日立化成 (株) 2018年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2018年
3月期
2017年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上収益 669,234 554,144 20.8 -半導体材料、銅張積層板、リチウムイオン電池用カーボン負極材等の需要増や、M&Aによる新規連結子会社の増加により増収。
営業利益 46,219 53,152 (13.0) -物量増や継続的な原価低減等の増益要因があったものの、原材料価格の高騰や、M&Aによる新規連結子会社とのシナジー効果発揮が不十分であったこと、またコンデンサー事業における過去のカルテル行為に関する制裁金の費用計上により減益。
税引前当期利益 48,941 54,380 (10.0) -
当期利益 37,121 40,704 (8.8) -
親会社株主に帰属する当期利益 36,324 40,186 (9.6) -

自動車関連事業業績

ーリチウムイオン電池用カーボン負極材は、環境対応自動車向けの売上が増加したことにより、前年比増加。

ー自動車部品

  • 樹脂成型品:当年度第2四半期にドイツ「ISOLITE GmbH」を連結子会社化したほか、新製品の立ち上げにより前年比増加。
  • 摩擦材:銅含有量を抑えた新製品の立ち上げにより前年比増加。
  • 粉末冶金製品:建設機械用部品の売上増加により、前年比増加。

ー車両用電池及び産業用電池・システムは、前年度第4四半期にイタリア「FIAMM Energy Technology S.p.A」を、当年度第2四半期にタイ「Thai Storage Battery Public Company Limited」を連結子会社化したことにより、前年比増加。

 

電気自動車対応

同社は、EV化の加速に対応し、それぞれの分野に開発技術を持つ各社と提携・出資等を進めている。
電解液・固体電解質等の開発技術を高め、さらなるEV用電池の高性能化を狙う。

ー化学品ベンチャーの米シラトロニクス (ウイスコンシン州) が特許を保有するリチウムイオン電池 (LiB) の電解液用材料の製造・販売・使用に関するライセンスを取得したと発表。シリコンを原料とした有機化合物「オルガノシリコン化合物」で、電解液に添加すると電池の長寿命化、高温での貯蔵安定性の改善につながるという。電気自動車 (EV) 用電池の性能向上に取り組む電解液メーカーに提案して3年以内の受注獲得を目指す。(2018年6月5日付日刊自動車新聞より)

ー全固体電池の主要部材である固体電解質の開発・製造技術を有する米Ionic Materialsに出資したと発表。両社による研究開発の推進が目的。今回の出資により、日立化成はIonic Materialsの固体電解質に関する技術を活用し、全固体電池向け負極材の開発も視野に、次世代材料の研究を進めるとしている。(2018222日付プレスリリースより)

 

買収

タイ・ストレージ・バッテリー(TSB)の株式公開買付の実施を完了し、子会社化したと発表。日立化成は、株式公開買付でTSBの株式約860万株を約77億円で取得した。株式公開買付け開始前に、TSB創業家で大株主から相対取引により取得した株式43.9%を合わせた日立化成グループのTSB持分比率は約87%となり、日立化成の子会社となった。(2017104日付日刊自動車新聞より)

ードイツに本社を置き自動車・航空機・産業用途の断熱部品を製造・販売するISOLITEの株式100%を、ドイツのプライベート・エクイティ・ファンド、Equita GmbH & Co. Holding KGaA及びその他の株主から取得する契約を締結したと発表。今回の株式取得により日立化成は、国内での既存の販売網を通じてISOLITEの断熱部品を日本の自動車メーカーへ拡販するとともに、ISOLITEの有する欧州での販売網や製造拠点を活用して日立化成の自動車部材の欧州展開を加速する。(2017427日付プレスリリースより)

 

受注

ー同社の銅含有量を0.5%未満に抑えた「銅フリー摩擦材」が、Fordのセダン「Fusion」に採用されたと発表した。日立化成が2015年に「銅フリー摩擦材」を開発した背景には、水質汚染の一因になるとして、米国環境保護庁がブレーキ部品である摩擦材の銅含有量を制限する規制を発表し、欧州においても同様の規制が進む可能性があることが挙げられる。「銅フリー摩擦材」は、NAO (Non Asbestos Organic) 材をベースに、フェノール樹脂、有機繊維など複数の素材で構成される。日立化成は、日本をはじめ、中国、タイ、メキシコでの摩擦材の生産・供給体制を整えており、今後需要が増える「銅フリー摩擦材」をはじめ、摩擦材事業の一層の強化、シェア拡大を目指すという。(2017724日付プレスリリースより)

研究開発費

(単位:百万円)
2018年3月期 2017年3月期 2016年3月期
全社 30,800 28,200 27,800
-機能材料 21,300 20,100 19,800
-先端部品・システム 9,500 8,100 8,000

技術供与契約

(2018年3月31日現在)
契約会社名 相手方の名称 契約内容 契約期間
同社 Hung-A Forming Co., Ltd.
(韓国)
インナーパネルを除くバックドアモジュールに関する技術実施許諾 2013年3月11日 -
2029年9月30日
(その後は1年ごとの自動更新)

 

研究開発活動

ー既存の樹脂射出発泡成形技術に独自の材料設計技術、金型設計技術、成形技術を加えることで、外装部品に要求される剛性および外観品質維持のニーズを満たした外装発泡技術を開発したと発表した。この技術は、日産自動車が20168月に発売した新型「Serena」のサイドシルプロテクターに採用され、サイドシルプロテクターは従来の樹脂外装部品と同等の剛性を保ちながら、外観品質の維持と約30%の軽量化を実現した。この新技術はまた、Subaru20175月に発売した新型 SUVSubaru XV」のフロントリアフェンダーとサイドガーニッシュに採用され、サイドガーニッシュはSubaruの従来車比で約33%軽量化することができたという。 (2017713日付プレスリリースより)

 

特許

ー同社が保有する自動車電装品用モーターの異音発生を抑制する焼結含油軸受の特許の維持が決定したと発表。焼結含油軸受は、モーターの回転軸を支持する部品で、細かい穴の空いた金属の構造体に潤滑油を染み込ませて製造する。モーターの作動時間が短い場合、軸と軸受の間に染み出す潤滑油量が不足し、金属の接触が生じることにより、異音が発生する。同社は軸受内の細かい穴の大きさと分布を調整することで軸と軸受の間に染み出す潤滑油量を調整する技術を開発した。これによって金属の接触を防ぐことができ、自動車電装品用モーターの異音を抑制する。(2018年2月8日付日刊自動車新聞より)



設備投資額

(単位:百万円)
2018年3月期 2017年3月期 2016年3月期
全体 42,600 39,900 32,000
-機能材料 16,800 22,100 12,000
-先端部品・システム 25,800 17,800 20,000


2018年3月期の設備投資
-機能材料: 国内におけるリチウムイオン電池用カーボン負極材の生産能力増強、半導体実装材料・プロセスの研究開発設備導入等
-先端部品・システム: 国内における再生医療等製品の製法開発・受託製造設備導入、台湾における産業用電池の生産能力増強、タイにおける自動車用樹脂成型品の生産能力増強等

経営計画

-10年後に高機能材料を基軸に化学を超えたイノベーションをグローバルに提供する企業を目指す。(営業利益率14%超)
2018年度は営業利益率11%、ROE12%を目標とする。見通しは、全社売上7,100億円、そのうち自動車部品は1,462億円。

ー負極材では、2017年度EV向け需要が好調だったため、2018年度施策として供給体制を構築し、グローバル需要の取り込みを目指す。
ー高機能樹脂では、車載用途の注力を継続し、グローバル拡大を目指す。

-先端部品・システムセグメントにおいては、グローバルトップサプライヤーになるための基盤強化として、
成形品・粉末冶金事業における軽量化ニーズへの対応、M&Aなどで環境規制対応ニーズへ向け断熱材を国内拡販する。

ー自動車用電池において、2017年度はASEAN・欧州の商流/ブランド獲得、また海外売上比率60%超となったことを受け、2018年度は価格適正化と国内の技術展開、また国内アイドリングストップシステムの技術供与による欧州シェア拡大を施策とする。

<2021中期経営計画>
外部環境のAI技術発達、デジタル化、自動運転等による市場構造の変化、ICT発展等を見据え、同社は燃費のさらなる向上、EV化、環境負荷低減、自動運転/ADASの進展を対応施策として予測。負極材、電解質などの製品開発を通して、EV化に伴い発生する安全性・航続距離延長ニーズへ対応を進める。

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)