第一汽車集団 (上): 2025年までの自主ブランド事業10カ年計画

2020年までに販売200万台、中国新エネルギー車シェア目標を15%以上に

2014/08/15

要 約

中国自動車トップ6社全車種販売実績

第一汽車集団ブランド別販売実績
第一汽車集団は業界第3位、やや伸び悩み

 第一汽車集団 (中国第一汽車集団有限公司: China FAW Group Co., Ltd.) は中国で最初に自動車生産を開始した、中国自動車業界におけるパイオニア企業である。長い間販売台数首位 (工場出荷ベース) であったが、2006年には上海汽車集団に抜かれ、2010年には東風汽車公司に抜かれて、業界第3位になっている。

 特に、2010年以降は他のグループに比べて伸び率が低く停滞気味である。2013年の販売は約290万台で2014年目標は340万台以上 


グループの主力ブランドはVWとトヨタ

 グループのブランド別販売で一番多いのは Audi を含む VWで、2013年の販売は約151万台、第一汽車集団グループの販売増加の原動力になっている。次いでトヨタの約54万台。マツダが販売不振に陥っているに対して、トヨタブランドは日中関係悪化後の落ち込みから回復基調にある。多くのブランドを保有する自主ブランドは合計で約72万台 


自主ブランド車販売は、商用車を中心に回復の兆し

 グループの自主ブランド車 (乗用車と商用車合計) の販売は、2010年に104万台と史上最高を記録した後、2012年には71.2万台にまで低迷。その後徐々に回復の道をたどっている状況で、2013年は商用車販売が好調で、微増の71.8万台となった。自主ブランド乗用車は販売減少が続いているが、一汽轎車の販売モデルは2013年販売が65%増となった 


グループの自主ブランド事業10カ年計画/新エネルギー戦略発表

 第一汽車集団は、2025年までの10カ年計画を2014年5月に発表。自主ブランド車の年間販売を2020年までに200万台超 (工場出荷ベース、輸出を含む) と、EV/PHV等の新エネルギー車の中国シェア15%以上を目指す目標を設定した。

関連レポート

 ・上海汽車集団最新動向 (2014年4月掲載)
 ・中国の2014年自動車販売計画 (2014年2月掲載)

 

紅旗L5 インテリア
   「一汽轎車股份有限公司」の上級セダン「紅旗L5」とそのインテリア (北京モーターショー2014写真)
  標準販売価格は500万元 (約8,300万円) から、中国自主ブランド乗用車で史上最高価格(2014年4月から限定発売)。

第一汽車集団のグループ主な組織関係図

第一汽車集団のグループ主な組織関係図

第一汽車集団グループ主なデータ (2013年末時点)

・商号: 中国第一汽車集団有限公司 (China FAW Group Co., Ltd.、通称「第一汽車集団」)
  中国中央政府直轄企業で、本社所在地は中国東北部に位置する吉林省長春市。
  2013年度世界大手500社企業ランキング:141位

・グループ全体の従業員数:12万人超

・自動車販売 (乗用車/商用車のフルセグメントをカバー): 2013年約290万台、累計では2,400万台超

・財務データ:
  売上高 4,605億元 (1~12月)
  総資産 3,033億元 (うち、流動資産 1,640億元)

・比較的強い競争力を持ったサプライチェーンが整備されている。

・グループ子会社の60%、また、総資産の約70%が、外資を含む外部企業と(合弁など)共同経営中。

出所: 第一汽車集団2013年アニュアルレポート、一部メディア報道など

第一汽車集団のグループ販売台数推移

(単位:台)
2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2013年
1-6月
2014年
1-6月
▽第一汽車集団総合計 1,944,576 2,558,166 2,601,451 2,672,627 2,894,782 1,393,313 1,529,452
自主ブランド車合計 753,829 1,037,983 900,654 711,638 718,251 358,049 319,437
乗用車 449,626 643,661 621,388 483,925 448,780 224,746 184,039
商用車 304,203 394,322 279,266 227,713 269,471 133,303 135,398
合弁ブランド車合計 1,190,747 1,520,183 1,700,797 1,960,989 2,176,531 1,035,264 1,210,015
乗用車 1,185,484 1,514,449 1,692,578 1,956,156 2,170,990 1,032,664 1,208,423
商用車 (Coaster) 5,263 5,734 8,219 4,833 5,541 2,600 1,592
 ▽(内数)乗用車: メーカー別販売 (工場出荷ベース)
乗用車メーカー 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2013年
1-6月
2014年
1-6月




トヨタ合弁
(天津一汽トヨタ、四川一汽トヨタ)
417,299 505,931 529,146 522,180 541,044 244,556 251,296
 外数、Coaster 5,263 5,734 8,219 4,833 5,541 2,600 1,592
(参考) トヨタ系小計 422,562 511,665 537,365 527,013 546,585 247,156 252,888
VW合弁(一汽VW) 669,180 869,979 1,034,888 1,328,888 1,512,887 732,984 906,208
GM合弁(一汽GM) 1,157 1,270 174 94 8 8 7
 外数、軽型トラック/Pickup等 33,353 86,954 55,958 55,515 59,084 29,721 28,079
(参考) GM系小計 34,510 88,224 56,132 55,609 59,092 29,729 28,086
Mazda受託生産 (一汽轎車工場) 99,005 138,539 128,544 105,088 117,059 55,124 50,919
一汽轎車 (紅旗、奔騰/欧朗) 89,136 132,405 112,818 79,124 130,535 50,929 84,817
天津一汽夏利 212,222 250,360 253,035 185,018 130,511 71,526 37,301
一汽吉林 56,048 119,294 103,645 90,942 79,968 40,821 21,898
一汽海馬 91,063 140,332 151,716 128,747 107,758 61,462 40,016
 △合計 (乗用車) 1,635,110 2,158,110 2,313,966 2,440,081 2,619,770 1,257,410 1,392,462
 ▽(内数) 商用車:車型別販売 (工場出荷ベース)
商用車車型 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2013年
1-6月
2014年
1-6月




バス 6,474 7,250 9,499 5,910 7,052 3,173 1,962
うち、トヨタ 「Coaster」 5,263 5,734 8,219 4,833 5,541 2,600 1,592
トラック 107,782 114,679 73,516 63,778 74,119 38,832 29,274
セミトレーラー 74,685 143,887 97,883 63,558 80,807 37,241 41,805
バスシャシー 4,204 3,623 3,158 3,411 2,695 1,418 920
トラックシャシー 116,321 130,617 103,429 95,889 110,339 55,239 63,029
 △合計 (商用車) 309,466 400,056 287,485 232,546 275,012 135,903 136,990


第一汽車集団グループの2025年までの自主ブランド事業10カ年計画

 第一汽車集団は2014年5月、「自主ブランド事業10カ年計画 (2016~2020年)」 を発表。2025年までに、自主ブランド事業での中国首位と、世界大手企業 (グループ) 500社ランキング トップ10入りとの野心的な目標を明らかにした。日本や韓国の自動車メーカーが発展した経験から学び、グローバル事業にも積極的に参入する方針も表明している。


 また、グループの自主ブランド車の年間販売を、2020年までに200万台超にする目標も発表し、販売拡大の具体策も明らかにした。
 主に、新エネルギー車事業の強化・拡大と、一汽吉林を中心とした微型車を含む小型自動車事業の強化を行い、完成車の拡販を図る。天津一汽夏利では、SUV/MPVを含めたA級乗用車セグメント市場への参入ならびにモデルグレードアップを狙って、傘下有力完成車メーカーの販売不振を改善していく。

第一汽車集団「自主ブランド事業10カ年計画 (2016~2025年)」抜粋

項目 詳細
経営方針/
事業計画
▽グループ全体
・中国国内自動車業界をリードし、国営自動車大手メーカーとして、国の基幹産業である中国自動車産業を安定して成長させるという責務を果たす。
  2025年までに自主ブランド事業で中国首位メーカーを目指す。
・海外では、国際競争に積極的に参加。自主ブランド車事業のグローバルな影響力/競争力/地位を向上させる。
  2025年までにグループで世界大手企業ランキングのトップ10入りを目指す。
・自主ブランド分野で、限られた会社経営資源を、「FAW」乗用車ブランド (奔騰/欧朗/夏利/威志/駿派/森雅/佳宝等シリーズ等) と「紅旗」ブランドの乗用車、ならびに、「FAW」商用車ブランド (解放/佳宝/森雅シリーズ等) に注力。
  特に、日韓自動車メーカーの成長プロセスを研究し、製品の品質、コスト、技術との三つの面を改善する。
★微型バンなどの小型車事業増強へ
・グループ全体の販売拡大を狙って、一汽吉林を母体にし、微型を含む自主ブランドの小型乗用車/小型商用車の事業強化と拡販に注力。
自主ブランド
10カ年事業計画
推進ステップ
▽フェーズ 1 (2016年~2020年)
・自主ブランド車の2020年販売を 200万台超に設定。
 うち、「佳宝」「森雅」2シリーズ微型・小型車 (一汽吉林汽車) は合計 60万台以上
・自主ブランド新型車合計18車種を導入。
乗用車 10車種 (うち、紅旗ブランド 6車種)
商用車 8車種 (うち、FAWブランド「解放」シリーズの重型トラック 2車種)
▽フェーズ 2 (2021年~2025年)
・自主ブランド事業 (販売台数など) の中国首位、世界トップ10入りの達成に注力。

 

子会社別自主ブランド中長期事業方針概要

▽一汽轎車
 「FAW」ブランド(奔騰/欧朗シリーズ)、「紅旗」ブランド等の自主ブランド乗用車開発・生産はモジュール化を導入へ。
 うち、リムジンカーのイメージが強い「紅旗」ブランドには、特別な公務用モデルを投入。
▽天津一汽夏利
 製品/マーケティング/経営管理/企業文化のあらゆる面で、変換期に置かれており、2015年末までに、A0級SUV 「駿派D60」をはじめとした新型車を軸に、赤字経営から脱却する。
 主力市場のA0級セグメント車に加えてSUVを追加導入、A級セグメント市場にも参入してモデルのグレードアップを果たす。また、市販車へのアイドリングストップ機構 (ISS)の装備採用を加速化している。
▽一汽吉林
 微型を含む小型車メーカーと位置付けて、中長期的に年間60万台生産・販売体制構築に注力(海外生産・販売を含む)。微型車 (主に微型バン) 向けプラットフォームを乗用車向け水準に向上させ、高品質/快適性を追求する。
 主な海外ターゲット市場を南アフリカ/アセアン地域/ブラジルに設定(イランも検討中)。右ハンドル仕様/複数燃料仕様エンジン搭載仕様の森雅シリーズモデルは主要輸出車種とし海外市場での拡販を図る。
▽一汽GM
 GMと協力して、ライトビークルの中国首位、さらに世界首位メーカーを目指す。
 GMとの提携を活用。GMの生産・製品等の技術/モデルの導入を含めて、小型車の品質向上や、GMの海外販売網を利用してグローバル化を推し進めるのを狙う。

(注) 哈尓濱市 (黒龍江省)/曲靖市 (雲南省)/長春市 (吉林省)に完成車工場あり

▽一汽海馬
 家庭向け、快適タイプモデルを中心に、市販モデルのラインナップを構築していく。
 なお、海馬汽車鄭州工場のモデルは主に、若者向けなどを中心としている。
▽一汽解放
 中国における中型・重型トラック最大手、中型/重型トラック分野でのパイオニアとしての優位な地位の保持を目指す。グローバル市場での競争にも積極的に参加し、中型/重型トラックのグローバルブランドとして知名度を向上させる。(なお、同社は2004年にトヨタ専門家を招いてトヨタ生産方式を導入済み。)
戦略  ブランド力向上/中核部品の自社開発/中核技術開発を推進する。
 製品ラインナップ構造/生産体制構成/マネジメント・コントロールにおける方式調整・イノベーションを強化させる。
 商品企画/品質保証/安心・安定・安全な部品供給/コスト管理/マーケティングなどの経営機能・システム能力を高める。
▽(参考) 天津一汽トヨタ/四川一汽トヨタ
 トヨタのモジュール化完成車プラットフォーム「TNGA」を導入する予定 (但し、導入時期等について明らかにしていない)。
 うち、天津一汽トヨタ: A級セグメント乗用車市場に注力。

 

天津一汽夏利: 上級の小型乗用車分野に参入し拡販を狙う

▽低価格車メーカーイメージ払拭を狙って、初のA級乗用車「駿派D60」
 天津一汽夏利は2014年5月、既存の「夏利」「威志」シリーズよりも上級セグメントに位置付けた「駿派」シリーズの名称と、初の量産モデル「駿派D60」(製品コード「T012」)を発表した。威志シリーズ/威馳と同じトヨタ 「NBC (New Basic Car)」プラットフォーム、つまり、日本で所謂トヨタの「B」プラットフォームを採用。「駿派」シリーズの導入は、天津一汽夏利の低価格車メーカーとのイメージを払拭する戦略の一環。
 「駿派D60」はA0級セグメントの小型SUVで、「長城CS35」「哈弗H2」「Chevrolet TRAX (創酷)」「Peugeot 2008」「Hyundai ix25」を主な競合車種に設定。2014年1月に少量生産を開始しており、2014年後半から中・大都市を中心に発売する。
 排気量1.5L VVT自主開発エンジンを搭載するモデルの販売価格は約7万~12万元。5速MTまたはマニュアルモード付6速ATを組み合わせる。燃費は6.4L/100km (メーカー発表)。今後、トヨタモデル用1.8Lのエンジン仕様モデルを追加導入と報じられている。
 天津一汽夏利は、A0級SUVを含めて、すべてのA級セグメント乗用車を導入する。なお、天津一汽夏利は、近年、相次いで、製品開発新センター、パワートレイン新工場、完成車新工場などの開発生産の新しい施設を稼働させた。
▽ダイハツと、変速機提携で協議中
 天津一汽夏利は2014年7月、変速機生産分野での提携についてダイハツと協議中。具体的な内容については明らかにされていない。現在、一汽吉林は、Xenia ベースとした森雅シリーズモデル用に4速AT、およびエンジンをダイハツからの調達を継続している (Xenia技術などの完成車ライセンス契約は期限切れになっている)。
▽天津一汽夏利: パワートレイン工場の改良建設
 天津一汽夏利は2013年末、傘下のパワートレイン子会社 (天津一汽夏利股份有限公司内燃機製造分公司) で、「CA4GA型シリーズ」ガソリンエンジンの工場追加建設を完成した。同建設への投資総額は339.61百万元。
 また、「5T065型」変速機 (排気ガス基準Euro4適合エンジンと組み合わせ用) の工場追加建設について、完成に近い段階に入っている(完成度は99%)。同工場完工後は、同型変速機の年産能力を最大13万基に拡大する。同建設への投資総額は272.94百万元 (2013年末時点 225.85百万元は投入済み)。

 

一汽吉林: 小型の商用車/乗用車工場の位置付け

 2012年5月の発表では、一汽吉林の2015年販売目標は60万台(うち10%輸出、グループ輸出全体の3分の1に当たる) を親会社の第一汽車集団が求めていた。

▽微型車事業増強
 第一汽車集団は2010年2月、微型車事業を中国トップ自動車グループの生き残りをかけた事業と位置付けて、2013年~2015年をめどに中国の微型車市場のトップ3入りを目指す方針を明らかにした。微型車の18万台年産体制改良に加えて、年産能力 30万台を有する第2工場建設の検討を開始。
 佳宝/森雅といった二つのプラットフォームを基にし、現行の経営資源を最大限に生かしてラインナップの充実を推進。また、グループの開発センター (一汽技術中心) を中心として微型車向けのエンジン/変速機/アクスル/電装品などに関する中核技術を重点的に開発する。なかでも、TA1シリーズ微型車用エンジンを開発し、競合他社に競争できる優位性のある中核技術資源にすることを狙う。
▽2013年4月、新工場稼働を開始
 一汽吉林は2013年4月、吉林省の吉林市(汽車工業園区)にある、第2完成車工場を稼働した。敷地70万㎡の同工場建設への投資総額は18.6億元で、プレス/溶接/塗装/組立/樹脂成型の生産ラインを含む。同工場がフル稼働後の年産能力は最大20万台。
 新工場は2014年5月時点、「佳宝」(Jiabao) シリーズ微型バンと、「森雅」(ダイハツ「Xenia」ベース) シリーズ MPV を生産。「森雅」シリーズは現時点で、ダイハツから DVVT モデルエンジン/変速機等のパワートレインを輸入している。今後、森雅シリーズに SUV/CDV (Commercial Delivery Vehicle) のほか、佳宝シリーズも含めて、Xenia プラットフォームを採用した新型/派生モデルを合わせて80数種のモデルラインナップを構築する計画も明らかにしている。
 うち、2015年までに、同2シリーズで、「Xenia」プラットフォームを採用したMPV/SUV/CDVなど合計5車種と、第一汽車集団が自主開発したVCT-i 技術を取り入れたTシリーズ高性能エンジンを導入するとの計画がある。
 同新工場の組立生産工程には、トヨタ方式の物流管理システムを導入済み。今後の更なる工場増強を念頭に置いた、敷地面積 60万㎡がある新工場建設用の予定地もすでに確保されている。

 

 



2020年までの新しい新エネルギー戦略を発表

 第一汽車集団は、省エネ次世代自動車(HV)及び新エネルギー車(EV/PHV/FCV) 分野で、中国自主ブランドメーカーおよび世界自動車業界のパイオニア企業グループを目指す目標を掲げている。


 2014年4月に開催した北京モーターショーでは、新しい新エネルギー戦略「中国第一汽車集団新能源戦略 (2014~2020年)」 (FAW New Energy Automobile Stratagem Programming) を発表。グループの新エネルギー車の事業化・普及をより一層推進する方針や目標及び具体策などを明らかにしたうえ、2020年までに中国新エネルギー車市場シェア15%以上との数値目標も発表した。


 これに併せて、グループの新エネルギー車統括部門である、「一汽新エネルギー車 (中国第一汽車集団公司新能源汽車分公司)」(吉林省長春市) は2014年5月、新エネルギー仕様乗用車合計4車種 (PHV 1車種とEV 3車種) を正式に発売した。


 加えて、第一汽車集団は、自主開発した「H」プラットフォームをベースにし、PHV/HVを含むハイブリッド仕様「紅旗」ブランドの上級モデルの導入を加速させる方針も表明。2016年からEV仕様モデル発売に続いて、「紅旗」ブランドでのHV/PHV仕様モデルを多く導入する計画を発表した。


 2013年末までには、第一汽車集団グループは、「藍途戦略 (2011~2015年)」の開発プロジェクトで、中国政府プロジェクト「国家863課題」でもある、6つのHV/PHV/EVの車両・モデル及びその量産化のための生産システム開発プロジェクトを完了した。

 

▽「国家863課題」でもある、2013年に完了したグループのHV/PHV/EV 開発プロジェクト
開発プロジェクト項目 主な事業内容
◇ストロング・ハイブリッド仕様バス (仮称「解放-HEV Bus」) プロジェクト  HV/EV/PHVの車両モデル及びその量産化のための生産システムなどの開発。
◇マイルド・ハイブリッド仕様バス (仮称「解放-ISG HEV Bus」) プロジェクト
◇プラグイン・ハイブリッド乗用車 (仮称 「奔騰-PHEV」) プロジェクト
◇ストロング・ハイブリッド乗用車 (仮称「奔騰HV」) シリーズプロジェクト
◇エクステンダー式EV乗用車 (仮称 「FAW-REEV」) プロジェクト
◇小型新構造 EV セダン・ハッチバック (仮称「FAW-EV」) の設計と技術開発プロジェクト  設計・技術などの開発。

 

新エネルギー戦略「中国第一汽車集団新能源戦略 (2014~2020年)」抜粋

項目 詳 細
(2014年4月発表)
経営方針
(~2020年)
・中国で、技術/市場(販売)/顧客満足度において、自主ブランドの新エネルギー車分野でのパイオニア企業 (グループ) になるのを目指す。
・新エネルギー車の中核技術を自主開発し保有できるように注力するに伴い、外資を含む他社との様々な方式での提携を通じて、更なる進歩/発展を目指す。
・システム/組立のモジュール化を通じて、ガソリン仕様等の従来型自動車との構成部品 (モジュール) の共有を最大限にさせて、新エネルギー仕様の完成車モデル開発を全面的に支援する。
新エネルギー車
販売目標
・2020年までに、新エネルギー車の中国市場シェア 15%以上 (台数での換算値約75万台)
  (注) 中国政府が発表した、2020年中国市場の新エネルギー車500万台との予測による換算値。
推進ステップ フェーズ 1 (2014~2016年)
・走行用のモーター/二次電池システムの量産体制の基礎を整備させ、量産モデル開発を含めて、新エネルギー仕様のメインモデルの量産体制を整える。
フェーズ 2 (2016~2018年)
・新エネルギー製品の製品化/量産化を通じて、中国政府が実施する第4段階の燃費規制目標の実現に貢献できることを目指す (国営大手自動車メーカーの役割が果たせるように)。
フェーズ 3 (2018~2020年)
・新エネルギー仕様車プラットフォーム 6つ/完成車モデル16モデルを開発。
  且つ、量産・市販できるまでの体制を整える。 (新エネルギー車事業を強化し、量産効果を狙う。)
・PHV/EVの動力システムプラットフォームの諸技術も熟成し、その中核部品モジュールの技術も保持するのを目指す。
・中核構成部品については、自社開発・生産分も含め、先進技術を持つ部品メーカー、調達ネットワークを完成させる。
 (注1) 2013年末までに、グループ各社は国内8都市に、「奔騰-EV」「欧朗-EV」「威志-EV」の乗用車や新エネルギー仕様バスなどの新エネルギー完成車、累計700数台を実験運航用に投入した。試験運行距離は累計で7,300万km。
 (注2) 2014年4月までの、発表済み市販モデル(未発売) と、市販を開始した新エネルギー完成車は合わせて 24モデル以上。
組織体制整備 <新エネルギー車工場>
・2010年にグループの新エネルギー車事業の専門部署として、一汽新エネルギー車 (「中国第一汽車集団新能源汽車分公司」) を設立。主に、グループの新エネルギー車 (乗用車中心) 及びその構成部品の、生産・販売・補修などのアフターサービス、技術コンサルティング業務を統括。
・新エネルギー乗用車生産 (2014年5月本格的に稼働) は、長春新エネルギー車工場 (拡張中)、
 新エネルギートラックは、傘下の中型・重型トラック子会社「一汽解放」、新エネルギーバスは、バス子会社「一汽客車」が、それぞれ担当する。
新エネルギー車
の生産体制構築
<年産能力>
・2013年9月時点
乗用車 (長春新エネルギー車専用工場): 1直 1万台/2直2万台
商用車 (一汽客車の解放シリーズ大型バス工場): 2,500台 (内訳は、PHVバス 2,000台、EVバス 500台)
・2014年8月以降
乗用車 (同長春専用工場): 2直20万台 (2015年~)
商用車: n.a. (2,500台超)
新エネルギー
事業専門
研究開発施設
(2014年4月時点)
<方針>
・世界でも先進レベルで、新エネルギー車用の専門研究開発の施設を、長春本拠地で建設 (敷地面積 1万㎡)。
・同施設の役割は、主に、新エネルギー車とその中核構成部品の、
  ①諸中核技術性能などを含めて研究・開発を行い、
  ②開発プロセス/システム/法規制 (基準) を構築、
  ③新エネルギー車完成車の多機能に関するシミュレーション研究や、新エネルギー車完成車性能や安定・信用性の品質認証を行う。
<専門研究開発施設 (一部設備) 設置の進捗>
・グループの研究開発施設「一汽技術中心」(長春市) に設置した「電動汽車研究室」(専門部門) が担当。専属する研究開発技術者は40数名 (2013年8月時点)。
  ① 設置建設済み: 二次電池実験室、電極実験室、HV ウインチ動力システム実験室、HV バス用動力システム実験室、ストロング・ハイブリッドシステム実験装置 (実験台)、
  ② 設置・建設中: 新エネルギー完成車、電極、駆動用二次電池、電装部品、電子制御装置のテスト及び実験施設を建設中。
新エネルギー車のモデル計画 (~2020年) <新エネルギー車向けプラットフォーム>
・2020年までに、新エネルギー車プラットフォーム合計6つを開発、完成車に採用できる体制も整備させる。
・乗用車プラットフォーム 4つ (A0級EV、A級HV、B級/C級PHV向けや、スポーツ用や市内/都市間走行用など向けに。A0級~C級セグメント乗用車をカバー。)
・商用車プラットフォーム 2つ (都市公共バス/アーバン・トラック向け)
<新エネルギー車の完成車>
・2020年までに、乗用車と商用車を合わせて16車種 (量産・市販体制まで整える)。とりわけ、乗用車では、自主ブランド上級モデルとして、第一汽車の上級公務用車向けの「H」プラットフォームをベースにして、HV/PHV仕様の「紅旗」ブランドモデルの開発に注力する。
 乗用車は、①「紅旗」ブランド: 一汽轎車の上級モデルシリーズ、②「FAW」ブランド: 一汽轎車の「奔騰」「欧朗」シリーズ、天津一汽夏利の「夏利」「威志」シリーズ、一汽吉林の「森雅」シリーズを含めて投入へ。
 商用車は、一汽吉林の「森雅」シリーズ、一汽解放/一汽客車の「解放」シリーズを含む。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>