西欧市場:2014年販売は7年ぶりに増加、2015年以降は緩やかに回復

しかし南欧の経済不振、ロシア問題など不安も再燃

2014/12/22

要 約

LMC 西欧ライトビークル販売予測

 西欧の自動車市場は2013年にようやく底を打って、2014年は7年ぶりに販売が増加することが確実になった。LMC Automotiveは、2014年のライトビークル市場は4.9%増の約1,350万台、2015年は4.5%増の1,410万台と予測している。

 しかしながら、南欧経済の不振とロシアに対する経済制裁で、これまでの楽観的な予測が一転してきている。自動車メーカーの経営トップからも、2015年の西欧自動車市場の回復の足取りは重くなりそうだという発言が出てきている。

 LMC Automotiveは、西欧のライトビークル市場は中・長期的に見て、緩やかに成長し、2017年には約1,520万台まで市場が拡大すると予測している。

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西欧自動車市場は緩やかに回復し始めたが、回復基調は米国に比べ弱い

西欧市場と米国市場の比較

 2008年の大不況以降、西欧自動車市場(中・大型トラックを除く)は6年連続で市場が減少し続け、2013年には約1,250万台と2007年の約1,640万台の販売から約390万台も減少した。2014年の西欧自動車市場は実績見込みで約5%増の1,300万台強だが、大不況前の水準の戻るにはかなり時間がかかりそうだ。

 一方で、大不況の震源だった米国は2009年までの落ち込みは激しかったもののその後は力強いV字回復を達成している。2014年の米国自動車市場は実績見込みで約5.8%増の1,650万台で2007年の大不況前の約1,610万台を上回ることは確実となった。


 



ドイツ市場:経済は堅調ながら自動車市場の回復は緩やか

2014年実績見込みと2015年販売見通し

ドイツ販売(2007-2014)

 西欧自動車市場は、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペインの5大市場が需要の大半を占める。その中でもドイツの自動車市場は最大で、西欧市場の中心的な存在になっている。2014年10月に発表されたIMF のWorld Economic Outlook (WEO)によれば、ドイツ経済は2014年経済成長が1.4%、2015年が1.5%と予想され、低成長ながら堅調に推移すると予測されている。

 2014年の自動車販売は約3%増の約330万台となる見込み。2015年の販売予測として、ドイツ連邦陸運局(KBA)は1%増という見通しを12月に発表した。

 

長期見通しと人口減

 世界人口基金の「State of World Population 2014」によると、ドイツの人口は2014年の8,270万人から2017年には8,230万人へとわずかながら減少すると予想されている。合計特殊出生率は日本と同じ1.4で、2010年から2015年の間の人口は年率0.1%で減少すると推定される。人口減は長期的には保有台数減と販売台数減につながり、ドイツ市場の成長ポテンシャルには限界があることを示している。


マーケットシェアと顧客構造

ブランド別マーケットシェア(2014/1-11)
顧客別販売(2014/11)

 2014年1-11月のブランド別のマーケットシェアは、首位がVWで21.6%、2位はメルセデスベンツで9.0%、3位がAudiで8.6%、4位がBMWで7.8%、5位がOpelで7.2%となっている。量販ブランドに比べて3割以上価格が高く設定されている高級車ブランドのメルセデスベンツ、Audi、BMWが、2位から4位までを席巻しているのは極めて特殊である。これは他の国々に比べて個人向けの販売が2014年11月は32.7%と3割強しかなく、7割弱がビジネス向け販売という顧客構造が要因である。ビジネス向けの中ではレンタカー会社がリースするカンパニーカーが大半を占める。

 

 注)カンパニーカーは、欧州で広く認められている制度で、会社から管理職の社員に給与の一部として貸与され、職位によって選べる車が数車種用意されている。このカンパニーカーは、自国ブランド車が最優先、次は欧州ブランド車で、欧州以外のブランド車は参入が難しい。カンパニーカー制度がない米国市場の場合、政府公用車・警察車両・社用車・レンタカー・タクシーを含めたビジネス向けは全需の15%から20%程度である。ビジネス向けの定義が全く同じではないと思われるが、米国の事例を参考にすれば、ドイツでは販売全体に対してカンパニーカー比率は約5割近いと推測できる。なお、カンパニーカー制度はドイツやイギリスなどで多くの会社が採用しているが、南欧のイタリアやスペインではその比率が低くなっている。


 



イギリス市場:2014年は絶好調、大不況前に完全回復

2014年実績見込みと2015年見通し

イギリス販売(2007-2014)

 2014年10月発表のWorld Economic Outlook(WEO)によれば、イギリス経済は2014年経済成長が3.2%、2015年が2.7%と予想され、力強く回復している。2014年の自動車販売は約10%増の約280万台となる見込み。2015年の販売予測としては、英自動車工業会(SMMT)は1.5%増という見通しを11月に発表した。経済が好調であるにもかかわらず2015年の伸び率が低いのは、自動車販売が大不況前のレベルに完全に回復したため。これまでのような大幅な市場拡大の余地はなくなり、今後は緩やかな成長になると予想される。

 

長期見通し:安定的に推移

 世界人口基金の発表によると、イギリスの人口は2014年の6,350万人で、2010年から 2015年の間の人口は年率0.6%増加すると推定されている。合計特殊出生率は1.9で人口減少の懸念はほとんどなく、中・長期的に自動車販売は安定して推移すると予想される。


 

マーケットシェア:フォードが首位

 2014年1-11月のブランド別のマーケットシェアは、首位がFord13.3%、2位はVauxhallで10.6%、3位がVWで8.7%、4位がAudiで6.5%、5位がBMWで5.9%となっている。FordとVauxhallは米国資本ではあるが、長い間イギリスに根を張っているために自国のブランドという認識があり、1位と2位を占めている。また、イギリス市場もドイツ市場と同じように、カンパニーカーを提供する企業が多く、Audiが4位、BMWが5位、メルセデスが7位に入るなど高級車のシェアが高い。この背景にはドイツ同様に個人向け販売よりもビジネス・フリート向け販売の方が多いという市場構造がある。それでも2013年と2014年の自動車市場の拡大は個人向け販売の増加が大きく貢献した。

ブランド別マーケットシェア(2014/1-11) 顧客別販売(2014/1-11)

 


 



フランス市場:経済は停滞し、自動車市場の回復が遅れる

 

フランス市場(2007-2014) ブランド別マーケットシェア(2014/1-11)

 

2014年実績見込みと2015年見通し

 2014年10月のWEOによれば、フランス経済は2014年経済成長が0.4%、2015年が1.0%と予想され、経済は停滞し脆弱な状況になっている。失業率も2013年の10.3%からほとんど改善せず、2014年と2015年も10%となる見通しである。2014年の自動車販売は約1%増の約280万台となる見込み。2015年の販売予測としては、仏自動車工業会(CCFA)は市場が2014年よりも改善する理由が見つからないと12月に発表している。

 

マーケットシェア:PSAが首位だが、Renaultが追いあげ

 2014年1-11月のメーカー別のマーケットシェアは、PSAが首位で30.3%、2位はRenaultグループで25.4%、3位がVWで13.1%、4位がFordで4.2%、5位がトヨタで3.9%となっている。

 

 



イタリア市場:経済はマイナス成長で、極めて低調な販売が続く

 

イタリア市場(2007-2014) ブランド別マーケットシェア(2014/1-11)

 

2014年実績見込み

 2014年10月のWEOでは、イタリア経済は2014年の経済成長が0.5%下方修正されてマイナス0.2%の見込みとなった。2015年の成長率も低水準の0.8%増と予想され、経済は停滞している。失業率も2013年の12.2%から2014年には12.6%と悪化、2015年も12%と高水準で推移する見通しである。2014年の自動車販売は約4%増の約145万台となる見込み。これは2007年の販売実績274万台と比べると120万台以上も少ない台数である。イタリアの自動車市場は2012年から150万台を下回る極めて低調な販売が続いている。この間に買い替えが必要な潜在需要が膨らんできており、自動車業界が要求している政府の支援があれば大幅に販売が伸びる可能性がある。

 

マーケットシェア:FCAが首位

 2014年1-11月のメーカー別のマーケットシェアは、FCAが首位で27.7%、2位はVWで8.1%、3位がFordで6.8%、4位がRenaultで6.0%、5位がOpelで5.6%となっている。

 

 



スペイン市場:政府支援のスクラップ・インセンティブで回復基調

2014年実績見込み

スペイン市場(2007-2014) 2014年10月のWEOでは、スペイン経済は2014年の経済成長は1.3%の見込み。2015年も1.7%と予想され、経済は2013年のマイナス1.2%から緩やかな回復への道をたどり始めた。しかしながら、失業率は2014年が24.6%で、2015年も23.5%と極めて高い水準で推移する見通しである。2014年の自動車販売は政府のスクラップ・インセンティブに助けられて約18%増の約92万台となる見込み。スペイン市場はスクラップ・インセンティブが大きな効果を上げており、延長は6回目となっている。しかしながら、まだ2014年の販売見込みの約92万台は2007年の販売実績約180万台と比べると半分である。


 

マーケットシェア

 2014年1-11月のブランド別のマーケットシェアは、VWが首位で9.1%、2位はOpelで7.94%、3位がSEATで7.89%、4位がRenaultで7.6%、5位がPeugeotで7.3%となっている。スペイン市場の顧客別販売は、個人向けが55.6%で、ビジネス・フリート合計の44.4%を上回っている。

ブランド別マーケットシェア(2014/1-11) 顧客別販売(2014/1-11)

 



メーカー別マーケットシェア(欧州市場:EU+EFTA)ではVWが首位独走

欧州市場(30カ国)でのメーカー別マーケットシェア


 欧州自動車工業会(ACEA)が発表した2014年1-11月メーカー別マーケットシェアは、首位がVWグループで25.5%、2位がPSAグループで10.7%、3位がRenaultグループで9.4%、4位はFordで7.3%、5位はGMで7.1%となった。首位のVWグループは、2012年通年で24.8%、2013年通年で25.1%、2014年1-11月で25.5%とマーケットシェアの拡大を続けている。

 

欧州市場(30カ国)でのメーカー別マーケットシェア増減


 2014年1-11月販売での欧州市場のマーケットシェア変化をみると、Renaultグループが0.6%ポイント増と大きなシェアアップを果たしている。ブランド別ではRenaultブランドが0.2%ポイント増、Daciaブランドが0.5%ポイント増となっている。BセグメントSUVのRenault Captur、低価格戦略車のDacia Loganがシェアアップに貢献している。

 2番目にシェアを増加させているのはVWグループで0.4%ポイント増。内訳はVWブランドが0.1%ポイント減、Audiブランドが0.01%ポイント減、SKODAブランドが0.4%ポイント増、SEATブランドが0.2%ポイント増となっている。グループ全体でのシェア拡大は順調だが、中核のVWブランドは精彩に欠ける結果になっている。

 欧州市場で最もシェアを失ったのはGMで、0.8%ポイント減。その要因はOpel/Vauxhallブランドとの重複を避けるために、Chevroletブランドの販売を2015年末に中止すべく販売網の整理を進めていること。Chevroletブランドの減少分は約10万台に達し、シェアでは0.9%ポイント減になっている。この減少分をOpel/Vauxhallブランドでカバーすることができなかった。

 



LMC Automotive 販売予測:西欧のライトビークル販売は2017年に1,520万台へ拡大

(LMC Automotive社、2014年第3四半期予測)

LMC 西欧ライトビークル販売予測 LMC Automotiveは、2014年の西欧のライトビークル販売は4.9%増の1,350万台になると予測している。2013年の西欧地域の需要は、2007年比で400万台も少ない1,290万台まで低下した。 6年間減少が続いた後、2014年にやっと販売が回復し始めた。市場の回復に貢献した主要市場は、イギリスとスペインである。イギリス市場は西欧地域の5大市場で伸び率のトップを走っており、堅調な経済に支えられている。一方で、スペイン市場は政府のスクラップ・インセンティブに助けられている。イタリアとフランス市場は不況からの回復も遅く、あまり改善しているようには見えない。

 LMC Automotiveは、2015年以降の西欧ライトビークル販売は経済の回復につれて改善し続けると予測する。もっとも、回復のペースは年率で4%から3%台後半へスローダウンすると思われる。西欧市場が2013年の非常に低い販売から回復を始めることを考慮に入れると、すでに完全に不況から回復している米国市場と比べ、これはペースの遅い弱い回復であるといえる。


West Europe light vehicle sales forecast

(units)
Country 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
Austria 390,338 369,418 351,704 346,391 359,490 361,005 360,372
Belgium 634,430 541,952 540,068 534,640 550,551 566,059 570,951
Denmark 194,871 195,490 206,561 212,524 195,051 192,486 195,367
Finland 141,417 123,396 114,427 114,582 123,107 133,634 143,902
France 2,633,803 2,282,765 2,157,823 2,179,658 2,245,662 2,319,683 2,413,835
Germany 3,403,445 3,298,332 3,162,494 3,271,556 3,341,265 3,390,645 3,413,053
Greece 103,974 62,000 62,069 75,465 89,262 100,530 126,153
Ireland 101,217 90,329 85,375 113,607 127,632 140,843 152,341
Italy 1,919,595 1,518,982 1,398,310 1,474,807 1,653,116 1,837,907 2,016,249
Luxembourg 53,109 52,530 53,134 48,118 51,729 52,726 53,569
Netherlands 615,057 559,225 468,017 414,605 477,761 527,770 580,686
Norway 176,815 173,252 174,824 176,381 191,641 200,550 202,828
Portugal 188,477 111,360 124,148 169,338 191,164 209,045 221,579
Spain 912,242 769,303 808,009 960,437 1,066,707 1,157,865 1,257,951
Sweden 351,736 319,252 306,679 346,190 346,422 349,431 352,351
Switzerland 347,054 359,606 340,135 324,206 332,104 333,148 336,359
UK 2,207,000 2,291,448 2,542,673 2,759,798 2,785,771 2,802,974 2,819,283
総計 14,374,580 13,118,640 12,896,450 13,522,303 14,128,435 14,676,301 15,216,829
資料: LMC Automotive "Global Automotive Sales Forecast" (Q3 2014)
(注) 1. データは、小型車(乗用車 + 車両総重量6t以下の小型商用車)の数値。
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