分析レポート パワーステアリング (日本市場編)
ADAS化に伴うEPSの技術進化
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Ⅰ. はじめに
ステアリング機構はクルマの基本性能である“走る・曲がる・止まる”のうち、“曲がる”つまり操舵性能を左右する重要な製品である。クルマが大衆化を歩んできた歴史を振り返ると、自動変速機やエアコンなどとともにステアリング操作を容易にするパワーステアリングの登場は、運転を容易かつ快適にした仕掛けの一つであるといえる。近年になりシステム冗長性を持たせた高機能化が進められており、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)時代における重要機能部品の一つになってきている。
当初のパワーステアリングは一部の高級車のみに搭載される贅沢機能であったが、前輪駆動車が大衆車として一般化する中で「前輪を駆動するがゆえに重くなる操舵性」を補助するパワーステアリングは普及していき、現在の日本市場では商用車を含めて普通車・軽自動車の殆どに標準装備されるに至っている。
パワーステアリング技術の進化の過程では、エンジン動力により油圧ポンプを駆動する油圧アシストによるパワーステアリングが主流であった。しかし後述するように、燃費向上の重要アイテムとしてエンジン負荷となる油圧ポンプを廃止することができる電動パワーステアリング(EPS)が急激に普及してきており、現在の日本市場モデルでは殆どが電動パワーステアリングとなっている。
また電動パワーステアリングもさらなる技術進化を遂げ、ステア・バイ・ワイヤ方式(ステアリングホイールと操舵輪が機械的に結合していない)の電動パワーステアリングが既に量産実用化されている。今後は自動運転システムの機能向上とともにさらなる進化が求められる製品である。 また、欧州先行ではあるが従来の前輪だけでなく後輪操舵の電動化システムも製品化されてきており、高速での走行安定性制御や、限られた駐車スペースにおける自律無人駐車機能のさらなる進化も期待されている。
本稿では、商用車を除く日系完成車メーカー8社の日本生産モデルを中心に、日本市場のパワーステアリング・システムサプライヤー4社(ジェイテクト、NSKステアリング&コントロール、Astemo 、カヤバ)を取り扱う。日本車の一部で採用されているZF Friedrichshafen、Robert Bosch Automotive Steeringについての詳細はパワーステアリング (欧州・米国市場編)を参照願いたい。