日本精工 (株) 2017年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2017年
3月期
2016年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 949,170 975,319 (2.7) -
営業利益 65,341 89,534 (27.0) -
経常利益 63,617 87,208 (27.1) -
親会社の所有者に帰属する当期利益 45,560 65,719 (30.7) -
自動車事業
売上高 696,271 705,511 (1.3) 1)
営業利益 64,577 70,841 (8.8) -


要因
1) 売上高
-自動車事業部門の2017年3月期売上高は、前期比1.3%減の696,271百万円。グローバルに緩やかな拡大が続いた。

  • 日本: トランスミッション向けを中心に増収。
  • 米州: 北米での販売が減少。
  • 欧州: 緩やかに増加。
  • 中国: 小型車優遇税制効果もあり高い伸びが続く。
  • その他アジア: 全般的に増加傾向。

新中期経営計画

-2016~18年度の新中期経営計画で、国内の変速機用軸受事業の売上高を現状の3割増となる600億円程度に引き上げる。燃費性能や走行性能向上のため、自動車メーカー各社がオートマチックトランスミッション(AT)を多段化する動きを加速させており、変速機用軸受の需要も拡大することが見込まれる。今後2、3年後をめどに、群馬県高崎市内にある子会社の2工場にプレス機などを増設し、需要増加が見込まれるAT用軸受の生産能力を増強する。(2016年5月23日付日刊自動車新聞より)

組織再編

-2016年4月、NSKニードルベアリングを7月1日付で吸収合併すると発表。需要が拡大している変速機用軸受を生産するNNBHを本体に吸収することで、意思決定の迅速化や事業効率を高め、事業拡大に結びつける。日本精工の全額出資子会社であるNSKオーバーシーズ・ホールディングスが保有するNNBH株式を日本精工が取得した後、吸収合併する。NNBHが手掛けていた事業の今後の組織体系は未定。(2016年4月30日付日刊自動車新聞より)

製品開発

-自動車事業部門における2017年3月期の主な研究開発の成果は以下のとおり。

  • 変速機付きホイールハブモーターの実証実験
  • 変速機向けハウジング摩耗防止「固体潤滑皮膜付き軸受」
  • 変速機向け「超長寿命ニードルローラ軸受」
  • 変速機向け「第6世代低フリクション円すいころ軸受」
  • 「電動パワーステアリング用シャフト冷間成形技術」

EPS軽量化技術
-電動パワーステアリング(EPS)を軽量化できる新たな製造法を開発。独自の冷間成型技術によってシャフト部分を中空化、トルク伝達部品で従来比約15%、システム全体で約2.5%それぞれ軽量化できる。従来は溶接で製造していた部品の一体成型も可能にした。部品の信頼性向上と、工程を減らすことによる製造コスト低減にも寄与する。2020年の実用化を目指して自動車メーカーなどに提案する。(2017年3月30日付日刊自動車新聞より)

低フリクション円すいころ軸受
-自動車変速機用軸受「低フリクション円すいころ軸受」を開発。ころ表面の粗さを改善、軸受内部に発生するすべり摩擦を抑制する。軸受が低速回転する際、最大60%、全回転速度平均でも20%の摩擦を低減する。自動車の燃費向上ニーズに対応する製品として、2022年に20億円の売上高を目指す。(2017年3月3日付日刊自動車新聞より)

変速機付きホイールハブモーター
-自動車の環境性能、安全性能、快適性能を向上させるインホイールモーターを小型化する技術「変速機付きホイールハブモーター」の実証試験を世界で初めて行ったと発表。このホイールハブモーターは、2つのモーターと、2つの遊星歯車で構成された変速機を搭載しており、大きな駆動トルクと、十分な最高速度を小さなモーターで両立できる。また、この変速機は2つのモーターの速度とトルクを制御することで加速中でも滑らかに変速できる特長があるという。(2016年12月26日付プレスリリースより)

超長寿命ニードルローラ
-自動車変速機用ニードル軸受向け「超長寿命ニードルローラ」を開発。ローラー表面に独自の硬化処理を施すことで、従来品に比べて耐久性を2倍以上に高めた。潤滑油を保持するくぼみを表層に設けることで、金属接触による部品の磨耗を抑制する。変速機の高効率化に寄与する製品として提案、2020年に売上高25億円を目指す。(2016年12月7日付日刊自動車新聞より)

可変制御する減速機
-モーター駆動用に減速比を可変制御する減速機を開発。特殊な油の摩擦で駆動するローラーによって効率的に動力を伝達する機構で、歯車を使わず幅広い車速領域に対応、エネルギーロスを低減する。自動車メーカーでは、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)用モーターを高速回転させることで、エネルギー効率の向上を図っている。動力源の多様化が進む中、これまで培ってきた無段変速機関連の技術を電動化車両に応用、2018年度内にも自動車メーカーに提案して実用化を目指す。開発する減速機は、圧縮時に硬くなる性質を持つトラクションオイルを利用、接触するローラー間に発生する油膜で動力を伝達する。HVやEV用のバッテリーは、重量を抑えながら、高効率なエネルギーの活用方法の一つとして、モーターを高速回転させる傾向にある。オイルを動力に活用する機構によって歯車を使わず幅広い車速域で減速比を調整でき、摩擦損失の低減と静粛性の向上を図る。(2016年10月24日付日刊自動車新聞より)

変速機用軸受
-オートマチックトランスミッション(AT)や無段変速機(CVT)など、自動車用変速機のハウジングの磨耗を低減する新たな軸受を開発したと発表した。新開発した「固体潤滑被膜付き軸受」は、軸受外輪の外径面に摩擦磨耗調整剤や固体潤滑剤、樹脂バインダーで構成された被膜を採用。軸受とハウジング間の摩擦を低減し、固定輪の外輪が回転した場合でも、ハウジングの磨耗を抑制することが可能となった。被膜なしと比べ、磨耗量を90%以上低減する。軸受の外輪外径部に被膜を塗布するため、軸受のサイズや周辺構造を変更する必要がなく、AT・CVTを小型化する上でも柔軟に対応できるとしている。(2016年8月31日付日刊自動車新聞より)

納期短縮を実現したボールねじ
-新規開発・補修需要向けに専用設計が必要な受注生産品の納期短縮を実現した「Premium Lead Time」ボールねじを新たに開発した。これまで設計仕様確定後から納入まで約40~70日を要していた納期を20日に短縮するもの。この製品の売上として、2018年度に3億円を目指すという。(2016年8月1日付プレスリリースより)

研究開発体制

-日本の技術開発センター (神奈川県藤沢市) を核に、日本6、米州2、欧州3、アジア3、グローバル全体では15拠点のテクノロジーセンターで研究開発活動を展開。

研究開発費

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 13,858 11,155 10,660
自動車関連製品 10,042 7,732 7,417


-2016年11月に創立100周年を迎えるにあたり、次の10年を見据えた「NSKビジョン2026」を策定した。自動運転技術や電動化など、次世代技術に焦点を置いた製品技術開発に注力するとともに、組織改正により需要の変化に柔軟に対応し、成長分野での新たな価値創造を目指す。軸受や電動パワーステアリングなど、基盤事業で競争力を維持しながら、動力源の多様化や自動運転技術に対応した技術開発に重点的に投資することで成長分野での需要を取り込んでいく。次世代技術として、車輪にモーターを組み込むインホイールモーターの走行実験に取り組んでおり、電動化ノウハウを蓄積していく。(2016年9月5日付日刊自動車新聞より)

-ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)向け電動ブレーキ(回生協調ブレーキ)の開発に乗り出す。EVなど向けにはこれまで、ボールねじ単体での受注がメーンだったが、将来的な車両の電動化を見据え、ボールスクリュー機構やモーター、電子制御ユニット(ECU)などをパッケージ化して供給する製品の付加価値を高める。コラム式電動パワーステアリング(EPS)で培ったモーターやECUの技術をブレーキの分野にも応用、2018年度以降に開発、提案する。回生協調ブレーキは、環境規制に対応する製品として日本や欧州に加え、中国などの新興国でも需要が拡大する見通し。同事業では独ボッシュやコンチネンタルなどメガサプライヤーが事業化している。日本精工は後発となるものの、EPSで培ったモーターや制御技術のほか、ボールねじの開発・製造に関するノウハウを持つ。加えて、東芝との合弁会社であった「ADTech(エーディーテック)」を子会社化したことで、ECUやモーターなど、電子制御系で競争力の高い設計機能を持つ。これらの技術力を活用してハードウエアとソフトウエア技術を組み合わせて他社との差別化を図るとともに、電動化の需要を取り込み事業の拡大を図る方針。(2016年8月9日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 58,602 54,996 49,197
自動車事業 39,677 34,194 34,646


自動車事業の増強投資
-日本および韓国でのニードル軸受の需要拡大に対する増強投資と生産性向上を目的とした投資を実施。

国内投資

-2018年度をめどに電動ブレーキ(回生協調ブレーキ)用モジュール部品を生産する。これまでボールねじ単体での受注がメーンだったが、パッケージでの実用化は初めて。大手ティア1(一次部品メーカー)から量産受注し、大津工場(滋賀県大津市)をはじめとする国内の各工場で主要部品を生産して海外で生産される自動車向けに供給する。回生協調ブレーキは環境規制に対応する製品として需要が拡大する見込み。同社では量産開始を機に成長分野と位置づけるアクチュエーター事業の拡大を図る。(2016年11月11日付日刊自動車新聞より)

海外投資

<中国>
-中国でオートマチックトランスミッション(AT)用部品などの変速機向け軸受の生産能力を増強する。50億円を投じて、2017年にも既存の3工場に新たなラインを導入し、生産能力を現状比6~7%以上引き上げる計画。自動車の燃費向上を目的にATの多段化が進んでいるほか、中国の地場系自動車メーカー向けの需要がマニュアルトランスミッション(MT)からATにシフトしているのに伴ってニードル軸受などの受注が増加している。同社は、中国・合肥市にある工場でボールベアリング、常熟市の工場でニードル軸受、上海市の工場で変速機用フリクションプレート(摩擦材)の生産能力をそれぞれ増強する。電動パワーステアリングを除く中国の軸受やAT部品の売上高は700億~800億円に達する。今回の3拠点の生産能力の引き上げで来年末にも年間50億円の売上高の上積みを目指す構え。(2016年12月13日付日刊自動車新聞より)

<メキシコ>
-NSKワーナーがメキシコに工場を新設すると発表。メキシコでの工場設立はNWCとして初めて。北米での自動車市場が拡大する中、自動車用変速機の需要が高まっており、コスト競争力と納期短縮に向け、現地生産を決めた。新設する現地法人NSKワーナー・メキシコが約20億円を投資し、メキシコ・グアナファト州・シラオ市に工場を新設する。敷地面積は約5万平方メートル。従業員数は、操業開始時に約30人で、2019年には約120人まで増やす計画。17年7月にクラッチアッセンブリーなどの自動車用自動変速機向け製品を製造する。(2016年9月21日付日刊自動車新聞より)

2018年3月期の主な設備の新設計画

設備投資計画金額 (百万円) 内容
全社 68,000 -
自動車事業 50,000 -日本、韓国等での増強投資
-合理化、設備改善投資等

-自動車事業部門は、日本および韓国でのニードル軸受の需要増対応として、増強投資を行っていく。

2018年3月期の見通し

(単位:億円)
2018年3月期
(予想)
2017年3月期
(実績)
増減率 (%)*
全社
売上高 9,600 9,491 1.1
営業利益 820 653 25.6
税引前利益 810 636 27.4
親会社の所有者に帰属する当期利益 560 489 14.5

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

中期経営計画

-同社は2016年11月8日に創立100周年を迎える。10年後の2026年に目指していく姿を 「NSKビジョン2026 (あたらしい動きをつくる)」 として策定。

-第5次中期経営計画 (2017年3月期 - 2019年3月期) では、「次の100年に向けた進化のスタート」 をスローガンとし、「オぺレーショナル・エクセレンス (競争力の不断の追求)」 と 「イノベーション&チャレンジ (あたらしい価値の創造)」 を方針に据えて、「持続的成長」 「収益基盤の再構築」 「新成長領域確立」 の3つの経営課題に取り組んでいく。

-第4次中期経営計画 (2014年3月期 - 2016年3月期) では、中期ビジョンとして 「1兆円を支える企業基盤の確立」、事業戦略として 「収益重視の成長」 と 「1兆円の物量を回す管理能力の構築」 を掲げ、数値目標を全項目達成、収益性改善を図った。とくに、中国事業および電動パワーステアリング (EPS) の大幅な成長を実現した。

第5次中期経営計画 数値目標 

(単位:億円)
2019年3月期
(計画)
2017年3月期
(実績)
増減率 (%)
売上高 10,000 9,753 2.5
営業利益 1,000 947 5.6
当期純利益 700 672 4.2
営業利益率 10.0% 9.7% -