせるシフトアップ/ダウン表示灯を装備。 | |
Nissan Leaf (10年 12月) | 【EVパワートレイン】 リチウムイオンバッテリー (容量 24kWh、最高出力 90kW以上) と電気モーター (最高出力 80kW、最大トルク 280N・m) の搭載により、フル充電で 200km (JC08モード) の走行が可能 。交流電力量消費率は 124Wh/km。走行中は CO2 を全く排出しない。 |
【低燃費運転支援】 エコ運転度が分かるエコインジケーター、エコ運転度の累積を示すエコツリー表示、到達予想エリアの表示や充電スポット案内により運転支援する EV 専用情報通信を採用。 | |
Nissan Serena (10年 11月) | 【パワートレイン】 新型 2.0L 直噴 MR20DD エンジンは、直噴により熱効率を高め、低燃費と高トルクを両立するとともに、吸排気の効率を高める ツイン VTC (注2) によりさらに燃費を向上。XTRONIC CVT と組み合わせ、アイドリングストップシステムを搭載した 2WD車の 10・15モード燃費は 15.4km/L、4WD車は 14.4km/L。 |
【燃費向上対策】 電動パワーステアリング、発電電圧可変制御 (バッテリーへの充電制御システムで、加速時には発電電圧を下げ、エンジン負荷を低減し、減速時には上げることで、オルタネータの発電を制御して、燃料消費量を低減する) を採用。 | |
【低燃費運転支援】 視覚的にエコドライブを支援する先進メーターを搭載。瞬間燃費、平均燃費、エコドライブナビゲーター、アイドリングストップ時間と節約したガソリン量等を表示する。 | |
Nissan Elgrand (10年 8月) | 【パワートレイン】 3.5L車には VQ35DE エンジン、2.5L車には QR25DE エンジンを搭載。広いギヤレンジと低速域からのロックアップを可能として、燃費を向上させる XTRONIC CVT-M6 を組み合わせる。10・15モード燃費は、3.5L・2WD車が 9.8km/L、2.5L・2WD車が 11.6km/L。 |
【燃費向上対策】 可変バルブタイミング、電動ポンプ式油圧パワーステアリング、発電電圧可変制御などを採用。また、ドライバーのアクセル制御や運転状況、走行環境を検知しながら、最適な変速制御を行うアダプティブシフトコントロールも採用。 | |
【低燃費運転支援】 ナビゲーションからの道路情報によりエンジンブレーキを最適制御し、燃料カットの頻度を高めるナビ協調変速機能、アクセル操作の補正やCVTの変速スケジュールを統合制御するECOモードなど、幅広いエコドライブアシスト機能を採用。 | |
Nissan March (10年 7月) | 【パワートレイン】 ・新開発 3気筒 1.2L HR12DE エンジンを搭載。トランスミッションの副変速機 (2段変速) 付き XTRONIC CVT は、副変速機の採用により、変速比幅の拡大、プーリーの小型軽量化、オイル攪拌抵抗の低減等により、フリクションを約 30%低減し、燃費を向上。 ・一部の量販グレードにアイドリングストップ機構を標準装備。これにより、10・15モード燃費は 2.0km/L 向上し、26.0km/Lとなった。メーター内ディスプレイで、アイドリングストップ時間と節約したガソリン量を確認できる。 |
【燃費向上対策】 可変バルブタイミング、電動パワーステアリング、発電電圧可変制御 (減速エネルギー回生充電機能を含む)、高剛性軽量プラットフォームなどを採用。 | |
日産は 2010年度より、究極のエコカー "ゼロ・エミッション" とエンジン進化型エコカー "PURE DRIVE" を二本柱として、CO2削減を進めている。PURE DRIVE とは、既存のエンジン車に、次世代環境技術 (アイドリングストップ、クリーンディーゼル、ハイブリッド等) を搭載し、クラストップレベルの低燃費を実現する。新型 March は PURE DRIVE 第 1弾。 | |
Nissan Juke (10年 6月) | 【パワートレイン】 1.5L HR15DE エンジンは、燃料噴射を1シリンダーあたり2本のインジェクターで行い、燃料効率を安定させるデュアルインジェクターを採用。副変速機 (2段変速) 付き XTRONIC CVT との組み合わせで、1.5L車の 10・15モード燃費は 19.0km/L。 |
【燃費向上対策】 吸・排気可変バルブタイミング、発電電圧可変制御を採用。 | |
【低燃費運転支援】 燃費表示機能、エコドライブサポートサービス等を採用。エンジン、CVT、エアコン等を低燃費モードで制御し、エコドライブをサポートして実用燃費向上に貢献するエコモードを選択可能。 |
資料:ホンダと日産の2011年 2月下旬の車種別環境情報, 新車発表資料, On-line カタログ, その他 | |
(注) 1. | Honda Freed Spike の i-VTEC (高知能可変バルブタイミング・リフト機構) は、吸気バルブのリフト量を、走行状態に応じて2段階で制御すると共に、吸気バルブの開閉タイミングを連続可変制御する。 |
2. | ツイン VTC (可変バルブタイミングコントロール機構) は、吸排気両側に可変バルブタイミング機構を搭載する。 |
マツダ/三菱自動車/スズキ/ダイハツ:2010~2011年1月に国内発売した新型乗用車の環境対策
モデル (発売年月) | 燃費向上、排出ガス浄化、低燃費運転支援等に関係する搭載技術 |
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Mazda Premacy (10年 7月) | 【パワートレイン】 2WD 車の全車に直噴 2.0L エンジンを搭載し、一部グレードにアイドリングストップ機構の i-stop を標準装備。2WD 車では 5速AT (アクティブマチック)、4WD 車では 4速AT を組み合わせ。全エンジンに可変バルブタイミング機構付き。10・15 モード燃費は、i-stop を搭載する 2WD 車が 16.0km/L (電動スライドドア装着車は 15.0km/L)。 |
【燃費向上対策】 ロックアップ機構付トルクコンバーター、電動ポンプ式油圧パワーステアリングを搭載。 | |
【排出ガス浄化】 排出ガス浄化システムにシングルナノ触媒を採用し、触媒の貴金属使用量を 70% 削減した。貴金属を触媒材料に埋め込む独自の構造を採用し、白金, パラジウム, ロジウム等の貴金属の使用量を大幅に削減。 | |
【低燃費運転支援】 エコ運転時に点灯するエコランプ、インパネ中央部のディスプレイに瞬間燃費や平均燃費を表示するトリップコンピューターを全車に標準装備。 | |
Mitsubishi RVR (10年 2月) | 【パワートレイン】 吸・排気ともに連続可変バルブタイミングを採用した 1.8L MIVEC (注1) DOHC 16バルブエンジンと、6速スポーツモード CVT を組み合わせて搭載。10・15モード燃費は 2WD 車で 15.2km/L、4WD 車で 15.0km/L。 |
【燃費向上対策】 減速エネルギー回生システム、電動パワーステアリングを採用。エンジンのフリクション低減。 | |
Suzuki MR wagon (11年 1月) | 【パワートレイン】 新開発の R06A型エンジンを搭載。自然吸気エンジンは、軽初の吸排気 VVT (可変バルブタイミング) 機構を採用 (2011年1月スズキ調べ)。ターボエンジンは、吸気側に VVT 機構を採用。ロー/ハイ 2段を持つ副変機構付き CVT (注2) と組み合わせた 10・15モード燃費は、自然吸気・2WD 車で 25.5km/L、ターボ・2WD 車で 22.5km/L。 |
【燃費向上対策】 CVT作動オイルをエンジン冷却水で温めるビルトインオイルクーラーを採用。車体の軽量化では、高張力鋼板の効果的な使用等により、車両重量を従来車 (G・2WD・4AT車) より 30kg 低減し、790kg とした (G・2WD・CVT車)。 | |
【低燃費運転支援】 低燃費走行時に点灯するエコドライブインジケーターを採用。 | |
Suzuki Solio (10年 12月) | 【パワートレイン】 Swift と共通の 1.2L 吸排気 VVT エンジンと、ロー/ハイ 2段を持つ副変速機構付き CVT を搭載。ベース車 (2WD) の 10・15モード燃費は 22.5km/L。 |
【燃費向上対策】 Dレンジでの停車時に自動でクラッチを切り離すニュートラル制御、低転がり抵抗タイヤを採用。車体の軽量化では、高張力鋼板の効果的な使用により、車両重量 (ベース車) 1,000kg を達成。 | |
【低燃費運転支援】 低燃費走行時に点灯するエコドライブインジケーターを採用。 | |
Suzuki Swift (10年 8月) | 【パワートレイン】 新開発の 1.2L 吸排気 VVT エンジンと、ロー/ハイ 2段を持つ副変速機構付き CVT を搭載。2WD・CVT車 の 10・15モード燃費は 23.0km/L。 |
【燃費向上対策】 Dレンジでの停車時に自動でクラッチを切り離すニュートラル制御を採用。旧モデルよりボディーサイズは大きくしたが、高張力鋼板の効果的な使用、エンジンやトランスミッション、内装の見直し等により、約 10kg 軽量化。 | |
【低燃費運転支援】 低燃費走行時に点灯するエコドライブインジケーターを採用。 | |
Daihatsu Move (10年 12月) | 【パワートレイン】 ・新開発の第 2世代 660cc KF エンジンと CVT を組み合わせ、新開発のアイドリングストップシステム ecoIDLE (エコアイドル) を搭載したモデルは、10・15 モード燃費がガソリン車トップの 27.0km/L (2010年12月現在、ダイハツ調べ、HEVを除く)。 ・第 2世代 KF エンジン (可変バルブタイミング機構付き) は、燃焼室内のイオンで燃焼状態を検知する i-EGR システムを採用して、ポンピングロスを大幅に低減。樹脂製電子スロットルボディを採用して軽量化を図り、燃焼室形状を変更して燃焼効率を向上させ、ピストン形状、オイルシール、チェーン等を変更してメカニカルロスを低減。 |
【燃費向上対策】 低転がり抵抗タイヤ、省電力性に優れた LED のストップランプ/ハイマウントストップランプを採用。シェルボディ、インストルメントパネル、ドアトリム、CVT ユニット等の軽量化により、旧モデルより約 35kg 軽量化。 | |
【低燃費運転支援】 運転状況を分析し、低燃費運転に導く "エコ運転支援機能"、低燃費運転をすると点灯するエコインジケーター、燃費重視のエアコン制御をするなど燃費向上に貢献する eco ドライブモードを採用。 |
資料:各社 の2011年 2月下旬の車種別環境情報, 新車発表資料, On-line カタログ, その他 | |
(注) 1. | MIVEC (Mitsubishi Innovative Valve timing Electronic Control system) は、三菱自動車可変バルブタイミング機構付エンジンの総称で、吸気/排気のバルブタイミングを連続的に最適制御する。 |
2. | スズキが採用する副変速機構付き CVT は、日産が March や Juke に搭載するものと共通で、ジヤトコ製。 |
エンジン再始動時間を短縮したアイドリングストップ機構の採用拡大
燃費向上に有効な技術として、アイドリングストップ機構の採用も拡大している。2010~2011年1月発売の新型車では、トヨタがVitz、日産がSerena と March、マツダが Premacy、ダイハツがMoveに設定。エンジン再始動時間が0.3~0.4秒と短縮され、ドライバーが違和感なく使用できるシステムの搭載が増加している。
再始動時間を短縮するため、トヨタは常時噛み合い式スタータを採用、日産は、従来のスタータ方式に加え、ベルト駆動のオルタネータで再始動する方式も採用した。マツダは直噴エンジンの原理を活用して、素早く静かな再始動を可能にし、ダイハツは軽自動車用に、軽量化・小型化・コストダウンしたシステムを開発した。
日本メーカーが発売したアイドリングストップ機構搭載車 (2010~2011年 1月)
システム名称 | モデル名 | 搭載エンジン | トランス ミッション | 燃費 (10・15モード) | |
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トヨタ | SMART STOP | Vitz | 1.3L Dual VVT-i 1NR-FE | Super CVT-i | 26.5km/L |
日産 | アイドリングストップ (ECOモーター式) | Serena | 2.0L 直噴 MR20DD | XTRONIC CVT | 15.4km/L |
アイドリングストップ (スタータ式) | March | 1.2L 3気筒 HR12DE | 副変速機付き XTRONIC CVT | 26.0km/L | |
マツダ | i-stop | Premacy | 2.0L 直噴 DOHC DISI | 5速AT | 16.0km/L |
ダイハツ | ecoIDLE | Move | 0.658L 3気筒 KF | CVT | 27.0km/L |
資料:各社の2011年 2月下旬の On-line カタログ
トヨタ:Vitzに常時噛み合い式スタータを採用したアイドリングストップ機構を設定
従来のスタータは、先端部のピニオン・ギアをエンジン側のリング・ギアに押し出して噛み合わせ、エンジンの始動を助ける。燃料供給停止後に惰力でエンジンが回転していると、ピニオン・ギアを押し出せず、アイドル停止直後の再始動に時間がかかっていた。 |
デンソーとトヨタが共同開発した常時噛み合い式スタータは、スタータ側のピニオン・ギアとエンジン側のリング・ギアを常に噛み合わせておく。さらに、リング・ギアに一方向クラッチを加えて、スタータからリング・ギアは回せるが、その逆はできない仕組み。従来システム比で燃費を 3% 向上、エンジン再始動時間を約 80% 短縮。Vitz の再始動時間は 0.35秒。欧州仕様の Auris 等に MT と組み合わせて投入したが、CVT との組み合わせは 新型 Vitz が初めて。 |
(注) 1. | デンソーは、2011年 1月開催の Detroit Auto Show に、エンジン回転中に再始動できるスタータ、Tandem Solenoid Starter (TSスタータ) を出展。専用ソフトウェアにより、エンジン側の回転数に合わせてピニオン・ギアを押し出し、 エンジン側のリング・ギアと噛み合わせるため、エンジン側にクラッチを追加しなくても、常時噛み合い式と同じ効果が得られる。2011年内に実用化する計画。 |
2. | デンソーは、2010年 6月開催の人とくるまのテクノロジー展に、耐久性を高めた AE (Advanced Engagement) スタータを出展。ピニオン・ギアの押し出し部に設けたバネが、ピニオン・ギアの押し出しによるリング・ギアとの衝突の衝撃を弱める。従来品の耐久性は 3万回程度だが、開発品は 10倍の 30万回。2010年にHyundai と VW が発売した車両が採用。 |
日産:Serena に ECOモーター式アイドリングストップシステムを搭載
日産は、2010年11月に発売の Serena に、エンジンの始動性が早くて静かなECOモーター式のアイドリングストップを採用した。ECOモーター (Energy Control Motor) は、通常の発電と減速時の回生充電機能を持つオルタネータに、エンジン再始動機能を加えたモーター。 |
ECOモーター式は、ベルトを介してダイレクトにクランク直結プーリーを回転させるため、エンジン再始動がスピーディ (約 0.3秒)。クランク角センサーを 2個搭載することで、最初に点火する気筒の判別が可能となり、始動時間のばらつきを抑える。また、スタータモーター音のない静かな再始動が可能。 |
日産:March にスタータ式アイドリングストップシステムを搭載
March に搭載した従来のスタータ式アイドリングストップシステムは、エンジン再始動時にスタータのピニオン・ギアが回転しながら押し出され、ホイールのリング・ギアに噛み込むことでフライホイールが回転し、クランクシャフトが回転する。March のエンジン始動時間は約 0.4秒。 |
(注) 日産は今後、小型車ではスタータ式、コストが負担できるミニバンクラス以上では ECOモーター式 (オルタネータ兼スタータ方式) と、両方式を使い分ける方針とされる。
マツダ:直噴エンジンの原理を活用し、エンジンを素早く静かに再始動するアイドリングストップ技術
従来のシステムではスタータモーターだけでエンジンを再始動していたが、マツダの i-stop は、停止中のエンジンのシリンダー内に直接燃料を噴射し、爆発させることでピストンを押し下げ、エンジンを再始動させる。燃料を節約するとともに、従来システムより素早く静かな再始動が可能。 |
停止時の空気量を気筒ごとに精密制御することで、エンジン停止時のピストン位置をコントロール。再始動のための最適な位置に停止させたピストンの中から、最初に燃料を噴射する気筒を判別し、着火させる。これらの技術により、再始動までの時間を一定に維持することが可能。再始動に要する時間は、従来のスタータモーター式の約半分の 0.35秒 (AT車、マツダ計測値)。 |
ダイハツ:Move に軽量化・小型化したアイドリングストップ機構 ecoIDLE を搭載
ダイハツは2010年12月発売の Moveに、アイドリングストップシステム専用部品を最小限に抑え、軽量化・小型化したアイドリングストップ機構 ecoIDLE を搭載。2006年12月から Mira に搭載していた従来モデルと比較し、重量を 6割減の 4kg、エンジン始動時間を 0.1秒短縮して 0.4秒とし、コストも 7割低減した。 |
削減した部品としては、CVT 用電動オイルポンプを、自社開発 CVT の新油圧技術やエンジン早期始動制御などにより、不要にした。また、エンジン再始動時のナビゲーションやオーディオのリセットを防止する補助電源一体型アイドリングストップコンピュータを採用し、再始動時の電圧低下を防ぐサブバッテリを廃止した。 |
(注) | ダイハツは2012年までに、アイドリングストップ機構を軽乗用車の全車種に設定する方針。2011年夏には新型車 e:s (イース) に採用。今後、全面改良やマイナーチェンジに合わせて搭載を進める計画。 |
資料:各社広報資料、新車発表資料、2011年 2月下旬の On-line カタログ、その他 |