車載カメラ応用システムの採用拡大状況と今後の動向

~モニターカメラの増加と制御用センサとしてのカメラの活用拡大~

2012/12/28

要 約

 車載カメラは、バックビューやサイドビューのモニターカメラから登場し、その後前方監視カメラとしての応用も始まった。前方監視カメラはモニターカメラとしての応用に加え、先行車追従制御や車線維持制御のためのセンサとしての応用も始まり、その搭載個数は2011年には約1000万個に達し、市場規模としては350億円程度と思われる。

 今後は、北米・乗用車でのバックビューカメラの搭載義務化や、欧米での車線逸脱防止システムや衝突回避ブレーキシステムの搭載義務化、および新車アセスメント項目への追加の動きに合わせた、車載カメラの機能向上と低コスト化のための技術開発が進むと思われる。その結果、カメラ応用システムの機能向上に伴うユーザへの認知度向上に後押しされて、車載カメラの搭載数が急速に増加し、2015年には4000万個、2020年には5000万個を超える勢いで成長すると予想されている。

 自動車会社各社も、車の魅力性能、差別化性能の一つと位置づけ、カメラ応用システムの開発競争が激しくなってくると思われる。

 業界の動きを探るために、ステレオカメラを使ったアイサイトを搭載して市場の話題になっている富士重工業の開発担当者と、多くのカーメーカに単眼カメラによる認識技術を提供しているMobileye社の日本法人とにインタビューした。それぞれの会社のインタビュー内容の詳細は、それぞれカーメーカ、サプライヤの動向説明の章に紹介する。

(参考)法規制等の動き
(1) 北米KT法(Kids Transportation Safety Act)
北米での、自宅車庫からの後退時に子供を巻き込む事故の多発に対応するために、バックビューカメラの搭載を義務づけるNHTSAの動き。近々に制定される見込み。
(2) 北米のLDW+FCW搭載要求(NHTSA)
2011年に、NHTSAはLDW (車線逸脱警報)+FCW(前方衝突警報)の搭載を要求した。
(3) 欧州NCAP(New Car Assessment Program)
2014年には Vehicle-AEB(車に対する緊急ブレーキ)が、2016年には Pedestrian-AEB(歩行者に対する緊急ブレーキ)がNCAP要件に含まれる。

 


カーメーカの製品開発、技術開発状況

スバル アイサイト Ver.2 : ステレオカメラでの差別化を図る

 ステレオカメラの開発に開発初期から参加されてきた、スバル技術研究所担当部長の樋渡穣様にインタビューし、開発の歴史、ステレオカメラの特徴と、今後のステレオカメラに注力するという開発の方針についてお話頂いた。

(1)開発の歴史

アイサイト商品化の歴史(富士十工提供)

1980年代末 ステレオカメラ開発開始
1999年 レガシィにADA第1世代を搭載発売
搭載4機能 車間距離制御クルーズコントロール
車間距離警報
車線逸脱警報
カーブ警報/シフトダウン制御
2001年 レガシィにADA第2世代を搭載発売
搭載5機能 4機能+VDCプレビュー制御
2003年 レガシィにADA第3世代を搭載発売
搭載8機能 5機能 に加え
追従モニター
グリップモニター
前車発進モニター
特徴 ミリ波レーダ追加
ステレオカメラが苦手な夜間や霧などの状況のカバーを狙う。
2008年 レガシィにアイサイトVer.1 搭載発売
搭載8機能 衝突回避/衝突被害軽減機能
 AT誤発進抑制制御
 プリクラッシュブレーキ
 プリクラッシュブレーキアシスト
運転負荷軽減機能
 全車速追従機能付きクルーズコントロール
 先行車発進のお知らせ
予防安全機能
 車間距離警報
 車線逸脱警報
 ふらつき警報
特徴 1ユニット化した新型ステレオカメラ搭載
システムコスト削減と機能向上を図った。
2010年 レガシィにアイサイトVer.2 搭載発売
搭載機能 プリクラッシュブレーキの性能向上
対象物との速度差30km/h以下では状況良ければ「ぶつからない」
特徴 さらなるコスト低減と性能向上を図った。

(注)ADA=Active Driving Assist


 ステレオカメラの開発を始めた時に、下図のコンセプトに示すような様々な道路環境を認識して「ぶつからない車」を開発するためには人間の目の機能が必要との考えから、それを実現できるセンサとしてステレオカメラを選択した。

ADAシステムの危険検知機能(富士十工提供)

 

(2)アイサイトVer.2 の販売状況

 スバルブランドの普通乗用車+小型乗用車の2012年11月の販売台数は 11,887台であり、前年同月の4,841台から約2.5倍増加している(日本自動車販売協会連合会統計より)。しかも、ブランド別販売台数ランキング30位の中に、インプレッサ、フォレスター、レガシィが登場し、3ブランド合計で 10,672台に達している。

 この3ブランドにはアイサイトVer.2 が仕様設定されている。そのアイサイト装着率を見ると、2012年11月発売の新型フォレスターの発表後1か月の受注状況でのアイサイト装着率は86.6%と発表され、同年9月の新型インプレッサXVでは82.3%、レガシィ/アウトバックの2011年12月~2012年2月販売実績では約90%と、どのブランドもアイサイト装着率が高いことがわかる。これは、「ぶつからない車」へのユーザの強い関心を示している数字であり、上記の自販連統計データからも、アイサイトの仕様設定が購入者の大きな新車購入理由になっていると予想される。

 

(3)ステレオカメラの特徴

スバル独自のステレオ画像認識技術(富士十工提供)1)システム構成の変化
 ・ADA第1世代/第2世代/第3世代の時は、カメラ部と画像処理部は別体構成であり、カメラ部は室内ミラー部に取り付け、画像処理部は前席シート下に設置された。
 ・アイサイトVer.1/Ver.2 では、カメラ内部に撮像/認識/制御演算部をすべて集約し、システムコストの低減と精度の向上を実現した。
 ・左右カメラからの映像信号をデジタル化し、新開発の3D画像処理エンジン(日立製)にて主要なステレオ画像処理を実行し、画像認識マイコンでの認識処理を分担している。

2)画像認識アルゴリズムの自社内開発
 ・1980年代末期の開発開始から現在まで、一貫して社内開発を継続している。
 ・立体物認識アルゴリズム、路面状態(白線、障壁など)認識アルゴリズムに多くのノウハウを持っているのが強みになっている。
 ・アイサイトVer.1からVer.2 の際にも、30km/h以下の車速差の時の「ぶつからない機能」のためのアルゴリズム開発を自社内で行い、Ver.1 のハードウェアに搭載した。

 3)カメラ取付/調整/検査に関するノウハウも自社開発した。
 ・例えば、工場オフライン時の取付に関しては、ラインピッチ以内で調整完了するための方法を開発した。

 4)自社ノウハウを保護する特許を多数出願している。
 ・ステレオカメラ関連の特許出願は約200件。
 ・立体物認識アルゴリズムに関しては歩行者検知も含め120件程度、路面状態認識アルゴリズムに関しては20件程度の出願をしている。
 ・さらに特徴的なことに、カメラ取付/調整/検査関連の特許も20件以上出願している。

 

(4)今後の開発方向

アイサイト:技術開発の方向性(富士十工提供) インタビューを通して、ステレオカメラによるシステム開発に関する強い自信と、先端技術は普及してこそ価値があるとの思いを感じた。

 したがって、ステレオカメラの距離計測機能を生かし、認識性能のさらなる改良を目指して、

1)ステレオ画像処理技術の自社内開発は継続する。
 具体的には、
 ・視野の拡大: 視野角拡大 および 検出距離延長
 ・対象物認識処理技術の進化: 現検知可能物体の認識性能向上 および 認識対象物体の種類増加

を図り、単眼カメラや単眼カメラとレーダとのフュージョンなどの他システムとの差別化を図って行くと思われる。

 (注)継続開発の様子は、新型フォレスター発表会見(2012年11月)での、「追従走行する速度差を、従来の30km/hを50~60km/hに高める技術開発をほぼ終了した。」との発言にも表れている。

2)なお、前方/ステレオカメラ以外のカメラ技術に関しては、業界技術進歩を活用する方針だと思われる。すなわち、
  ・商品仕様に応じて、使える物を導入する。
  ・言い換えれば、ステレオカメラに開発資源を集中する。
という方向だと思われる。

 

各カーメーカの製品開発、技術開発状況

 カーメーカ各社のカメラ応用システムの開発状況を表に整理した。なお、カメラ単独のシステムだけでなく、レーダを使ったシステムおよびカメラとレーダを組み合わせたシステムも掲載した。

会社名 検知対象 システム概要説明
トヨタ 車両周囲 マルチアングル全周囲モニター(4つの単眼カメラ)
 富士通テンやアルパインのマルチカメラシステムをアルファード、ヴェルファイア、エスティマ、プリウスなどに搭載。
前方 LKA(レーンキープアシスト)
 単眼カメラによって車線検知して、車線内走行維持制御をする。
 アルファード、ヴェルファイア、クラウン、SAI などに搭載。
衝突回避支援型プリクラッシュセーフティシステム
 ミリ波レーダ、ステレオカメラを組み合わせ、自車と対象物の相対速度40km/h以下では自動ブレーキにより衝突回避を支援。近赤外線灯光器により夜間でも歩行者の検知が可能。
 LEXUS LSに搭載。
アダプティブハイビームシステム(AHS) (ルームミラー内蔵単眼カメラ)
 ハイビーム照射時に、先行車のテールランプや対向車のヘッドランプを検知し、その部分を自動的に遮光して対象車の眩惑を防ぐ。
 LEXUS LSに搭載。
ブラインドスポットモニター(BSM)
 ドアミラーで確認しにくい後側方を走行する車をミリ波レーダーで検知し、ドライバーに注意喚起することで、車線変更の安全運転を支援する。
 LEXUS LSに搭載。
ホンダ 車両周囲 マルチビューカメラシステム(4つの単眼カメラ)
 車両周囲の障害物検知。 オデッセイ、ステップワゴンなどに搭載。
前方 ハイビームサポートシステム (ルームミラー内蔵単眼カメラ)
 対向車のヘッドライトや前走車のテールランプを検知し、ビームを切り替える。
 アコードなどに搭載。
前方衝突警告システム
 単眼カメラによる前走車検知システム。
  2012年北米アコードクーペ搭載。
自動ブレーキ:普及タイプ(低速での自動ブレーキや警報)
 レーザレーダによる先行車認識。 開発中。(Honda meeting 2012で公開)
自動ブレーキ:高機能タイプ(ACCや車線認識機能付き)
 ミリ波レーダ+単眼カメラ。 歩行者も検知。60km/hでも停止。開発中。(Honda meeting 2012で公開)
日産 車両周囲 AVM(アラウンドビューモニター)  (4つの単眼カメラ)
 車両周囲の4カメラ画像の合成・視点変換し、俯瞰画像生成。
 セレナ、エルグランドに搭載。車種拡大中。
MOD(移動体検知)機能。 北米Altima に搭載。
 バックビューカメラにより、駐車場からの移動時に障害物検知。
後方カメラによるレーンディパーチャーワーニング。 北米Altima に搭載。
 バックビューカメラによる車線認識。
ブラインドスポットワーニング。 北米Altima に搭載。
 広角バックビューカメラにより後側方の車両検知、警報。
上記機能をリアビューカメラシステムに搭載し、KT法によるバックビューカメラ搭載義務化への差別化を図る。
前方 LDW (Lane Departure Warning)/ LDP (Lane Departure Prevention)
 単眼カメラより、車線を検知して車線内走行維持。
 北米Infiniti モデルなどに搭載。
前方衝突回避支援システム
 単眼カメラとレーダによって、前方車両との衝突回避支援(警報+ブレーキ制御)。
 開発中。先進技術発表会2012 で公開。
緊急操舵回避支援システム
 単眼カメラ、レーダ、レーザースキャナーによって、障害物のない方向を検知し、緊急ブレーキと緊急操舵を選択し、衝突を回避する。開発中。先進技術発表会2012 で公開。
スバル 前方 アイサイト 
レガシィ、インプレッサ、フォレスターなどに搭載。
ステレオカメラによって、前方障害物、車線を検知し、プリクラッシュブレーキ/全車速追従機能付きクルーズコントロール/車線逸脱警報 などの機能がある。
 1999年レガシィに ADA(Active Driving Assist) として搭載開始。
 2008年にアイサイトVer.1をレガシィに搭載。小型・低コスト化を図りアイサイトとして搭載。
 2010年にさらなる機能改善と低コスト化(販価10万円)を図り、車種も拡大(アイサイトVer.2)。
マツダ 前方/後側方 i-ACTIVSENSE  
アテンザに搭載。
前方ミリ波レーダ(76GHz)と単眼カメラによって先行車を検知し、前方障害物警報/自動ブレーキ制御(SCBS)、ヘッドランプ制御(HBC/AFS)、車線逸脱警報、AT誤発進抑制制御の機能を持つ。
後側方ミリ波レーダ(24GHz)によって後側方接近車両を検知する、リアビークルモニターリング警報(RVM)機能も持つ。
Volvo 前方 City Safety
 XC60に搭載。レーザレーダを使った車両衝突回避システム。
Human Safety
 S60に搭載。ミリ波と単眼カメラを使った車両+歩行者との衝突回避システム。
BMW 車両周囲 Surround View  
 3シリーズに搭載。5カメラ映像の合成(フロントバンパーの左右、左右ドアミラー部、リア)。
 駐車支援機能。
前方 SmartBeam DFL(Dynamic Forward Lighting)  
  3シリーズに搭載。
 リアビューミラー搭載CMOSカメラ(Gentex製)による他車ヘッドランプ/テールランプ検知。
FCW (Forward Collision Warning)
 1シリーズに搭載。
 単眼カメラ(Mobileye EyeQ2)を使った先行車衝突回避。
LDW (Lane Departure Warning)  
 1、3シリーズに搭載。
 車線検知して車線逸脱警報。
Mercedes
-Benz
前方・
後方・
後側方
all-round vision  (次期Sクラスに搭載予定)
 前方Long Range Radar + Mid-range Scan、前方Short Range Radar、後方Multimode Radar
 後側方Short Range Radar ×2
 前方ステレオカメラ、前方赤外線カメラ
前方障害物回避(操舵、ブレーキ)
  ステレオカメラとレーダで、車両と歩行者検知
交差点事故回避(レーダ)
歩行者、動物警報
車線維持制御(後側方車両警報を含む)
後方衝突回避、被害軽減
ヘッドライド制御
Audi 前方 Variable headlight range control   
 A3に搭載。
 車載カメラにより他車光源などを検知し、ビーム切替制御。
Active lane assist 
  A3に搭載。
 車載カメラにより車線検知し、車線逸脱警報およびステアリング制御支援。


 以下に、上表で紹介したいくつかのカーメーカのシステムのセンサ構成、機能を紹介する。

 

(1)トヨタ

 LEXUS のLSに搭載している、前方ステレオカメラ+ミリ波レーダをセンサとするプリクラッシュセーフティシステムのシステム構成である。先行車の検知だけでなく、近赤外線投光器を搭載することにより歩行者の検知を特徴としている プリクラッシュセーフティスステムのシステム構成

 

(2)日産

 バックビューカメラの高付加価値化を狙った開発が進んでいる。2012年10月に行われた「先進技術説明会」では、バックビューカメラ1台で下記の3つの機能を実現したことを紹介した。

1)ムービングオブジェトディテクション(MOD)
   後退時に移動物体を検知して、警報する。

2)レーンディパーチャーワーニング(LDW)
   バックビューカメラにて路面の車線を検知し、車線逸脱を警報する。

3)ブラインドスポットワーニング(BSW)
   左右の後側方の車を検知・警報し、車線変更時の安全を確保する。

 

(3)マツダ

 i-ACTIVSENSE のセンサ構成を示している。前方単眼カメラとミリ波レーダを組合わせて先行車の検知をしている。後側方からの接近車を検知する準ミリ波レーダ2つも備えている。 i-ACTIVSENSE のセンサ構成

 

(4)Mercedes-Benz

 前方ステレオカメラに加えて、前方Long Range Radar、前方および後側方に2つのShort Range Radar、後方Multimode Radar、遠近赤外線カメラを備え、車両全方向の障害物・歩行者検知性能を持っている。 Mercedes-Benz

 



部品メーカの開発状況

Mobileye社の開発状況: ― 単眼カメラ利用の安全システム搭載車が増加 -

(1)会社概要

本社 オランダ
開発拠点 イスラエル (約300名)
特徴 単眼カメラでの画像認識技術のノウハウで世界トップレベルの技術を保有。
開発したアルゴリズムを実装した画像認識専用SOCを持っている。
・EyeQ1, EyeQ2 は搭載済。衝突回避性能を向上したEyeQ3を開発済。
対応システム Lane Detection/Vehicle Detection/General Object Detection/Pedestrian Detection/Traffic Sign Recognition/ Head Lamp Detection
供給先
(HPより)
カーメーカ
Opel, BMW, Chrysler, GM, Ford, Hyundai, Jaguar, Peugeot Citroen, Volvo, Yulon Motors, Scania, 日系メーカ2社 など
Tier 1サプライヤ
Autoliv, Calsonic, Delphi, Gentex Corporation, Leopold Kostal, Magna Electronics, Mando vorp, TRW など

 

(2)Mobileye Japan の市橋会長、川原代表取締役にインタビューし、製品化状況や今後の計画を聞いた

1)会社設立の背景
  ・OEMからの「ステレオカメラを使った衝突回避システムを開発したい」との要求を受けた時に、「単眼カメラでできる」と回答したことが単眼カメラによる認識技術開発のきっかけである。
  ・その開発のために、イスラエルに会社を立ち上げた。

2)搭載状況

2007年,2008年 2011,2012年 2014年 2016年
搭載機能 LDW
 (GM,BMW)
LDW+CMB
 (Volvo)
LDW+IHC+TSR
 (BMW)
LDW+FCW
 (GM など)
LDW+IHC+TSR+FCW
 (BMW, Opelなど)
     LDW+LKS
      (Hyundai, Ford)
CAR AEBの追加 PED AEBの追加
規制状況 北米
NHTSA の
LDW+FCW搭載要求
欧州
NCAP-Vehicle
AEB
欧州
NCAP-Pedestrian
AEB
(注)  LDW  Lane Departure Warning
LKS  Lane Keeping Support
CMB  Collision Mitigation by Braking
FCW  Forward Collision Warning
IHC  Intelligent Headlamp Control
TSR  Traffic Sign Recognition
AEB  Autonomous Emergency Braking
PED  Pedestrian


 

 ・2007年にVolvo, GM, BMWへの搭載が始まり、2011年の米国NHTSAによるLDW+FCW搭載要求への対応の動きに後押しされ、現在は9社のOEMで採用されている。

 ・今後、2014年から始まる欧州NCAP対応のために、搭載車種の拡大が進む。(16社の見込み)

 ・単眼カメラ単独のシステムと単眼カメラ+レーダのフュージョンシステムの両方の実現形態があり、高級車ではフュージョンを採用するなど、各OEMの方針によって使い分けされている。

 

3)Mobileye単眼カメラシステムの特徴

画像認識SOC 画像処理用のカスタムCPU(VMP=Vector Microcode Processor)と
判断演算用汎用CPU(当初ARM 、現在MIPS)から構成される。
ソフトウェア構成 ソフトウェアは自社開発
コア部>アプリ部>パラメータ部 の3階層から構成され、
ユーザは通常、アプリ選択/パラメータ調整によって自社の製品仕様を実現する。
コアソフト、アプリソフトは、収集したユーザの走行データの解析を基に、
半年に1回のバージョンアップが行われる。
認識対象 現状:
 先行車両、歩行者、障害物、光源(ヘッドランプ、バックライト)、交通標識(速度規制)
 (存在認識と存在位置(距離)推定)
拡張予定:
 動物、交通標識(各種形状)、交通信号 など。
距離検出精度
の改良
ミリ波レーダに比べると距離検出が不安定な場合があるので、
EyeQ2使用時、車間距離制御型定速走行システム(ACC)への適用車速に制限があった。
改良によって、次世代バージョン(EyeQ3)では全速度対応する。

 

4)走行データデータベース

走行データ収集/解析の仕組み ・Mobileye社の製品開発は、膨大な走行データを収集/解析し、認識アルゴリズムの改良開発の材料にする仕組みを持っていることに特徴がある。

 ・Mobileye社は、自社カメラを搭載する車両開発のために世界各地を各種気象条件で、走行実験を行って得た走行時の画像データを取り込むデータベースシステムを運用している。

 ・ここに蓄えられたデータの解析によって、認識アルゴリズムの改良情報を抽出し、改良開発に使っている。改良されたソフトウェアは、すべてのユーザに提供される。

 ・既に数多くの採用実績により蓄積された膨大な収集データとノウハウはMobileye社の大きなアドバンテージであり、今後さらに増え続ける画像データベースは、その精度とカバーエリアにおいて他社の追随を許さないレベルにある。

 

5)今後の技術開発の方向

技術開発 認識技術の進化
 ・認識対象の拡大。
 ・フリースペース認識。
   ・単眼カメラによるDepth Map の取得。
 ・道路の凹凸検出
   ・歩道段差の検出が可能になる。
適用シーンの拡大
 ・ACCの適用車速の高速化のように、認識技術適用シーンの拡大を図る。
Self-Driving Car の開発
 ・車両周囲に複数のカメラを装備した、Self-Driving Car の開発に着手。
 ・開発成果は市街地渋滞時の走行支援機能などへの適用が検討されている。
   ・Volvoが2014年に搭載すると発表するなど、数社が製品化を検討中。
製品戦略 Tier1サプライヤを介して複数のOEMに共通技術を提供する業務形態は変わらない。
基本商品は「前方単眼センシングカメラ」だが、
 OEMの要求によってはセンサフュージョンにも対応する。(既に実績あり)
バックビューカメラの領域に対しては、
基本商品の「前方センシングシステム」にバックビューカメラ信号を取り込んで、
マルチ機能を実現する商品として対応する。
すなわち、基本商品のバリエーションとしてバックビュー取り込む。
(画像データがイーサネットを使って伝送される方式が一般化すれば可能になる。)

 

各部品メーカの開発状況

Tier1 Tier2 カメラ
デンソー 車線認識用など。レーダとのフュージョン技術を持つ。
ステレオ画像処理ECUを開発。
アイシンAW 後方カメラによって路面情報検知などを検知。
G-Book mX Pro対応ナビなどに搭載。
富士通テン 全周囲モニター用。
トヨタ車採用。
ホンダエレシス 車線認識用など。
ホンダに提供。
クラリオン 全周囲モニター、バックビューなど。
日産、富士重工などに提供。
アルパイン 全周囲モニター用。
トヨタに提供。
パナソニック 全周囲モニター、バックビューなど。
国内自動車メーカに提供。
日立AMS ステレオカメラ(画像処理LSI含む)
アイサイトに搭載。
Valeo 全周囲モニター、車線認識用など。
欧州OEM
Continental 単眼カメラ(車線認識など)、ステレオカメラ(歩行者検知)。
レーザレーダと単眼カメラの一体化開発中(SRL-CAM)。
Bosch 単眼カメラ(車線認識など)、ステレオカメラ(小型化を狙う)。
単眼カメラとレーダのフュージョンシステムは開発済(Audiなど)。
Mobileye 単眼カメラの画像認識技術で世界トップレベル。
多くのTier1に技術提供、現在9社のOEMで搭載。
市販の衝突防止補助システムを販売開始。


 日本のサプライヤは、モニターカメラの開発から始め、近年は制御用のセンシングカメラの開発にも乗り出している。

 欧州サプライヤは、制御用のセンシングカメラの開発に関して、日本サプライヤより開発経験が長い。

 Mobileye社は多くのサプライヤに単眼センシングセンサ技術で連携しているが、デンソー、Bosch, Continental, Valeo などのサプライヤはMobileye社と連携せずに自主開発を進めている。

 

 



今後の進化の方向

(1)システムの現状と今後の動向

センサ 現状と今後の動向
システム名称


























プリクラッシュセーフティ
(緊急自動ブレーキ)
(障害物認識技術)
アイサイトは、今後もステレオカメラだけでのシステム構成を継続する。
LEXUS で搭載。
Mercedes-Benz での技術発表があるなど、高機能版として残る。
Mobileye は単眼だけでのシステム実現に自信を持っている。
今後、普及版システムとして、多くのOEMが搭載すると思われる。
単眼カメラ単独のシステムに比べて、より高機能を備える。
今後も、このシステム構成は高機能版として搭載されると思われる。
現在の主流だが、今後はカメラの普及とともに減少すると思われる。
歩行者検知・警報 他の目的のカメラシステムと共用で歩行者を検知する技術が確立する。
(○) センサフュージョンが必要と見られていたが、今後は、カメラ単独に移行すると思われる。
夜間時検出として、搭載は継続される。
赤外光投光型にし、昼間用カメラで受光する方式が増加する。
車線検知・警報/
維持制御
他の目的のカメラシステムと共用で歩行者を検知する技術が確立する。
他の目的のカメラシステムと共用で歩行者を検知する技術が確立する。
今後、廉価型として、リアビューカメラによる車線検知方式が増加する。
対向車検知
(前照灯制御)
他の目的のカメラシステムと共用で歩行者を検知する技術が確立する。
標識、信号認識 他の目的のカメラシステムと共用で歩行者を検知する技術が確立する。
駐車支援(誘導) 日本では、この方式で市場拡大。
今後は、超音波センサとの併用が主流になると思われる。
今後の主流のシステムになると思われる。
欧州中心に、搭載拡大。
今後は、カメラシステムとの併用が主流になると思われる。
駐車支援
(移動物体検知)
現在は、日産が先行。
KT法対応などから各社の競争激化が予想される。
KT法対応
(バックビューモニター)
北米での法制化を見越して、各社開発中。
$159-$203 with Display, $58-$88 without Display (単価)との予想がある。
日産は、移動体検知技術、車線逸脱警報などの差別化技術を投入。
バックビューカメラの標準装備に伴い、そのカメラを使った差別化技術の開発競争が予想される。

 凡例 ◎:今後の主流センサ、 ○:使われているセンサ、(○):一部で使われているセンサ

(2)モニターカメラの動向

 国内での、バックビューカメラ、全周囲モニターの搭載拡大、および北米でのKT法導入への対応、さらに、欧州での駐車支援システムの普及によって、

1)モニターカメラの搭載は増加する。

2)モニターカメラシステムへの差別化技術搭載競争が激化する。
    (日産の、移動物体検知や車線維持支援技術のようなマルチ機能化)

 

(3)制御用センシングカメラの動向

 前方の障害物検知による運転支援技術は、カメラ技術の高度化/低コスト化に伴って

1)レーダ技術とのセンサフュージョンの必然性が弱まり、システム要求の高低に応じて、カメラ単独/センサフュージョンの選択が可能になる。

2)一つのカメラシステムでのマルチ機能化が進む。

3)単眼/ステレオ は、システム要求やメーカ戦略に応じて選択可能になる。



(参考)単眼カメラとステレオカメラの比較

比較項目 単眼カメラ 優劣 ステレオカメラ
画像認識精度 ・原理的には同等性能 = ・原理的には同等性能
距離測定精度 ・接地面画像とカメラ位置から計算 ・視差を利用した距離測定
雨・霧などへの対応 ・人間の目と同性能 どちらも同じ
ように弱点
( = )
・人間の目と同性能
単独システムの
成立性
・白線検知は可能だが、
・衝突警報/衝突回避制御では、単独システムと、ミリ波とのフュージョンの性能差は残ると思われる。
 (OEMの採用方針で選択される。)
・スバルが製品化している。(アイサイト)
・ステレオカメラ+ミリ波レーダのシステムはあるが、カメラ単独システムが主流になると思われる。
検査・調整の難易度 ・ステレオカメラに比べて容易である。 ・2つのカメラの光軸調整/輝度バランス調整など単眼カメラに比べて難しい。
コスト ・ステレオカメラより部品点数が少ない。 ・画像処理/認識部の共用など、コスト削減の工夫はされているが、単眼に比べ撮像素子1つ分は高い。
その他 ・カメラ単独システムに関する Mobileye社の技術力は高い。 ・スバルの蓄積している利用ノウハウ/知的所有権は膨大であり、後発での追随は困難。

 

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>