日本メーカーの最新パワートレイン技術:人とくるまのテクノロジー展2015から

マツダ:新型Roadster、日産:FF用HV、スズキ:改良型R06AエンジンとAuto Gear Shiftなど

2015/06/22

要 約

 本レポートは、2015年5月20~22日に開催された「人とくるまのテクノロジー展」における、自動車メーカーの新型車および新型パワートレイン、新開発ボディー構造について報告する。内容は、以下の通り。

自動車メーカー 出展の概要
日産 FF車用Hybridシステム、超小型EV「Nissan New Mobility Concept」
スズキ 改良型R06A型エンジンとAuto Gear Shift(AGS)
マツダ 新型(4代目)Roadster
三菱自動車 Outlander PHEV
いすゞ EV走行を追加設定した改良型Elf Hybrid
ダイハツ 新型Moveに採用した、D monocoqueによる軽量高剛性ボディー

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日産:X-Trailハイブリッドのパワートレインを出展

日産のFF車用ハイブリッドシステム
日産のFF車用ハイブリッドシステム
(写真右側はモーターとCVT)

 日産は、2015年4月に発売したX-TRAILハイブリッド車に搭載する、FF車用ハイブリッドパワートレインのカットモデルを出展した。

 日産が、FugaやSkylineという後輪駆動車に搭載してきた1モーター2クラッチの「Intelligent Dual Clutch Control」システムを、FF車に適用した。ハイブリッド用に最適化したMR20DD直噴ガソリンエンジン、エクストロニックCVT、リチウムイオン電池の採用で、レスポンスのよいリニアな加速を実現するとともに、クラスを超えた燃費のよさ(2WD車で20.6km/L(JC08モード)、4WD車で20.0km/L(同))を実現した。また2.0Lエンジンとモーターの組み合わせにより、低速から全域にわたり2.5Lガソリンエンジンをしのぐトルクを発生する。


FF車用ハイブリッドシステム(展示カットモデル)主要諸元

エンジン型式 MR20DD
総排気量 1997cc
圧縮比 11.2
最高出力 108 kW (147 PS)/6000rpm
最大トルク 207 N・m (21.1 kgf・m)/4400rpm
モーター型式 RM31
最高出力 30kW
最大トルク 160N・m
(注) 1.  4気筒直噴MR20DDエンジンを、ハイブリッド用に最適化し搭載する。
2.  日産のFF車ハイブリッドは、米国で販売する2014年モデルNissan PathfinderとInfiniti QX60に設定したが、2015年6月中旬時点で2015年モデルには設定していない。

 

日産:超小型電気自動車Nissan New Mobility Conceptを出展

NISSAN New Mobility Concept
日産の、超小型モビリティNISSAN New Mobility Concept、
前後2人乗り

 日産は、超小型電気自動車Nissan New Mobility Conceptを出展した。日産は、各地で実証実験を行っているが、特に2013年10月から2015年9月までの予定で、横浜市内でNissan New Mobility Concept 50台を用いて大規模カーシェアリング実証実験「チョイモビ ヨコハマ」を行っている。チョイっと借りて、好きな場所(横浜市内に数十箇所あるステーション)に返却できるシステムで、会員数は1万人を超えているという。


Nissan New Mobility Conceptと「チョイモビ ヨコハマ」の利用

Nissan New
Mobility Concept
定員 2名
全長×全幅×全高 2340mm×1230mm×1450mm
車両重量 500kg
最高速度 約80km/h
航続可能距離 約100km
チョイモビ ヨコハマ
の利用
・会員登録し、講習を受けた後に利用できる。
・高速道路や自動車専用道路は、通行できない。

 

 



スズキ:改良型R06A型エンジンとAuto Gear Shiftを出展

 スズキは、2014年12月に発売した新型Altoに搭載する、改良型R06A型エンジンとAGS(Auto Gear Shift)を出展した。新型Altoは、60kgの軽量化を達成した新開発プラットフォームと改良型エンジンにより、ガソリン車トップの低燃費37.0km/L(2WD、CVT車)を達成した。

 また、2015年3月に発売したAlto Turbo RSを出展した。変速機はAGSのみ設定している。AGSは、クラッチ操作とギヤシフトを自動化したMT(一般的にAMT(Automated Manual Transmission)と呼ばれる)。自動操作のプログラムは、MT操作のうまい人の運転を分析し、再現するように開発した。

 

改良型R06A型エンジンと写真右側はAGS Alto TURBO RS
改良型R06A型エンジンと写真右側はAGS(Auto Gear Shift) 2015年3月に発売したAlto TURBO RS(変速機はAGSを搭載)

 

Altoシリーズのエンジン諸元比較

改良型R06A型(注1) R06A型(ターボ)(注2)
2014年12月発売の
新型Altoに搭載
2015年3月に発売した
Alto TURBO RSに搭載
水冷4サイクル3気筒
弁機構 DHOC吸排気VVT DHOC吸気VVT
ターボチャージャー 無し インタークーラーターボ
内径×工程(mm) 64.0×68.2
総排気量(cc) 658
圧縮比 11.5 9.1
EGRシステム 外部EGR 無し
最高出力(kW/rpm) 38/6,500 47/6,000
最大トルク(N・m/rpm) 63/4,000 98/3,000
JC08モード燃費 37.0km/L(2WD、CVT) 25.6km/L(2WD/5AGS)
(注)1-1. 改良型R06A型エンジンは、筒内に強いタンブル流を形成し燃焼の急速化を実現、外部EGRを採用して燃焼温度を下げてノッキングを抑制し、吸気工程でのポンピングロスを低減した。
1-2. 2014年12月に発売した新型Alto(2WD、CVT車)は、60kgの軽量化を達成した新開発プラットフォームの採用と合わせて、ガソリン車トップレベル(HVを除く)となるJC08モード37.0km/Lの低燃費を実現した。
2-1. 改良型のR06A型吸気VVTターボエンジンを、Alto TURBO RSに搭載した。高タンブル吸気ポートや高効率ターボチャージャーなどの採用により、低中速域のトルクと最大トルクを向上させ、ターボラグを約20%抑え(従来R06A型吸気VVTターボエンジンとの比較)、ターボ過給レスポンスを向上した。
2-2. 変速機には、変速タイミングを早めて、気持ちのよいシフトフィーリングにチューニングを施したAGS(Auto Gear Shift)と組み合わせた。

 

AGS(Auto Gear Shift):「気持ち良いシフトフィール」を実現

目標  AGSは、人がマニュアルトランスミッションで行っていたクラッチとシフト操作を自動で行う。AGSは、マニュアルトランスミッションの運転が「うまい人」の操作を徹底的に解析し再現することで、「気持ち良いシフトフィール」の実現を目指した。
うまい人の操作 <クラッチを切る>「うまい人」は、急激な失速感が出ないようにアクセルを調整しながら、エンジン回転が吹けないタイミングでクラッチを切っている。「ひきこみ感(減速感)」を軽減する。
<シフトする>「うまい人」は、正確で素早い操作を行っている。失速(空走)時間を短縮する。
<クラッチをつなぐ>「うまい人」は、ショックが出ないように、素早く半クラッチ状態にして、クラッチのつながりを感じながらアクセルを踏み、気持ちよい加速を行う。
車両ごとの味付け  現在国内でAGSは、軽乗用2車種(Alto、Alto TURBO RS)、軽商用3車種(Alto van、Carry、Every)に搭載している。車両ごとに走行・使用状況を調査し、味付けをした。例えば、Alto TURBO RSではスポーティーなドライバビリティを実現するため、クラッチ操作を早め、ダイレクト感を強調した。
クリープ走行  半クラッチを自動で細かく制御することにより、クリープ走行も可能とのこと。

 

 



マツダ:新型Roadsterを出展

 マツダは、本展示会の1日目である5月20日に発表、21日に発売した新型Roadsterを出展した。10年ぶりにフルモデルチェンジした4代目Roadsterは、「SKYACTIV技術」とデザインテーマ「魂動(こどう)-Soul of Motion」を採用した新世代商品。デザインについては、「25年間たっても古くならないタイムレスなデザイン」を目指した。

 新開発の直噴1.5Lガソリンエンジン「SKYACTIV G1.5」をフロントミッドシップに搭載し(前モデルは2.0Lエンジンを搭載)、前後重量配分を50:50とした。変速機には、新開発のFR用6速MT「SKYACTIV-MT」と6速ATを設定。6速MTは、軽い操作感、シフト操作中の吸い込み感(シフトレバーが所定位置に吸い込まれていくような感覚)、節度感(適度な手応え)を実現。また6速ATでは、ブリッピング機能(シフトダウンすると瞬時にエンジン回転数を上げ、指定したギヤ段にあったエンジン回転数とすることで、素早い変速とともに減速時のシフトダウンの連続性と応答性を実現)を採用するなど、スポーティーで力強い走りを実現した。

 専用の新プラットフォームを開発し、ボディーには、アルミや超高張力鋼板の使用比率を71%に高め(前モデルは58%)、さらに剛性を確保しながら軽量な構造を追及するなどして、前モデル比100kg以上となる大幅な軽量化を実現した(車両重量990kg~1,060kg)。

 

Roadster Roadsterのシャシー
マツダの新型(4代目)Roadster 4代目Roadsterのシャシー

 

マツダRoadster主要諸元(ベースモデル)

新モデル 前モデル
全長(mm) 3,915 4,020
全幅(mm) 1,735 1,720
全高(mm) 1,235 1,245
ホイールベース 2,310 2,330
車両重量(kg) 990 1,120
総排気量(cc) 1,496 1,998
最高出力(kW/rpm) 96/7,000 125/7,000
最大トルク(N・m/rpm) 150/4,800 189/5,000
変速機 SKYACTIV-MT(6速) MT(6速)
JC08モード燃費(km/L) 17.2 11.8

 (注)変速機は、新・前モデルとも、6速ATも設定。

 



三菱自動車:Outlander PHEVを出展

 三菱自動車は、Outlander PHEV(Plug-in Hybrid EV)のカットモデルや駆動用電池を展示した。Outlander PHEVは、総電力量12kWhのリチウムイオン電池を搭載し、EV走行距離60.8km(JC08モード走行、2015年6月改良後の数値、それまでは60.2kmだった)を誇る。フロントモーター、リヤモーターとジェネレーターを搭載する。

 

Outlander Plug-in Hybrid EVのカットモデル 同モデルが搭載するリチウムイオン電池
Outlander Plug-in Hybrid EVのカットモデル 同モデルが搭載するリチウムイオン電池

 

Outlander PHEVの主要諸元

全長/全幅/全高(mm) 4695/1800/1680
車両重量(kg) 1820~1880
乗車定員(名) 5
エンジン(注1) 4B11 MIVEC
モーター 最高出力 前/後(kW) 60/60
最大トルク 前/後(N・m) 137/195
駆動用電池 タイプ リチウムイオン電池
総電圧(V) 300
総電力量(kWh) 12
駆動方式 4WD
充電時間
の目安
普通充電 約4時間(満充電)
急速充電 約30分(80%充電)

(注)1. MIVECは、Mitsubishi Innovative Valve timing Electronic Control systemの略で、三菱自動車の可変バルブタイミング機構の総称。4B11エンジンの排気量は2.0L。
      2. 全長と車両重量は、2015年6月に発売した改良型車で変更された数値。

 

 



いすゞ:EV走行を可能にしたElf Hybrid車の改良型を出展

 いすゞは、2015年4月に発売したElf Hybridの改良型を出展した。EVモードを追加し、また車両の慣性で走行する「スマートグライド+e」のモーターによるサポート領域を拡大した。

 

いすゞElf いすゞElfハイブリッド車のパワートレイン
改良型ハイブリッドを搭載するいすゞElf いすゞElfハイブリッド車のパワートレイン(Elfハイブリッドのモーターは駆動軸上に配置しないで、PTO(Powertake-off)
を介してパワーを伝える)

 

Elf Hybrid改良型を出展

EV走行モード
を追加
 モーターのみで走行するEVモードを追加した。夜間や住宅地など、静粛性が求められる状況での走行に最適。航続距離は、フル充電時で2~3km。アクセルの強い踏み込みにより、または車速が25~30km/h以上になると、EVモードは自動的に解除される。
 EVモードでは、エンジンはクラッチで駆動系から切り離すが、エンジン補機などの動力維持のためアイドリング状態を保つ。
スマートグライド+eの改良  「スマートグライド+e」は、アクセルを軽く踏みながら一定速度で走行中に、自動的にクラッチを切り、車両の慣性で走行して燃費を向上させるシステム。駆動力が落ちてきた場合は、モーターがサポートする。アクセルの踏み込み量に応じて、「慣性による走行とエネルギー回生/モーターがサポートする走行」を最適制御し、燃費を向上させる。エンジンは、EV走行と同様にアイドリングさせておく。
 今回の改良で、モーター出力アップにより、スマートグライド+eのモーターがサポートする領域を拡大し、またスマートグライド走行中のエンジンアイドリング回転数を低下させ、燃費向上を図った。

 

 



ダイハツ:軽量高剛性ボディー「D monocoque」を新型Moveに採用

 ダイハツは、軽量高剛性ボディー「D monocoque」を新開発し、2014年12月に発売した新型Moveに採用した。従来使用してきた補強材を廃止し、サイドアウターパネル(ドアの周辺とその前後の部分)の全面厚板・ハイテン化で強度を保つ新しいボディー骨格構造を採用。外板の樹脂化と合わせて前モデル比約20kg軽量化した。

 ダイハツは 軽量化しただけにとどめず、軽量化した分の半分以上を走行性能に関係の深い部位の補強・高剛性化に充当し、これにより操縦安定性や乗り心地を大幅に向上させた。さらに、新開発の軽量高剛性ボディー構造は、軽量化による低燃費や低コストにも貢献する技術であり、今後の他車種への展開もにらみ開発を進め、ダイハツ車の総合力向上につなげる方針としている。


D monocoque インパネ補強材
ダイハツが新型Moveに採用したボディー構造
"D monocoque"のカットボディー
ダイハツが"D monocoque"に追加したインパネ補強材(写真の赤い部分、ステアリング支持剛性向上(振動低減)に寄与する)
走行性能を大幅に向上
アンダーボディーでは、写真の赤い部分を補強・高剛性化したことで、操舵性やリヤタイヤの接地感を改善し、
走行性能を大幅に向上させた

 

ダイハツが新型Moveに採用した軽量高剛性ボディー

「D monocoque」と外板樹脂化で軽量化
D monocoque  従来は、内板、補強材、外板の3層構造で、内板 + 補強材でボディー強度を保ち、外板はデザイン形成が主目的なので強度は低かった。また補強材があるため、構造断点(補強材の端で、構造が分断されている箇所)があった。
 新しい軽量高剛性ボディー骨格(D monocoque)では、サイドアウターパメル(ドアの周辺とその前後の部分)を全面厚板・ハイテン化したうえで、一体成型してパネル化。補強材を廃止した2層の構造とし、ボディー骨格全体で力を受け止める構造とした。補強材を廃止したことで、構造断点もなくなった。
外板の樹脂化  さらにこれまで進めてきた外板樹脂化の効果と合わせて、ボディー重量を従来比約20kg軽量化した。例えばMoveでは、フューエルリッド、レールカバー、フェンダースポイラー一体バック、を樹脂化している。
軽量化分の大半を走行性能や乗り心地などの性能向上に充当
 ダイハツは軽量化しただけにとどめず、軽量化した分の半分以上を補強に充当し高剛性化したことで、走行性能を大幅に向上した。
 具体例としては、ボディー剛性の大幅アップが運転安定性に寄与し、補強材による構造断点が無くなったためノイズ・振動感が低減、そしてアンダーボディーの高剛性化により操舵性やリヤタイヤ接地感が向上した。また軽量化や材料使用量低減、部品点数減によるコストメリットで、車両価格上昇を抑制した。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>