トヨタ アクア 分解調査(2)

燃費35.4km/Lを達成したハイブリッドシステム

2012/11/28

要 約

 財団法人埼玉県産業振興公社 次世代自動車支援センター埼玉の主催で、トヨタ アクアの車両分解見学会が行われた。主要部品サプライヤーと電池関連部品については下記レポートにて報告した。


前回のレポート:トヨタ アクア 分解調査 (1) (2012年11月掲載)


 本レポートは「トヨタ アクア 分解調査(2)」としてエンジンとハイブリッドトランスアクスルで構成されるドライブユニット、昇圧コンバータ*付パワーコントロールユニット (PCU)と各システムの機能に重点を置いて紹介する。


* 昇圧コンバータはDC144Vを最大DC520Vに昇圧、DC-DCコンバータはDC高圧をDC低圧(12V)に降圧する。

関連レポート:
日産リーフ 分解調査 その1 (2012年2月掲載)、
その2
(2012年9月掲載)、
その3 (2012年11月掲載)
新型プリウスの分解実験 (2010年3月掲載)
ドライブユニットのカットモデル
「東京モーターショー2011」に出展されたドライブユニットのカットモデル。
*写真はクリックすると拡大されます。


トヨタのハイブリッドシステム (THS II) 構成図

トヨタのハイブリッドシステム (THS II) 構成図

 

 



作業前のエンジンルーム

エンジンルームを上方から見た写真 エンジンルームを車両の左側前方から見た写真
エンジンルームを上方から見た写真。
右側にPCU、左側にエンジンが見える。トランスアクスルはPCUの直下にある。
エンジンルームを車両の左側前方から見た写真。
トランスアクスルの下部が見える。

 

 



昇圧コンバータ付パワーコントロールユニット (PCU)

PCUのカットモデル
「人とくるまのテクノロジー展2012」に出展された
PCUのカットモデル (車室側右方より見た状態)

 

車載状態のPCU PCU取り外し後のエンジンルーム
車載状態のPCU PCU取り外し後のエンジンルーム
インバータ、DC-DCコンバータ、昇圧コンバータを一体化したPCUで、アクア用に設計された。オレンジ色の高圧ケーブルは全て抜かれ、電極部分には白いテープが巻かれている。
赤い矢印が指しているケーブルはニッケル水素電池、青い矢印はジェネレータ、黄色の矢印は駆動モータ、白い矢印は電動コンプレッサに繋がっている。
中央にある金属部品はPCUを支える固定ブラケット。このブラケットを外すとトランスアクスルが現れる。
赤い矢印はジェネレータに繋がる高圧ケーブル。
白い矢印が指しているケーブルは補機バッテリーの充電等を行う低圧コネクタ。
PCUは水冷式なので、写真上には冷却水が流れる黒いホースがある。

 

取り外したPCU
取り外したPCU 取り外したPCU
取り外したPCUを前方より見た状態。
インバータおよびコンバータの小型・軽量化により、現行プリウス比で重量が1.1kg、体積が12%低減されている。
PCUを車両後方から見た写真。
右側の丸い開口部はニッケル水素電池と、中央の横に長い開口部はジェネレータと、左側の同開口部は駆動モータと繋がる高圧ケーブルが通る。
右下には豊田自動織機のロゴが見える。豊田自動織機製はDC-DCコンバータのみで、PCUアッセンブリはトヨタ内製。

 

PCUの内部
PCUの内部 PCUの内部
左の写真はPCUカバーの裏側で、黒色充てん樹脂の内部に昇圧コンバータが取り付けられている。
写真右の上部にある基板はMG(モータ/ジェネレータ)コントロール基板、下段はゲートドライブ基板 (プリドライバ)。
下段の基板の下にはDC-DCコンバータがあり、ニッケル水素電池からのDC144Vを12Vに降圧し、ECUや照明等への電源供給および補機バッテリーの充電を行っている。
写真では見えないが、DC-DCコンバータ下にはインバータとコンバータを制御するIGBT (スイッチング素子)がある。IGBTには新開発の直接冷却構造が採用されている。

 

 



ドライブユニット

ドライブユニットの取り外し ドライブユニットを取り外し後のエンジンルーム
ドライブユニットの取り外し ドライブユニットを取り外し後のエンジンルーム
車両を上げ、タイヤをクッションにしてドライブユニットを取り外す。 ドライブユニットを取り外した後のエンジンルームを下から見た写真。中央左側にある遮熱板にはエキゾーストパイプが収納されていた。その右側に見えるオレンジ色のケーブルはニッケル水素電池とPCUを繋ぐ高圧ケーブル。

 

ドライブユニット
ドライブユニット ドライブユニット
取り出されたドライブユニットを車両前方から見た写真。写真右側がトランスアクスル、左側がエンジンとなる。
写真左下にある高圧ケーブルで繋がっている部品はHVAC用電動コンプレッサで、昇圧コンバータでDC202~288Vに昇圧された電流で作動する。
ドライブユニットを車室側から見た写真。
矢印が指している銀色の部品はクールドEGR (排出ガス再循環)システム。中央の遮熱板の内側には触媒一体型のエキゾーストマニホールドがある。触媒とエキゾーストマニホールドの一体化により触媒暖機時間は現行プリウスより67%短縮した。

 

エンジン
エンジン エンジン
ドライブユニットを分離した後のエンジンの写真。左の写真は車両斜め右前方から見た写真。右の写真は車両左側から見た写真。
エンジンは初代および第2世代プリウスと同じ型式の1NZ-FXE。しかし、第2世代プリウスで採用されたエンジンからの流用部品は全体の3割程度で、ほとんどが新設計または新規採用部品となっている。
左の写真の中央下方に見える複数の突起がある銀色の部品は現行プリウスにも採用されたアイシン精機製の電動ウォーターポンプ。電動化することで必要な時に必要な量の冷却水を送ることができることに加え、補機ベルトが不要なためフリクションの低減が可能となり、燃費向上にも貢献している。また、小型化することでシリンダーブロックの側面に配置できるため、エンジンの小型化にも繋がっている。
左の写真の矢印が指している黒い部分はインテークマニホールドで、EGR通路の一体化等により小型化されている。電動ウォーターポンプの下にはデンソー製の電動コンプレッサがある。

 

エアフィルタ エキゾーストパイプ
エアフィルタ エキゾーストパイプ
エアクリーナケースを分解した写真。写真右側にあるケースの外側には豊田合成、エレメント(フィルタ)にはデンソーと記載されている。
写真左側のケースの前面右方にある黒い部品は吸気温センサ(内蔵)のプラグイン式エアフローメータ。
写真のパイプアッセンブリには搭載されていないが、メーカーオプションで三五製の排気熱回収器を搭載することも可能。トヨタの発表によると、排気熱回収器の搭載によりエンジン暖機時間を短縮できるため寒冷地での燃費は9%向上する。

 

 



トランスアクスル

 トランスアクスルは、モータとジェネレータ、その中間に配置されたギヤトレーンで構成されている。まず、モータとジェネレータを取り外した。


トランスアクスルのカットモデル
「人とくるまのテクノロジー展2012」に出展された
トランスアクスルのカットモデル(前方より見た状態)。

 

トランスアクスル
トランスアクスル トランスアクスル
トランスアクスルを車両左側(モータ側)から見た写真。
トランスアクスル上部にある高圧ケーブルはジェネレータに、同右側にある高圧ケーブルは駆動モータに繋がっている。
写真中央の赤い矢印で示している部分はオイルポンプが、白い矢印で示している部分の中にはモータレゾルバが搭載されている。
アクア用に設計されたトランスアクスルは部品数の軽減と小型・軽量化により、現行プリウスに比べ、全長が21mm短くなり、重量が8kg低減されている。
左の写真の外側カバーを取り外すと駆動モータが現れる。
モータの右斜め上にある白っぽいケーブルは温度センサ。カバーの中央から外に出ている薄い赤色のケーブルはモータレゾルバ (角度センサ)。
モータのコイルは古河電気工業と古河マグネットワイヤが共同開発した平角巻き線で、平角導体、エナメル層、押出樹脂層で構成されている。
平角巻き線の採用により、コイル巻線抵抗値が低減されるため、コイル電流値が増加し、パワーが増強される。さらに、渦状の規則正しい配線が可能となるため、巻き線部分の高さ (コイルエンド)は現行プリウス比で15%縮小している。

 

駆動モータのステータ取り外し 駆動モータのステータを取り外した後
駆動モータのステータ取り外し 駆動モータのステータを取り外した後
駆動モータのステータを取り外す作業は永久磁石の磁力が強いため、一人で取り外すことができず、先の曲がったマイナスドライバーのような工具を使用し、3人がかりでようやく取り外した。 駆動モータのステータを取り外し、ロータが残っている。
写真右上にある矢印が示している部分はPCUと駆動モータを繋ぐ高圧ケーブルが通る。

 

駆動モータのロータ
駆動モータのロータ
駆動モータのロータを取り外し、横から見た写真。

 

トランスアクスルのエンジン側
トランスアクスルのエンジン側
エンジンとトランスアクスルが接触していた部分。この裏側にジェネレータがある。
写真中央に飛び出しているシャフトは動力分割機構の一部で、エンジンの駆動を伝達する。

 

トランスアクスル内のジェネレータ ジェネレータを取り外した後
トランスアクスル内のジェネレータ ジェネレータを取り外した後
エンジン側の外側カバーを外すとジェネレータが現れる。
ジェネレータの左斜め上に見える白っぽいケーブルは温度センサ。
取り外し作業は駆動モータと違い、一人で簡単に取り外すことができた。
写真上部に見える薄い赤色のケーブルはジェネレータレゾルバ (角度センサ)。

 

ジェネレータ
ジェネレータ ジェネレータ
取り出したジェネレータ (エンジン側)の拡大写真。
構造や巻き線は駆動モータと同様だが、ステータの高さは低く設計されている。
巻き線の形状を外周と平行にかつ斜めにすることで、巻き線部分(コイルエンド)の高さを下げている。
ジェネレータを逆側 (ギヤトレーン側)から見た写真。
溶接部 (写真の灰色部分)の被覆剥離による導体の露出を防ぐため、樹脂による絶縁被膜処理を行い、絶縁性能を確保した。

 

 



ギヤトレーンの分解

 「ギヤトレーン」は動力伝達、動力分割、モータリダクション、パーキングの4機能を持つ。

ギヤトレーンの分割
ギヤトレーンの分割 ギヤトレーンの分割
駆動モータとジェネレータを取り外した後、ギヤトレーンを2つに分割している。
写真右側がモータ側、左側がエンジン側。
ギヤトレーンを左斜めから見た写真。
持ち上げられているギヤはカウンタードリブンギヤ。

 

ギヤトレーンの内部
ギヤトレーンの内部 ギヤトレーンの内部
ギヤトレーン内部のモータ側。
写真中央の動力分割機構の右下にあるのがパーキングブレーキ機構。
ギヤトレーン内部のエンジン側。
中央左側の小さいギヤ(赤い矢印)はカウンタードリブンギヤ。その横にある大きいギヤ(白い矢印)はファイナルドリブンギヤで、駆動シャフトに繋がり、前輪を駆動する。ディファレンシャル機構も持つ。
ギヤの歯面仕上げには研磨加工と内歯シェービング加工を採用し、低振動および静粛性を向上した。

 

動力分割機構 (兼モータリダクション機構)
動力分割機構 (兼モータリダクション機構) 動力分割機構 (兼モータリダクション機構)
ギヤトレーンの中核部品である動力分割機構 (兼モータリダクション機構)。
この中に駆動モータと繋がるリングギヤ、シャフトを通じてエンジンと繋がるプラネタリキャリヤ、ジェネレータと繋がるサンギヤが組み込まれている。なお、この機構は多機能で、モータリダクションギヤも組み込まれている。
左の動力分割機構を分解した写真。左側が駆動モータ側、右側がエンジン側である。
左のギヤはモータの回転を減速した上で、中央のギヤの内側にあるリングギヤに伝える。右のギヤはエンジンの駆動を伝えるプラネタリキャリヤ。ジェネレータに繋がるサンギヤはプラネタリキャリヤの内側、動力分割機構の中央にある。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>