日産リーフ分解調査(その2):主要部品の分解展示報告

リチウムイオン電池パック、インバータ、DC-DCジャンクションボックスなど

2012/09/14

要 約

 財団法人埼玉県産業振興公社 次世代自動車支援センター埼玉の主催で、日産リーフの車両分解研究会が2011年12月に実施され、その結果概要を2012年2月に下記レポートにて報告した。


前回のレポート:日産リーフの分解調査(2012年2月掲載)


 その後、上記財団法人の自動車産業部会会員企業により、主要ユニット・部品をさらに分解する「部品分解検討会」が行われ、その結果が川口市の埼玉県産業技術総合センターにて7月17日~8月24日に一般公開された。主要部品では、ドライブユニットがモータのステータ(固定子)、ロータ(回転子)、動力伝達装置(減速機)に分解されていた。またリチウムイオンバッテリパック、インバータ、DC-DCジャンクションボックス、車載充電器のカバーが開けられ内部を見ることができた。

 本レポートは、一般公開された主要部品分解結果と、前回のレポートで細かくは触れていなかったブレーキシステムや高電圧部品冷却・エアコンシステムの項目を追加し、「日産リーフ分解調査(その2)」として報告する。


※写真はクリックすると拡大されます。



モータ、動力伝達装置(減速機)からドライブシャフトまでの電動パワートレイン

 

永久磁石モータ(IPMモータ) ステータ(固定子)
永久磁石モータ(IPMモータ) ステータ(固定子)
 ネオジム系永久磁石埋め込み式3相交流同期モータ「EM61型」。IPMはInterior permanent magnetの略。駆動電圧 345V、最高出力 80kW、最大駆動トルク 280Nm、最高回転数 10,390 rpm。質量58kg。
 写真奥から、フロントカバー、ステータ、ロータ、リヤカバーが並べられている。日産横浜工場で内製。
 制御電流により力をコントロールする。巻線には磁気回路面で有利な分布巻きを採用した。

 

ステータ(固定子)ハウジング ロータ(回転子)
ステータ(固定子)ハウジング ロータ(回転子)
 ハウジングは、モータを冷却するためのウォータージャケットを中子で形成したアルミニウム鋳造製。  右側のシャフトがロータの中心部を貫く。ステータコアのコイルに3相交流電流を流すことで回転磁界が発生し、その磁界でロータコア内の永久磁石が引っ張られ、回転トルクが発生する。回転トルクは電流にほぼ比例する。

 

モータのリヤカバー モータのフロントカバー
モータのリヤカバー モータのフロントカバー
 中心部に黒っぽく見えるのはレゾルバ(回転位置センサ)。ロータを最適に回転させるには、ロータのどのタイミング(回転角度)で、どれだけの電流を流すかがポイントで、レゾルバと電流センサの信号により制御する。

 

動力伝達装置(減速機) 電動パーキングロック・アクチュエータ
動力伝達装置(減速機) 電動パーキングブレーキ・アクチュエータ
 写真向かって右側の結合部に、モータのロータ中心部を貫くシャフトが接続され、左側の結合部にドライブシャフトが接続される。動力伝達装置(減速機)は(内部は見えないが)、インプットギヤシャフト、回転方向の変更もするメインギヤシャフト、ファイナルギヤで構成。最終減速比は 7.9377。出力軸となるファイナルギヤの内部には、ディファレンシャル機構を有する。愛知機械工業製。  パークロック機構は、減速機内にあり、減速機上部に取り付けられたシフトアクチュエータにより作動する(デンソー製)。なお同ECUは、後部荷室に配置されている(アドヴィックス製)。

 

ドライブシャフト(モータルーム内) ドライブシャフト拡大写真
ドタイブシャフト(モータールーム内) ドライブシャフト拡大写真
 写真中央部の「ドライブシャフト」が、減速機の駆動用シャフト結合部に連結し車両を駆動する。なおモータは、ドライブシャフトより前方に配置されている。  左のドライブイシャフトの拡大写真。すぐ奥は電動パワーステアリングで、ステアリングシャフトが降りてきている。

 

 



インバータとDC-DCジャンクションボックス

 インバータは、リチウムイオン電池の直流を交流に変換し、交流同期モータとの組み合わせで、きめ細かい回転数制御を可能にしてEVの走行を支える基幹部品。

 またDC-DCコンバータを内蔵するDC-DCジャンクションボックスは、リチウムイオン電池とインバータの中間に配置され、リチウムイオン電池からの高電圧電源を必要な装置に分配し、また12Vに変換して12Vバッテリーに充電する。

 

駆動用モータインバータ
駆動用モータインバーター
 インバータは、レゾルバ検出信号、電流センサ検出信号を基に、モータを効率よく稼動させる。DC電圧(240~403V)、寸法304×256.5×144.5mm (11.3L)、質量16.8kg。
 インバータの底面は、冷却水路を形成したアルミダイキャストの「ウォータージャケット」になっていて、その上にモータ制御の中核となるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を内包するパワーモジュールが収められている(写真では見えない)。
 中央最上部に見える基板がモータコントローラ。その下は平滑コンデンサで、4個の四角い端子が見える(実際は6個の端子があり、3組の平滑コンデンサが配置されている)。
 インバ-タは、日産の座間事業所およびカルソニックカンセイの児玉工場(埼玉県)で生産している。

 

DC-DCジャンクションボックス DC-DCジャンクションボックス拡大写真
DC-DCジャンクションボックス DC-DCジャンクションボックス拡大写真
 DC-DCジャンクションボックスは、車室床下に納められたリチウムイオンバッテリパックと、駆動用モータインバータの中間に配置されている。上の写真は横になっているが、左側を上にして立てた状態で搭載される。機能としては、(1)リチウムイオンバッテリからの高電圧電源の分配、(2)12V電源系システムへの電源供給、(3)12Vバッテリーの充電、を行う。
  左上写真の左側のボックスはDC-DCコンバータ(デンソー製)、右側はリレー類で、"Panasonic"の表示が見えるボックスは、パナソニックデバイス帯広(株)製の汎用EVリレー"AEV 14012 M03"。12V系に電源を供給している(同リレーの接点最大許容電流(Contact rating)は120A、コイル定格電圧(Coil voltage)は12V DC)。
 また、普通充電リレーおよび急速充電リレーを有し、充電モードに合わせて充電回路の切り替えを行う。

 

ドライブユニット取付けフレーム
DC-DC取付けフレーム
 写真右側が車両前方。フレームの左側(車室側)にDC-DCジャンクションボックスを取り付け、中央部の上部にモータインバータ、下部にモータと減速機を納める。これらの部品には高電圧電流が通るので、衝突時の安全性を考慮した堅牢なフレームで支持している。

 

 



リチウムイオンバッテリ

 

リチウムイオンバッテリパック バッテリコントローラ
リチウムイオンバッテリーパック バッテリーコントローラ
 写真左側が車両前方。半数近くのバッテリモジュールが外された状態を示している。左・奥に黒く見える部品はバッテリージャンクションボックスで、通常は写真左側中央部にある。また、右・手前の位置に「リチウムイオンバッテリ コントローラ」が配置されている(写真では取り外されている)。
 リーフでは、4枚のラミネート型セルを一つにまとめてモジュールとした。フロントモージュールスタックは、モジュールを横にした状態で24個、リヤモジュールは立てた状態で24個、合計48個のモジュールを搭載する。AESCオートモーティブエナジーサプライ製。
 電池制御の中核。電池の電圧、電流、パック内の温度、各セル電圧を検知し、SOC(充電状態)等を把握するとともに、入出力可能値、充電可能値、メータ表示値等を演算し制御する。
 リチウムイオン電池はニッケル水素電池などに比べ各セル間のバラツキが拡大しにくい特徴を持つが、長期の使用においてはバラツキが発生する。各セル電圧を下記バスバーの信号に基づきバッテリーコントローラ内で検出し、バイパススイッチをONにし容量の高いセルを放電させる。これによりバラツキを適切な範囲に保ち、また各セルの容量をフルに利用可能にする。カルソニックカンセイ製。

 

バッテリージャンクションボックス バスバー(接続カプラ)
バッテリージャンクションボックス バスバー(接続カプラー)
 以下を内蔵する。(1)システムリレー(バッテリーからの直流電流を供給)、(2)プリチャージリレー(パワーON直後の大電流から高圧電圧回路を保護)、(3)電流センサー(バッテリー電流を測定)。システム異常時には、VCM(Vehicle control module)からの指令によりシステムメインリレーを直ちにOFFし、バッテリーを遮断して安全を確保する。  写真中央の帯状の金属(銅製)は、48個のバッテリモジュールを直列につなぐ接続カプラで、バスバー(Bus bar)と呼ぶ。バスバーの中央部は、各セルの電圧をモニターするセンサ。
 
サービスプラグ(Service disconnect switch)
サービスプラグ
 バッテリパックの中央部にあり、非常時に手動でプラグを引き抜くことにより、電源を切ることができる。車室内からも操作可能になっている。

 

 



充電コネクタと車載充電器

 

普通充電用コネクタと急速充電用コネクタ
普通充電用コネクタと急速充電用コネクタ
 普通充電用コネクタ(写真中央)を使用する家庭用交流電流は、車載充電器で直流に変換されて、DC-DCジャンクションボックスの中にあるDC-DCコンバータに入る。急速充電用コネクタ(写真手前)は、直流電流で充電するので、車載充電器を通らずDC-DCコンバータに入る。矢崎総業製。

 

車載充電器 車載充電器拡大写真
車載充電器 車載充電器拡大写真
 車載充電器は、外部からの交流の電源を直流の電源(260-410V)に変換し、リチウムイオンバッテリに充電する。ニチコン製。
 車両後部荷室内に搭載されている。
 写真手前に、ニチコン製アルミ電解コンデンサが見える。

 

車載充電器のカバー
車載充電器のカバー
 ニチコンの製造を示すラベルと注意事項が貼られている。

 

 



電動型制御ブレーキシステムと電源バックアップユニット

 

電動型制御ブレーキユニット 電動型制御ブレーキユニットのECU拡大図
電動型制御ブレーキユニット 電動型制御ブレーキユニットのECU拡大図
 回生ブレーキを有効活用しながら、摩擦ブレーキと協調させて、違和感なく必要な制動を確保するシステム。市街地での制動の80%以上を回生協調ブレーキ(摩擦ブレーキの作動なし)でカバーできる。
 モータールーム内、運転席のすぐ前に設置され、上部の白いボックスが制御用ECU、その下の円形の部分がモータ、モータの手前がマスターシリンダーの機電一体型ユニット。内燃エンジン車の負圧ブースタを、モーターの回転を直動変換する機構に変更した。それ以外はガソリン車のブレーキから大きな変更はしないで、信頼性の確保を図った。VDC(Vehicle dynamics control)もガソリン車用ユニットを使用する。日立オートモティブシステムズ製。

 

ブレーキ圧ポンプ
ブレーキ圧ポンプ
 エンジンルームの、車両前方から見て右側(助手席の前)に配置されている。電動型制御ブレーキユニットに接続している。

 

ブレーキ電源バックアップユニット ブレーキ電源バックアップユニットと
電動パーキングブレーキコントロールモジュール
ブレーキ電源バックアップユニット ブレーキ電源バックアップユニットと電動パーキングブレーキコントロールモジュール
 12Vバッテリーの電圧が低下した場合に、電動ブレーキの補助電源としては電力を供給する。パナソニック製で、同社製キャパシタを使用。写真左側がカバーで、右側はカバーを撤去した後の装置。車両後部荷室内に搭載している。  左の写真の右側部分を拡大したもの。右上のケースは、アドヴィックス製電動パーキングブレーキコントロールユニットで、後部荷室にバックアップユニットと並べて配置されている。

 

前輪ホイールと主ブレーキ 後輪ホイールと主ブレーキ
前輪ホイールと主ブレーキ 後輪ホイールと主ブレーキ
 ブレーキはベンチレーティッドディスク式、
サスペンションは独立懸架ストラット式
 ブレーキはベンチレーティッドディスク式、
サスペンションはトーションビーム式

 

モータルーム内部

主要部品撤去後のモータルーム 主要部品撤去後のモータルーム拡大写真
主要部品撤去後のモータルーム 主要部品撤去後のモータルーム拡大写真
 モータ、減速機、インバータ、DC-DCジャンクションボックスなどを分離・撤去した後のモータルーム。写真中央は電動パワーステアリング(ステアリングシャフトが降りてきている)、その手前がドライブシャフト、左右の上部に、ブレーキシステムが見える。

 

 



高電圧部品冷却システムとエアコンシステム

 EVリーフは高電圧電流を使用するため、エアコン(冷房および暖房)とは別系列で、高電圧部品冷却システムを稼働させている。

 

ラジエータ(高電圧部品冷却システム用)と
エアコン・コンデンサ(冷房システム用)
冷却用電動ウォーターポンプ
ラジエータ(高電圧冷却システム用)とエアコンコンデンサ(冷房システム用) 冷却用電動ウォーターポンプ
 ラジエータとエアコン・コンデンサが並べて配置されている(配置は通常のガソリン車と同じ)。
 ラジエータは、運転席側と助手席側それぞれにある電動ウォーターポンプとともに、高電圧部品(駆動モータ、モータインバータ、DC-DCジャンクションボックス、車載充電器)を冷却する。
 高電圧冷却システムに設置されている2個のウォーターポンプの一つ(運転席側)。

 

電動コンプレッサ(冷房システム) PTC素子ヒータ(暖房システム)
電動コンプレッサ(冷房システム) PTC素子ヒータ(暖房システム)
 スクロール式を採用した電動コンプレッサ。インバータ、コンプレッサ、モータを一体化した構造で、任意の回転数によるコンプレッサの運転を可能にした。パナソニック製。  PTC素子は、電流を流すと発熱する特性があり、リーフの暖房はPTC素子ヒーターを利用している。湯沸かし器のようなものを使い、電気的に水を温めて暖房に使用する。ドイツのEberspaecher社製。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>