横浜ゴム (株) 2012年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)
  2012年
12月期
2011年
12月期*
増減率
(%)
要因
全社
売上高 559,700 465,133 20.3 -
営業利益 49,696 26,290 89.0 -
経常利益 52,365 20,717 152.8 -
当期純利益 32,611 11,618 180.7 -
タイヤ事業
売上高 444,592 379,220 17.2 -国内新車用タイヤの販売が好調。同社の装着設定サイズが多い、エコカーやSUVの販売が好調だったことが寄与。
-海外新車用タイヤも堅調に推移。
営業利益 43,369 23,365 85.6 -
*決算期を3月31日から12月31日に変更したため、2011年12月期は2011年4月1日から2011年12月31日の9カ月間。

事業再編

平塚東工場のホースアッセンブリー機能を長野工場に集約
-同社は、平塚東工場 (神奈川県平塚市) にあるホースアセンブリー機能を、同社の長野工場 (長野県高森町) に統合・集約すると発表。年度内に長野工場近郊に新たに土地を取得し、2013年度中に長野分工場を建設する。新工場への平塚東工場の設備移転を14年度中に完了させる計画。投資額は、土地取得、建屋建設を含め約8億円。移転・統合後の平塚東工場跡地利用は未定。(2012年10月2日付日刊自動車新聞より)

ベトナムでのタイヤ合弁事業を解消し、現地タイヤ生産子会社に集約
-2012年9月、同社はベトナムでのタイヤ合弁事業「ヨコハマタイヤ・ベトナム・カンパニー (YTVC)」を解消し、タイヤの生産・販売事業を単独出資のタイヤ生産会社「ヨコハマタイヤ・ベトナム・インク (YTVI)」に集約すると発表。YTVCに出資する3社は、清算作業に入ることで正式に合意した。
  • YTVCは、1997年11月に同社がベトナムの有力タイヤメーカーであるカスミナ、三菱商事との合弁会社として設立し、主に二輪車用、軽トラック用バイアスタイヤを生産してきた。
  • YTVIは、ベトナムのタイヤ需要拡大に対応するため、同社が単独出資で2006年6月に設立。ホーチミン市近郊のビンジュン省に、混合から成形・加硫までを行う一貫生産工場を建設し、2008年2月から二輪車用、軽トラック用、産業車両用バイアスタイヤ、ミニスペアタイヤを生産している。

受注

製品名 搭載モデル 装着サイズ
ハイパワー向けタイヤ「ADVAN Sport V105 MO」 Mercedes-Benz 「CLS Shooting Brake」 255/40R18 99Y、285/35R18 97Y
Mercedes-Benz 「A-Class」、「B-Class」 255/45R17 91W
Mercedes-Benz 「SL-Class」 255/40R18 95Y (フロント専用)、285/35R18 97Y (リア専用)
Mercedes-Benz 「SLK-Class」 -
SUV用タイヤ「ADVAN S.T. MO」 Mercedes-Benz 「G 63 AMG」、「G 65 AMG」 275/50R20 113W
ハイパワー向けタイヤ「ADVAN Sport V103」 Audi 「S8」、「A7」、「Q7」 -
Porsche 「911 Carrera 4」 -
Bentley 「Continental」 -
オンロードSUVタイヤ「GEOLANDAR H/T G038」 Mercedes-Benz 「G-Class」スタンダードモデル 265/60R18 110V
低燃費タイヤ「ブルーアースE70」 スバル 「XV」 225/55R17 97V

事業方針

ロシア工場で生産する乗用車タイヤの原材料の現地調達率の引き上げ
-同社は、ロシア工場で生産する乗用車用タイヤの原材料の現地調達率を大幅に引き上げる。原材料の調達先を現在のアジアから、ロシア、CIS (独立国家共同体) からの調達に切り替えてコスト競争力を強化する。同社のロシア子会社のヨコハマ R.P.Z.は、リペツク州に工場を新設、昨年12月から試験的に乗用車用タイヤの生産を開始し、6月から本格的な操業に入る予定。ロシア工場で生産するタイヤの原材料は、スチールコードや合成ゴム、カーボンなどをロシアを含む欧州で調達しているが、原材料の6割はアジアからの調達となっている。今後、ロシアを中心に現地の素材メーカーを積極的に訪問してサンプルを集めて評価し、同社の基準を達成する素材は積極的に採用するなど、現地調達率を引き上げる計画だ。特にタイヤに使うナイロンなどの繊維を現地調達に切り替えていく。(2012年6月4日付日刊自動車新聞)

低燃費タイヤの世界展開
-同社は、乗用車用低燃費タイヤ「ブルーアース」のスタンダードタイヤ「ブルーアースAE-01」と低燃費性能を高めた次世代SUV用タイヤ「ジオランダーSUV」を3月から欧州市場に投入すると発表した。同社は低燃費タイヤを世界展開していく方針で、両タイヤともに欧州を皮切りに世界各市場に順次投入していく予定。(2012年2月22日付日刊自動車新聞より)

原価低減

-同社は、抜本的な原価低減の取り組みに乗り出すと発表。同社では、国内外で新車生産台数が順調なことなどから、新車用タイヤ販売が伸びており、原材料価格の下落もあって業績は好調。しかしながら、原材料価格の下落で今後は販売価格の下落が予想される。特に中国や韓国のタイヤメーカーとの価格競争も激化する見通しのため、コスト削減を全社で徹底し、競争力を強化して経営基盤を固める。主な原価低減策は以下の通り:
  • 調達している原材料などを一から見直す「重要課題特別プロジェクト」を推進
  • 人員配置体制、仕事のやり方の見直し

2013年12月期見通し

(単位:億円)
  2013年12月期
(予測)
2012年12月期
(実績)
増減率
(%)
売上高 6,300 5,597 12.6
営業利益 590 497 18.7
経常利益 560 524 6.9
当期純利益 360 326 10.4
*業績予想の前提:
為替レート: USD/円 90円、EUR/円 120円
原材料:天然ゴム 320円/1kg

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

中期経営計画

中期経営計画「GD100 (グランド・デザイン100)」(2006年3月期-2017年12月期)
-同社は中期経営計画で長期財務目標売上高1兆円、営業利益1,000億円、営業利益率10%を掲げている。2012年12月期よりフェーズⅢが開始しており、数値目標 (3年間累計) は以下の通り:
  • 売上高:1兆8,000億円
  • 営業利益:1,500億円
  • 営業利益率:8.3%
タイヤ成長戦略
1) 大規模なタイヤ供給能力の増強:2014年度までに生産能力を6,674万本に拡張。
-フィリピンの生産能力を2012年の700万本から2015年に1,250万本に拡張。
  • 2012年度:Yokohama Tire Philippines, Inc.にて第一次拡張を実施
  • 2013年度~:2次拡張を開始し、生産能力を1,000万本に拡張予定
-本格稼働しているロシアは2012年の70万本から、2014年に160万本に拡張。
-2013年にインド新工場に着手し、2014年に操業開始予定。

<タイヤ生産能力 (本数)> (単位:万本)
  2012年 2013年 2014年
国内
三重 (トラック・バス、小型トラック) 590 590 590
三島 (乗用車) 1,390 1,390 1,390
新城 (乗用車) 1,410 1,410 1,410
新城南 (乗用車) 280 280 280
国内 計 3,670 3,670 3,670
海外
米国 (乗用車) 620 620 620
米国 (トラック・バス) 58 60 60
フィリピン (乗用車) 700 800 1,000
中国 (乗用車) 510 510 650
中国 (トラック・バス) 34 34 34
タイ (乗用車、小型トラック) 400 400 400
タイ (トラック・バス) 35 35 40
ロシア (乗用車) 70 140 160
インド (乗用車) - - 40
海外 計 2,427 2,599 3,004
合計 6,097 6,269 6,674

2) 高付加価値商品のグローバル展開
-2012年、ADVAN SPORT V105、ECOS ES31を発売。Mercedez-Benzを始めとしたプレミアムカーへの新車装着が増加。
-同社は中国で建設車両用ラジアルタイヤメーカーに技術供与し、ラジアルタイヤメーカーが製造する建設車両用タイヤを同社がオフテイク (一定量引取り) をすることで合意。
-2013年、北米でトラック・バス用超扁平タイヤを発売予定。
-ヨコハマヨーロッパを欧州のタイヤ販売会社の持株会社化し、事業を強化。

開発動向

研究開発費

(単位:百万円)
  2012年12月期 2011年12月期 2011年3月期
全社 12,824 9,307  12,747
タイヤ事業 7,792 5,909 7,946
研究開発本部 1,610 948 1,316

研究開発体制

-基盤技術に関する研究開発は研究本部が、直接製品にかかわる研究開発はタイヤ事業、工業品事業、その他の技術部門が担当。

<タイヤ事業>
拠点名 所在地
RADIC研究開発センター 神奈川県平塚市
D-PARC 総合タイヤテストコース 茨城県久慈郡
T*MARY 冬季タイヤテストコース 北海道上川郡
Tire Test Center of Asia 総合タイヤテストコース タイ ラヨーン県

-2012年、同社は中国浙江省にある杭州横浜輪胎のタイヤ工場敷地内に、原材料の試験・評価拠点「優科豪馬中国技術センター」を設立したと発表した。同社が海外に原材料の評価・試験拠点を設立したのは中国が初めて。現在同社はタイヤ事業を拡大しており、安価な原材料も多い中国に試験・評価拠点を設けて採用までのリードタイムの短縮を図る。「優科豪馬中国技術センター」の建屋、評価試験機・分析機器を含めた総投資額は2億5千万円で、当初14人の研究員でスタートし、2013年度には23人まで増員する計画。

製品開発

<タイヤ>
空気抵抗を低減するタイヤ設計技術

-走行時の車の空気抵抗を低減するタイヤ設計技術を開発。同技術開発は、走行中のタイヤ周辺の空気の流れを改善することで、車の燃費性能向上に貢献することを目的としている。空力シミュレーション技術と風洞試験を活用して車の空気抵抗を低減するタイヤ設計技術を確立した結果、ひとつの具体的な設計案として装着時に内側となるタイヤ側面にフィン状突起を配置したタイヤ (フィンタイヤ) を開発した。フィンタイヤはフィンのないノーマルタイヤに比べ、タイヤ自体の空気抵抗は悪化するものの、車全体の空気抵抗は大幅に低減した。(2012年12月19日付プレスリリースより)

乗用車用スタッドレスタイヤ
-氷上性能および省燃費性能を向上させた乗用車用スタッドレスタイヤ「ice GUARD 5」を開発し、2012年9月より販売を開始。
  • 氷上性能:「新マイクロ吸水バルーン」と「吸水ホワイトゲル」を採用した「スーパー吸水ゴム」を開発し、氷上性能の向上に主眼をおいた非対称性トレッドパターンを新たに採用。これらの相乗効果により、同社従来製品より8%の性能向上を実現。
  • 省燃費性能:同社従来製品に比べ、転がり抵抗を5%低減。
乗用車用スタンダード低燃費タイヤ
-同社は乗用車用スタンダード低燃費タイヤ「ECOS ES31」を開発し、2013年3月より販売を開始する予定。同製品は同社の乗用車低燃費タイヤ「BluEarth」の開発で培った「ブルーアース・テクノロジー」を採用し、コンパウンド配合技術「ナノブレンドゴム」や設計技術を始めとする先進タイヤ技術を投入。同社の低燃費タイヤ「DNA ECOS」と比べ、転がり抵抗を11.5%低減しながら、ウェット制動性能を14.1%、ドライ制動性能を3.6%向上。また、静粛性や耐偏摩耗性能を向上。

<工業品>
LED用のシリコーン系封止材
-LED用のシリコーン系封止材で、耐湿性の高い「YSH-700」シリーズを開発。新製品は半導体技術協会のMSL (水分感度レベル) 規格で上位ランクに相当する性能を達成しており、現在流通しているシリコーン系封止材としては最高レベルを実現した。自動車向け計器盤やブレーキランプ、液晶ディスプレイのバックライトユニットなど、幅広いLED製品用に、国内外で販売活動を展開していく方針。 (2012年12月1日付日刊自動車新聞より)

リチウムイオン電池パック向け接着剤
-高い難燃性や接着信頼性を確保したリチウムイオン電池パック向け接着剤「フラッシュ・ワン/FE1-120」を開発。難燃性が求められる製品の組み立てに幅広く使用できることから携帯機器や自動車、住宅向け電池分野にも展開を図る。同製品は以下の特徴から様々な部位に使用できるため、部位ごとに異なった接着剤を使用する必要が無く、リチウムイオン電池パックの組み立て作業の大幅な簡素化を可能とする。
  • 主成分であるシリル基含有樹脂に独自の配合技術を加えることで、高い難燃性を持ち、発火の懸念があるアーク部位近くにも使用可能
  • シロキサンフリーのため、接点不良が懸念される部位でも使用可能
  • ガスの発生が少ないためセルを被覆する熱収縮チューブを侵食しない
フィルム用紫外線硬化型ハードコート材
-ディスプレイなどに使用されるフィルム用紫外線硬化型ハードコート材「HRシリーズ」を開発。タッチパネル・ディスプレイは直接指で触って操作するため、スベリ性や指紋・皮脂などの汚れが付着しにくいハードコート材が求められている。新製品はフィルムとの密着性に優れ、傷付き防止性やスベリ性、指紋が目立たない、汚れが拭き取りやすいなどの特長を持つ。ディスプレー内部のフィルム用に開発したタイプは、透明電極との密着性が高く、リコート (再塗装) 性も持たせた。一般的に使われるポリエチレンテレフタレート・フィルムや、透明性や耐吸湿特性の高いシクロオレフィンポリマー・フィルムでも使用できる。(2012年7月7日付日刊自動車新聞より)

設備投資

設備投資額

(単位:百万円)
  2012年12月期 2011年12月期 2011年3月期
全社 28,100 22,400  24,900
タイヤ事業 25,000 19,500 22,200

<タイヤ事業>
-新商品の上市およびタイヤのハイインチ化・高性能化に対応するため、国内工場の製造設備増強、生産性向上および品質向上等に99億円を投資。

<海外子会社>
-海外子会社において、乗用車タイヤ製造設備の増設でYokohama Tire Philippines, Inc.において行った91億円の投資を中心に工場の新設・設備拡張を実施。

海外投資

<ロシア>
-2012年5月、同社と伊藤忠商事の合弁会社のヨコハマ R・P・Zがモスクワ南方約500キロメートルに位置するリペツク州のリペツク特別経済区に約48億ルーブル (約144億円) を投じて乗用車用タイヤ工場を新設。自動車販売台数が好調に回復しているロシア国内市場向けに乗用車用タイヤを生産する。工場の敷地面積は約20万平方メートルで、2011年12月から先行して生産を開始。生産能力は年産140万本で、当面はロシア国内市場向けに乗用車用タイヤを供給するが、将来的に生産の1割程度を欧州市場に輸出する計画。今後、ロシアの需要を獲得に向けて、操業開始したばかりのロシア工場の生産能力の増強も検討する。

<インド>
-2012年、同社はインド・ハリアナ州に乗用車用タイヤ工場を建設すると発表。同社は、インドが経済発展とともに自動車販売台数が急速に拡大すると見込んで、2007年に設立した完全子会社「ヨコハマ・インディア」の生産拠点として、デリー近郊のバハドゥールガール工業団地に新たに工場を建設することにした。投資額は約44億円で、14年7月から操業を開始する。生産能力は年間70万本。

設備の新設計画 (タイヤ事業)

(2012年12月31日現在)
事業所
(所在地)
設備内容 投資予定
総額
(百万円)
着手 完了
予定
完成後の
増加能力
平塚製造所
(神奈川県平塚市)
生産設備 3,585 2012年
1月
2013年
12月
-
三重工場
(三重県伊勢市)
生産設備 4,769 2012年
1月
2013年
12月
-
三島工場
(静岡県三島市)
生産設備 4,712 2012年
1月
2013年
12月
-
新城工場
(愛知県新城市)
生産設備 9,484 2012年
1月
2013年
12月
-
尾道工場
(広島県尾道市)
生産設備 2,282 2012年
1月
2013年
12月
-
L.L.C. Yokohama R.P.Z.
本社・工場
(ロシア リペツク州)
生産・その他の設備 13,650 2009年
7月
2013年
6月
乗用車用タイヤ
140万本
Yokohama Tire Philippines, Inc.
(フィリピン クラーク特別経済区)
生産・その他の設備 19,700 2011年
2月
2014年
7月
乗用車用タイヤ
300万本