(株) デンソー 2011年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:億円)
  2011年
3月期
2010年
3月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 31,314
29,767 5.2 1)
営業利益 1,883
1,366 37.8 -
経常利益 2,072
1,527 35.7 -
当期純利益 1,430
734 94.8 -
自動車部門
売上高  30,799 29,277 5.2  
営業利益 -
1,420 - -

要因
-北米・豪亜地域を中心とした車両生産台数の順調な伸びにより、売上高は3兆1,315億円(前年度比1,548億円増、5.2%増)の増収となった。円高による為替差損があったものの、売上増加にともなう操業度差益や、合理化努力、償却費の減少等により、営業利益は1,883億円(前年度比 517億円増、37.8%増)、経常利益は2,072億円(前年度比546億円増、35.7%増)、当期純利益は、1,430億円(前年度比696億円増、94.8%増)といずれも増益。

-東日本大震災による業績への影響としては、各カーメーカーの生産調整により、平成23年3月度の自動車生産が減少したため、売上が約600億円減少した。震災に起因する特別損失は計上していない。

<日本>
-東日本大震災による売上減少があったものの、上期の自動車販売促進策の影響や、海外生産用部品の輸出の増加により2兆1,129億円(前年度比716億円増、3.5%増)となった。営業利益は、固定費削減や合理化努力により634億円(前年度比225億円増、55.0%増)。

<北米>
-北米地域は、市場回復にともなう車両生産増加により、売上高は5,360億円(前年度比616億円増、13.0%増)、営業利益は、操業度差益等により254億円(前年度比192億円増、309.8%増)となった。

<欧州>
-欧州地域は、欧州カーメーカーをはじめ売上が増加したものの、為替差損により売上高は4,013億円(前年度比98億円減、2.4%減)、営業利益は109億円(前年度比2億円増、2.3%増)。

<豪亜>
-豪亜地域は、日系車をはじめとした車両生産の増加により、売上高は6,525億円(前年度比1,184億円増、22.2%増)、営業利益は、操業度差益等により830億円(前年度比77億円増、10.2%増)となった。

-その他地域は、売上高は603億円(前年度比25億円増、4.3%増)、営業利益は65億円(前年度比2億円減、3.6%減)となった。 

>>>次年度業績予想(売上、営業利益等)


2012年3月期の見通し

(単位:億円)
  2012年3月期 2011年3月期 増減
売上高 31,700 31,314 386
営業利益 1,350 1,883 (533)
経常利益 1,450 2,072 (622)
当期純利益 980 1,430 (450)

開発動向

研究開発費

(単位:億円)
  2011年3月期 2010年3月期 2009年3月期
全社 2,900
2,700 2,971
自動車分野 -
2,636 2,883

-グループ全体の研究開発費は290,069百万円、その内、日本セグメント256,712百万円、北米セグメント13,353百万円、欧州セグメント7,316百万円、豪亜セグメント11,739百万円、その他949百万円。現在、研究開発費において海外セグメントが占める比率は約11%で、開発体制の整備により今後、この比率を増やしていく予定。

研究開発体制

-世界7地域(日本、北米、欧州、豪亜、中国、インド、南米)でテクニカルセンターを中心とした地域開発体制の強化を進めている。今年度は、欧州テクニカルセンター内のアーヘン・エンジニアリング・センター拡充と、インドとブラジルでテクニカルセンターを設置することを発表した。インド、ブラジルのテクニカルセンターは、それぞれ、2011年末、2012年初に設置する予定。今後も、自動車市場の成長が期待できる中国、インド、南米、東南アジアを中心に開発体制を強化していく。

<欧州>
-ドイツにある開発拠点を拡充し、設計能力を強化。今回拡充するのは、デンソー・オートモーティブ・ドイツ(ミュンヘン市)における開発機能 の分室であるアーヘン・エンジニアリング・センター(略称AEC、ヴェグバーグ市)。05年の開設以来、ディーゼル・コモンレール・システムなどパワート レーン機器の開発設計と性能評価を手がけてきた。床面積を従来比で3倍以上に増やして環境実験室を新設するなど設備面での充実を図るとともに、人員も現状の42人から2011年には約100人へと大幅に増員する。デンソーは機能と人員の拡充を機に、エンジンのコントロールユニットやアイドリングストップ機構用のスターターなど電子・電気機器の開発機能の一部を日本から移管、AECで現地のニーズに即応できる研究開発体制を整えていく。総投資額は1930万ユーロ(約21億円)。(2010年7月15日付日刊自動車新聞より)

<ブラジル>
-2012年初めにブラジルにテクニカルセンターを設置する。南米向けの製品開発を現地で行うことによって、南米市場におけるニーズを従来以上に吸収し、競争力のある製品を迅速に開発する狙い。15年までに約40億円を投資し、同年時点での人員は約100人を予定。また、南米の各拠点にある営業、 技術、調達などの機能をテクニカルセンターを建設するデンソー・ド・ブラジル・リミターダ社(DNBR)に集約し、南米の事業体制を強化する。テクニカルセンターを建設するのは、DNBRがサンタバーバラ・ドゥ・オエステ市に建設している新工場の敷地内。ここに延べ床面積約8000平方メートル(設立時)の建屋を建設する計画。(2010年11月12日付日刊自動車新聞より)

<インド>
-技術開発拠点としてテクニカルセンターを開設する。2011年末の稼働開始。市場ニーズに合致する設計を現地で完結すること で、インドでの事業拡大につなげる。総投資額は約30億円を予定している。テクニカルセンターは、現地の販売子会社デンソー・セールス・インド(略称 DSIN)の一部門として設置する。グルガオン市に、延べ床面積5040平方メートルの建屋を新設し、15年には約70人体制で運用する。パワートレーンや電気・電子機器、情報安全システム、小型モーターなどの製品の開発を担当する。(2010年9月16日付日刊自動車新聞より)

-カーエアコンなどを設計する合弁子会社を設立。インドのカーエアコン分野でトップの現地企業の資産を活用し、低コストで技術力が高 い製品を開発、現地自動車メーカーを対象に供給先の拡大を図る。新会社の社名は「デンソー・スブロス・サーマルエンジニアリングセンター・インド」(仮称)とし、9月に設立。資本金6800万ルピー(約1億4千万円)のうちデンソーが74%、現地企業のスブロス (ニューデリー市近郊のノイダ市)が26%を出資。本社はスブロス社内に置く。新会社では設計品をデンソーが現地に持つカーエアコン製造子会社のデン ソー・キルロスカ・インダストリーズ(バンガロール近郊)とデンソー・ファリダバッド(ニューデリー近郊)、スブロス社に提供し、各社で量産してトヨタ自動車やスズキの現地工場、タタ自動車などに供給する計画。(2010年7月1日付日刊自動車新聞より)

研究開発活動

-省燃費分野では、車両全体でエネルギーの効率的な利用を追及するエネルギーマネジメントの考え方のもと、①効率向上、②負荷低減、③エネルギーの回生利用という観点から、パワトレイン、熱、電気、電子、情報安全のすべての分野が連携し、総合的な省燃費技術の開発を行ってきた。パワトレインでは、当面主流の内燃機関の効率向上を追求するとともに、今後市場拡大が予想されるアイドルストップシステム(ISS)やハイブリッド(HV)に対応した技術開発を強化してきた。その成果として、燃料の噴霧性能と昇圧性能を向上させた新しいガソリン直噴用インジェクタと高圧ポンプを開発し、昨年秋、量産を開始。また、減速時からエンジンを停止、再始動ができる新しいISS用スタータを開発した。

-HV分野では、インバータやDC-DCコンバータ、電池監視ユニット、電動コンプレッサ等主要製品のコスト低減と性能向上に取り組むとともに、HVシステム開発部の設置と全社連携した取組みにより、システム視点、車両視点での開発を強化している。

-新興国市場向け低コスト製品開発では、製品企画の基本的なプロセスを開発するとともに、主要な23製品を対象に、平成24年3月末までにコストハーフ(コスト半減)を目標として開発に取り組んでおり、現時点で、平均約40%のコスト低減の目処が立ってきた。

製品開発

インド市場向け新型熱交換器
-インド向けに材料種類の削減や生産の効率化により大幅にコストを低減した四つの熱交換器(ラジエーター、エバポレーター、ヒーターコア、コンデンサー)を 開発。材料種類の共通化では7割以上削減したほか、現地調達率を高めた。部品も共通化し部品種類を4割以上削減した。製法の見直しにも着手 し、同一ラインでの生産を可能にしたことで、少量生産での効率を高めた。新開発の熱交換器は昨年12月に現地で発売されたトヨタ自動車のエティオスに採用済みで、今後は他車種への展開を図ると同時に低コスト技術をグローバルで活用するとしている。(2011年3月1日付日刊自動車新聞より)

コモンレールシステム
-ディーゼルエンジン(DE)に用いる「コモンレールシステム」の噴射圧を、現在の2000気圧から2500気圧にまで引き上げた。すでに開発を終えており 2013年頃をめどに製品化することになりそうだ。コモンレールシステムでは、噴射圧を引き上げると燃料の気化が促進されてより効率的な燃焼が可能になる と言われており、DEの排ガス規制の強化に対してはさらなる高圧化が必要ともいわれている。デンソーは噴射圧を2500気圧とすることでこれに対応す る。(2011年2月7日付日刊自動車新聞より)

スターター
-四輪車用として世界最軽量クラスのスターターを開発。重量は従来比約40%軽量化した1.9キログラム。今回のスターターはコンパクトカー向けに開発したもので、同年1月に発表されたスズキの「MRワゴン」に採用された。これまでのスターターでは駆動部分にあるクラッチとピニオンが一体となっていたが、今回の開発品ではこれを分離。ピニオンのみでリングギ アにかみ合わせる「ピニオンシフト構造」を採用し軽量化につなげた。クラッチとピニオンを分離することで、エンジン始動時にはピニオンだけを動かすことに なるため、移動部分が約70%も軽量化できたほか、スイッチ部分も小型軽量化した。同社によると、スターターを軽量化することで燃費に寄与するほか、体積 も減らせるため搭載性も向上するという。今回のスターターは軽自動車から1.2リットルクラスのエンジンに対応したものだが、同社では同時に2.5リット ルクラスのエンジンまで対応し、約30%の軽量化を実現したスターターも開発。トヨタ自動車の「ラクティス」に採用されている。当面は安城製作所(愛知県 安城市)で生産するが、今後は中国をはじめタイ、ブラジル、インドなどの地域にも展開し、両モデル合わせて年間500万台の生産を目指す。(2011年2月1日付日刊自動車新聞より)

ハイブリッドバス用のクーラーシステム
-ハイブリッドバス用のクーラーシステムを開発。日野自動車の路線バス用に供給を開始した。量産品としては日本で初めてインバーター付のコンプ レッサーをクーラーユニットに内蔵した電動式パッケージクーラー。消費電力の低減や軽量化など構造的なメリットのほか、エンジン停止時でも安定した快適性 を提供できるなどの効果があるという。新システムは日野が6月に発売した「日野ブルーリボンシティハイブリッド」で初採用された。(2010年6月29日付日刊自動車新聞より)
 

主な技術契約

(2011年3月31日現在)

会社名
(国名)
契約品目 契約内容 契約期間
斗源重工業
(韓国)
-A/Cシステム 特許およびノウハウ実施権の許諾 2008年2月19日 -
2013年2月18日
Perkins
(英国)
-Vistaエンジン用ECU
特許およびノウハウ実施権の許諾 2007年10月16日 -
対象エンジン生産終了時
Texas Instruments
(米国)
-半導体デバイス 特許実施権の許諾 2010年1月1日 -
2019年12月31日

設備投資

設備投資額

(単位:億円)
  2011年3月期 2010年3月期 2009年3月期
全社 1,450
1,144 3,144
自動車分野  - 1,135 3,099

-生産拡大対応、次期型化、新製品切替及び新製品開発のための研究開発投資を重点的に推進し、今年度では、日本で95,496百万円、北米で9,099百万円、欧州で12,135百万円、豪亜で22,820百万円、その他で5,537百万円、総額145,087百万円の設備投資を実施した。

海外投資

<中国>
-中国で10カ所目となるカーエアコン生産拠点を吉林省長春市に建設する。中国・東北地方では同社初の生産拠点になる。2011年8月に着工、12 年末から生産を開始し、中国第一汽車傘下の一汽トヨタや一汽VWなどに供給する計画。12年末までの投資額は1億3200万元(約16億円)を見込んでいる。新工場は天津でカーエアコンなどを製造している天津富奥電装空調有限公司の分工場(天津富奥電装空調有限公司分公司)となる。約4万平方メートルの敷地に建屋面積1万5000平方メートルの工場を建設し、15年度時点では売上高で10億7000万元(約129億円)、従業員数は約280人を計画している。(2010年11月16日付日刊自動車新聞より)

<ブラジル>
-ブラジルにカーエアコンの新工場を建設すると発表。6500万レアル(約32億円)を投じ2011年1月から生産を開始する。自動車需要の拡大にあわせて既存製品の拡販と新規製品の受注に向けた生産能力を増強するのが狙い。新工場はブラジル子会社であるDenso do Brasil Ltda. (DNBR)の拠点として、ブラジル・サンパウロ州のサンタバーバラ・ドゥ・オエステ市に建設。敷地面積は30万平方メートル、従業員数は315人を予定している。また新工場の立ち上げにあわせて分工場として展開しているピンダ工場の生産を移管する。(2010年3月17日付日刊自動車新聞より)