米国の新興EVメーカー:多くが2021年、2022年の発売計画を発表

各社とも商品と販売戦略に独自色を打ち出し、ターゲット市場での競争優位と顧客基盤の確保を図る

2021/01/14

要約

Lucid Motorsのアリゾナ工場
Lucid Motorsが2021年から高級EVセダンの生産を開始する
アリゾナのAMP-1 (先進製造工場)
(出典:Lucid Motors)

  世界的な脱炭素化の動きを背景に、主要国・地域がガソリン車制限や電動車導入を政策目標として公表するなかで、自動車各社の電動技術開発やEVの新車投入・ラインアップ拡大計画をめぐる動きが活発になっている。

  2000年以降に続々と設立された米国の新興EVベンチャーの中で、商品開発と生産準備を進めてきたいくつかの主要なメーカーは、その多くが2021年、2022年に量販車の生産を開始する計画を発表している。

  これらの新興メーカーは、商品戦略では、超高級・高性能路線、あるいは実用性・効率性重視など、また販売面では、直営販売ネットワーク、メーカー直販、フリート顧客中心、あるいはサブスクリプション専用など、市場導入の戦略で独自性を打ち出し差別化を図る。自前の技術や内製にこだわるメーカーとコンポーネントや製造工程のアウトソースでコスト優位を図るメーカーの際立った対比も見られる。大手フリート顧客との提携やコンポーネント外販で規模確保・拡大を図る企業も多い。

  また、技術開発や生産準備のための資金確保が新興メーカーにとって常に大きな課題となってきたが、対策としてIPO(新規上場)の新たな手法として認知が高まった特別買収目的会社(Special Purpose Acquisition Company:SPAC)を使った証券市場への上場と資金調達を実施、あるいは計画するEVメーカーが多く現れた。

  新興EVメーカーは、ターゲット市場での優位性によって拡大が見込まれる電動車市場でのシェア確保を狙うが、期を同じくして強力な生産体制と販売網を備えた大手OEMからも様々な新型EVの投入が計画されており、競争環境は厳しい。

  本レポートでは、米国の新興EVメーカーの動向を報告した前回レポート(2020年4月9日掲載)のアップデート版として、具体的な市場投入の日程計画を発表したメーカーの最新の動きを報告する。

 

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米国新興EV主要メーカーによる商品投入開始は2021~2022年に集中

  今回報告する主要8社の初回EV発売計画のポイントを整理すると以下の通りとなる。

メーカー 最初に発売される
EV(フル電動車)
生産または
販売開始時期
価格(注) 特長
Rivian Automotive 5人乗りピックアップトラック「R1T
その後、SUV、デリバリーバン
2021年6月 納入開始
(初回限定モデル)
USD 75,000~ Ford、Amazonと提携
Lucid Motors フルサイズセダン「Lucid Air
最上級 「Dream Edition」 から発売。
2021年春 発売 USD 169,000 高級・高性能を強調。直営店で販売
Lordstown Motors フルサイズ・ピックアップ
トラック「Endurance」
2021年秋 生産開始 USD 52,500~ フリート顧客重視
Karma Automotive セダン「GSe-6」 2021年 発売 USD 79,900~ PHV販売の実績を活かす
Bollinger Motors ピックアップトラック/SUT 2021年 発売 USD 125,000 シンプルさと機能性重視
Fisker SUV「Ocean」 2022年Q4 生産開始 USD 37,499~ 組立、主要部品の外注による効率化
Nikola 重量級(クラス8/7)セミトラック。
バッテリー電動(BEV)が先行し、
燃料電池(FCV)が続く。
2022年(BEV)
2023年(FCV)生産開始
- 水素インフラも構築
Canoo 7人乗り「Canoo」 2022年 発売 サブスクリプション専用 車内容積最大化

(注)価格はすべて税額控除前

 



Rivian Automotive:2021年6月からピックアップ、続いてSUVを納入開始

  2009年に設立されたRivianは2011年に現社名に名称変更し、現在は本社をミシガン州に置く。2017年に三菱自動車からイリノイ州Normal工場を購入しその設備と労働力の活用を図る。

  同社は提携先の幅広い関連企業から得られた資金やノウハウを活用した事業拡大を図っており、これまでにAmazon、Ford、Cox Automotive、その他投資ファンドなどから総額で60億ドル(約6,300億円)を調達している。

  現時点で発表されているEV投入計画は、2018年のLAモーターショーで披露された5人乗りピックアップ「R1T」、7人乗りSUV「R1S」、そしてAmazon向け専用設計の電動デリバリーバン。R1TとR1Sはそれぞれ2020年12月、2021年3月に量産開始予定としていたが、2020年4月に新型コロナウイルス禍を理由に両モデルとも2021年への発売延期が発表された。

  Fordとの協業によって、Lincolnブランド初となるEVを共同開発するとされていたが、4月に同計画の中止が発表された。両社は提携関係を続けるとしており、FordはRivianのスケートボード・プラットフォームをベースに新型車の開発を計画する。

 

ピックアップとSUVの初期限定モデルを2021年から納入開始

  RivianはR1TとR1Sの初回限定モデルについて、それぞれ2021年6月、8月からの納入とし事前予約を受けていた。2020年11月には一般向け通常モデルのコンフィギュレーター(内外装仕様、車体色、航続距離選択などの内容、組合せ一覧)を発売計画の詳細と共にウェブサイトで公開した。

  通常モデルはR1T、R1Sとも2種類の仕様で2022年1月から納車が開始される。

Adventureパッケージ Exploreパッケージ
車名 R1T R1S R1T R1S
車型 5人乗り
ピックアップトラック
7人乗りSUV (同左)
価格*1 USD 75,000~ USD 77,500~ USD 67,500~ USD 70,000~

*1 標準走行距離(300マイル+)

Rivian R1S
2022年初頭に納車開始予定のSUV、Rivian R1S
(出典:Rivian)

  Adventureパッケージは、オフロード用の上級仕様となっており、車載エアコンプレッサー、オフロード用のアンダーボディシールド等が装備される。2021年に納車予定とされている初回限定モデルは、Adventureパッケージの仕様がベースとなっている。

  バッテリーについては、標準の航続距離300マイル(約480km)に加えて、2022年1月にR1Tに400+マイル(約640+km)のオプションを設定し、250+マイル(約400+km)の廉価版の投入とR1Sへの400+マイル版設定については通常モデル発売後に発表するとしている。

  一部のハイウェイでレベル3相当のハンズフリー運転を実現する「Driver+」や、各種の安全機能を標準装備し、また、OTA(無線)による継続的な機能アップデートのシステムを備えるとしている。

  購入希望者は、1,000ドルのデポジット(払い戻し可能)を払い、選択した組合せのモデルを予約することができる。

 

Amazon向けに電動デリバリーバンを10万台受注

  Amazonは2020年10月に、Rivianがグローバルでの配送用にデザイン・開発した電気バンを発表した。バッテリーやパワートレインなどのコア部品をR1T/R1Sと共有しており、2021年に生産を開始する予定。車両は全3サイズで複数のバッテリーサイズに対応し、配送ルートに合わせて最適化できる。先進のセンサー検知機能、高速道路走行を含む一連の運転アシスト技術、車内デジタルディスプレイとリンクした車外360度ビューカメラ、ハンズフリーでルート情報にアクセス可能な音声アシストのAlexa、などを装備している。

  AmazonはRivianに電気バン10万台を発注しており、2022年までに1万台、2030年までに全数が納入される予定。

 

より小型のモデルを中国と欧州に導入予定

  米国の複数メディアの報道(2020年11月19日付)によると、RivianはR1T/R1Sの後続車としてより小型の電動モデルを中国と欧州に導入する計画を発表した。モデルはR1T/R1Sと主要部品を共有化し、SUVを欧州で2022年に、中国でもその直後に発売予定で、最終的にはこれらの地域で生産を行う可能性があるという。

  RivianのR.J. Scaringe CEOは、これらの海外市場は事業拡大のために重要であり、そこではより小型の派生車が相応しいと語っている。同社のイリノイ州の工場には、モーターやバッテリーパック生産と拡張のための広いスペースがあるという。

 

ミシガン州の開発チームをカリフォルニア州へ移転・集約

  複数の米国メディアの報道(2020年6月23日付)によると、Rivianがエンジニアと開発スタッフの大半をデトロイト郊外からカリフォルニア州Irvineの開発施設へ異動させる。

  Rivianには現在、合計で2,300名の従業員がおり、うちカリフォルニア州に1,000名、ミシガン州に750名が配置されている。関係者によると現行のプロジェクトはミシガン州で継続されるものの、新規プロジェクトはカリフォルニア州で実施される。

 

Fordの一族が経営参加

  2020年5月1日、Fordの企業戦略部担当役員Alexandra Ford English氏がRivianの取締役会に参加することが発表された。English氏はBill Ford会長の娘で、Fordの全社戦略、コネクティビティとデジタルネットワーク戦略を担当している。

  Fordは2019年4月に初期投資としてRivianに5億ドルを投じ、同年12月には追加投資を行っており、今回の発表に際してFordのCEO(当時)のJim Hackett氏は「Rivianとの戦略的提携は将来のコネクテッドEVで重要な役割を果たす」と語った。

 



Lucid Motors:高級イメージを前面に出し、2021年春から段階的にEVを投入

  2007年に設立され2016年に現社名となったLucid Motorsは、カリフォルニアのシリコンバレー地域に本社を置く。共同創業者を始め、Teslaからの人材がいくつかの枢要ポストを占め、2019年からはTesla Model Sの開発を指揮したPeter Rawlinson氏がCEOを務めている。

  2019年にサウジアラビアのファンドから10億ドル(約1,050億円)の投資を受けたことを発表しており、2020年12月1日にアリゾナ州Casa Grande工場の第1フェーズ建設完了が発表されている。

  発売予定のEVは高級セダンの「Lucid Air」で、2021年春に169,000ドル(約1,770万円)の最上級車を皮切りに、徐々に低価格帯へのラインアップ拡大を計画している。高級、高性能、高機能を掲げ、独自の技術や内製コンポーネントにこだわる差別化戦略を打ち出しており、当初の販売ネットワークも第1号店のLA近郊Beverly Hillsをはじめ、高所得者の居住地域に集中させている。

  将来的には、Lucid AirをベースにしたSUVの導入も計画する。

 

初回の投入モデルは1,770万円の超高級セダン

  Lucid初の市販車となるEVの5人乗りフルサイズセダンLucid Airの詳細は、2020年9月にウエブ上でのグローバル中継を通じて発表された。Lucidは、全く新しい発想と独自の技術で、性能、効率性、デザインなどでEVのベンチマークとなる車を作ると自信を示す。

  同モデルには、4グレードが設定され、以下のスケジュールで段階的に発売される。下記スペックの他、グレード毎に内外装、ホイール、オーディオなど快適装備のレベルに差を設けている。

発売時期 グレード 価格 航続距離(注) 最高出力 0-60mph加速
2021年春 Air Dream Edition USD 169,000 ~ 503マイル 1,080 hp 2.5秒
2021年夏 Air Grand Touring USD 139,000 ~ 517マイル 800 hp 3.0秒
2021年後半 Air Touring USD 95,000 ~ 406マイル 620 hp 3.2秒
2022年前半 Air USD 74,400~ TBD TBD TBD

(注) 航続距離は、小径(19インチ)ホイール仕様を選択した場合。

Lucid Air
2021年前半から納車が開始される予定のLucid Air
(出典:Lucid Motors)

  Lucid Airは、いずれのグレードもデュアルモーターの前輪駆動(2022年発売のAirはシングルモーター、後輪駆動が標準)で、先進運転支援システム(ADAS)のLucid Dream Driveのハードウェア、さらにOTA(無線)のソフトウェア・アップデート機能を装備するとしている。Dream Edition/Grand TouringはLevel 3、Air Touring/AirはLevel 2の自動運転に対応できる機能を備える。

  米国、カナダ、欧州と中東の一部では予約を開始しており、返金可能な申込金として1,000ドル(Dream Editionバージョンは7,500ドル)が必要。2021年末までに全米で開設予定である20店の直営販売店(Lucid Studios)とサービスセンターでも予約が可能である。

 

2028年までに40万台生産体制、SUV生産開始も予定

  Lucid Motorsは2020年12月1日にLucid Airの生産開始に先駆け、アリゾナ州Casa Grande工場内のLucid AMP-1(先進製造工場)で第1フェーズの建設を完了したと発表した。

  2028年までに計4フェーズが計画されており、工場敷地の拡大に合わせ年間生産能力も、生産開始時の最大3万台から、第4フェーズ完了時には40万台まで増強する。

  同社は、2020年8月にSUVの追加投入を発表している。「グラビティ(Gravity)」というプロジェクト名で呼ばれ、2023年から生産が開始される予定である。

 



Lordstown Motors:フリート顧客向けフルサイズ・ピックアップトラックを2021年秋に生産開始

  Lordstown MotorsはEVベンチャーのWorkhorse Groupの前CEO(S.Burns氏)によって創設された。2019年3月に生産終了したGMのオハイオ州Lordstown工場を2019年秋に購入、フルサイズ電気ピックアップ「Endurance」の生産を2021年秋に開始、2022年中にフル生産まで引き上げる計画を進めている。

  2020年6月に同社工場で開催したイベントにおいてEnduranceを正式に発表し、プロトタイプ車両を披露した。Lordstownは輸送業者などフリート顧客に絞った販売戦略をとる。これまでに電力会社や複数のフリート車両管理会社からEnduranceを受注しており、法的拘束力をもたない生産予約は5万台に達しているという。

  2020年8月には特別買収目的会社であるDiamond Peak Holdingsと事業を統合し、上場会社となることで正式契約を締結したと発表した。

 

フルサイズ・ピックアップEnduranceの特徴は四輪ハブモーター

Endurance
2021年秋の生産開始が計画されているピックアップ・トラック「Endurance」
(出典:Lordstown Motors)

  Enduranceは四輪に配されたハブモーターが動力源となっており、稼働部品を大幅に減らすことでメンテナンスコストを抑え、従来型の商用車に比べ総合的な保有コストは大幅に少なくて済むとしている。また、モーターのトルクが直接各ホイールに伝わることで、動力の摩擦ロスが殆どなくなり、悪路での牽引力や走行性が向上する。

  電気モーターシステムの最高出力は600 hp、牽引可能重量は7,500ポンド(約3,400kg)。

  Enduranceのベース価格は52,500ドル(約551万円)で、1回の充電で少なくとも250マイル(約400km)の走行が可能。

 

バッテリー、モーターの生産工場建設に着手、ミシガン州にはR&Dセンターを開設

  Lordstown Motorsは、2020年11月16日付けリリースの中で、2021年秋の生産開始に向けて予定通り準備が進んでいることと併せ、以下の内容を発表した。

  • オハイオ州の本社工場では、70万平方フィート(約6.5ヘクタール)のバッテリーパックとハブモーターの生産工場の建設が始まった。
  • ミシガン州Farmington Hillsに360万ドル(約3.8億円)を投じた研究開発センターを開設する。同センターには実験/評価/試作用のラボが整い、車両実験やベンチマーキングが行なわれる。
  • 2020年11月後半に、オハイオ州以外で初のサービスセンターをカリフォルニア州Irvineに開設する。
  • 現在のLordstown Motorsの従業員数は250名超で、その後は2020年末までに500名、2021年末までに1,500名に達する見込み。

 



Karma Automotive:高級PHVの実績を活かし、2021年にEVを市場投入

  2014年に中国の万向集団が資本投入し設立、南カリフォルニアのMoreno Valleyの工場でプラグイン・ハイブリッド車(PHV)の4ドアスポーツカー「Revero」を生産する。2020年型となる新型Revero GTにはBMW製のPHV「i8」の1.5リッター3気筒ツインターボエンジンを搭載する。

  Karmaが発表している計画によると、フル電動(EV)のセダン、イメージリーダーとなる超高級車、そしてPHVの配送バン、の商品ラインアップを目指す。

  同社初となるEVは2021年発売予定の4ドアセダン「GSシリーズ」で、予約販売を開始している。また、多用途に使えるEV向けバッテリーモジュールを組み合わせた自社開発のE-Flexプラットフォームを披露するなど技術力のデモンストレーションを積極的に行っている。

  Karmaは北米、欧州、南米、中東などに販売網を持ち、グローバルな拡大を目指している。販売店は世界で約40カ所(2020年12月現在)、北米に24カ所(同9月現在)。

 

初となるフル電動EVセダンを2021年に導入

Karma GSシリーズ
Karmaが2021年の発売を発表したEVセダン「GSシリーズ」のイメージ画像
(出典:Karma Automotive)

  Karmaは2020年9月に、「GSシリーズ」のラインアップを2021年に導入すると発表し、10月にはその第1弾となるフル電動EV「GSe-6」セダンの価格を発表すると共に予約を開始した。

  車両価格は7万9,900ドルからで、返金可能な申込金100ドルと共に予約を受け付ける。

  GSe-6セダンは「Beyond EV(EVを超える)」をテーマとして掲げ、その詳細については、Karmaのリリース、並びに予約サイトに以下のデータが提供されている。

  • 新開発のパワートレインを採用し、コネクティビティ、インターネットラジオ、21インチホイールなどを標準装備する。
  • PHV、Revero GTのデザインを継承し、その長航続距離のPHV技術を活用
  • フルアルミボディ
  • ワンペダル・ドライビング、触覚(Haptic)ステアリング・コントロール、L2自動運転
  • バッテリー容量は最大110kWh、航続距離は最長300マイル(483km)、0-60mph加速は「十分に速い」
  • GSe-6、GSe-6 Luxury、GSe-6 Sportの3モデルが選択できる

 

Revero GTには最上位車として、1,100hpのスーパーモデルを投入

  さらにKarmaが2020年12月2日付のリリースで発表したRevero GTの将来計画では、同モデルは今回発表されたGS-6シリーズの上位に位置づけられ、1,100hpを超える出力と四輪駆動、ハンドメイドの高級仕様とレース車並みの走行性、先進テクノロジーを備えるイメージリーダー車になるとしている。

 

短距離商用EVの提携プロジェクトを発表

  Karmaは2020年9月、市街や大学敷地内などの使用に供する軽量級の短距離商用EVを生産するAYRO Inc.と設計・開発・製造面で戦略的提携関係を結ぶと発表した。

  提携では、次世代のAYRO軽量級商用EVプロジェクでKarmaのノウハウやOEMサービスを提供する。両社は今後3年間で、2万台超の軽量級電気トラックや電気配送バン(3億ドルの売上高に相当)の納入を目指す。まずは北米市場をターゲットにするものの、両社のサプライチェーンを活用して将来的にはグローバル市場での需要に応えるとしている。

 



Bollinger Motors:機能性優先のオフロード車を2021年内に導入

  ミシガン州デトロイト近郊に本拠を置くBollinger Motorsは、2015年に設立され、フル電動オン/オフロードトラックの開発を行う。

  同社が発表しているEVラインアップは、4ドアSUT(スポーツユーティリティ・トラック)「B1」、ピックアップトラック「B2」、「B2」シャシーキャブ、そして特許出願中の「Chasse-E」プラットフォームで、2021年内の生産開始を予定している。バッテリーとその関連システムは最重要コンポーネントとして開発やエンジニアリングを自社で行うとしており、バッテリーは独自技術として特許申請し外販も計画する。

  2020年8月には生産強化に向けた全社的な従業員増加に対応するため、本社を州内のより大きな施設へ移転した。

 

SUTとピックアップは、ボディ全長にわたる長い荷室が特長

パススルー荷台
BollingerのSUT「B1」が特長とするパススルー荷台
(出典:Bollinger Motors)

  4ドアSUTのB1、4人乗りピックアップトラックB2の両モデルは、オフロードでの性能や機能を求める顧客をターゲットとし、実用性を最優先した武骨でシンプルな外観デザインが特徴。内装も極めてベーシックなもので、他のEVが装備を競うダッシュボードのスクリーンや高度なインフォテインメント・システムは搭載されていない。

  B1/B2をさらに特色づける機能は、EVドライブトレインの配置を活かしたパススルー荷台およびフランクゲート(フロントの荷台開口)で、荷台がフロントグリルの中央スペースからキャブを通過しリアまで続く車体全長に及ぶ収納スペースが確保できる。フランクゲートとテールゲートの前後両側から荷物の出し入れができる。

  Bollingerの公式サイトにはB1/B2の共通スペックとして下記が発表されている。

  • SRP(小売価格)USD 125,000(約1,310万円)
  • 前後デュアルモーターによる全輪駆動
  • 最高出力は614hp、最大トルクは668lb-ft
  • バッテリー容量は142kWh、航続距離はEPA推定200マイル(約320km)

 



Fisker:提携先のリソース活用で効率化とコスト削減を図る

  Henrik Fisker氏が2016年に設立したEVメーカー。南カリフォルニアを拠点とする。2020年1月にSUVのEV「Ocean」を初公開、2022年第4四半期の発売を計画する。

  Fiskerは自動車産業における開発や販売に関する従来の考え方に根本から挑戦すると表明し、車体組み立てや主要コンポーネントの外注、あるいは大手メーカーとの提携によって製造コストを抑え、量産の加速化を図る戦略をとる。販売もディーラー網を持たない直販方式によるとしている。

  VWの量産EV用のMEBプラットフォームのOceanへの使用についての協議は合意に至らなったが、2020年10月にカナダのMagna Internationalと開発、生産での提携を行い、自動車エンジニアリング・組立を行うオーストリアのMagna SteyrでOcean向けのプラットフォーム共有と組立委託の契約を締結したことを発表した。

 

初となるフル電動EVセダンを2021年に導入

Ocean
2022年Q4の生産開始が予定されているFisker Ocean
(出典:Fisker)

  Oceanは2020年1月のCES2020で披露された。発売モデルのバリエーションや詳細スペックは2021年に公表するとしているが、現時点でアップデートされている内容は以下の通り。

  • ベースモデルは後輪駆動で、全輪駆動の設定がある。
  • 全輪駆動車の最高出力は225kW(300 hp)を超え、また、限定ハイパーフォーマンス仕様の0-60mph加速は3秒以下。
  • MSRPは37,499ドル(約394万円)から

  Fiskerは「最もエモーショナルでサステナブルな車造り」を掲げており、Oceanではソーラールーフの設定や、内装にヴィーガンレザー(人工的に革の繊維構造を再現した新しい素材) や海洋廃棄物からリサイクルしたプラスチックなどの廃棄物を再利用した素材が採用されるという。

  2020年11月にMagnaとの間でOceanの商品仕様、目標性能、生産準備日程に関する暫定合意に達したことに併せ、出荷を2022年第4四半期に開始することが確認された。Magna SteyrのオーストリアGraz工場が生産を担当する。

 

デンマークのライドシェアサービス企業と300台の供給契約

  Fiskerは2020年10月21日、電動SUV「Ocean」をデンマークのライドシェア企業Viggoに300台供給する契約を結んだと発表した。

  2019年設立のViggoはEVに特化したライドシェアサービス企業で、EVシェアの高い北欧でのビジネス展開を進めており、2021年にノルウェーに進出する。FiskerはViggoとの契約を手始めに、引き続きモビリティ企業や大手フリート企業との供給契約を進めるとしている。

 

NYSEへ上場し、量産へ向けた資金確保を進める

  2020年10月29日にFiskerは大手プライベート・エクイティ・ファンドであるApollo Global Management, Inc.傘下の特別買収目的会社Spartan Energy Acquisition Corp.との合併手続きを終えたと発表した。合併後の会社が10月30日にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した。この取引によりFiskerには10億ドル超の資金がもたらされる。

 



Nikola:技術力への期待が懸念に転じ、GMとの提携と商品計画が大幅に後退

  2015年創業のNikolaはアリゾナ州Phoenixに本社を置き、燃料電池(FCV)とEVのトラック開発に加え、水素ステーションや貯蔵システムの構築も手掛け、ゼロエミッション輸送のグローバルリーダーへのビジョンを掲げる。

  同社を巡るここ半年の動きは、幾多の新興EVメーカーの中でもひときわ業界内外の耳目を集めた。「第二のTeslaか」と高まっていた技術力と成長性に対する期待は、2020年9月に自社技術の誇大宣伝の疑惑が大きく取り上げられると、急激に懸念と不信に変わった。11月末にはGMとの間で以前に発表されていた提携関係の大幅な見直しが発表された。早くからの戦略的、技術的パートナーであるRobert Boschも12月初頭にNikolaの保有株式を6.4%から約4.9%相当まで引き下げた。

  Nikolaは、開発を進めてきたEVとFCVの重量級セミトラックの2022年市場導入を目指す。

 

2020年11月にGMとの提携見直しを発表

  2020年に入ってからのNikolaとGMの提携を巡る発表は以下の経緯を辿った。

時期 GMとの提携に関係する動き
2020年2月10日 電動ピックアップBadgerを発表、4ドア/5人乗りで、FCV/EVとEVのみの2バージョン。6月には予約販売を開始した。
6月4日 上場投資ファンドVectoIQ Acquisitionとの合併を完了してナスダックに上場を果たす。時価総額が2兆円を超える水準に達した。
9月8日 GMがNikolaとの戦略的提携を発表。Nikolaが株式の11%、20億ドル相当の新株をGMに発行し、GMはBadgerの製造を含むEVやFCVの技術提供、車両の設計、生産を行う、とした。
9月10日 ヘッジファンドのHindenburg Researchが、Nikolaが新型電気トラックの能力を誇張し「巧妙な詐欺」を行ったとするレポートを発表。米司法省と証券取引委員会が調査を開始。株価が急落。レポートでは、広報ビデオで走行するEVトラックが、実際には自重で坂を転がっているだけと指摘された。
9月20日 創業者であるTrevor Milton氏が会長を辞任。GMの元副会長でNikolaの取締役会メンバーでもあり、ナスダック上場を主導したStephen Girsky氏が後任に指名された。
11月30日 GMとNikolaが改訂MOU(覚書、Memorandum of Understanding)を締結。GMのHydrotec燃料電池技術のNikolaのクラス7/8セミトラックへの搭載に向け協力し、さらにこれら車両にGM独自開発のUltiumバッテリーを使用する可能性についても議論することになっている。9月発表の提携内容に含まれていたGMによるNikola株式の保有やBadgerの委託生産計画はMOUでは除かれている。

 

重量級セミトラックの分野で、2022年にBEV、2023年にFCVの生産開始を目指す

  GMとの改訂MOU合意により、ピックアップトラックのGM委託生産計画は見合わせとなったが、NikolaはGMの燃料電池技術を活用してクラス7/8重量級セミトラックの開発計画を進め、量産前提の試作車の評価を2021年末までに、Betaプロトタイプの評価を2022年前半に開始することを確認している。

  Nikolaはアリゾナ州Coolidgeに工場を建設中で、同社のマイルストーン計画によると同工場で水素燃料電池車(FCV)は2023年末までに生産を開始するとし、バッテリー電気トラック(BEV)については、2021年に量産テスト、2022年に生産開始としている。

  Nikolaは、ビール大手Anheuser-Busch、イタリアの商用車メーカー Ivecoなど提携先からの出資を受け、事業の安定化を図っている。

  また、2021年末までにIvecoのドイツUlm工場で電気セミトラックの生産開始を予定する。

 



Canoo:フラット・スケートボード構造で室内スペースを最大化

  ロサンゼルスを拠点とするEV新興企業Canooは、車室スペースを最大化する独自のフラット・スケートボード・プラットフォームの技術をベースとし、主にB2CやB2B向けEVラインナップを開発する。現時点では下記の2種の商品投入が発表されている。

  • 都市部での使用を想定したB2C向けモデル:2022年に発売を予定する最初のEV。サブスクリプション(定額月払い)専用を特徴とする。
  • B2B向け配送車:2023年に発売を予定。最大規模の荷室容積でラストマイル配送市場に攻勢をかける。

  2020年2月には、現代自動車グループがCanooと電気自動車(EV)プラットフォームを共同開発すると発表した。Canooスケートボード設計をベースとするもので、今後の現代と起亜のモデルに採用する。

 

クラス最大の室内スペースとサブスクリプション専用で差別化

Canoo一号車
サブスクリプション専用で2022年に発売予定のCanoo
(出典:Canoo)

  2022年発売予定の「Canoo」は、フラットスケートボード・プラットフォームを採用した全長/全幅/全高が4,421mm/1,896mm/1,846mmの箱型ボディで、クラス最大の室内スペースを確保するという。

  7人乗りEVで、後輪駆動が標準、全輪駆動がオプション設定されている。バッテリー容量は80kWhで、250マイル(約400km)の航続距離となっている。

  「世界初のメンバーシップ・オンリーの車」と銘打ったサブスクリプション(定額月払い)料金には、メンテナンス、保険、充電などが含まれ、使いやすさと維持費の安さをアピールする。

 

ナスダック市場に上場、生産・販売強化へ向けた資金調達を進める

  Canooは2020年8月に、特別目的買収会社 Hennessy Capital Acquisitionとの間で、合併に向けた最終契約を締結したと発表した。2020年第4四半期に見込まれる合併の手続きが終了次第、Canoo Inc.の新会社名でナスダック上場会社となる。

  Canooは合併により手にする約6億ドルの資金を、先進スケートボード技術をベースとしたEVの生産・販売支援に充てる。

 



その他の新興EVメーカー:Faraday Future、Byton、Arrival

Faraday Future:高級SUVの生産準備をするが、発売時期は未発表。

  ロサンゼルスに拠点を置く中国資本のEVベンチャー。2014年の創立。2017年のCESにフルサイズ高級クロスオーバーEV「FF91」を出展したが、資金難により計画は実現していない。2020年4月には、カリフォルニア州Hanford工場を自動車製造ができるように改修中であることが報道されている(Detroit News 4月13日付)。

  かつてBMWでPHV「i8」の開発チームを率い、Byton(下記)の共同創業者でもある(2019年初頭に退社)C. Breitfeld氏がCEOを務める。Automotive Newsによると、同氏は特別買収目的会社(SPAC)との合併による上場を計画しており、近日中に発表すると語っている。(2020年10月5日付)

  FF91については、3基の電気モーター、1,050hp、0-60mph加速2.39秒、航続距離300+マイルなどの高性能スペックを持つとしているが、発売時期は明らかにしていない。

 

Byton:中国生産SUVの米国販売へ向け準備を進める

  2017年に設立され、本社と生産工場を中国の南京に置くBytonは、米国シリコンバレーにR&D拠点を持ち、カリフォルニア州から米国での自動車販売が可能となる配給ライセンスを取得している。

  同社をめぐっては、これまでに資金難やグローバル各拠点でのリストラが伝えられたが、2020年8月に新会社「盛騰」として再登記されることが中国で報道され、また10月には初モデルとなるSUVのEV「M-Byte」が2021年に生産開始されると報じられている。米国での発売日程は公表されていない。

  M-Byteは2019年9月のフランクフルト・モーターショーでの公開に続いて、米国ではCES2020に出展された。後輪/四輪駆動と2種類(72kWh/95kWh)のバッテリー、NEDC航続距離430-550㎞、といったスペックが現時点で公表されている。内装ではダッシュボード全面にわたる48インチの巨大モニタースクリーンが特徴である。

 

Arrival:2021年Q4に米国で商用車の生産を開始

  英国Londonに本拠を置く新興EVメーカーArrivalは、バス/配送トラックの開発を行う。

  Arrivalは、全く新しいEVの開発、製造プロセスによって業界を変革する、としており、同社が提唱する自動車生産ライン「マイクロ・ファクトリー」は、新たなセルベースの組立方法を採用し、投資を抑えながら同社のあらゆる製品の生産を可能にする。2020年10月には、米国初となるマイクロ・ファクトリーをサウスカロライナ州に建設する計画を発表した。2021年第2四半期に稼働を始め、2021年第4四半期に生産を開始するとしている。

  2020年11月18日に、米国の特別買収目的会社CIIG Mergerと企業合併契約を締結し、新会社をナスダックに上場すると発表、また12月9日には、ノースカロライナ州Charlotteに北米本社を設立することを発表した。新たに約150人の従業員を雇用する。

  2020年1月には、提携先である米国の貨物運送大手UPSから専用EVを1万台受注したと発表している。


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