ASEAN自動車基準統合の動き:2015年までに基準統合と相互承認を目指す

2011年中の素案作成作業は遅れぎみ

2011/09/08

要 約

 ASEANは、2015年には自動車分野における基準統一と、その認証の相互承認(MRA)の実現に向けた活動をしている。現在、自動車作業部会(APWG)では優先基準19項目選択し、国連「自動車基準調和世界フォーラム」WP29で作成された統一基準 (UNECE基準)を使用して、このASEAN MRAを実現しようとしている。

 ASEANの相互承認(MRA)基準の提案作成にあたっては、統一基準そのものの策定に加えて、運用面や認証試験実施に向けた認証試験方法の統一や試験機関の資格要件の明確化など、多くの課題があり、現在はそれらの課題解決に向けた作業が行われている。

 自動車作業部会(APWG)には、2011年中にASEANの相互承認(MRA)基準の最終提案をまとめることが求められているが、作業は遅れぎみとなっている。



1.ASEAN共同体と自動車基準の統合

 ASEAN自動車市場は、まだ世界の主要市場と比較するとそれほど大きくない。販売台数では、日本の約半分、欧州の20%弱の規模である。だが、その市場の伸び率(2010年/2009年)は135%と、近年、伸び率の高い中国(132%)、インド(134%)を超える大きさであり、最近は政治情勢も比較的安定していることから安定成長が期待できる。

 そのASEANを強化させる議論では、EU経済共同体型の単一市場形成の議論が起きて久しい。自動車関連分野でも域内相互の関税引き下げ・撤廃を目標に自動車、およびその部品類の規制統一、認証の統一、相互承認(MRA)の動きが活発化している。

表-1 自動車市場比較(2010年実績)

国・エリア 販売台数(万台) 人口(万人)
前年比(%)
ASEAN 245 135 59,229
日本 496 108 12,654
EU 1,299 95 49,285
米国 1,159 112 31,038
中国 1,806 132 134,893
インド 304 134 122,451
ブラジル 351 112 19,495
中近東(GCC) 115 112 4,350
ロシア 189 129 14,296

資料:日本自動車工業会自動車統計月報、JETRO「国、地域別情報」などより作成。


 この自動車基準調和の議論は、日本の自動車業界にも大きな影響を与えることになる。そして、これが実現すれば基準調和や認証の相互承認を議論している国連「自動車基準調和世界フォーラム」WP29への影響力も飛躍的に増加し、EUに準じる力を持つことになる。この背景となっているASEAN全体の活動を簡単に触れておきたい。

 1992年に、ASEANでは、域内の自由貿易化、AFTA(ASEAN Free Trade Area:ASEAN自由貿易地域)の実現に向けたCEPT(Common Effective Preferential Tariff:共通有効特恵関税)の設立などをうたった協定が作られた。その中で、2020年までに域内の関税撤廃などの具体的な将来像が明確化された。

 結果、これ以降、日本などを中心とした外国資本は、主要ASEAN諸国に対する投資を活発化していった。自動車メーカーだけでなく部品メーカーも含めて、タイやマレーシアなどに対して生産拠点拡大、開発拠点の育成に力を注ぎ、ASEAN地域の中で部品供給ネットワークが整備されていった。

 2006年8月のASEAN、日本、中国、韓国、インド、豪州、ニュージーランドによる16カ国経済担当閣僚会議で自由貿易協定(FTA)構想の実現の向けた動きが合意されるなどの外的な要因もあり、目標の前倒しが行われることとなった。

 翌年、2007年1月のASEAN首脳会議で

 1)2015年までに、ASEAN共同体(the ASEAN Community)の設立を目指すこと、

 2)その共同体は、ASEAN 政治・安全保障共同体(APSC)、ASEAN 社会・文化共同体(ASCC)、ASEAN 経済共同体(AEC)からなる構成で実現することが合意された。

 2007年11月には、ASEANの法的な枠組みとしてASEAN Charter(憲章) が制定され、加盟国の批准が終わった2008年12月に発効している。これにより、域内人口ではEUなどを超える巨大市場形成に向けて歩みだしたことになる。

図-1 ASEAN経済共同体(AEC)活動の歴史

図-1 ASEAN経済共同体(AEC)活動の歴史


 ASEAN経済共同体(AEC)傘下で、産業分野の規制、認可制度の改善を図るためのASEAN標準化・品質管理諮問評議会 (ACCSQ :ASEAN Consultative Council for Standards and Quality)が1992年に設立され、基準調和や認証の相互承認のための活動が始められていた。

 ASEANの目標達成年が2020年から2015年に前倒しされたのに伴い、AEC-ACCSQの活動日程も見直しが行われ、認証の相互承認に向けた活動の加速化も求められた。

 表-2に示すような、ASEAN標準化・品質管理諮問評議会 (ACCSQ) の活動範囲(TOR; Terms of Reference)が定められた。その中で20の産業分野についてそれぞれの地域特性にもとづく慣習や、基準に関連した関税障壁をなくすこと、法規類、評価基準などの情報交換を図り、域内で統一した技術要件と認証方法を定めて認証の相互承認を実現することなどがうたわれている。

 ASEAN標準化・品質管理諮問評議会 (ACCSQ)では対象となる重点産業分野について、分野ごとにワーキンググループによる活動が行われている。自動車分野はAutomotive Product Working Group(APWG)が担当している。

表-2 ASEAN標準化・品質管理諮問評議会 ACCSQの活動範囲/目標

 To eliminate Technical Barriers to Trade (TBT) related to Standards and Conformance. (地域特性にもとづく慣習や、基準に関連した関税障壁をなくすこと)
 Information exchange on Laws, Rules, Regulatory Regimes on Standards and Conformity Assessment Procedures. (法規類、評価基準などの情報交換を図る)
 Harmonization of standard, Technical Regulations and Conformity Assessment Procedures. (域内で統一した技術要件と認証方法を定める)
 Harmonization of Standards for 20 priority products. (優先20分野での基準調和を進める)
 Mutual Recognition Arrangements. (相互承認を実現する)

 

 ASEAN標準化・品質管理諮問評議会 (ACCSQ)の活動は大別して、1)優先産業分野の規格統一、2)認証の相互承認(MRA)の実現、3)基準調和となる。

表―3 ASEAN標準化・品質管理諮問評議会 ACCSQの活動

優先産業分野の
規格統一
Prepared Foodstuff 加工食品、Healthcare Products 健康管理製品、Cosmetics 化粧品、Medical Devices 医療機器 Pharmaceuticals 調剤、Rubber-basedラバー 製品、Electrical and Electronic Equipments 電気、電子機器、Traditional Medicine and Health Supplement 医薬品および健康サプリメント、Wood based Products 木製品、Automotive 自動車関連
認証の相互承認
(MRA)の実現
実現している
MRA

1998年

2002年

2003年

2009年

ASEAN Framework Agreement on MRAs ASEAN MRA枠組み協定
Sectoral MRA for Electrical and Electronic Equipment 電気、電子機器分野MRA
ASEAN MRA of Product Registration Approval for Cosmetics化粧品製品登録MRA
ASEAN Sectoral MRA for GMP Inspection of Manufacturers for Medical Products 医療製品の生産監査MRA
開発中の
MRA
MRA on Recognition of Conformity Assessment Results for Prepared Foodstuff  加工食品評価結果のMRA
ASEAN MRA on Type Approval for Automotive Products 自動車製品のMRA
基準調和 実現している
基準調和
2003年


2005年
Agreement on the ASEAN Harmonized Cosmetic Regulatory Scheme --- ASEAN Cosmetic Directive 化粧品統一基準大綱協定―――ASEAN化粧品指令
Agreement on the ASEAN Harmonizes Electrical and Electronic Equipment Regulatory Regime 電気、電子機器統一基準体系協定
開発中の
調和基準
ASEAN Medical Device Directive  ASEAN医療機器指令
ASEAN Regulatory Framework for Traditional Medicines and Health Supplement 医薬品および健康サプリメントに関するASEAN基準枠組み

 

 各産業分野の中で、電気・電子製品や化粧品などは、順調に作業が進められている。一方、自動車分野は内容が多岐にわたること、国連で先行している活動があること、その整合性を検討しなければいけないことなどの要因があり、活動が大幅に遅れている。

 日本の業界、政府も長年にわたって作業に協力し、基準については国連のUNECE基準をベースにすることなど方向性は合意されているが法規適用、認証行為の運営など具体的な実施に至るまでには多くの課題を残しているのが実情である。

 次節では、自動車作業部会 (APWG)の活動を追いながら、自動車分野での基準調和・認証の相互承認の検討状況を紹介する。


(用語説明)

WP29、UNECE基準、1958年協定とは

 国連欧州経済委員会(ジュネーブ)傘下で、自動車関連の技術的な基準の統一を図る委員会として「自動車基準調和世界フォーラム」WP29 が設置されている。WP29には、国連加盟国は全て参加する資格を有し、さらに自動車に関係する産業界組織など国際的な非政府組織も参加し、基準作成に貢献できることが特徴となっている。

 WP29の1958年協定のもとで作成された基準がUNECE基準と呼ばれ、現在127項目の基準が存在する。この基準の特徴は、自動車の部品やシステムなどの技術要件の統一を図るとともに、その技術要件にもとづいた認証方法も規定され、認証結果の相互承認(MRA)が実現されている点にある。

 現在、EU各国、ロシア、日本、豪州、南ア、韓国など47カ国に加えて、地域共同体としてEUが加盟している。ASEANからはタイ、マレーシアが既に加盟し、インドネシア、フィリピン、ヴェトナムなどが加盟準備中である。

参照文献:自動車技術2008年10月Vol.62 20084936「国際基準調和の枠組みとその策定プロセス」

 



2.自動車分野での基準調和と認証の相互承認に向けて-自動車作業部会(APWG)の活動

 自動車作業部会Automotive Product Working Group(APWG)の活動目標も他の産業分野と同じように

1)関税障壁をなくし、貿易促進を図ること、

2)そのために規格や基準、技術要件の統一を図ること、

3)規格・基準認証の相互承認の実現、

4)認証方法も含めた共通の法規体系を確立することなどが挙げられている。


 現実には主要ASEAN諸国で自動車に関する数多くの製品規格が存在し、運用されている。

 例えば、タイではTIS(タイ工業規格)、マレーシアではMS(マレーシア規格)、インドネシアではSNI(インドネシア規格)などが自動車の部品を中心に製造、販売、輸入などの際に適用されている。これらの規格は、それぞれの国内市場での粗悪品防止に役立っているものの、技術要件も運用方法も整備されておらず、関係者間で混乱を招いている実情があった。

 自動車の性能要件も、近年では安全性能や排ガス基準など整備されつつある。しかし、適用される基準の内容も相関性が無く、その認証方法もそれぞれ独自のものが多い。

 自動車作業部会(APWG)でこれらの規格、基準、認証の統一を検討し始めた時も、各国の実情を反映したASEAN独自の規格をベースとした議論が中心であった。そして、この時点では「製品規格」と、自動車として安全・環境を保証する「性能基準」の概念は区別されていなかった。

 日本の官民で組織されている自動車基準認証国際化研究センター(JASIC)では、1990年代の後半より、アジア諸国の自動車基準の国際化を援助するプロジェクトの一環として「JASICアジア官民会議」を毎年開催している。ASEAN諸国や中国、台湾、韓国、インドなど広範囲のわたるアジア諸国と共に自動車基準の国際調和、認証の相互承認などについて情報交換を行い、この中で自動車として路上を走行する上での安全・環境基準の整備の重要性などについても情報提供していた。

 2004年に、ASEAN相互承認(MRA)の構想が公表されて以来、「JASICアジア官民会議」でも

1)グローバル化された自動車には国際的な視野に立った基準作成・運用が必要との議論

2)国連WP29でのUNECEを中心とした、国際基準調和活動との連携の重要性の理解を深める議論

 を進める様になっていった。

 特にASEANの自動車作業部会 (APWG)の主要メンバーである、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ヴェトナムなどには、国際的な枠組みである国連WP29での1958年協定下で作成されているUNECE基準の使用と相互承認(MRA)の考え方を浸透させる努力をしてきた。その結果、タイ、マレーシアが1958年協定加盟を実現し、インドネシア、フィリピン、ヴェトナムなどは加盟にあたっての課題を検討中の段階となっている。

 現在では、1958年協定加盟国であるマレーシアを中心に、UNECE基準を使用したAPWG基準案作りの段階に進んでいる(表-4)。例えば、車両カテゴリの定義にはUNECE基準で使用している定義を参照する、19項目のUNECE基準を優先法規として取り上げてその技術要件を使用する、UNECE基準改正をフォローすることの検討、などである。

表-4 自動車作業部会 (APWG)の検討状況-基準整備と認証、その相互承認

基準整備について 1.UNECE基準をもとにした技術要件
優先項目:19 UNECE基準を取り上げる
ASEANの実情に即した技術要件の整理
UNECE基準の改正のフォロー
2.UNECE基準で定義されている車両カテゴリとの調和
3.安全・環境・燃費基準の整備、認証方法の整備開始
4.小型乗用車(M1)、小型商用車(N1)適用基準をUNECE基準と調和
5.二輪車については優先基準として19基準のうち、5 基準を検討
認証とその相互
承認について
・対象:Parts, Systems and Components(現行1958年協定と同じ)
・試験報告書や認証書の受け入れ
・統一された認証試験基準作成
・試験機関(Technical Services)の指名
・試験機関の公式能力明確化
・ASEAN Automotive Committee設立
・2011年内に仕組みを完成


 表-5に示すように現在、優先基準として19項目のUNECE基準が選択されて、認証試験を含む基準運用のためのインフラ整備作業が進められている。これらのUNECE基準は加盟国間での優先度が議論された結果、小型乗用車(M1)、小型商用車(N1)、二輪車に関する基本的な技術要件を取り上げることにしたもので、各国の認証設備、認証試験機関の整備の難易度なども含めて検討され、決定された。

表-5 ASEAN MRA(相互承認) 対象のUNECE基準

・Braking System - R13 ・Safety glass - R43
・Braking System (Passenger Car) - R13H ・Rear View Mirror - R46
・Seat belt anchorage - R14 ・Diesel Emission - R49
・Seat belt - R16 ・Noise emission - R51
・Seats - R17 ・Pneumatic tyre - commercial - R54
・Head Restraints - R25 ・Driver Operated Control - R60
・Pneumatic tyre - passenger - R30 ・Tyre (L category) - R75
・Speedometer (L category) - R39 ・Steering Equipment - R79
・Exhaust Emission (L category) - R40 ・Exhaust Emission - R83
・Noise (L category) - R41


 相互承認(MRA)を実現するには、ASEAN各国が同じ技術要件を使用していることが不可欠である。そのためにUNECE基準を選択したのであるが、これだけではまだ不十分であることに自動車作業部会(APWG)も認識している。

 UNECE R17「シート」を例にとろう。シートに関する基準R17のオリジナルは1970年12月1日に発効している。以来、表-6に示すように合計16回の改定・修正が加えられ、2-3年以内に頻繁に行われることも多い。最新版は08シリーズと呼ばれ、2009年7月22日発効している。

 1958年協定加盟国でこの基準を採用している国は、自動的にこの最新版(08シリーズ)を適用し、加盟国間での認証の相互承認が成立している。相互承認を成立させるには、同じ技術要件のもとに認証試験が行われることが重要である。加盟国でない場合、UNECE R17を使用しているとしても最新版を使用していることを制度的に保障しなければ相互承認の成立は困難になる。

 ASEAN諸国はタイ、マレーシアを除き国連の1958年協定に加盟していないし、タイはR17を採用していない。従って自動車作業部会(APWG)としてはASEAN各国が同じ技術要件を常に、自動的に使用する仕組みを作らねばならない。自動車作業部会(APWG)の緊急課題の一つとなっている。

表-6 UNECE R17(シート) 改定経緯

シリーズ
改定
その他の
改定・修正
発効日 シリーズ
改定
その他の
改定・修正
発効日
0 1970/12/1 6 C1 1999/7/19
1 1973/9/11 7 S1 1999/11/17
2 1981/3/9 S2 2000/1/13
3 1986/5/1 C1 2000/6/27
C1 1987/12/14 S1-C1 2001/8/23
4 1990/1/28 R4-C1 2003/11/12
S1 1994/1/26 R4-C2 2004/6/23
5 1996/12/26 S3 2007/6/11
6 1998/1/18 8 2009/7/22
7 1998/8/6


 さらに、同じ技術要件を各国が使用しているとしても、認証試験の質が同じだという保証も必要となってくる。そのためには、試験機関での各基準要件の正しい理解、正しい試験方法の実施、試験報告書の管理など試験機関の質の保証が必要である。1958年協定では、これらについて最低限の規定はあるので、それらを参照して自動車作業部会(APWG)でも表-7に示す参照規格を議論している。

 認証試験に使用したサンプルと生産品との同質性の保証を求める観点から、生産者に対する最低限の資格要件として品質管理に関する規格も必要とされ、明示されている。

表-7 試験機関、生産者に対する規格

・ISO/IEC 17025 - General requirements for the competence of testing and calibration laboratories. (試験又は校正を行う能力に関する一般要求事項)
・ISO/IEC 17021 - Conformity assessment -- Requirements for bodies providing audit and certification of management systems (適合性評価-マネジメントシステムの審査および認証を行う機関に対する要求事項)
・ISO/IEC 17020 - General criteria for the operation of various types of bodies performing inspection. (検査を実施する各種機関の運営に関する一般要求事項)
・ISO 9001 - Standards for Quality Management System (Production) (品質マネジメントシステム)


 最近の自動車作業部会(APWG)では、さらに国連での国際車両認証制度(IWVTA)の議論なども視野に入れ始めている。ASEAN各国で十分には整備、運用されていない車両認証制度の開発や相互承認(MRA)の基本的な要件になる、生産適合性の管理 (Conformity of Production( COP):生産者が品質管理体制・基準に従って生産し、認証機関などの監査を受けること) について1958年協定での規定のより深い理解を求めるなど将来、1958年協定加盟に向けた課題についての議論も行われようとしている。

表-8 APWGの今後の課題

1.国連WP29の1958年協定、1998年協定の正確な理解、参加体制
2.車両認証制度(VTA)の正確な理解
3.1958年協定で規定されているConformity of Production(COP)の正確な理解
4.検査、認証試験、生産品質管理、認可行為などに関する国際的な基準の運用
5.日米欧など関係諸国との協力体制
6.域内の自動車関連産業組織との協力体制
7.域内での継続的な情報交換、教育体制


 自動車分野の相互承認(MRA)実施にあたっては、2011年末にはその素案を完成させることが要求されている。しかし、上記のような多くの課題が残っており、作業の遅れが発生しているとのことである。

 現実的には目標年の2015年、ASEAN加盟国で自動車分野の相互承認(MRA)を全て実施することは不可能であり、多くの国では現状の法体系との併存運用、あるいは一部運用となるようである。

 



3.今後の展望:ASEAN 相互承認(MRA)からASEAN車両認証制度 (ASEAN-WVTA)へ

 ASEANの自動車基準の統一とその認証の相互承認を目指す動きについて紹介した。

 一方で、国連WP29「自動車基準調和世界フォーラム」では次世代の認証制度「国際車両認証制度」(IWVTA)の議論が始まっている。この議論の中で現在の1958年協定改定の議論も進められており、アジアなどの協定にまだ加盟していない国々の加盟促進についても議論が進められている。ASEAN主要国や湾岸諸国、中南米諸国、ブラジル、インドなどがその対象である。

 ASEAN加盟国内での大きな課題は、ASEANとして取り決めたUNECE基準の運用インフラの整備である。さらに自動車としての安全・環境を確保するためには車両認証制度(VTA)の確立と確実な運用システムの整備などが不可欠とある。

 タイやマレーシアでは、車両認証制度(VTA)の改善に当局が努力中とのことであるし、ヴェトナム、フィリピン、インドネシアなども関係者は十分な情報を得ているはずである。場合によっては法律改定が必要となるため、それが大きな障害になる可能性があるが、ASEAN 経済共同体(AEC)の議論の中に落とし込むことによって各国での作業を促進することも可能である。

 自動車作業部会(APWG)で挙げた今後の課題の中にも部品、システムを対象としたASEAN 相互承認(MRA)の次のステップとしてVTA確立が入ってきている。

 国連WP29で議論している「国際車両認証制度」(IWVTA)の思想と矛盾しないASEAN各国の車両認証制度(VTA)ができ、発展形としてASEAN 相互承認(MRA)の到達点としてのASEAN車両認証制度 (ASEAN-WVTA)ができることが望まれている。

 国連での活動についても、将来的にはASEAN地域共同体が機能し始めた時には、EUと同様な地域共同体として1958年協定加盟も視野に入ってくるものと思われる。国際車両認証制度(IWVTA)が機能し始めて、2020年以降になるとそれに連動したEU車両認証制度 (EU-WVTA) と共にASEAN車両認証制度 (ASEAN-WVTA)が運用され始めると予想できる。

 ここではASEANの活動を説明したが、国連WP29規模で考えるとこのような地域連合間の議論が大きな比重を占めるようになる。将来的には業界団体もこれに対応した組織作りが必要である。

図-2 将来の国連WP29「自動車基準調和世界フォーラム」での基準調和活動

図-2 将来の国連WP29「自動車基準調和世界フォーラム」での基準調和活動

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>