日本精工 (株) 2016年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年
3月期
2015年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 975,319 974,885 0.0 -
営業利益 89,534 86,958 3.0 -
経常利益 87,208 84,626 3.1 -
親会社の所有者に帰属する当期利益 65,719 59,383 10.7 -
自動車事業
売上高 689,122 656,998 4.9 1)
営業利益 67,909 60,461 12.3 -


要因
1) 売上高
-自動車事業部門の2016年3月期売上高は、前期比4.9%増の689,122百万円。北米を牽引役として堅調な成長が継続。物量およびコスト削減効果により過去最高の業績となった。

  • 日本: 軽自動車の販売不振もあり減収。
  • 米州: 北米市場が堅調に推移し、電動パワーステアリング (EPS) ・自動車軸受とも増収。
  • 欧州: 自動車市場の緩やかな回復が続き増収。
  • 中国: 自動車市場の成長鈍化がみられたが、小型車優遇税制効果もあり増収。
  • その他アジア: 各国の市場にばらつきがあったがEPSを中心に増収。



製品開発

-自動車事業部門における2016年3月期の主な研究開発の成果は以下のとおり。

  • 自動車エンジン ベルトアイドラテンショナー用 「高速高密封シール付き玉軸受」
  • 自動変速機向け遊星歯車機構用 「世界最小ころ スラストニードル軸受」 
  • 自動車エンジン ファンクラッチ用 「高密封シール付き玉軸受」
  • ハイブリッドカー・電気自動車向け 「次世代クリープフリー軸受」
  • 「アクティブオンセンタリング制御搭載 電動パワーステアリング」
  • 「世界最軽量 電動パワーステアリング (EPS)」
  • 「アドバンスドアシストステアリングⅡ」


ベルトアイドラテンショナー用 「高速高密封シール付き玉軸受」
-2015年7月、自動車エンジンベルト用アイドラ・テンショナプーリに使用される 「高速高密封シール付き玉軸受」 を開発したと発表した。この製品は、従来のシールを改良することにより耐高速性と高密封性を両立させ、従来の高密封シールの2倍以上の密封性を実現した。2020年に10億円の売り上げを目指す。(2015年7月1日付プレスリリースより)

AT向け遊星歯車機構用 「世界最小ころ スラストニードル軸受」
-2015年10月、自動車用軸受として世界最小のころを使用したオートマチックトランスミッション (AT) の遊星歯車用転がり軸受を開発したと発表した。AT遊星歯車のピニオンギア側面のすべり軸受を転がり軸受に置き換えるもので、転がり軸受を用いるのは世界初の試み。摩擦損失の7~8割低減を実現するとともに、樹脂を採用して4割軽量化した。多段式ATの効率を高める付加価値技術として自動車メーカーや部品メーカーに提案を積極化し、同製品で2020年に売上高18億円を目指す。(2015年10月15日付日刊自動車新聞より)

ファンクラッチ用 「高密封シール付き玉軸受」
-2015年11月、後輪駆動 (FR) 車の冷却ファンに組み込まれるファンクラッチ用軸受 「高密封シール付き玉軸受」 を開発したと発表した。異物侵入に対する密閉性を高め、従来品に比べ、シールの耐ダスト性は約30倍、耐泥水性は約8倍以上向上した。使用環境が苛酷な新興国をはじめ、グローバルでの採用を視野に入れ、同製品で2020年に売上高5億円を目指す。(2015年11月20日付日刊自動車新聞より)

ハイブリッドカー・電気自動車向け 「次世代クリープフリー軸受」
-2016年2月、ハイブリッド車 (HV) や電気自動車 (EV) の変速機など駆動部用に新たな軸受を開発したと発表した。外輪の剛性に加え、Oリングの材質と潰し代を最適化することで、モーターの高速回転化に伴う軸受への荷重負荷を低減、車両の静粛性を高められる。2020年に売上高15億円を目指す。(2016年2月24日付日刊自動車新聞より)

アクティブオンセンタリング制御搭載EPS
-2016年1月、ハンドルを直進状態に戻す際の快適性を向上した電動パワーステアリング (EPS) 技術 「アクティブオンセンタリング制御」 を開発したと発表した。制御により常に最適な舵角へ補正を行うことで、ハンドルを戻す際のドライバー負担を軽減する。舵角センサーを搭載すれば専用部品などは不要で、EPSの制御のみで対応できる。コストを抑制しながら快適性を向上できる新技術として、2017年以降の実用化を目指す。(2016年1月22日付日刊自動車新聞より)

-同社は2020年までに、ハンドルの動きと舵角を自由に制御できる舵角可変機構を実用化する。新たに開発した舵角可変機構は、ステアリングシャフトの下端部分に2セットのギアとモーターで構成したシステムを組み込んだ。ハンドルの動きをシステム内のモーターで自由に制御するため、 ハンドルの操作量に依存せずに舵角を決定することが可能となる。舵角のみの作動や、舵角とは逆の動きをハンドルに付与することもできるという。自動運転の実用化では、自動操舵による衝突回避機能が不可欠と見られている。一方で、現在のステアリングシステムでは操舵に合わせてハンドルも回転するため、衝突回避時にはドライバーが腕などを負傷する可能性もある。このため、同社は安全を確保する技術へのニーズが高まると見ている。既存のステアリング機構を流用できる信頼性の高いシステムとして打ち出し、採用につなげる。(2015年11月26日付日刊自動車新聞より)

世界最軽量EPS
-2016年1月、世界最軽量のコラム式電動パワーステアリング (EPS) を開発したと発表した。トルクセンサーや減速ギアなどを小型化することで、EPSユニット全体で従来比13%軽量化。同時にトルクセンサーの機能向上も図り、電力低下時の作動確保や監視機能の追加により、安全性も高めた。軽自動車からBセグメントの小型車まで対応し、環境性能を高めた次世代製品として2017年に量産を開始する。(2016年1月22日付日刊自動車新聞より)

研究開発体制

-日本の技術開発センター (神奈川県藤沢市) を核に、日本6、米州2、欧州3、アジア3、グローバル全体では14拠点のテクノロジーセンターで研究開発活動を展開。

研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 11,155 10,660 9,919
自動車関連製品 7,732 7,417 6,795


-2017年3月期の研究開発費は13,000百万円を計画。

設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 54,996 49,197 45,448
自動車事業 34,194 34,646 32,613


自動車事業の増強投資
-日本および中国でニードル軸受の需要拡大に対する設備増強と生産性向上を目的とした投資を実施。
-電動パワーステアリング (EPS) に対する投資をグローバルに実施。

国内投資

-2015年7月、沖縄県に国内で2カ所目となるデータセンターを開設し、開所式を開催したと発表した。社内システムのデータセンターを分散させることで、災害時でもサプライチェーンを維持できる体制を構築する。同社では日本およびアジア地域の社内システムを首都圏のデータセンターで稼働している。同センターは免震構造を採用し、災害時でも電力を供給できる体制を整えている。一方で首都直下型地震や東南海地震の発生では、想定を超えるインフラの混乱も予想される。このため新たにバックアップ機能を持たせたデータセンターを国内でもっとも地震の少ない沖縄に開設した。(2015年7月15日付日刊自動車新聞より)

海外投資

<韓国>
-2015年5月、同社の韓国子会社であるNSK Needle Bearing Korea Co., Ltd. (NNBK) は、忠清南道の天安 (Cheonan) 市に新工場を建設すると発表した。2017年春に操業開始予定。NNBKは2004年2月に設立され、現在は慶尚南道の昌原 (Changwon) 工場においてニードルベアリング等の生産を行っている。(2015年5月20日付プレスリリースより)

2017年3月期の主な設備の新設計画

設備投資計画金額 (百万円) 内容
全社 62,000 -
自動車事業 41,000 -日本、韓国等での増強投資
-合理化、設備改善投資等

-自動車事業部門は、日本および韓国でのニードル軸受の需要増対応として、増強投資を行っていく。


2017年3月期の見通し

(単位:億円)
2017年3月期
(IFRS、予想)
2016年3月期
(日本基準、実績)
増減率 (%)*
全社
売上高 9,200 9,753 (5.7)
営業利益 650 947 (31.4)
税引前利益 630 904 (30.3)
親会社の所有者に帰属する当期利益 400 672 (40.4)
自動車事業
売上高 6,560 6,891 (4.8)
-自動車軸受 3,060 3,143 (2.6)
-自動車部品 3,500 3,748 (6.6)
営業利益 490 734 (33.2)

*日本基準の2016年3月期実績とIFRSの2017年3月期予想の参考比較

-自動車事業は成長鈍化を前提
-為替円高の進行、競争環境激化
-技術革新の急速な進展

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

中期経営計画

-同社は2016年11月8日に創立100周年を迎える。10年後の2026年に目指していく姿を 「NSKビジョン2026 (あたらしい動きをつくる)」 として策定。

-第5次中期経営計画 (2017年3月期 - 2019年3月期) では、「次の100年に向けた進化のスタート」 をスローガンとし、「オぺレーショナル・エクセレンス (競争力の不断の追求)」 と 「イノベーション&チャレンジ (あたらしい価値の創造)」 を方針に据えて、「持続的成長」 「収益基盤の再構築」 「新成長領域確立」 の3つの経営課題に取り組んでいく。

-第4次中期経営計画 (2014年3月期 - 2016年3月期) では、中期ビジョンとして 「1兆円を支える企業基盤の確立」、事業戦略として 「収益重視の成長」 と 「1兆円の物量を回す管理能力の構築」 を掲げ、数値目標を全項目達成、収益性改善を図った。とくに、中国事業および電動パワーステアリング (EPS) の大幅な成長を実現した。

第5次中期経営計画 数値目標 

(単位:億円)
2019年3月期
(計画)
2016年3月期
(実績)
増減率 (%)
売上高 10,000 9,753 4.6
営業利益 1,000 947 4.8
当期純利益 700 672 9.9
営業利益率 10.0% 9.7% 13.0


-設備投資額: 第5次中計 (計画) 1,800億円、 第4次中計 (実績) 1,490億円
-研究開発費: 第5次中計 (計画) 400億円、 第4次中計 (実績) 317億円

第5次中期経営計画 自動車事業の戦略

(単位:億円)
2016年3月期
売上高 (実績)
2019年3月期
売上高 (計画)
2022年3月期
売上高 (計画)
事業別戦略
パワートレイン事業: 中長期的成長を支えるコアビジネス
-パワートレイン製品 1,900 2,400 2,800 -ニードルベアリング:AT多段化による拡販
-クラッチパック:モジュールビジネスの拡大
-電動系領域 680 750 900 -エンジン・電装分野でのベースビジネス確保
-電動化領域で次の成長を担う新領域、新製品の開発
-電動化による新アプリケーションの開発:電動チャージャー、車載モーター
-シャーシ 910 1,000 1,140 -ハブユニットベアリング:顧客ベースの拡大、ワランティ・パフォーマンス工場
ステアリング&アクチュエーター事業: 次の成長への種まき
-ステアリング 2,900 2,800 3,200 -コラムEPS: 顧客ベースの拡大、次世代システムの開発
-ラックEPSの開発: 要素技術の強みを活かした製品開発、第6次中期 市場投入
-アクチュエーター 10 20 250 -EPSで蓄積したシステム製品技術・ノウハウの活用
-要素技術+メカトロ技術の展開 (電動ブレーキ 他)
-ECU設計開発の強化 (AD Techの100%子会社化)


-環境の変化: 

  • 将来の動力源の多様化
  • 車両運動制御の進化

-新体制: 

  • パワートレイン (軸受+コンポーネント) / ビークルダイナミクス (ステアリング&アクチュエーター) における要素技術の深化
  • システム化への対応力向上

-重点課題: 

  • ドライブトレイン事業拡大と収益のある成長
  • EPS顧客ポートフォリオの拡大
  • 技術進化への対応 (高効率/電動化/自動運転)
  • 下流アシストEPSの開発


AT多段化による拡販
-同社は2016~18年度の新中期経営計画で、国内の変速機用軸受事業の売上高を現状の3割増となる600億円程度に引き上げる。燃費性能や走行性能向上のため、自動車メーカー各社がオートマチックトランスミッション (AT) を多段化する動きを加速させており、変速機用軸受の需要も拡大することが見込まれる。今後2、3年後をめどに、群馬県高崎市内にある子会社の2工場にプレス機などを増設し、需要増加が見込まれるAT用軸受の生産能力を増強する。(2016年5月23日付日刊自動車新聞より)

下流アシストEPSの開発
-同社は2016~18年度の次期中期経営計画で研究開発投資を現状の2割増となる年間250億円程度まで引き上げる。120億円を電動パワーステアリン グ (EPS) の開発に投資し、このうち半数をラックタイプEPSに充てる。強みとするコラムタイプEPSに加えて、今後需要拡大が見込まれる下流アシストタイプのEPS開発を加速することで、EPS事業のさらなる成長に結びつける。(2015年12月18日付日刊自動車新聞より)

-同社は2020年までに、電動パワーステアリング (EPS) ユニットを現状より3~4割小型化する。EPSで主力のコラムタイプに加えて、現在開発を進めている下流アシストタイプでも小型化を図る。同時に摩擦抵抗を低減した減速機の採用やユニットの冗長性を確保することで、EPSの商品力を高めていく。世界的にEPSの需要が高まる中、小型化などを通じて競争力を強化することで、さらなる売上高の拡大に結びつける。(2015年10月22日付日刊自動車新聞より)

-同社はラックタイプの電動パワーステアリング (EPS) の開発に着手した。Dセグメント以上の車両をターゲットに開発し、2020年以降の量産を目指す。将来的に自動運転の実用化が見込まれる中、応答性などのメリットから下流アシストタイプのEPSに対するニーズが高まっている。得意とする小型車中心のコラムタイプEPSに加えてラックEPSをラインアップすることで、成長の牽引役であるEPS事業のさらなる拡大につなげていく。(2015年8月28日付日刊自動車新聞より)

-同社は今後3年間に電動パワーステアリング (EPS) の研究開発費を従来比で3割増やす。主力のコラムタイプEPSに加えてラックやピニオンタイプの下流アシスト式EPSの開発を強化し、2019年以降の受注を目指す。駐車支援システムなど先進運転支援システム (ADAS) の普及に伴い、出力特性に優れる下流アシストEPSに対するニーズが高まっている。収益に大きく貢献しているEPSの製品群を拡大することで、さらなる成長に結びつける。(2015年6月30日付日刊自動車新聞より)