EV・HEV 駆動システム技術展 取材報告

明電舎が改良型モーター/ギア一体型ユニット、日本ケミコンは車載用キャパシターを展示

2015/02/16

要 約

オートモーティブ ワールド 2014
オートモーティブ ワールド 2015の会場の様子

オートモーティブ ワールド 2015が、東京ビッグサイトにて2015年1月に開催された。第6回 EV・HEV 駆動システム技術展がその一環として開催され、その展示概要を報告する。

 明電舎は改良したモーター/ギア一体型ユニット、モーターとインバーターを一体化したモジュールを展示。新電元は、ホンダ向けに供給しているDC-DCコンバーター、車載充電器などを展示。ニチコンは三菱i-MiEVに供給している小型化した充電器一体型DC-DCコンバーターを展示した。

 シンフォニアテクノロジーと住友商事マシネックスは、それぞれ、超小型EV向けのモーターを展示。

 日本ケミコンは、昨年に引き続き、マツダ/ホンダ向けに供給している、電気二重層キャパシター/モジュールを展示し、次世代キャパシターも出展した。

 今回は、昨年まで出展していた、日本電産、安川電機の出展がなかった。

 なお、併催されていたクルマの軽量化技術展などの取材レポートも、今後掲載予定。


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HV/EV向け技術:明電舎、新電元、ニチコンの展示

明電舎:開発中のEV用ドライブユニットを展示

モーター/ギア一体型ユニット

モーターと(減速)ギアを一体化した、駆動ユニットを開発中。一体化することで搭載時の自由度は低くなるが、部品点数を減らすことでコスト削減につなげる。ユニバンスとの共同開発。
ギアの潤滑油を使ってモーターを冷やすと共に、電動オイルポンプも併用することで、低速域での冷却能力を高めた。50kW~150kWまでの3種類を用意。より大型のものに要望が多いとのこと。
最高出力 50kW 85kW 150kW
モーター最大トルク 180Nm 200Nm 300Nm
モーター最高回転数 9,000rpm 13,000rpm 13,000rpm
ギア比 約6 約9 約9

モーターギア一体型ユニット

モーター/インバーターの一体化

高効率で耐熱性に優れたSiCモジュールを利用し、モーターとインバーターを一体化した。そのことで、冷却系を一体にして小型化を実現。また、ケーブルもなくすことができ、放射ノイズの低減も可能。2020年の製品化を目指す。SiCモジュールの価格が高いことが製品化への課題の一つ。
出力 最大 60kW 明電舎モーター・インバータの一体化モジュール
モータートルク 最大 160Nm
モーター最高回転数 12,000rpm
外径寸法 W 330×L 325×H 305 mm

 

新電元:ホンダ向けハイブリッド用DC-DCコンバーター、車載充電器などを展示

ハイブリッド用DC-DCコンバーター ホンダ Accord HV/PHVに採用されている、DC-DCコンバーター。駆動用のバッテリーを入力電圧源として、通常の電装品(ヘッドライト、オーディオ)などへの電力供給を行う用に、電圧変換を行う。入力電圧は180-310V、出力電圧は10.5-14.5V。
EV用車載充電器 ホンダ Fit EV(北米仕様)に採用されている。出力電力は6.6kWで、電力密度は815W/Lとなっており、通常の3kW充電器と同サイズで2倍以上の出力電力が供給可能とのこと。冷却方法は水冷式だが、強制空冷方式にも対応可能。
後輪操舵用ECU 2014年に発売された新型 Acura TLXの、4輪の操舵が可能なPrecision All-Wheel Steerシステム向けのECU。
ハイブリッド用DC-DCコンバータ EV用車載充電器
ホンダ Accordに採用されている、ハイブリッド用DC-DCコンバーター(寸法W×H×D(mm):167×74×200、重量2.0kg) ホンダ Fit に採用されている、EV用車載充電器(重量9.9kg)
後輪操舵用ECU
後輪操舵用ECU(寸法W×H×D(mm):216×34×127、重量810g)

 

ニチコン:EV用充電器一体型DC-DCコンバーター

従来型に比べて、スペックを保ったまま体積で20%小型化したEV用充電器一体型DC-DCコンバーターを展示。部品/レイアウトの見直しや、廃熱の方法を見直すことで実現。充電器の出力電力は最大2.8kW。冷却方法は水冷式を採用。三菱自の現行のi-MiEV、Minicab MiEVに搭載されている。
ニチコン製の充電器一体型DC-DCコンバーターを採用するEVスポーツカー Tommykaira ZZ ニチコン製の充電器一体型DC-DCコンバーターを採用するEVスポーツカー Tommykaira ZZ
ベンチャー企業グリーンロードモーターズのEVスポーツカー Tommykaira ZZはニチコン製の充電器一体型DC-DCコンバーターを採用している(ニチコンブースにて展示)。
ニチコンのEV用充電器一体型DC-DCコンバーター
ニチコンのEV用充電器一体型DC-DCコンバーター

 



超小型EV向け技術:シンフォニア、住友商事マシネックスなど

シンフォニアテクノロジー:超小型EV用インホイールモーター/インバーターを展示

インホイールモーター 防水仕様(IPX7)のインホイールモーター。減速機を介さずモーターが直接駆動する、ダイレクトドライブ方式を採用し、高効率な駆動を達成。最高出力は5kW、最大トルクは280Nm。FOMM社との共同開発。FOMM社の超小型EVコンセプト「FOMMコンセプトOne」(後述)に搭載されている。
インバーター 防水仕様(IPX7)のインバーター。1台で2軸の制御が可能で、省スペース化に貢献できるとしている。超小型EV向けであるため、冷却方法はコストの安い空冷方式を採用。
インホイールモーター インバーター
インホイールモーター 直径340mm×150mm(取付け部、シャフトを除く) インバーター 外寸 260×380×120(mm)(コネクターを除く)
フレームに取付けられた、インホイールモーターとインバーター
フレームに取付けられた、インホイールモーターとインバーター

 

ティフ ラインランド ジャパン:FOMM社のコンセプトOneを展示

試験/認証サービスを提供しているティフ ラインランド ジャパン社は、同社で評価中のFOMM社の超小型EV コンセプトモデル「コンセプトOne」を展示。同車は全長2495mmの4人乗り超小型EV。水に浮くことができるため、緊急時には水面でも移動可能な機能を備える。FOMM社は、タイでの生産を想定し、現地企業と資本提携に向けた覚書きを2014年12月に取り交わした。

FOMMコンセプトOne

 

住友商事マシネックス:機電一体型SRモーターを展示

SiC搭載20kW機電一体空冷SRモーター 永久磁石を用いないSRモーターと、SiC搭載のインバーターを一体化。完成車メーカー、ティア1サプライヤーに提案をしていきたいとのこと。要望があれば量産も行う。最大トルクは50Nm/3,000rpm。
モーターと一体化されたインバーターは空冷方式を採用。なお、同社は水冷方式のインバーターの提案も下記のように行っている。
小型高出力車載水冷インバーター 同社が提案する、水冷式のインバーター。連続出力は75kVA、最大出力は100kVA。SRモーター用のインバーターなどにカスタマイズが可能。
SiC搭載20kW機電一体空冷SRモータ 試作車
SiC搭載20kW機電一体空冷SRモーター(写真右側の黒い部分が、インバーター) SiC搭載20kW機電一体空冷SRモーターを、4つの車輪の取付けた、試作車。
小型高出力車載水冷インバーター
小型高出力車載水冷インバーター

 

ニチコン:超小型EV用充電器一体型DC-DCコンバーターを展示

政府が検討している「超小型モビリティー」向けの充電器一体型DC-DCコンバーターを開発。空冷システムを採用し、リチウムイオン電池、鉛電池のどちらでも対応可能。充電器の出力電力は800W、容積は2.3L、重量は3.3kg。需要があれば生産していくとのこと。大きさは、W235×D60×160(mm)。

超小型EV用充電器一体型DC-DCコンバーター

 



日本ケミコンのキャパシターの展示

車載用電気二重層キャパシター DLCAP マツダとホンダ向けに供給している電気二重層キャパシターを展示。マツダには、Demio(ディーゼルモデル)、Axela、Atenza、CX-5(中国製)に搭載される減速エネルギー回生システム i-ELOOP向けに供給。ホンダには、VEZEL(ガソリンエンジンモデル)、Fit(1.3Lガソリンエンジンモデル)に搭載されるアイドリングストップ向けに供給。電圧を現在の2.5Vから3.0Vへ高めて欲しいとの要望が多く、価格面でもまだ課題があるとのこと。
開発中の次世代キャパシター ナノハイブリッドキャパシター チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)とカーボンナノファイバーとの複合体を、負極に用いたハイブリッドキャパシター。従来の活性炭キャパシタの約3倍のエネルギー密度(30Wh/L級)と同程度のパワー密度(6kW/L級)を実現。高効率であるため、(電気二重層キャパシターと比べて)小型化が可能とのこと。なお、2017年3月完成に向けて、生産設備を新設する計画を2013年12月に発表している。
カーボンナノチューブキャパシター 単層カーボンナノチューブを正極・負極に用いた電気二重層キャパシター。低抵抗で、キャパシターの寿命性能向上に寄与する、バインダー・接着剤を使わない電極を使用。通常のキャパシターに比べて約2倍のパワー密度(W/L)を実現。性能は、定格電圧3.0V、静電容量800mF。カーボンナノチューブの価格が高く、製品化にはまだまだ時間がかかるとのこと。
車載用電気二重層キャパシター DLCAP ナノハイブリッドキャパシタ
車載用電気二重層キャパシター DLCAP ナノハイブリッドキャパシタ
カーボンナノチューブキャパシタ
カーボンナノチューブキャパシタ(20×20×1.5(mm))

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>