東洋ゴム工業 (株) 2016年12月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年
12月期
2015年
12月期
増減率
(%)
備考
全社
売上高 381,635 407,789 (6.4) -
営業利益 49,315 63,381 (22.2) -
経常利益 44,102 56,814 (22.4) -
当期純利益 (12,260) 1,674 - -製品補償対策費および製品補償引当金繰入金を特別損失として計上
タイヤ事業
売上高 303,874 325,536 (6.7) 1)
営業利益 45,405 58,004 (21.7) -
ダイバーテック事業
売上高 77,489 82,030 (5.5) 2)
営業利益 3,779 3,955 (4.5) -



要因
1) タイヤ事業
-新車用タイヤは、国内・海外ともに販売量・売上高が前年度を上回った。

-国内市販用タイヤは、夏タイヤおよび冬タイヤの販売が好調に推移し、販売量は前年度を上回ったが、売上高は前年度並みとなった。

-海外市販用タイヤは、販売量は前年度を上回ったが、為替の円高基調などにより、売上高は前年度を下回った。

  • 北米市場では、主力ブランドや新製品の販売が好調に推移したことなどにより、販売量は前年度を上回った。
  • 欧州市場では、販売チャネルの整備・拡大を積極的に行い、販売量は好調に拡大。


2) ダイバーテック事業

-自動車用シートクッションでは、新規受注品が好調に推移したが、自動車用防振ゴムでは当社品装着車種の販売減少や年央に為替が円高基調に振れた影響を受け、全体の売上高は前年度を下回った。



中国語表記変更

-中国でのToyo Tiresブランドの漢字表記を、これまでの 「東洋輪胎」 から、読み (音) での伝達を重視した 「通伊欧輪胎」 へ変更したと発表した。中国のタイヤ事業拠点もこれに合わせて社名の変更を行っている。 (2015年1月28日付プレスリリースより)


新製品の販売開始

<日本>
-エア充填が不要なコンセプトタイヤ「ノアイア」を開発したと発表した。エアを補充するメンテナンスが不要となり、パンクするリスクがないのが特徴。軽自動車程度の車両重量であれば、時速150キロメートルまでの速度で実際に走行できるという。市場ニーズを踏まえながら早期実用化を目指す。今回、開発したコンセプトタイヤは路面と接するトレッド部にのみゴムを使用し、内部に樹脂を用いた独自構造のスポークやCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を用いることで、実レベルで走行可能なエアレスタイヤを実現した。(2017年9月9日付日刊自動車新聞より)

-2016年11月、独自のゴム材料開発基盤技術「ナノバランステクノロジー」を進化させるとともに、新技術を適用することで低燃費性能とウェットグリップ性能を大幅に向上したタイヤ「プロクセス・スポーツ」を開発したと発表した。ナノ解析とナノ分析の技術をそれぞれ進化、高性能で高品質なタイヤ造りを実現する。ナノバランステクノロジーは、ゴム材料を分子レベルで「分析」「解析」「素材設計」「加工」の四つの体系を横断的に統合した同社の材料基盤技術。今回、ナノ分析技術とナノ解析技術を進化させ、ゴム材料内部の精密な構造シミュレーションモデルや3次元フィラー構造観察技術などを構築。また、業界初となるシミュレーションモデルの定量評価技術や、動的環境下でのX線フィラー構造情報の取得技術を確立した。(2016年11月18日付日刊自動車新聞より)

-2016年9月、新ジャンルの軽自動車専用タイヤ 「オープンカントリーR/T」 を10月1日に発売すると発表した。オフロード走行を楽しむ軽自動車ユーザーが増えていることに着目し、クロスカントリー・ビークル (SUV/CUV) タイプの軽自動車専用タイヤとして同製品を開発した。オフロードにおけるトラクション性能と、舗装路での耐摩耗性能や走行安定性を両立した。軽自動車専用として15、16インチの2サイズを展開する。同製品を皮切りに、今後は北米で展開しているSUVやピックアップトラック向けのオープンカントリーシリーズを国内でも市場導入する予定だ。 (2016年9月15日付日刊自動車新聞より)


<米国>
-米国で販売するSUVおよびピックアップトラック向け市販用タイヤ 「オープンカントリーR/T」 のサイズラインアップを倍増したと発表した。米国で販売好調なSUV用タイヤのラインアップを拡充することで、シェア拡大に結びつける狙いだ。同製品は昨年9月に8サイズで販売を開始した。今回新たに7サイズ追加して、16~22インチの全15サイズまで拡大する。 (2015年2月7日付日刊自動車新聞より)

<欧州>
-2015年、SUVおよび四輪駆動車の需要に対応した新商品 「オープンカントリーA/T plus」 の販売を開始。


受注

-2016年12月期の主な受注

ブランド 製品名 搭載モデル
TOYO TIRES PROXES R46 マツダ 「CX-5」
TOYO TIRES OPEN COUNTRY A26 日産 「TITAN」
TOYO TIRES グローバル低燃費タイヤ
NANOENERGY J59
トヨタ 「Prius」(日本市場向け)
グローバル低燃費タイヤ
NANOENERGY A92
トヨタ 「Prius」(米国市場向け)
グローバル低燃費タイヤ
NANOENERGY J61
トヨタ 「Prius」(欧州市場向け)
グローバル低燃費タイヤ
NANOENERGY R41
トヨタ 「Prius」(日本、欧州市場向け)




中期経営計画

-同社は、2020年12月期を最終年度とする4カ年の中期経営計画を発表した。20年度に連結売上高を16年12月期比25.7%増の4800億円、営業利益を同21.7%増の600億円を目指す。同社が得意とするSUVやピックアップトラック向けタイヤの拡販に注力するほか、ゴム工業製品を手がけるダイバーテック事業でも自動車部品の開発に注力する。「タイヤ事業を中心としたモビリティー関連に資金、人材、技術のリソースを集中させる」(清水隆史社長)方針。(2017年3月11日付日刊自動車新聞より)

-同社は2020年までの経営計画「ビジョン'20」を掲げ実行中。「ビジョン'20」の経営目標は売上高6,000億円、営業利益率10%。

-「新中期経営計画'17」の経営目標は、最終年度の2020年度において、売上高4,800億円、営業利益600億円、営業利益率12.5%。

-目標達成のための方策:
タイヤ事業

  • 独自のタイヤ設計基盤技術の強化(進化)-「Nano Balance Technology」、「コンピューターシミュレーション技術」、「計測、評価技術」
  • 商品化に向けた要素技術の革新 -「アグレッシブデザイン技術」、「ウェット性能向上技術」、「高寿命化技術」
  • ピックアップトラック、乗用車、トラック・バス用タイヤの商品開発力を強化

ダイバーテック事業

  • タイヤ事業との相乗効果(販売、ゴム技術等)
  • 自動車メーカー密着によるグローバルサプライヤーとしてのポジション確保

事業売却

-非タイヤ事業部門の一部を売却すると発表した。産業用ゴム製品などの化工品事業をニッタに、硬質ウレタン事業を積水化学工業にそれぞれ譲渡する。タイヤや自動車ゴム製品を含むモビリティー事業に経営資源を集中する。化工品事業は、産業用ゴム製品や鉄道車両用部品などを手がける。子会社の東洋ゴム化工品が設立する新会社に建築用免震ゴムを除く化工品事業を移管した上でニッタが新会社の発行済全株式を約37億円で取得する。硬質ウレタン事業は、冷凍、冷蔵分野や建築、建材分野などで用いられる硬質ウレタン原液などを製造、販売する。子会社のソフランウイズに事業を移管、ソフランウイズの発行済み株式全てを積水化学に譲渡する。(2017年8月1日付日刊自動車新聞より)

2017年12月期の見通し

(単位:百万円)
2017年12月期
(予測)
2016年12月期
(実績)
増減 (%)
売上高 400,000 381,635 4.8
営業利益 50,000 49,315 1.4
経常利益 42,700 44,102 (3.2)
親会社株主に帰属する当期純利益 26,900 (12,260) -

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2016年12月期 2015年12月期 2014年12月期
全社 10,474 10,199 10,152
-タイヤ事業 6,834 6,663 6,310
-ダイバーテック事業 2,545 2,351 2,494
-その他 (共通) 1,094 1,184 1,346



研究開発拠点

拠点名 所在地
東洋ゴム基盤技術センター 兵庫県川西市
タイヤ技術センター 兵庫県伊丹市
自動車部品技術センター 愛知県みよし市
タイヤテストコース 宮崎県児湯郡
冬期タイヤテストコース 北海道常呂郡



研究開発活動

ナノバランステクノロジー (Nano Balance Technology)
-ナノレベルでゴム材料開発を制御する技術。ナノレベルの「分析・解析・素材設計・加工」4つの体系を統合し技術開発を行うことにより、到達すべき水準に向けた最適化を図る。

設計基盤技術「T-Mode」
-タイヤ開発と開発リードタイムを大幅に短縮する設計基盤技術。タイヤの挙動と構造に加え、車の動きも解析することにより、車の種類と使い方に合わせたタイヤ設計が可能となる。

トラック・バス用新テクノロジー「e-balance」
-環境に配慮したトラック・バス用タイヤ新基盤技術。ecology (環境)、energy (低燃費)、economy (経済性)、endurance (耐久性) の4つの「e」効果を実現する。

A.T.O.M. (Advanced Tire Operation Module)
-高品質なタイヤ製造を実現。高品質、多品種少量生産、省スペース、および自動化を特徴とする独自の生産方法。需要動向に応じて、生産計画の変更に柔軟に対応できる。拡張性の高いシステム。


-同社は、2017年内をめどに米ジョージア州のタイヤ工場内にあるR&D(研究開発)部門の人員を増員し、商品開発機能を追加すると発表した。R&Dの担当者を現在の1.5倍に増やすのに加え、評価に必要な設備を新たに導入、米国市場のニーズに迅速に対応する体制を整える。(2017年1月13日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万円)
2017年12月期
(予測)
2016年12月期
(実績)
2015年12月期
(実績)
2014年12月期
(実績)
全体 29,945 23,930 48,338 40,711
-タイヤ事業 24,638 19,934 41,642 35,129
-ダイバーテック事業 3,748 3,204 3,486 3,305
-その他 (共通) 1,559 791 3,209 2,276


タイヤ事業
-2016年12月期、合理化および品質向上、Toyo Tire North America Manufacturing Inc. の生産設備増強を中心に設備投資を実施。

ダイバーテック他事業
-2016年12月期、合理化および品質向上を中心に設備投資を実施。

海外投資


-2016年2月、2016年末までに米ジョージア州のタイヤ工場の生産能力を現状の約3割増となる年産1150万本まで高めると発表した。投資額は約130億円。これにより同社最大の工場となる。北米ではSUV向けなど高付加価値製品の販売が伸張しており、大幅増益の原動力となっている。能力増強により北米ビジネスを強化することで収益拡大に結びつける。06年に稼働した同工場は、これまで北米でのタイヤ販売拡大に合わせて生産能力を増強してきた。14年からは建屋を1.5倍に拡大する拡張工事を進めており、創業当初の年産200万本から15年末現在で年産900万本まで高めた。(2016年2月16日付日刊自動車新聞より)

設備投資計画 (4カ年)

(単位:億円)
2017年~2020年
(4カ年) 計画
2013年~2016年
(4カ年) 実績
増減率 (%)
全体 1,280 1,328 (3.6)
-タイヤ事業 1,120 1,130 (0.9)
-ダイバーテック事業、その他 160 198 (19.2)



設備の新設計画

(2016年12月31日現在)
事業部門 計画金額
(百万円)
設備等の主な内容・目的
全社 29,945 -
-タイヤ事業 24,638 合理化および品質向上、グローバル供給体制への対応
-ダイバーテック事業 3,748 品質向上
-その他 (共通) 1,559 基礎研究技術の強化