トヨタプリウス (DAA-ZVW51)、PCU(Power Control Unit)制御基板ベンチマークレポート

2017/04/17

要約

 2015 年12 月に発売された第4 世代トヨタプリウスは、最大 熱効率40%を実現したエンジンの搭載をはじめ、モーター、 トランスアクスル、パワーコントロールユニット、駆動用バ ッテリーといったシステム全体で小型・軽量化を実現すると ともに、約20%の低損失化を図っている。解析対象の PCU(Power Control Unit)は、エンジン横に搭載されており、 全体の機能として、①双方向DC-DC コンバータ、②回生用イ ンバータ、③モータ駆動用インバータの3つがある。また従 来より採用されているIGBT を搭載した「パワーカード」の 放熱方式を改良し低損失化を実現する事により、ハイサイド とローサイドのIGBT を1 カード化する事により小型化(従来 比30%減)を実現している。本制御基板は、PCU の最上部に位 置しており、パワーカードと本制御基板回路によって、前記 機能を実現している。パワーカードと接続されるゲートドラ イバ部は、適切なスルーレートを実現するゲート駆動と、温 度と過電流検出の機能を有する。また、制御部は、絶縁電源 用発振回路、内部電源回路、電池電圧・昇圧電圧検出回路、 2つのモータ・ジェネレータのベクトル制御の計算を行う2 つのMCU、電源用エラーアンプ+CAN+ADC+リゾルバーイン タフェース等を1 チップに集積したカスタムASIC から構成 される。制御基板は6 層、貫通スルーホールである。

 パワーカードと接続されるゲートドライバ部は、トランスと フォトカプラにより絶縁分離され、MCU 等の低電圧回路に影 響を与えないため、パターン上も領域を分けている。(各ゲ ートドライバ毎にパターンを分離)

 耐圧の確保や電界の影響低減を考慮していると推測される。

Fig.1 製品外観
Fig.1 製品外観
出典:トヨタ自動車
Fig.2 PCU 構造図<br />出典:トヨタ自動車
Fig.2 PCU 構造図
出典:トヨタ自動車
Fig.4 基板X 線写真(Side view) Fig.3 基板外観(Bottom view)


Power Control Unit 基盤回路

Fig.1 製品外観
Fig.5 エリア別回路機能
Fig.2 PCU 構造図<br />出典:トヨタ自動車
Table 1 回路機能

 本基板回路は以下のブロックで構成されている。(Fig.5)



  • Internal Power Supply
    外部からの供給電圧により解析対象基板の内部電源を生 成している回路。電源用エラーアンプはデンソー製IC に 内蔵されている。
  • Oscillator for Isolated Power Supply
    絶縁分離エリアへ電源供給を行うトランス1 次側に交流 電圧を印加する回路。
  • Gate Driver for Bidirectional DC-DC Converter/for
    Regeneration Inverter/Motor Drive Inverter 双方向DC-DC コンバータのスイッチングトランジスタ、 回生用インバータ、モータ駆動用インバータを制御する 回路
  • Voltage Detect
    ニッケル水素バッテリの電圧と双方向DC-DC コンバータ による昇圧電圧を検出する回路
  • High-speed CAN
    制御基板外部とCAN 通信を行っていると回路。通信機能 はASIC に内蔵と推定。
  • Resolver Interface
    外部のレゾルバと接続し、モータの角度を検出している と推測される回路
  • Current Sense
    回生用インバータとモータ駆動用インバータ出力の電流 を検出していると推測される回路
  • MCU and Peripheral, Communication
    ルネサス製カスタムMCU 周辺と両IC を接続する回路

 主要半導体は、大きく3 つが搭載されている。上記、カスタムASIC(n=1)、パワーカードをドライブするため のゲートドライバASIC(n=14)、ルネサス製カスタムMCU(n=1)。

 カスタムASIC(n=1)はデンソー製でQFP-128 パッケージ、拡散プロセスは3 Metal/1 poly、高耐圧SOI プロセ スを採用している。(Fig.6)

 ゲートドライバASCI(n=14)も同様にデンソー製で、QFP-36 パッケージ、拡散プロセスは4 Metal/1 poly、高 耐圧BiCMOS プロセスを採用している。(Fig.7)



Fig.6-1 ASIC チップ写真 Fig.7-1 ゲートドライバASIC
Fig.6-1 ASIC チップ写真 Fig.7-1 ゲートドライバASIC
折りたたんだ状態 Fig.7-2 チップマーキング(ゲートドライバ)
Fig.6-2 チップマーキング(ASIC) Fig.7-2 チップマーキング(ゲートドライバ)


Fig.8 ASIC チップ写真
Fig.8 制御基盤を除いたダイキャスト
Fig.9 用途別のスロット(拡大)
Fig.9 用途別のスロット(拡大)
Fig.10 パワーカードX 線写真
Fig.10 パワーカードX 線写真

 パワーカードの装着は、制御基板にコネクタが実装されており、 はんだ付けすることなくパワーカードが脱着可能となっている。

 (Fig.5 のエリア3,4,5) 運転時の振動に対しても高信頼性を実 現するための方式である。制御基板を取り外すと、ダイキャスト と下部からの制御ピンが露出している。(Fig.8)

 合計7つのパワーカードが挿入可能となっており、それぞれ運転 用、発電用、昇圧用のとなっており、(Fig.9) パワーカードに 内蔵されているIGBT はそれぞれの用途に応じて、異なるメーカ のIGBT が使用されている。

 株式会社エルテックは、上記に関する詳細解析レポートを販売し ております。

  1. 制御基板回路解析レポート
  2. 搭載カスタムASIC 機能解析レポート
  3. 搭載ゲートドライバーASIC 機能解析レポート
  4. パワーカード構造解析レポート