日本精工 (株) 2018年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2018年
3月期
2017年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 1,020,338 949,170 7.5 -
税引前利益 97,248 63,617 52.9 -
親会社の所有者に帰属する当期利益 69,312 45,560 52.1 -
自動車事業
売上高 723,564 696,271 3.9 下記要因
営業利益 65,963 64,577 2.1 -


要因
売上高
-自動車事業部門の2018年3月期売上高は、前期比3.9%増の723,564百万円。グローバルに緩やかな拡大が続いた。

  • 日本: トランスミッション向けを中心に増収。
  • 米州: 米国市場の減速により減収。
  • 欧州: 堅調な自動車販売を受け増収。
  • 中国: 販売構成の影響もあり前年並み。
  • その他アジア: インドを中心に増収。

製品開発

-自動車事業部門における2018年3月期の主な研究開発の成果は以下のとおり。

  • ピックアップトラックや大型SUV、商用車などの自動車向け「高機能円すいころハブユニット軸受」
  • 自動車用変速機向け「長寿命転がり軸受」
  • 自動車の電動化ニーズを支える「静音スラストニードル軸受」
  • 世界初 道路からインホイールモータへの走行中ワイヤレス給電に成功
  • 自動車の動きをコントロールする「バリオリンクサスペンション」


静粛性を向上したスラストニードル軸受

-静粛性を向上したスラストニードル軸受を開発したと発表した。樹脂を採用するなどして静粛性を約10%向上した。電気自動車やプラグインハイブリッド車など、車室内の静粛性が求められる電動車両の変速機など向けに提案し、2021年度に売上高15億円を目指す。開発品は、保持器の素材を鉄から樹脂に変更したほか、ニードルローラー (ころ) と摺動するハウジング表面を凸形状化することで接地面積を小さくした。これによって騒音の発生源となる金属同士が接触する部分を減らした。(2017年11月24日付日刊自動車新聞より)

深溝玉軸受用の低フリクション高密封シール

-深溝玉軸受用の低フリクション高密封シールを開発したと発表した。軸受内輪とシールの接触部の設計を最適化し、密封性を確保した。シールのリップ部をリングへ押し付ける力を減らしてフリクションの低減も図った。今後は同シールを採用した製品を展開し、2021年に売上高25億円を目指す。これまでは高密封接触シールと低フリクション接触シールの2種類をラインアップしていたが、新製品は両方の機能を持つ。信頼性の向上や、省エネ化に寄与するとしている。(2017年10月3日付日刊自動車新聞より)

道路からインホイールモータへのワイヤレス給電
-走行している電気自動車(EV)のインホイールモーター(IWM)へ道路から直接ワイヤレス給電する実験に世界で初めて成功したと発表した。東京大学大学院の藤本博志准教授らの研究グループ、東洋電機製造との共同研究。実用化されれば、EVの航続距離を大幅に伸ばすことが可能となる。日本精工は、モータ軸とホイール軸をずらした減速機構造を持つハブ軸受ユニットを開発した。駆動性能に必要となる減速比を確保しながらIWMの小型化に貢献する。(2017年4月7日付日刊自動車新聞より)

EPS軽量化技術
-電動パワーステアリング(EPS)を軽量化できる新たな製造法を開発。独自の冷間成型技術によってシャフト部分を中空化、トルク伝達部品で従来比約15%、システム全体で約2.5%それぞれ軽量化できる。従来は溶接で製造していた部品の一体成型も可能にした。部品の信頼性向上と、工程を減らすことによる製造コスト低減にも寄与する。2020年の実用化を目指して自動車メーカーなどに提案する。(2017年3月30日付日刊自動車新聞より)

低フリクション円すいころ軸受
-自動車変速機用軸受「低フリクション円すいころ軸受」を開発。ころ表面の粗さを改善、軸受内部に発生するすべり摩擦を抑制する。軸受が低速回転する際、最大60%、全回転速度平均でも20%の摩擦を低減する。自動車の燃費向上ニーズに対応する製品として、2022年に20億円の売上高を目指す。(2017年3月3日付日刊自動車新聞より)

研究開発体制

-日本の技術開発センター (神奈川県藤沢市) を核に、日本6、米州2、欧州3、アジア3、グローバル全体では15拠点のテクノロジーセンターで研究開発活動を展開。

研究開発費

(単位:百万円)
2018年3月期 2017年3月期 2016年3月期
全社 17,059 13,858 11,155
自動車関連製品 13,222 10,042 7,732

研究開発活動

-自動車部品事業での電動化対応を強化する。電気自動車(EV)向けパワートレーンの開発を強化するため、日本電産とも協力、日本精工製の軸受を使った減速機を採用した耐久性の高いEV駆動ユニットの開発を目指す。また、電動ブレーキ向けボールスクリューねじの採用拡大にも注力する。車の電動化が本格化する中、電動化対応製品を日本精工の主力事業である電動パワーステアリングシステム(EPS)と並ぶ主力製品として育成していく構え。(2017年5月17日付日刊自動車新聞より)

-パーソナルモビリティーの開発・販売を手がけるベンチャー企業の米ウィルと次世代製品の開発などに向けて資本提携を締結したと発表した。ベアリング技術やメカトロ技術で連携する。ウィルのパーソナルモビリティーは、横方向に回転するベアリングを周縁部に取り付け、縦横の移動を可能にするオムニホイールを前輪に採用している。日本精工製ベアリングを搭載することで、品質の向上を図る。(2017年4月22日付 日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万円)
2018年3月期 2017年3月期 2016年3月期
全社 68,788 58,602 54,996
自動車事業 49,646 39,677 34,194


自動車事業の増強投資
-日本および韓国でのニードル軸受の需要拡大に対する増強投資と生産性向上を目的とした投資を実施。

2019年3月期の主な設備の新設計画

設備投資計画金額 (百万円) 内容
全社 85,000 -
自動車事業 59,000 -日本、中国、欧州での増強投資
-合理化、設備改善投資等

設備の新設計画

-自動変速機など向けのニードル軸受を生産する榛名工場(群馬県高崎市)3号棟の起工式を実施したと発表した。自動変速機の需要増加と多段化によるニードル軸受の需要の増加に対応して生産能力を増強するとともに、設計開発部門と生産技術部門を新しい建物に集約し、製品開発の効率化を図る。新建屋の敷地面積は約1万平方メートルで、2018年の秋に竣工する予定。投資額は約50億円。生産機能に近い場所に設計開発部門と生産技術部門を置くことで各部門の連携を強化して製品開発期間の短縮などの効率化や、自動車市場の変化や新しいニーズに対応した新製品の開発を進めていく構え。(2017年11月21日付日刊自動車新聞より)

海外投資

<メキシコ>
-メキシコ2番目となる工場をGuanajuato Puerto Interior工業団地に開設したと発表した。メキシコ子会社のNSK Warner Mexicoがクラッチ、摩擦製品などを製造する。投資額は34百万ドル、広さ10,000平方メートルの新施設で2018年末のフル稼働時には従業員数120名となる。初年度はホンダ向けトランスミッション部品などを生産し、年間売上120百万ドルを見込む。日本精工は、同一工業団地内にベアリング製造の子会社も保有しており、さらに今後Guanajuato州に3工場(Silao2拠点、Leon1拠点)を新設する計画で、5拠点稼働時には1,000名規模の従業員数になるという。

2018年3月期の見通し

(単位:億円)
2019年3月期
(予想)
2018年3月期
(実績)
増減率 (%)*
全社
売上高 10,200 10,203 (0.0)
営業利益 980 979 0.1
税引前利益 970 972 (0.3)
親会社の所有者に帰属する当期利益 690 693 (0.5)

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

中期経営計画

-2016年11月8日に創立100周年を迎えた。10年後の2026年に目指していく姿を 「NSKビジョン2026 (あたらしい動きをつくる)」 として策定。

-第5次中期経営計画 (2017年3月期 - 2019年3月期) では、「次の100年に向けた進化のスタート」 をスローガンとし、「オぺレーショナル・エクセレンス (競争力の不断の追求)」 と 「イノベーション&チャレンジ (あたらしい価値の創造)」 を方針に据えて、「持続的成長」 「収益基盤の再構築」 「新成長領域確立」 の3つの経営課題に取り組んでいく。

受賞

-同社とRane Groupの子会社Rane NSK Steering Systemsは、VE Commercial Vehiclesより「Special Contribution in KATA Performance」を受賞したと発表した。(2017年5月2日付プレスリリースより)