人とくるまのテクノロジー展2024:樹脂技術、環境材料、軽量化
バイオ樹脂、塗装代替フィルム、太陽電池ルーフ、透明キャノピー、欧州車複合材、EV用ゴムなど
2024/06/17
- 要約
- 環境材プラスチック製品
- 環境対応:塗装ブースの廃止:フィルム加飾・転写フィルムによる塗装
- 高機能樹脂:太陽電池ルーフ、透明フルキャノピー、未来モビリティ、遠赤外線カメラ対応ガラス
- 欧州製複合材による軽量化
- ゴム部品:EV部品、新製品など
要約
人とくるまのテクノロジー展2024(会期:2024年5月22日(水)~5月24日(金)、会場:パシフィコ横浜)は、公益社団法人自動車技術会の主催で開催された。自動車会社、部品会社、材料会社、エンジニアリング会社などの各社が最新技術を披露する場となっており、専門家向けの展示会である。本稿ではプラスチック素材、ゴム部品を中心に、EV部品、軽量化、環境対応など自動車産業の課題に応える技術を取材した。
![]() |
![]() |
人とくるまのテクノロジー展2024 会場:パシフィコ横浜 |
人とくるまのテクノロジー展2024 会場内風景 |
関連レポート:
高機能素材Week2024 大阪展:カーボンニュートラル、電動化、軽量化(2024年5月)
名古屋ものづくりワールド2024:精密加工、生産技術(2024年5月)
日系自動車メーカー各工場のカーボンニュートラルへの取り組み(2024年3月)
新機能性材料展2024:CO2削減、軽量化、プラスチック加飾技術(2024年2月)
オートモーティブワールド2024:軽量化(2024年2月)
自動車リサイクルの課題:資源循環利用とプラスチック再生(2024年1月)
人とくるまのテクノロジー展 2024 取材レポート一覧
人とくるまのテクノロジー展 2023 取材レポート一覧
環境材プラスチック製品
自動車産業では環境対応の機運が急速に高まってきており、自動車部品メーカー、プラスチック素材各社も対応を急いでいる。
バイオプラスチックの定義は生物由来の原料で作られている生物原料か、微生物によって自然に分解される生分解性の2つのいずれかを満足する製品をいう。これらは、技術的には長期テーマとなるため、短期間で対応できるリサイクル系の提案が多く見られた。
(出展会社概要)
会社名 | 展示品 | 材質 | 工法 |
---|---|---|---|
三菱ケミカル㈱ (東京都千代田区) |
量産:フロントグリル マツダCX-60 量産:メーターガーニッシュ SUZUKI ジムニー |
バイオエンプラ「DURABIO」 植物由来PC |
射出成形 |
無塗装樹脂外板(参考品) | リサイクルPMMA「アクリペット」テールランプリサイクル材 | 射出成形 | |
環境材ECUケース | 環境配慮型PBT樹脂(リサイクル樹脂20~45%含有) | 射出成形 | |
ダイキョーニシカワ㈱ (広島県東広島市) |
環境材グローブボックス | デニム繊維強化樹脂 | 射出成形 |
環境材ダッシュボード | 牡蠣殻紛強化樹脂 | 射出成形 |
・PC(PolyCarbonate)ポリカーボネート:ライトなど、高い透明性や耐衝撃性が特徴
・PMMA(PolyMethylMethAcrylate)アクリル:メーターパネルなど、美しい透明性が特徴
・PP(PolyPropylene)ポリプロピレン:バンパーなど自動車で最も多く使用される軽量材
・PBT(PolyButylene Terephthalate)ポリブチレンテレフタレート:電装部品、コネクターなど、良好な絶縁性能と耐熱性が特徴
フロントグリルなど・植物由来バイオエンプラ(三菱ケミカル)
三菱ケミカルは東京都千代田区のプラスチックなどを生産する総合化学メーカー。バイオエンプラ「DURABIO(デュラビオ)」は、植物由来原料イソソルバイドを用いたバイオエンプラで、PC樹脂に匹敵する耐衝撃特性を示す。表面特性に高い機能を有し、場合によっては塗装工程が不要となる。
展示品はマツダ「CX-60」のフロントグリル。2017年12月のマツダ「CX-5」のフロントグリルへの採用を皮切りに、マツダ、スズキと採用メーカーが増えている。
また、二輪車用フロントスクリーンにも採用されていることから、透明度の高さや、耐傷付き性に優れていることが分かる。
展示品:フロントグリル | 展示品:メーターガーニッシュ |
![]() |
![]() |
下段左:マツダ CX-60 フロントグリル 下段右:ホンダ二輪車用フロントスクリーン 材質:バイオエンプラ DURABIO(植物由来PC) 工法:射出成形 |
採用車種:スズキ ジムニー 材質:バイオエンプラ DURABIO(植物由来PC) 工法:射出成形 |
無塗装樹脂外板・テールライトレンズのリサイクルPMMA材
展示品は無塗装樹脂外板。塗装無しで、美しい外観が得られる射出成形用材料、リサイクルPMMA材「アクリペット」を使用し製造される。使用済自動車のテールライトレンズを回収し、ケミカルリサイクルした原料を利用している。この展示サンプルもケミカルリサイクルが可能という。
展示品:無塗装樹脂外板(参考品) | 展示パネル:アクリぺット(再生アクリル樹脂・PMMA) |
![]() |
![]() |
サンプル提供:本田技研工業㈱ 材質:アクリペット(再生アクリル樹脂・PMMA) 工法:ケミカルリサイクル→ペレット→射出成形 |
塗装無しで、美しい外観が得られる射出成形用材料 |
ECUケース・環境配慮型PBT樹脂
展示品のECUケースは、リサイクル材を20~45%含有させている。CO2削減効果が大きい。
展示品:ECUケース | 展示パネル:環境配慮型PBT樹脂 NOVADURAN CEシリーズ |
![]() |
![]() |
材質:リサイクルPBT樹脂 工法:射出成形 |
ポストコンシューマーリサイクル(消費後の材料)樹脂を20~45%含有 |
環境材料:デニム繊維強化樹脂グローブボックス/牡蠣殻粉強化樹脂ダッシュボード(ダイキョーニシカワ)
ダイキョーニシカワは広島県東広島市の樹脂成形メーカー。自動車向けが多いが、そのほとんどがマツダ向けのため、他社向け拡販が経営課題になっている。
バンパーやフロントグリルなど大型プラスチック製品を得意としている。大型射出成形機、大型熱プレスなどの多彩な設備を有し、熱可塑材・熱硬化材、両材料への対応ができる。
天然素材活用の材料開発
展示品は環境材料の取り組みの紹介。グローブボックスはデニム繊維強化樹脂、ダッシュボードは牡蠣殻粉強化樹脂を使用している。いずれも広島県の特産品の廃材を活用するというユニークな取り組みが行われている。
展示品:グローブボックス | 展示品:ダッシュボード |
![]() |
![]() |
材質:デニム繊維強化樹脂 工法:射出成形 |
材質:牡蠣殻粉強化樹脂 工法:射出成形 |
無料会員登録により、期間限定で続きをお読みいただけます。