曙ブレーキ工業 (株) 2013年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)
2013年
3月期
2012年
3月期
増減率
(%)
要因
売上高 206,050 209,584 (1.7) 1)
営業利益 4,315 3,835 12.5 -
経常利益 3,402 2,097 62.2 -
当期純利益 518 (3,215) - -

要因
1) 売上高
<日本>
-2013年3月期の売上高は、前年比7.0%減少の895億円。上半期には震災復興需要およびエコカー補助金効果により受注が堅調に推移したが、第3四半期以降の自動車メーカーの海外生産移管や輸出の減少などが影響。

<北米>
-同売上高は、前年比2.2%増加の984億円。日系自動車メーカーからの受注の回復および北米自動車メーカーに対する販売が堅調であり、増収。
-利益面では、Robert Bosch LLCから引き継いだ、一部不採算製品の生産終了および採算を確保した新規製品の受注が増加したことにより、5期ぶりの営業黒字を計上。

<欧州>
-同売上高は、前年比1.7%減少の49億円。欧州域内の自動車需要の低迷と、中国向けの製品輸出の売上が減少したことが影響。

<インドネシア>
-同売上高は、前年比5.9%減少の132億円。現地の日系自動車メーカーからの受注は堅調であったが、政府のローン政策の変更による二輪車の販売不振が影響。

<中国>
-同売上高は、前年比14.9%増加の61億円。第4四半期以降の領土問題により、日本車不買運動が発生。受注が激減したが、第3四半期以前の日系自動車メーカーからの受注が好調であり、増収となった。

<タイ>
-同売上高は、前年比78.2%増加の51億円。日系を含む、現地自動車メーカーからの受注増加が奏功。

事業方針

グローバルプラットホーム車向けブレーキシステム事業の拡大
-日米欧自動車メーカーのグローバルプラットホーム車向けブレーキシステムの生産、販売を拡大する。2013年から日本、米国、中国、東南アジアの生産拠点を活用した供給体制を確立し、20年にグローバルプラットホーム車向けの売り上げを連結売上高全体の2割に引き上げる。(2012年11月14日付日刊自動車新聞より)
  • 日欧自動車メーカーが日本、北米、欧州、中国で13年から生産・販売するグローバルプラットホーム車のブレーキシステムを受注。日本、米国、中国の工場で生産し現地で納入するほか、欧州向けにはインドネシア、タイから製品を供給する。
  • 欧州の高級車メーカーから受注したブレーキシステムは米国の工場で生産し、14年後半から供給を始める見通し。アルミ製キャリパーを使ったスポーツタイプの高性能ブレーキを米国で生産し欧州に輸出する。
ディスクブレーキ構成部品の現地生産化
-ディスクブレーキの構成部品の生産を海外で現地化する。ブレーキキャリパーの構成部品であるピストンを9月からタイで生産する。ブレーキの組み立てに加え、構成部品も現地で生産することにより、コスト競争力や収益力の向上を目指す。生産場所を分散させることで、災害などで工場が操業停止になった場合に相互補完出来る態勢を構築しリスクを回避する。震災後、部品メーカーではサプライチェーンを寸断させないよう、日本で集中生産していた部品の生産場所を海外に分散させる動きが拡がっている。同社も日本から送っていた構成部品を現地化して対応を強化する。(2012年8月6日付日刊自動車新聞)

コーナーモジュール事業の再参入
-ブレーキ部品に車体組み付け用の部品を組み合わせたコーナーモジュールを国内メーカー向けに開発する。2014~15年の納入開始を目指し、開発体制を整える。同社は02年に国内でコーナーモジュールに参入したことがあるが、現在は国内メーカー向けの生産は行っていない。ただ、メーカーは効率重視の開発、部品の発注体制へと切り替えを進めており、コーナーモジュールに対して一部メーカーからすでに引き合いがある。同社は性能とコストを両立する製品として、改めてブレーキのモジュールビジネスに参入し、メーカーへの提案活動を積極化する。(2012年4月12日付日刊自動車新聞より)

銅含有量を削減した自動車ブレーキ用摩擦材
-銅含有量を削減した自動車ブレーキ用の摩擦材の供給を来年にも開始する。米国カリフォルニア州が2021年にも実施する銅規制に対応する製品で、欧州自動車メーカーが来年以降に市場投入する新モデルの一部グレードに搭載される見込み。摩擦材の銅規制に対しては、ブレーキ摩擦材各社も銅レス製品の研究・開発にしのぎを削っており、すでに試作品を完成させ製品評価の段階にあるメーカーもあるが、同社がいち早く市場投入にこぎつけた。(2012年12月21日付日刊自動車新聞より)

主な受注

-英McLarenの超高性能ロードカー 「P1」にブレーキシステムを供給すると発表。同社は2007年からF1チーム「ボーダフォン・マクラーレン・メルセデス」とスポンサー契約を結び、レースへの参戦を通じて高性能ブレーキの技術開発に取り組んできた。超高性能ロードカーへの採用は、中期経営計画で目指す技術の差別化の第一弾として具体化した。今後、高性能量販車向けビジネスを本格的に展開する。(2013年2月28日付日刊自動車新聞より)

2014年3月期の見通し

(単位:百万円)
  2014年3月期
(予想)
2013年3月期
(実績)
増減率
(%)
売上高 224,000 206,050 8.7
営業利益 8,000 4,315 85.4
経常利益 6,700 3,402 96.9
当期純利益 2,500 518 382.6

-同社は、2014年3月期において北米、中国、タイ、インドネシアにおいて過去最高売上を目指す。

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

中期経営計画

-同社は、長期ビジョンとして2020年度 (2021年3月期) を期限とする成長目標 「Global30」を策定。OEM向けディスクブレーキパッドの世界市場シェア30%の獲得を目指す。

-「Global30」の達成に向け、最終年度を2015年度 (2016年3月期) とする新中期経営計画 「akebono New Frontier 30 - 2013」を策定。重点施策は以下の通り:
1) 将来に向けた技術の差別化
  • 高性能量販車向けブレーキビジネスの立ち上げ
  • グローバルプラットフォーム供給体制の確立
  • 新興国ニーズ対応の低コストブレーキ開発
  • 次世代環境対応技術の確立/次世代摩擦材設備の拡大
2) 革命的原価低減に向けた努力と海外への展開
  • 部品の共通化・標準化等による原価低減
  • 北米・欧州事業の収益基盤の確立
  • 需要に見合った生産体制とリソース配分の見直し
3) 日米中心から日米欧アジアへのグローバル化の加速
  • 新興国への進出
  • グローバル供給網、開発体制の確立
-数値目標 (単位:億円)
- 中期経営計画 長期ビジョン
2013年3月期
(実績)
2014年3月期
(予想)
2016年3月期
(目標)
2021年3月期
(目標)
売上高 2,060 2,244 2,500 3,000
営業利益 43 80 200 360
営業利益率 2% 4% 8% 12%
OEMディスクブレーキパッドの市場シェア 18% 18% 20% 30%

開発動向

研究開発費

(単位:百万円)
  2013年3月期 2012年3月期 2011年3月期
全社 2,304 1,747 1,256

-同社は、2014年3月期に110億円を投じる見込み。

研究開発体制

拠点名 所在地 備考
日本
開発部門 埼玉県
羽生市
-
テストコース 「Ai-Ring」 福島県
いわき市
自動車部品メーカーとして国内最大規模
(株) 曙ブレーキ中央技術研究所 埼玉県
羽生市
-素材開発:摩擦特製制御、低環境負荷、危機管理
-次世代摩擦材の開発:小型、軽量化、高性能化
-摩擦現象の研究:摩擦挙動メカニズム
-プロセス開発:生産性、低環境負荷
北米
Akebono Engineering Center 米国
ミシガン州
-
欧州
Akebono Europe S.A.S. フランス
ゴネス市
-
Akebono Advanced Engineering (UK) Ltd. 英国
ウォーキングハム市
-
中国
中国開発センター - -

-ファウンデーションブレーキの研究開発センター設立のため、フランスのReims近郊に新たに子会社「Akebono Engineering Center, Europe S.A.S. (仮称)」を設立すると決定。同社は現在、フランスGonesseにブレーキ摩擦材研究開発拠点 (CREA)、同国Arrasに摩擦材生産拠点を保有している。今回、研究開発センターを新設することにより、欧州におけるファウンデーションブレーキ事業への本格参入を目指す。同社は2015年の開設を目指し、新センターに関して具体的に検討を開始する予定。(2012年11月2日付プレスリリースより)

研究開発活動

<日本>
ブレーキ摩擦材
-乗用車用高性能パッドと低コストパッドを中心に、高性能で音・振動特性に優れ、且つ最近着目されているホイールダストを低減させた、環境に配慮した安全な摩擦材原材料を使用した高品質な製品の開発。
-米国ワシントン州を含む、複数の州で条例化された摩擦材の環境規制に対応する新摩擦材の開発。

電動化技術
-ブレーキに小型電気モーターを搭載し、電気信号で制動可能な電動ブレーキ。
-パーキング機能のみを電動化した電動パーキングに関する技術開発。

(株) 曙ブレーキ中央技術研究所
-以下の研究を実施:
  • NVH、摩擦制御に寄与する独自潤滑材料
  • 石油資源に依存しないバイオマスポリマー
  • 鋳鉄のレアアース削減
  • 新分野開拓を目指した機能性粒子
  • 軽量化に向け安定した高摩擦係数を狙いとしたセラミックス摩擦材
  • 摩擦材料の摩擦挙動減少との関係
  • ゼロエミッションに向けた表面処理技術
<北米>
摩擦材
-高性能で音振特性に優れた、且つ摩擦材の新環境規制に対応した材料開発

ブレーキ機構開発
-軽量アルミ合金製のディスクブレーキの開発

<欧州>
-環境規制の厳しい欧州市場に適合する摩擦材、日米市場向け輸出欧州車に適合する摩擦材の開発
-英国のAkebono Advanced Engineering (UK) Ltd.では、モータースポーツ用ディスクブレーキの開発、高性能車両向けディスクブレーキ開発に特化

<中国>
ディスクブレーキ
-中国市場のニーズや使われ方を調査・分析し、必要な機能・性能を低コストで提供できる製品の開発

設備投資

設備投資額

(単位:百万円)
  2013年3月期 2012年3月期 2011年3月期
全社 19,800 14,300 5,100

-設備投資の内訳は、日本88億円、北米64億円、欧州3億円、インドネシア14億円、中国14億円、タイ15億円。
-主な投資案件は以下の通り:
  • 日本:次世代摩擦材製造設備
  • 北米:新製品への開発投資
  • 欧州:開発設備
  • インドネシア、タイ、中国:受注拡大に伴う増産対応投資
-同社は、2014年3月期に150億円を投資する見通し。

設備の新設計画

(2013年3月31日現在)
会社/事業所
(所在地)
設備の内容 投資予定
総額
(百万円)
着手 完了
本社他
(東京都中央区他)
鋳物製造設備、新工法設備、情報システム他 1,140 2013年4月 2014年3月
開発部門
(埼玉県羽生市)
試験・研究開発用設備、高性能ブレーキ開発設備 1,343 2013年4月 2014年3月
曙ブレーキ岩槻製造 (株)
(埼玉県さいたま市)
ディスクブレーキ・ドラムブレーキの製造設備 1,116 2013年4月 2014年3月
曙ブレーキ福島製造 (株)
(福島県桑折町)
ブレーキライニング、産業機械・鉄道用製品の製造設備 146 2013年4月 2014年3月
曙ブレーキ山形製造 (株)
(山形県寒河江市)
ディスクブレーキパッドの製造設備 424 2013年4月 2014年3月
曙ブレーキ山陽製造 (株)
(岡山県総社市)
ディスクブレーキ・ドラムブレーキの製造設備 152 2013年4月 2014年3月
(株) 曙ブレーキ中央技術研究所他
(埼玉県羽生市)
試験・研究開発用設備他 20 2013年4月 2014年3月
Akebono Brake Corporation
(米国ミシガン州他)
研究開発用設備、ディスクブレーキ・ドラムブレーキ・ディスクブレーキパッドの製造設備 6,700 2013年1月 2013年12月
Akebono Brake Mexico S.A. de C.V.
(メキシコ グアナファト州)
ドラムブレーキ製造工場 642 2013年1月 2013年12月
Akebono Europe S.A.S.
(フランス ゴネス市他)
研究開発設備、ディスクブレーキパッドの製造設備 312 2013年4月 2014年3月
Akebono Advanced Engineering (UK) Ltd.
(英国 ウォーキングハム市)
高性能ブレーキ開発用設備 190 2013年4月 2014年3月
曙光制動器 (蘇州) 有限公司
[Akebono Corporation (Suzhou)]
(中国蘇州市)
ディスクブレーキパッドの製造設備 737 2013年1月 2013年12月
広州曙光制動器有限公司
[Akebono Corporation (Guangzhou)]
(中国広州市)
ディスクブレーキ・ドラムブレーキの製造設備 750 2013年1月 2013年12月
PT. Akebono Brake Astra Indonesia
(インドネシア ジャカルタ市)
ディスクブレーキ・ブレーキ用部品の製造設備 348 2013年1月 2013年12月
Akebono Brake (Thailand) Co., Ltd.
(タイ チョンブリ県)
ディスクブレーキの製造設備 720 2013年1月 2013年12月