トヨタ:TNGAの導入で商品力の向上と原価低減を同時に達成

2015年にTNGA一号車次期型Priusを導入、パワートレインも標準化

2014/01/09

要 約

 本レポートは、トヨタの商品開発戦略TNGA(Toyota New Global Architecture)の推進について報告する。

 トヨタは、2013年にダイハツ・日野を含むグループで、世界の自動車メーカーで始めて1,000万台を生産・販売する規模に達したが、ただ量を追うのではなく、常によりよい車を顧客に届け、持続的な成長を目指すと繰り返し強調している。TNGAの導入により、商品力の飛躍的向上と原価低減を同時に推進する計画。

関連レポート:トヨタ:2013年度に経済危機前の最高利益水準へ回復(2013年11月掲載)



TNGA(Toyota New Global Architecture)を導入

 トヨタは2012年に、TNGA(Toyota New Global Architecture)に取り組んでいることを表明した。これまで車種ごとに最適化していた開発を見直して、複数車種を同時に開発して、標準仕様の部品の調達を増やし複数の車種にまたがる共用部品をまとめて調達することが柱になる。2013年3月、TNGAの取り組み状況を公表し、TNGAを採用した新型車を2015年から順次投入すると発表した。第一弾は新型PriusやIMVシリーズなどになる見込み。

 トヨタは、TNGAの導入に際して、2013年4月1日付で、自動車事業に、Lexus International、先進地域を担当する第1トヨタ、新興国市場を担当する第2トヨタ、ユニットセンターの4つのビジネスユニットを設置。同時に全社直轄組織として、「TNGA企画部」と「商品・事業企画部」を設置した。

 なお、トヨタは生産車種が多岐にわたるため、TNGAを全ラインアップに適用するのは2020年代前半になるとしている。

TNGA (Toyota New Global Architecture)についてのトヨタの発表(2013年3月)

組織  2013年4月1日付で、技術ベースで中長期戦略を立案する「TNGA企画部」と、マーケットベースで中期商品・事業計画を立案する「商品・事業企画部」を設置。
商品力の向上  クルマを骨格から変え、低フード化・低重心化を実現し、かっこいいデザイン、良好な視界確保、運動性能の向上など、お客様の感性に訴えるクルマとなるよう次期プラットフォームを開発し、順次導入する。クルマの中核となるパワートレインユニットについても、低重心・高性能なユニットを新開発し、順次搭載していく。
グルーピング
開発
 中長期の商品ラインアップを確定し、それらに搭載するユニットやその配置、ドライビングポジションなどをトヨタの「アーキテクチャー(クルマづくりの設計思想)」として定める。定められた「アーキテクチャー」に基づき、複数車種の同時開発を行う「グルーピング開発」により、部品・ユニットの共用化を進める。TNGAの導入により、20~30%の開発効率向上を目指し、その結果として得られたリソ-スを、さらに「もっといいクルマづくり」に投入していく。
ものづくり改革  仕入先とトヨタの調達、生産技術、技術(研究・開発)の4部門が一体となって活動し、よりつくりやすく、よりシンプルな部品・ユニットの構造を実現する。これにより、シンプルでコンパクトな製造工程ができ、これまで以上に一つひとつの部品をつくりこみ、より高い品質を確保する。
グローバル標準
への取り組み
 従来はトヨタ専用規格に準じた部品開発であったが、今後は多数の自動車メーカーがグローバルに採用している標準部品も採用できるよう、グローバル標準規格に対応する。
TNGAと連動した
調達戦略
 調達部門では、「グルーピング開発」による部品・ユニットの共用化に対応し、複数の車種をまとめて、グローバルに車種・地域・時間をまたいだ「まとめ発注」を実施し、さらなる競争力確保を進めていく。

 

 



TNGAの具体化

 以下に、次第に明らかになってきたTNGAの具体的な推進の概要をまとめた。

当初3つのプラットフォームを開発

3つのプラットフォーム
で全生産の5割を
カバー
 まず部品の共用化が容易な3種類の前輪駆動車用プラットフォーム(Prius/Corolla用新MCプラットフォーム、Camry/RX用Kプラットフォーム、Vitz/Yaris用新Bプラットフォーム)を開発し、各プラットフォームをベースに複数の車種を開発する。3つのプラットフォームをベースとする車両で、全生産台数の5割をカバーする。
軽量化  TNGAをベースとする車種は、車両重量を最大20%削減する計画。
安全性強化  2014 Corollaなどのトヨタ車が、米国Insurance Institute for Highway Safetyが新たに導入した"small overlap test"(運転席側前部の角がポールや木に時速40マイルで衝突した場合の安全性テスト)結果でギリギリ(marginal)の合格点にとどまった。当面の対策をとる一方、TNGAを機会に従来のテスト項目も含め抜本的な強化を行う。

 

部品の共用化とまとめ発注

部品をまず2~3割
共用化
 プラットフォームを共有する車種間では使用する部品のうち当面は2~3割を共用化し、いずれは7~8割に高める。また共用化しても商品力にあまり関係ない部分と車種ごとにこだわる部分を見直して、クルマづくりを再構築する。
 各部位「モジュール」の開発にトヨタと部品メーカーが一体となって取り組み、量のメリットを最大化し原価低減を図る。
着座位置と
エンジン取り付け
角度を標準化
 TNGAでは、まずドライバーの着座位置(フロアからヒップポイントの高さ)を、ミニバン、SUV、セダン/ハッチバックとクーペの4種類に分けて標準化する。着座の高さが変わると、シート、ハンドル、ペダル、さらにメーターやスイッチなど多くの部品取り付け位置や角度が変わる。標準化により、例えばエアバッグの種類も大幅に削減できる。
 エンジンの取り付け角度を標準化した。これにより、吸気系部品、排気系部品、スタータ、オルタネータ、ポンプなどエンジンに取り付ける多くの部品の配置を標準化できる。
部品メーカーは
「まとめ発注」に対応
 「まとめ発注」に対応するため、部品メーカーはグローバルでの供給体制の構築とコストダウンを要求される。その結果、グローバルサプライヤーからの調達が増えるとされている。
 TNGA適用の第一弾は、国内で主に生産する次期型Prius、次いで新興国で生産するIMVシリーズ、2017年めどに主に米国で生産するCamryなどとされる。まず国内で、次いで新興国や米国で共用部品・モジュールの調達体制を整え、順次活動範囲を広げていく。
 トヨタは2014年1月1日付で、調達本部内の調達企画室を、「調達企画・TNGA推進部」に再編した。TNGAはこれまで技術部門主導で推進してきたが、調達部門でも本格的に推進する体制とする。

 

パワートレインの標準化と強化を推進

エンジンを標準化  2013年4月1日付けの「ユニットセンター」開設に合わせて、パワートレインも共有化を進める。本社工場内に地上12階の「パワートレイン共同開発棟」を建設し、2013年2月から運用を開始した。約2,800人の技術者が勤務している。
 点在していたエンジンなどの研究・開発と生産技術の両機能を集約して、新技術や新工法を開発し、卓越したパワートレインユニットの開発と、迅速な製品化につなげる。両機能の開発者が議論できる場も多く配置した。
 エンジンでは、シリンダーの寸法を標準化し、数種類のシリンダー基本モジュールを設定、このモジュールを組み合わせて様々な排気量のエンジンをつくる計画。2016~2017年に、いずれもFF用の2500cc、2000ccおよび1500ccエンジンを投入するとされる。VVTや直噴システムについても、車種ごとに開発してきたものを標準化し、多くのエンジンに展開する。エンジン開発工数の約20%削減を目指している。
ターボエンジンにも
対応
 トヨタは、2013年東京モーターショーに、ターボ2000ccエンジンを搭載するLexus LF-NXコンセプトを出展した。2014年に世界各市場に投入する。トヨタにとって、1980年代以来のターボエンジン車となる。
 2015年以降に投入する小型エンジンは、ハイブリッド(HV)とともにターボ搭載にも対応する前提で開発している。近い将来は、「大排気量エンジンはHV、中小型エンジンは商品特性に合わせてHVとターボを使い分ける」方針とされる。
HV用エンジンの
熱効率を42%に向上
 現在PriusやCrownハイブリッド車に積んでいるエンジンの熱効率は38.5%だが、2015年に投入するTNGA車では、燃焼効率向上とフクリクション低減により42%程度への向上を目指している。40%以上になると、内燃エンジンのエネルギーが熱として失われずそれだけ多く駆動に使われることになり、エンジン効率のみで10%弱の燃費向上につながる。
 ハイブリッド車ではない通常のガソリン車に積んでいるエンジンの熱効率は36~37%だが、40%程度への向上を目指している。
風洞実験棟を新設  トヨタは、「パワートレイン共同開発棟」とほぼ同時期に新しい「風洞実験棟」を完成させた。空気の流れに関わる車両技術開発を強化、推進する。大型送風機と実車走行状況を再現できるシステムを備え、250km/h走行時までの風環境を再現し、市街地から高速走行時までの空力特性を高精度に評価できる。
 風洞実験棟は本社テクニカルセンター内に設置し、デザインや設計・実験部署との密接な連携が可能となり、より魅力的なデザインや静粛性、操縦性、走行安定性の向上に結びつける。高速走行時の燃費向上には、空気抵抗の低減が極めて重要であり、一例として100km/hで走行する場合の走行抵抗の約70%は空気抵抗となる。またトヨタの風洞実験棟として、1969年以来初のリニューアルとなる。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>