VWの中国事業(2):販売体制/モデル事業などの中期事業計画

2016年からPHV/EV乗用車生産、販売目標は2015年355万台

2013/11/11

要 約

 VWグループ (Audi/SKODAを含む) の中国事業の調査レポートシリーズの2本目として、VWの中国における中期事業計画、販売目標、販売体制、ならびに省エネ・新エネルギー車事業などの最新情報をまとめた。


 VWは、現地生産体制の整備と併行して、華南/西部/内陸部地域での拡販を狙う中国中期事業計画を着実に進めている。VWは乗用車の中国販売目標 (現地製のみ、工場出荷ベース) を、2013年の300万台から、2015年に約355万台、2020年に約400万台 (中国市場シェア20%) へと、これまでの発表を上方修正してきている。

 これに併せて、中国での市販車ラインナップを現在の約80車種から2015年までに90車種以上に増やす。さらに、2016年には現地開発の動力システム搭載の新エネルギー車 (PHV/EV) の現地生産を開始する。

 また、ディーラー網を2012年初の1,590店舗から2015年には3,000店舗にほぼ倍増する計画。これに加えて、上海VW傘下の一部ディーラーに輸入車専売ブースを併設する。

 中国事業拡大のため、VWは中国合弁会社のキャッシュフロー(純利益と減価償却費)を投資に振り向け、2013~2015年の3年間は98億ユーロを拠出し、主に生産体制拡充と新型エコカーの開発に投資している。

 関連レポート:



VWグループの中国事業中期計画と戦略

詳細
グループ総目標 ・2018年までに、
  ①VWグループのグローバル生産が世界首位。
  ②電動車を含む、完成車全車種の技術革新で、グローバルパイオニアとしてトップメーカーを目指す。
販売目標 ・2020年、中国乗用車市場シェア目標は20% (販売台数で約400万台)
 但し、400万台以上生産も可能な、柔軟な現地生産体制を構築する構想。
投資計画 ・当面の重点投資は、①新工場/生産ラインの建設・拡充など、中国での生産体制の増強。
              ②省エネ・新エネルギー車など、エコカーとその技術の現地開発。
    動力システム分野は、エンジンは「EA211型」小排気量/「EA888型」中排気量、変速機は「MQ200型」MT/DSGの、エコ型動力システムに切り替えるための生産体制の増強を加速・実行する。
拡販戦略  日系シェアが大きい南方市場 (広東省等)への拡販を柱とした「VW南方戦略」から、投資優遇政策が唯一残る中西部市場 (新疆、四川省等)、潜在客が多いと見なされる内陸部市場 (湖南省等) を加えた新拡販戦略に修正し、さらなる販売シェア拡大を狙う。
 販売サービスの品質向上も、当面の重要経営課題として改善へ。
人員計画 ・中国での従業員は2018年までに、2.5万人増の10万人超へ増員 (2013年4月時点約7.5万人)。
(参考)
Audi/SEAT
Audi (一汽VW のAudi 部門)
・高品質の維持・向上しながらの成長を実現。
    最新技術を採用した新型車の導入を含めて、市販車のラインナップ拡充、販売代理店サービス品質/顧客満足度の向上に注力。
・~2015年
 中国での高級車ブランド価値で中国首位を実現。
 毎年に新型3車種以上を新規投入し、全シリーズ合計42車種を中国市場に導入。但し、2013年10月時点31車種導入済み。 (一汽VW のAudi 部門が発表した「リーダー戦略」 (中国語"領先者戦略") 等より)
・自社グローバルスタンダードに基づいて、研究開発・調達・生産・マーケティング分野を含めて、バリューチェーンすべての現地化を推進させる。
 国産モデルの平均現地調達率を、2013年7月時点実績60%から、85%に向上させる。
SEAT
・2013年からの今後3~5年は拡販に焦らず、主に中国でのSEATブランドのイメージの確立に注力 (SEAT ブランド中国責任者の2013年10月インタービュー報道より)
*注:2012年3月から、SEATブランド車の中国での市販 (輸入販売) を再開。2013年1~9月の中国販売実績は771台 (Leon/Alhambra/Ibizaの3車種)。

 

 



VWの中国販売目標: 2013年に300万台強、2020年に400万台/中国乗用車シェア20%

 VWの中国における乗用車販売の目標 (現地生産車、工場出荷ベース) は、2013年の300万台強から、2015年に約355万台、2020年は約400万台 (中国乗用車シェア20%) とされている。

 うち、VWブランドは2013年の223.5万台強から2015年に235万台。Audiは2013年の約50万台から2015年までに70万台以上、中長期には100万台。また、SKODAは、2013年の約30万台から2015年に49万台規模さらに2018年前後約60万台。


中国におけるVWグループの合弁会社別ブランド別販売目標

詳細
▽2013年: 輸入車を含めて、合計320万台 (2013年10月発表値。工場出荷ベース)
 (内数) VWブランド 234万台強、Audiブランド 約50万台、SKODAブランド 約32万台
   <現地生産車> 合計 300万台超(VW/Audi/SKODA ブランド)
内訳: VW ブランド 223.5万台、Audiブランド 約41.5万台、SKODAブランド 30万台超
    2013年初発表 (292万台) の上方修正値。前年実績は260.9万台。
   <上海VW製> 150万台 (VW/SKODAブランド)
 (2013年7月発表、年初発表 (142万台) から 8万台上方修正)
内訳: VWブランド 115万台超、SKODAブランド30万台超
<一汽VW製> 150万台超 (VW/Audiブランド)
 (2013年初発表 (150万台) の上方修正)
内訳: VWブランド 108.5万台以上、Audiブランド 約41.5万台 (うち、A6L 15万台を含む)
<輸入車> 合計20万台弱
・Audiブランド: 8.5万台弱
・VWブランド: 約10.8万台 (2012年実績8.4万台)
▽2015年: 約355万台(現地生産車)
  内訳: VW 約235万台、Audi 70万台以上、SKODA 49万台
<上海VW> 約175万台
 (2011年の発表は200万台だった。年産能力計画は200万台。)
   ・VWブランド: 125万台以上
・SKODAブランド: 約49万台 (試算値)
 注: 上海VWは2010年末、SKODA中国生産車の販売台数の上海VW販売全体でのシェア目標を2015年に28%に設定すると発表。
<一汽VW> VW/Audiなど合計180万台
 (2013年10月時点報道、2011年発表の同数字目標は165万台だった。)
・VW等ブランド 約110万台
・Audi ブランド 70万台以上
注: 一汽VW のAudi 部門が2013年初に発表した「リーダー戦略」 (中国語"領先者戦略")より
▽2020年: 約400万台 (試算値)、中国乗用車販売シェア (工場出荷ベース) 20%
 (中国乗用車全需のVW 予測値 2,000万台から換算) (VW 高官が2013年の5月または9月のインタービュー報道より)

 

 



VWの中国中期モデル計画: 2015年の市販車ラインナップを90車種超へ

中国販売車ラインナップ計画

 VWグループは2013年9月、中国販売車種のラインナップを、現時点の合計80車種 (内訳: 輸入車 59車種、現地製 (CKD) 21車種を含む) から、2015年には合計 91車種 (内訳: 現地製30車種、輸入車61車種) に増やすと報じられた。

  つまり、2013年9月~2015年までは、中国市場に、現地製9車種を含めて新型合計11車種を新たに導入する。但し、同報道では、商用車を含むか否か、ブランドの内訳情報は明らかにされていない。

 (VWの中国車種別モデル計画の詳細は、弊社MarkLinesのモデルチェンジコンテンツ情報をご参照ください)


 他方、これに先立って、VWグループは2013年1月、中国での市販車のラインナップ増強計画を発表した。Porscheを含む傘下のあらゆる乗用車ならびに商用車を合わせて、中国市販ラインナップを2015年までに合計 94車種に増やす。その内訳は、現地製が34車種、輸入販売車が60車種。

SKODAブランド
 SKODAブランド新型車の導入について、SKODAは2013年7月、これまでより多い1年間に新型2~3車種を投入する方針を明らかにした。2013年にかけて2014年までに、同ラインナップを、現地製 6車種と輸入車 2~3車種を合わせて8~9車種に拡大する。
 なお、SKODAは2013年4月、中国専用車1車種の現地開発についても、上海VWおよび上海汽車集団と協議していると明らかにした。
Audiブランド
 Audiは2013年7月、乗用車全シリーズ合計42車種すべてを2015年までに中国市場に導入すると表明 (2013年7月時点の中国市販車ラインナップは合計31車種)。2013年以降は1年に新型3車種以上を中国市場に投入すると報じられている。
 2015年までに現地での年間生産・販売目標は70万台以上、中長期的に100万台と設定している。(2012年実績は40万台を超えた)

注: Audi 輸入車では、人気モデルになっている Audi Q7 (最新である2014年モデルを中国で導入済み) が、2006年に中国市場に導入してから数回モデルチェンジを繰り返した。2013年5月までの累計販売台数は合計7万台を超えた。

 

中国にも導入するVWモジュラー戦略: 生産技術や生産設備の標準化を推進

 VWは、グループの世界モデル戦略の一環として中国でもより量産しやすく、コスト低減などに優れる、モジュラー戦略を打ち出している。(同モジュラー戦略の詳細は2013年7月掲載済み MarkLines レポート「VW:2013年上半期の新車販売は480万台」 をご参考ください)

 VWグループは、2017年までに主力車約40車種に、モジュラー・プラットフォーム、「MQB」 (Modularen Querbaukasten/Modular Transverse Matrix) を採用する計画。「MQB」は、横置きエンジン搭載車向け、部品の70%を共通化し、Polo/Golf/Beetle/Scirocco/CC、Audi A3を含めて、広範なセグメントの車種に適応できる。車両開発コスト面では20%削減でき、車両組み立て時間の30%短縮が見込まれている。


 中国市販車に関する詳細は明らかにされていないが、上海VWは2013年10月、今後、新型「MQB」プラットフォーム採用のSKODAブランド車は、Octavia/Superb/Yeti/Rapid/7座席DセグメントSUV、合計5車種があると明らかにした。

 

 



販売体制: 2015年ディーラー網は2012年初よりほぼ倍増の3,000店舗、輸入併売体制整備

 VWは、日系自動車メーカーの密集地で日系車シェアも高い中国華南地域 (広東省中心の周辺市地域)を、主な拡販対象地域としていた拡販戦略に、投資優遇政策がある西部地域 (四川省、新疆周辺)、内陸部の湖南省周辺地域を加えて、中国でのシェアの拡大を目指し新しい拡販戦略を打ち出している。

  (これに伴って、広東省佛山/四川省成都の一汽VW工場、新疆/寧波の上海VW工場など、新しい工場/生産ラインを相次ぎ新たに稼働した。VWの中国での乗用車とパワートレインの生産体制拡張最新情報は2013年10月掲載のMarkLines調査レポート「VWの中国事業 (1): 乗用車とパワートレイン生産体制の最新動向」をご参照ください。)

ディーラー網:2015年にVW/Audi/SKODAブランド系を合わせて3,000店舗へ

 VWグループ (Audi/SKODAを含む)は、中国拡販対策として、現地でのディーラーを2015年に3,000店舗に増やす計画。うち、VWブランド系は1,900店舗以上 (2012年初1,120店舗)、Audiブランド系は450~500店舗以上 (2012年初230店舗、2013年7月300店舗超)、SKODA系は500店舗以上 (同240店舗)。Audi系は2020年に700店舗まで増設する計画も報道されている。
 うち、上海VW傘下のディーラーは、2013年9月時点1,300店舗超 (販売・サービス店を含む)。ブランド別の内訳は、VWブランド系が約980店舗 (うち、西北地域約50店舗)、SKODAブランド系は約320店舗。

VW/SKODA輸入車販売も強化へ

 VWは、利益率が高い輸入車の拡販を狙って、上海VW系の既存ディーラーで輸入車専用ブースの増設を加速しており、VW/SKODAブランド輸入車の販売増加を目指す。2013年9月時点、VWブランド輸入車販売の拠点数は、上海VWの現地製モデルと併売するディーラーを合わせて合計123店舗があると報じられている。
 VWの中国での輸入車販売の成長率は、2008年から2012年の5年間で64.8%に達した(中国全体の同成長率は約35%)。但し、2013年は減速し4~5%増になる見通しである (VW中国のマーケティング担当副総裁の2013年9月の発言として中国有力紙「新京報」が報道)。
上海VWディーラーを通じ、VW/SKODAブランド輸入車販売を強化
 上海VWは2013年9月、VWブランド輸入車の中国販売統括会社「大衆汽車(中国)銷售有限公司」と、輸入車販売の戦略提携について合意した。
 同月には、上海VWの一部中国での既存「4S」ディーラーに輸入車専売ブースを設置して、VW輸入車「Touareg」(SUV, 中国名"途鋭")/「T5 Multivan」(同"邁特威") を、現地製VWブランド車との併売を開始した。 (「Touareg」のメーカー指導販売価格は68.56万~110.46万元で、「T5 Multivan」は43.80万~56.80万元。) 上海VWは今後、併売するVW輸入車のラインナップを増やす方針。
 これに先立って、上海VWは2013年4月、VW (中国) およびSKODAと、SKODAブランド輸入車の併売に関する契約に調印。同月には、SKODA Yeti (SUV) と Superb Wagonの、SKODA輸入車合計2車種の上海VWディーラーにおける併売を開始した。
 なお、VWブランド輸入車の中国における2012年の販売台数は前年比56%増と伸びた。2013年は中国輸入車市場全体の減少傾向の影響もあって、増加幅が縮小している。

注: 2013年9月時点、VWが高級SUV「Touareg」の中国現地生産の計画はないと表明している。

一汽VW: VWブランド市場を6地域に細分化

 一汽VWは2013年2月、中国でのVWブランド車市場を、これまでの4地域から6地域に細分化し、販売強化の管理体制を整備した。これに併せて、販売管理体制も増強し、これまでのセールスディレクターとマーケティングディレクターに、サービスディレクターのポジションを増設した。
同6地域は以下の通り。
 地域① 内モンゴル/黒龍江省/吉林省/遼寧省
 地域② 北京市/天津市/河北省/山西省
 地域③ 山東省/河南省/湖北省
 地域④ 江蘇省/安徽省/浙江省/上海市
 地域⑤ 湖南省/江西省/福建省/広東省/広西チワン族/海南省
 地域⑥ 陜西省/寧夏/甘粛省/重慶市/四川省/貴州省/雲南省/青海省/チベット/新疆ウイグル自治区
 これまでは、一汽VWは、2006年に、吉林省の長春本社に集中していた販売決裁権を、中国全土に分けられた4地域 (北区、南区、西北区、東区) に分権。2007年にこれをベースにして、販売の中核機能を有する事業部制を導入し、同4地域 (4区) を販売事業部 (NSC) に再編した。
Audiの中国販売戦略
 中国販売目標を2015年までに70万台以上、中長期的に100万台に定めているAudiは、中国でのマーケティング戦略の実現に向けて、Audiブランド製品のラインナップ拡充のほか、顧客満足度や販売ディーラーサービス品質の向上、世界の最先端技術の素早い紹介ならびに導入を実施する。

 

 



VWの中国における省エネ・新エネルギー車事業の最新動向

VW: 中国を含む、省エネ・新エネルギー車 (電動車) 事業計画

詳細
グループ総方針 ・当面、従来型動力システムと、HV/PHV/EVなど向け次世代動力システムを併行して、発展させる。
 TDI/TSI /TGI/DSGなど、従来型動力システムを改良。「BlueMotion技術」 (*注) 採用や、アイドリングストップ機構搭載のエコ車種の拡販に取り組み。

 *注:「BlueMotion技術」は、アイドリングストップ機構 (回生ブレーキシステムを含む)、低燃費タイヤおよび低抵抗デザインの組み合わせによって、省エネを実現させるVWのエコテクノロジーの名称。
 HV/PHV/EVなど、次世代動力システムの実用化・拡大を図り、将来的には、従来型動力システムから次世代動力システムに切り替えていく。
 (2013年8月VW中国開発センターの Genis Brustenga 電動車プロジェクト責任者の発言報道より)
グループ総目標 ・2018年まで、① 世界で一番環境に優しい自動車メーカー、
           ② 電動車市場の牽引役/パイオニア自動車メーカーを目指す。
中国を含む、
グループ省エネ・
新エネ事業計画
新エネ
関連
<VWグループ全体>
    新エネルギー車 (PHV/EVなど)事業は、主にPHVに注力し拡大させる。
 なお、VWは2013年9月、今後、EV/HV/PHV 合計40車種を投入すると発表。うち、14車種は2014年にモデル発表を予定。中国投入予定車種の詳細は不明。
<中国PHV事業について>
 VW/Audiは、中国提携先の第一汽車集団、または上海汽車集団と、PHV 技術の現地開発・生産でも提携。 2012年には開発に着手済み。2015年に初の提携開発 PHV 新型車を発表し、2016年に現地生産開始へ。
 中国生産車種のすべてに、同じ動力システムを搭載するPHV仕様モデルを追加しラインナップを拡充。
<中国EV事業について>
 VWは中国パートナー に電動動力システムの技術開発を支援する。
 中国でのインフラ整備は、政府/電力会社/不動産管理会社のほか、現地合弁会社と競合相手でもあるGM/BMW/Daimlerを含む、OEMと連携して推進。
省エネ・
節水関連
<中国>
 2015年までには、VWグループの中国市販車70車種の燃費効率を、従来型内燃機の燃費消耗効率の最良化や、動力システムの先端代替技術の採用を通じて、更に11%向上させる改良を施す。 (2005~2010年には、70車種の100km走行燃費効率を20%向上に改良済み。)
 長春2工場、成都1工場、上海3工場、南京1工場の、VW中国乗用車工場7事業所に、ドライ式 (乾式) 塗装分離技術を導入する新型塗装生産施設の建設だけによっても、これまでより70%の省エネと、90%の節水が達成できる。
 うち、一汽VWの成都工場には新型塗装生産施設が2011年に完工・稼動した。残りの6事業所の同新型施設も2013年4月時点に建設中で、その中の一部は稼動した。
 <中国を含む、VWグループ>
・2018年: VWは2013年3月、グループ投資総額の約三分の二以上を高効率・省エネ技術、駆動系部品、新製品およびエコ生産工程整備に充てる。 うち、カーエアコンの冷媒として二酸化炭素系「R744」を実用化させると発表。
 中国工場を含む、VWのグローバル工場のエネルギー/水/原材料廃棄/二酸化炭素排出量のすべてを2010年比25%減とする目標を設定。
 フルモデルチェンジをした新型車の燃費効率を、各々の先代より10~15%高める。
・2020年: VWモデルの平均燃費目標を、2015年の6.9L/100kmから5.0L/100kmに向上させる。

 

新エネルギー車を2016年から中国で生産開始

 VWは2013年10月、中国での新エネルギー車戦略を発表。e-tron 電動技術を含む、VWの新エネルギー技術の現地化 (現地生産など) に向けて、今後の現地での同事業は、PHVを重点的に拡大させる方針を表明。3年後の2016年には、一部構成部品を含めて、新エネルギー車の現地合弁工場での生産を開始する。 (*注)
 但し、新エネルギー車用構成部品の現地生産化や生産品目などの詳細は明らかにされていないが、一汽VWは2013年7月、Audi と第一汽車集団とのPHV共同開発に関する中国での市場調査を開始し、中国導入計画を慎重に進めていると明らかにした。
 VWはこの発表に併せて、中国における新エネルギー車生産に向けての体制づくりを始動したことも公表。現地生産に先立って、2013~2014年から、PHV/EVの輸入販売を開始。(2013年10月時点、Audi Q5 hybrid quattro/A6 hybrid/A8L hybrid/2013年12月からPorsche Panamera S E-Hybrid の輸入販売を開始しており、近いうち、VWのEVの輸入販売も開始する予定。)
 なお、VWは同発表の同日に、VWブランドの 「XL1」(PHV)と「e-up!」(EV), Audiブランド「A3 e-tron」, Porscheブランド「Panamera S E-Hybrid」 など、傘下の EV/PHV の実車試乗イベントを北京で開催した。

*注: VWが2012年12月に発表した、中国での新エネルギー車の生産開始時期は2014年または2015年だった。

Audiは第一汽車集団と、PHV 動力システムなどを共同開発、新エネルギー車10数車種を導入する計画
 Audi は2013年7月、第一汽車集団と、合弁提携の枠組み内に、合弁会社一汽VWを通じて、PHV技術/PHV動力システムを共同で開発すると発表。
 同 PHV動力システム現地生産後は、現在輸入販売する新型Audi Q5 hybrid/A6 40 hybrid/A8L 40 hybridや、A3 e-tron Concept/A2 e-tron ConceptをベースとするPHV/EVを含めて、新エネルギー車合計約10数種の現地 (生産) 化を進める方針。
上海VW:新エネルギー車関連開発施設建設を完成
 上海VWは2013年6月、新エネルギー車開発の関連施設の建設を完成し、第三者による安全認証に合格した。2010年末から着手しはじめた同施設の建設は、上海VWのR&Dセンターの試験棟の最下階にある旧工場を、新設備導入を含めて改修した。総面積は1,400㎡。
 同施設は、駆動蓄電池システム (セル、電池モジュールを含む)およびその関連制御システムなど、新エネルギー車の中核部品に関するテストや検証能力、及び新エネルギー完成車の充電及び測定・試験をする開発能力が整備されている。
 上海VWの提携双方、VWと上海汽車集団とは2011年6月に、ドイツのベルリンで、合弁会社 (上海VW) の電動車開発に支援する共同声明に調印した。

 

中国での省エネ車事業、当面新エネルギー車と併行で強化

 VWは、省エネ車事業の推進の一環として、「BlueMotion技術」 採用車の生産の現地化と拡販に取り組む。

 また、エコ対策としても、エンジンでは、TSI 仕様ターボガソリンエンジンの生産搭載を、鋳鉄製からアルミ製の新型 (「EA211型」、「EA888型」など) に切り替える、新型エコエンジンの生産体制拡充を加速している。変速機では、小型エンジンと組み合せる「MQ200型」エコMT、デュアルクラッチ変速機「DSG」 (Dual Clutch Gear) の生産体制も、天津/大連での新工場の建設などを通して拡大している。

「BlueMotion技術」採用仕様車の投入を加速
 VWは2012年から、BlueMotion技術を採用する、省エネ車 (エコモデル) の現地生産を開始し、拡販を狙う。
 一汽VWは2012年初、BlueMotion技術採用モデル、6代目Golf のBlueMotion技術採用車「高尓夫 藍駆版」の生産を開始。2012年3月ごろ販売を開始した。(標準販売価格は15.98万元) 動力システムは、1.4L TSIエンジンとDSG及びアイドリングストップを組み合わせる。メーカー発表の燃費は4.9L/100km。同車種の標準仕様より燃費は約20%改良。
 また、上海VWは2012年11月、新型Passat のBlueMotion技術採用モデル「帕薩特 藍駆版」 の生産・販売を開始。標準販売価格は21.28万~21.88万元。メーカー発表の標準燃費は6.1L/100km。動力システムは、ほぼ、先に現地生産販売を開始した、6代目 GolfのBlueMotion技術採用モデルと同じの、1.4L TSIエンジンとDSGなどを組み合わせる。
 上海VWは2013年6月、今後、傘下の既存市販車すべてに、「BlueMotion技術」採用仕様モデルの追加投入計画を明らかにした。 (上海VW販売会社の賈鳴鏑市場執行副総経理のインタービュー報道より)。
 2013年10月時点、中国で市販されているVWの現地生産車BlueMotion仕様モデルは、一汽VW製でVWブランドにMagotan/Golf/Sagitar、上海VW製ではVWブランドに新型Passat/新型Tiguanと、ラインナップされている。
Audi:アイドリングストップ機構を、中国市販車の全車種に標準装備として導入済み
 Audi は、2013年9月時点中国での市販車全車種に標準搭載でアイドリングストップ機構を導入済み。これにより、100km当たりの燃料消費量が導入前に比べて300cc減を実現した。

 

 



中国事業投資計画: 2013~2015年の3年間で98億ユーロ

 VWは2013年4月、2015年までに中国合弁会社2社(上海VWと一汽VW) のキャッシュフローから投資額98億ユーロ超を拠出する中国投資計画を発表した。うち、三分の一 (約32.7億ユーロ) は現地生産能力増強に、残りの三分の二 (約65.3億ユーロ)は燃費が良い新型エコカー (省エネ・新エネルギー車) の開発に充てる。


 2013年4月のVW中国統括会社の発表では、VWグループが2018年までに、中国での従業員数を現行の7.5万人から10万人への、約2.5万人の増員を計画。また、現地の年産能力を2018年までに400万台に引き上げるとの計画を明らかにした。但し、2013年10月時点、2017年以降の中期的な年産能力構想は、最大で500万台規模に上っている。

VWグループの中国投資計画詳細

中国事業への投資
詳細
2013~2015年に、3年間合計 98億ユーロ超(VW 2012年11月/2013年4月発表より、2013年10月時点大きな変更がない最新の投資情報)
   ・新工場建設・拡充や設備導入に投資
    上海VWの長沙工場建設と一汽VWの佛山工場 (2期) 拡張建設を含む。同佛山工場建設への1期は133億元 (約15.9億ユーロ)、拡張(第2期)建設は153億元(約18.3億ユーロ)。
 新製品および新技術 (省エネ型新モデル開発を含む) に投資
(参考) グループのグローバル事業への投資
詳細
2013~2015年の3年間に、自動車部門には合計502億ユーロ(中国事業98億ユーロを含まず、VW 2013年初発表より)
   ・工場増強・建設と設備投資に合計392億ユーロ (ドイツ単独でその60%超/235.2億ユーロ)
    3年間で合計145億ユーロを、Audiのメキシコでの生産やPorsche生産工場の拡張など、各工場に投資。
・製品や技術開発に合計106億ユーロ
 2013年から EV (技術/コンポーネントなど) 開発には年間70億ユーロ超
 モジュラー・プラットフォーム戦略を進めることにより、さらなるコスト削減を進め、2013年は各ブランドが様々な新モデルを展開。

 

 



(参考) VWの中国合弁会社別モデル別乗用車販売

(台)

モデル 2011年 2012年 2012年
1~9月
2013年
1~9月
2013年
(通期計画)
VW 中国合計 2,200,715 2,608,896 1,922,858 2,294,004 3,000,000超
   OEM別/
モデル別
内訳
▽一汽VW 合計 1,034,888 1,328,888 973,646 1,130,380 1,500,000超
   Jetta/New Jetta 217,861 242,528 179,752 187,318 内訳
(ブランド別、以下同):
①VW 108.5万台、
②Audi 41.5万台
Sagitar 1.4/1.8/2.0T (ターボ付, 以下同)、1.6/2.0L 128,325 196,296 131,964 208,678
Magotan 1.4/1.8/2.0T, 3.0L 87,365 173,664 124,871 143,488
New Bora 1.4T, 1.6L 207,041 222,735 167,726 177,781
6代目 Golf 1.4/2.0T, 1.6L 100,020 127,376 93,932 71,874
CC 1.8/2.0/3.0T 36,576 37,589 28,406 32,636
Audi A4L 1.8/2.0T, 3.0L 87,262 100,519 76,531 90,924
Audi A6L 2.0T, 2.4/2.7/2.8/3.0L, all-new A6L 2.0T, 2.5/2.8/3.0L 111,806 138,024 104,354 113,149
Audi Q5 58,632 90,157 66,110 75,604
Audi Q3 - - - 28,928
▽上海VW 合計 1,165,827 1,280,008 949,212 1,163,624 1,500,000
Santana 1.8L 95,819 101,385 80,722 3,087 内訳:
①VW 115万台超、
②SKODA 30万台超
Santana Vista 108,170 98,484 80,843 50,401
all-new Santana 1.4/1.6L - 2,919 - 121,361
Lavida 1.4T, 1.6/2.0L 247,475 246,687 164,317 294,963
New Lavida 1.4T, 1.6L - 95,088 13,554 228,150
Gran Lavida 1.4T, 1.6L - - - 39,198
Passat Lingyu 1.8T, 2.0/2.8L 68,061 22,754 20,790 20
New Passat 1.4/1.8/2.0T, (V6) 3.0L 97,797 210,567 152,541 179,753
New Polo 122,242 118,849 79,107 104,712
Polo 2/3box 1.4/1.6L 45,663 21,345 20,780 3,118
Cross Polo 178 17,909 13,122 15,449
Touran 1.4/1.8/2.0L 31,241 36,044 29,012 31,177
Tiguan 1.4/1.8/2.0L 129,172 173,062 138,577 151,272
SKODA Octavia 1.4/1.8/2.0T, 1.6/2.0L 126,450 137,616 103,100 92,461
SKODA Fabia 1.4/1.6L 48,759 48,380 34,548 27,665
SKODA Superb 1.4/1.8/2.0T 44,800 44,007 31,753 29,781
SKODA Rapid 1.4/1.6L - - - 19,206
車種別/
OEM別
内訳
▽sedan/hatchback 合計 1,981,670 2,309,633 1,689,159 2,007,023 内訳:
①VW 223.5万台超、
②Audi 41.5万台、
③ SKODA 30万台超
一汽VW 976,256 1,238,731 907,536 1,025,848
上海VW 1,005,414 1,070,902 781,623 981,175
▽MPV 合計 (上海VWのみ) 31,241 36,044 29,012 31,177
▽SUV 合計 187,804 263,219 204,687 255,804
上海VW (2WD) 129,172 173,062 138,577 151,272
一汽VW (4WDのみ) 58,632 90,157 66,110 104,532

注:Audi ブランドの中国販売 (輸入車を含む、香港を含まず) は2012年 402,888台と、前年比 30%増加した。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>