電動車(xEVs)とリチウムイオン電池の動向(その2)

$100/KWhバッテリーコスト、500km航続距離を実現する二次電池の開発競争

2017/03/24

概要

(GM 2017BOLT EV資料)
(2017 BOLT EV:GM 資料)

 2016年に世界で累計109万台売れた電気自動車が、内燃機関車に置替わり、今後10年程度でさらに増えるのか?電気自動車の核心技術である電池はどこまで性能向上するか?バッテリージャパン主催の二次電池展セミナーから第二報として、自動車メーカーが要求しているバッテリーコストと性能向上要求について紹介する。SNE Research(二次電池、再生エネルギー、電気自動車、LED等を専門とする韓国の調査会社)によれば、コスト要求値は電池パック当たり、$102/KWh以下である という。

 2017年型として発売されたGM BOLTは電池の原価低減目標として2020年に100$/KWhバッテリーパックを目指している。VWのMEB(次期電気自動車プロジェクト)用の目標コストは$93/KWhバッテリーセル(2020年時点)を目指しているという。バッテリーサプライヤーはOEMのコスト要求値・性能を満たし、安定供給していく事は可能なのか?



関連レポート:

電動車(xEVs)とリチウムイオン電池の動向(その1)(2017年3月)
欧州自動車メーカーのEV戦略: ダイムラーが新ブランド設立 (2016年12月)
Tesla Motors:計画を2年早めて2018年に50万台生産を目指す (2016年10月)



コスト要求値:VWは$93/KWh、GMは$100/KWhバッテリーパック

 SNE ResearchのEVP Calvin Lee氏はバッテリージャパン主催の二次電池展の専門セッションセミナーの講演にて、バッテリーのOEMからの要求コストレベルはバッテリーパック(60KWh容量)で約$100/KWh以下であるという。

 下図の通り、内燃機関車用のGolfクラスのエンジンコストが$2000、ミッションが$1500、ドライブシャフト類が$900、ガソリンタンクが$600であると仮定して、バッテリーパックは幾らが妥当かを概算で計算。VW Golfクラスの燃費を13.5km/L、GM BOLTのFTP換算燃費を50.3km/Lとおき、5年間のガソリン代と電気代を比較し60KWh分のバッテリーを搭載した時のコストを$102/KWh,バッテリーパックと試算した。前提条件として1年の平均走行距離1.6万km、ガソリン単価を74セント/Lとしている。



(SNE research提供資料)
(SNE Research提供資料)
(SNE research提供資料)
(BOLTの60KWhのリチウムイオン電池パック:GM資料より)



 また、VWのMEB プロジェクトでは2020年から2028年までの9年間で、電気自動車をGolf、ポロ、ティグアンなど同一プラットフォームで最低でも6車種投入し、640万台販売(65%は中国で生産、35%はポーランド生産予定)するという野心的な計画を発表しているとのこと。二次電池のRFQ(Request for quotation:入札)をLGC、SDI、Panasonic、Lishenなどの電池サプライヤーに展開し、目標コストを2020年で93$/KWh、(セル+モジュールコスト+製造費合計) とおいている。(2016年レベルから48%の原価低減)



(SNE research講演資料から)
(SNE Research講演資料から)


バッテリー開発競争:しのぎを削る日本、中国、韓国のバッテリーサプライヤー

 2016年までの車種別電気自動車販売1位は日産のLEAF、2位がTeslaのModel S、3位、4位にBYDのTang、Qinが続く。会社別にはBYDが1位、2位がTesla、3位が日産となっている。(下図中のレ点は中国の会社及び、中国車である)



【自動車メーカー別】 【モデル別】
(SNE research資料) (SNE research資料)
(SNE Research資料)

 

またバッテリーの出荷量ではパナソニックが1位、2位がBYD、3位がAESCとなっており、各社VW、Audi、BMW、GM等のオーダーを受け、2020年以降に向け生産量の拡大を計画している。

(SNE research資料)
(各バッテリーメーカーへの発注量:SNE Research資料)

 

 2022年までに確認されているバッテリーメーカーへの発注量はPanasonicが$450億(1$=100円ベースで4.5兆円)、LGCが$380億、CATLは$370億と莫大な額となっているという。



(SNE research資料)
(バッテリーメーカーへの2022年までの確定発注量:SNE Research資料)


膨大なリチウムイオン電池の量:2000年~2025年に発注される量は最大1900 GWh??!!

 ダイムラーが年間100万台、VW/Audiが年間最大100万台、ルノー日産が150万台等、OEM各社が2025年前後に販売すると発表した電動車(xEVs)総量を単純に加算すると2400万台の車両が販売される事になるという。また各バッテリーサプライヤーはあくまで仮定の話として、1900GWh規模のバッテリー量が最大で必要となる可能性もあるという。



(SNE researchの予測資料)
(SNE Researchの予測資料)


将来電池への性能向上期待:一充電での航続距離を300kmから500kmへ

 内燃機関車と置き替わるには一充電での航続距離を延ばすことが望まれており、現在300km程度の実力を500km程度まで伸ばす為に将来電池の研究が行われている。

 リチウムイオン電池は日本の旭化成工業(現旭化成株式会社)の吉野彰博士らが基本概念を1985年に確立したあと、ソニー・エナジー・テックにより1991年に初めて商品化された。その後IT変革を経て普及が大幅に進んできた。

 2017年には世界中で50GWhのリチウムイオン電池が携帯端末などモバイル用に出荷されると予測されている。さらに自動車の電動化動向により、50GWhの出荷が予測されており、合計すると100GWhになるという。

 現在リチウムイオン電池のエネルギー密度の実力は600Wh/L前後であるが、自動車用に航続距離を500km程度まで伸ばす為に、負極(Cathode)の改良や正極(Anode)を改良する研究が行われている。さらに電解質(Electrolyte)を固体とした「全固体セラミック電池」が研究されている。(リチウムイオン電池の3倍以上の出力特性)

 全固体セラミック電池は、東京工業大学物質理工学院の菅野了次教授、トヨタ自動車の加藤祐樹博士らの研究グループが開発し、エネルギー密度、急速充電時間も自動車用としては理想的だが、まだ研究段階である。(Nature Energy 2016年4月号)

(SNE research資料)
(SNE Research資料)

  自動車メーカーのコスト要求と性能要求を満たす電池があと10年前後で出現するかどうかが鍵となる。



------------------
キーワード
GM BOLT、VW MEB、ZEV、xEVs、電動車、リチウムイオン電池、コスト、航続距離

<自動車産業ポータル マークラインズ>