日本精工 (株) 2015年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)
  2015年
3月期
2014年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 974,885 871,742 11.8 -
営業利益 97,327 68,049 43.0 -
経常利益 91,002 66,785 36.3 -
当期純利益 61,962 31,167 98.8 -
自動車事業
売上高 656,998 590,545 11.3 1)
営業利益 65,718 49,201 33.6 -


要因
1) 売上高
-自動車事業部門の2015年3月期売上高は、前期比11.3%増の656,998百万円。自動車市場は、中国市場の伸びに鈍化がみられたが、北米市場が堅調に推移し、グローバルには緩やかな成長が続いた。

<日本>
-消費税増税後の市場回復に足踏みがみられ、自動車メーカーによる海外現地調達に対応した同社生産の海外移転の影響を受け、減収。
<米州>
-北米市場の堅調な成長に加え、日本からの生産移転による効果もあり、増収。
<欧州>
-自動車市場の緩やかな回復が続き、増収。
<中国>
-市場の伸び率が鈍化したものの、欧州系・日系向けを中心に自動車軸受の売上高が増加。電動パワーステアリングの新規受注効果も寄与して大幅な増収となった。
<その他アジア>
-各国の市場にばらつきがあったが、日系・韓国系向けに売上高が増加。

受注

-ダイムラーとフォードモーターからハブユニット軸受を受注した。ダイムラーはメルセデス・ベンツの現行 「Cクラス」 から次期 「Eクラス」 「SLKクラス」 「CLKクラス」、フォードは新型 「マスタング」 向けに供給する。ハブベアリングの受注は、ダイムラーが初代 「Mクラス」 以来の十数年ぶり、フォードは初受注となる。数量は両社ともに年20万台ずつ、合計で40万台を見込む。今回の受注を足がかりに他車種への採用を目指し、日系自動車メーカー以外の受注拡大につなげていく。(2014年12月1日付日刊自動車新聞より)

中期経営計画 (2014年3月期 - 2016年3月期)

-創立100周年に当たる2016年に売上高1兆円を目指し、2014年3月期より3年間の中期経営計画に取り組んでいる。「1兆円を支える企業基盤の確立」を中期ビジョンとして掲げ、事業戦略として「収益重視の成長」と「1兆円の物量を回す管理能力の構築」を掲げ、下記7つの経営課題を推進する。

収益重視の成長: 

  • 新興国での成長
  • 顧客戦略・セクター戦略強化
  • 生産力・技術開発力強化
  • 戦略的提携

1兆円の物量を回す管理能力の構築: 

  • ガバナンス充実・コンプライアンス強化
  • 事業構造改革
  • グローバルマネジメントの進化

-2014年5月、2016年3月期の自動車事業売上高目標を中期経営計画の5,900億円から6,400億円程度に引き上げた。自動車市場の好調により2014年3月期で中計を達成したため、さらなる上乗せを狙う。同時に現地生産化を進めるなど収益性を高めることで、営業利益率も1.4ポイント高めて8.3%以上を目指す。利益率の高い産業機械事業が伸び悩んでおり、好調の自動車事業を強化して、中計の必達につなげる考えだ。自動車事業は、2013年春に立ち上げた中国・安徽省合肥市の工場や、今春稼動したメキシコ工場で軸受の生産を本格化するほか、タイの無段変速機 (CVT) 用軸受も生産を拡大。現地化を進めるとともに調達コストの低減などにより、軸受の利益率を高めていく。需要が拡大する電動パワーステアリング (EPS) も海外生産へのシフトを加速するなど、競争力を高めて販売強化に結びつける。

自動車事業の課題 対応
1. 自動車軸受:
 需要拡大地域での展開
-アジアでの売上拡大については、生産能力拡充と現調化の推進継続
-メキシコ工場稼働開始
2. 自動車部品:
 電動パワーステアリング (EPS) の拡大
-搭載率の拡大
-コラムタイプで伸長
-バランスのとれた顧客構成
-海外で拡大
-技術の海外移管と定着 (製品・生産・管理)
-次世代技術の開発


電動パワーステアリング (EPS) 事業
-2017年度に電動パワーステアリング (EPS) の販売を現状から2割以上増やして年間1千万台まで拡大する。自動車の生産台数の増加とともにEPSの需要が拡大する中、同社が強みとするコラムタイプのEPSは日系自動車メーカーに加えて欧州メーカーからも引き合いが増加しており、中国や欧州などグローバルで販売数量を拡大していく。さらに、今後は需要拡大が見込まれるラックおよびピニオンアシストタイプのEPSの開発強化も検討していく。収益性の高いEPS事業を強化することで、利益重視の事業体制の構築を目指す。(2014年12月16日付日刊自動車新聞より)

-EPSは、NSKステアリングシステムズの総社工場 (群馬県前橋市) をマザープラントとし、日本、米国、中国、タイ、インド、ポーランドの6カ国8工場で生産している。
-同社のEPS売上高は、2014年3月期に2,090億円となり、3年間で2倍近く増大。2016年3月期に2,500億円規模を目指す。
-全世界で生産される自動車のうち、EPSの搭載率は、2013年の約6割から2018年には8割まで拡大すると見ている。
-EPSのアシスト形式は、コラムタイプとラックタイプが増加する傾向にあり、同社は強みを持つコラムタイプを強化する。

2016年3月期の見通し

(単位:百万円)
  2016年3月期
(予測)
2015年3月期
(実績)
増減率 (%)
売上高 1,020,000 974,885 4.6
営業利益 102,000 97,327 4.8
経常利益 100,000 91,002 9.9
当期純利益 70,000 61,962 13.0


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
  2015年3月期 2014年3月期 2013年3月期
全社 10,660 9,919 10,432
自動車関連製品 7,417 6,795 6,681

研究開発体制

-日本の技術開発センター (神奈川県藤沢市) を核に、日本6、米州2、欧州3、アジア3、グローバル全体では14拠点のテクノロジーセンターで研究開発活動を展開。

製品開発

-自動車事業部門における2015年3月期の主な研究開発の成果は以下のとおり。

  • 自動変速機用 「超長寿命プラネタリシャフト」 
  • ディーゼルエンジン用 「新リテーナープレート付き玉軸受」
  • 自動変速機用 「低ドラグフリクションプレート ν(ニュー) マルチセグメント」
  • 自動車向け機能安全国際規格 ISO26262 対応 「電動パワーステアリング (EPS)」
  • 「電動パワーステアリング用低フリクション減速機」

電動パワーステアリング (EPS) 
-2014年12月、機能安全の国際規格 「ISO26262」 に対応した新型電動パワーステアリング (EPS) を開発したと発表した。ISO26262に完全対応したEPSは世界初となる。ECUやセンサーを小型化するとともに機能安全規格に対応させた。既に欧州の自動車メーカーに供給を開始した。今後は他のEPS製品も順次同規格に対応させていく。グローバルで機能安全に対する要求が高まる中、対応力を強化することで幅広い自動車メーカーからの受注に結び付け、EPS事業全体で2016年3月に2500億円の売上高を目指す。新たに開発したEPSはコラムタイプで、欧州メーカーの小型車に採用されており、今年春からグローバルで供給している。(2014年12月25日付日刊自動車新聞より)

-2014年12月、摩擦抵抗を低減した電動パワーステアリング (EPS) 用の減速機を開発したと発表した。グリースの改良によって減速機の摩擦抵抗を従来品比で17%改善。EPSのレスポンスを向上することでスムーズなステア リング操作を実現した。同技術を採用したEPSユニットは、2017年からの量産を計画する。付加価値を高めたEPSとして幅広いメーカーからの受注を目指す。(2014年12月27日付日刊自動車新聞より)

自動車軸受
-2014年12月、グリースを改良して静音性と耐久性を向上した駆動モーター用玉軸受を開発したと発表した。駆動モーター用軸受はグリースが低温時に硬化することによる軸受外輪の振動で異音が発生するのが課題となっていた。開発品は、潤滑油を保持する増ちょう剤の配合を最適化してグリースの流動性を高めた。軽量化した軸受外輪も採用し、低温時の振動を軽減して異音を防ぐ。改良したグリースは耐熱性の高い基油を使用しており、グリースの劣化や漏れをそれぞれ1割程度軽減する。従来に比べて2~4割の低摩擦化も実現した。電気自動車 (EV) の快適性向上や航続距離延長に貢献する。2020年に売上高5億円を目指す。(2014年12月13日付日刊自動車新聞より)

-2014年12月、マニュアルトランスミッション (MT) やデュアルクラッチトランスミッション (DCT) 向けにシャフトを支持する玉軸受の新製品を開発したと発表した。リテーナープレート (固定部品) と軸受の組み付けを自動化できるようにし、生産性を5倍向上した。エンジンのトルク増大やトランスミッションのレイアウトの多様化に対応する形状とした。2018年に売上高10億円を目指す。(2014年12月11日付日刊自動車新聞より)

-2014年10月、自動変速機のプラネタリー機構 (遊星ギヤセット) に使われるプラネタリーシャフトの新製品を開発したと発表した。開発品は材料成分や熱処理条件を最適化。既存のかしめタイプに比べ2.5倍の長寿命化を実現するとともに、かしめ性を向上して組み付け時の割れなど、不具合の発生を抑えた。既存品と同等の寿命で設計した場合、幅を3割短縮することができる。2018年に20億円の売り上げを目指す。(2014年10月2日付日刊自動車新聞より)

-同社はトランスミッション用軸受けの樹脂化を積極化する。駆動系軸受けとして同社で初めて樹脂を用いた 「樹脂保持器付円すいころ軸受」 をアジア系メーカーから受注。今年初頭から量産を開始した。他メーカーへの提案を積極化し、5年以内の本格展開を目指す。同製品を皮切りに樹脂を用いた様々なトランスミッション用軸受けを製品化していく。樹脂化による駆動ロスの低減や軽量化などの付加価値を訴求することで、受注に結び付ける。将来的にはトランスミッション用軸受けラインアップの3分の1程度の樹脂化を検討する。(2014年6月2日付日刊自動車新聞より)

自動車部品
-低ドラグフリクションプレート

-2014年12月、ディーゼルエンジン (DE) 向けにカムの摩擦抵抗を10%低減した 「低トルクタペットローラー」 を開発したと発表した。新たに転がり軸受を採用するとともにローラー軸にクロム系被膜処理を施し、摩擦抵抗を低減しながら潤滑環境が過酷なDEで使用可能な耐久性を確保した。燃費性能に対する要求が高まる中、新製品の投入によりディーゼルエンジン用タペットローラーの売上高を2019年までに現状の5割増となる15億円まで引き上げる。(2014年12月8日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万円)
  2015年3月期 2014年3月期 2013年3月期
全社 49,197 45,448 48,025
自動車事業 34,646 32,613 31,936


自動車事業の増強投資
-中国の玉軸受およびステアリング工場
-メキシコの玉軸受工場
-日本および中国のニードル軸受設備

<メキシコ>
-2014年12月、メキシコ・グアナファト州に新設した自動車用軸受工場の開所式を開催した。自動車用軸受を生産する同工場は、2014年7月から量産を開始。投資額は約60億円で、自動車産業が集積する同国中部のグアナファト州に約10万平方メートルの敷地を確保し、第1期工事として約1万3千平方メートルの面積を持つ工場を建設。最新鋭の自動化した生産ラインを導入して高品質を確保した。同工場ではメキシコを含む北米市場に供給するほか、将来的には欧州や韓国との関税協定を生かしてグローバル供給も展開していく。(2014年12月18日付日刊自動車新聞より)

<中国>
-同社子会社で軸受けを手がけるNSKニードルベアリング (群馬県高崎市) は、2016年度までに中国でのオートマチックトランスミッション (AT) 用軸受けの売上高を13年度の約20億円から3倍以上の70億円まで拡大する。多段式ATの世界的な需要拡大を背景に、日本から輸出している軸受けの現地生産化を進め、中国国内での供給体制を強化。中国工場でのAT用軸受けの売上高比率を現状の2割から5割まで引き上げる。同時に日本でのAT用軸受けの生産も拡大し、日本の売上高も1割以上高めていく。(2014年9月30日付日刊自動車新聞より)

2016年3月期の主な設備の新設計画

  設備投資計画金額 (百万円) 内容
全社 55,000 -
自動車事業 35,500 -日本、中国での増強投資
-合理化、設備改善投資等


自動車事業の増強投資
-ニードル軸受で日本および中国での増強投資
-ステアリングで中国を中心とした海外増強投資

-日本を含むグローバルで軸受けの生産能力を毎年5%ずつ引き上げる。毎年、設備投資の半数に当たる200億円以上を老朽化の進んだ既存設備の更新に投資し、工場の規模を維持しながら生産能力を高めていく。自動車生産の拡大とともに軸受けの販売が伸長しており、生産能力の強化が不可欠となっている。既存設備への更新投資により、効率的に能力増強を図るとともに安全性の高い生産体制を構築し、新規受注の拡大など軸受け事業の強化に結び付けていく。(2015年1月16日付日刊自動車新聞より)