Johnson Controls 2006年度の動向

ハイライト

業績

単位:
百万ドル
2006年
9月期
2005年
9月期
増減率
(%)
要因
全体
売上高 32,235 27,479 17.3 -2006年、売上、純利益とも過去最高を記録。
-売上増の主な要因は、York及びDelphi事業部の買収と自動車バッテリー部門の増による。これを一部北米の自動車生産低下の影響と通貨換算差異(約500百万米ドル)が相殺した。
-通貨換算差異を除くと、売上は対前年19%の増。
営業利益 1,282 1,066 20.3 -営業利益の増は、主にYork及びDelphi事業部買収の影響と自動車バッテリー部門の増収によるが、これを鉛及び石油関連製品等の原材料のコストアップ及び北米の生産減の影響と通貨換算差異(約25百万米ドル)が一部相殺した。
-係争問題の解決もプラスの影響があったが、Yorkの統合コストが一部相殺。
-通貨換算差異を除くと、営業利益は対前年23%増。
自動車内装部門 - 北米
売上高 8,041 8,499 (5.4) -北米部門の売上は、DaimlerChrysler 及び現代自動車向けの数量が伸びたが、Ford, GM及び日産向けの数量減と、中小型トラック向けから乗用車にミックスが移行したことにより全体として微減。
営業利益 145 350 (58.6) -リストラ費用(75百万米ドル)を除く営業利益は、対前年59%の減(前年のリストラ費用は12百万米ドル)。
-自動車の生産数量減の影響と販売のミックス悪化による営業利益減が139百万米ドル。
-コスト削減プログラム、購買原低、その他の業務効率化の貢献が約253百万米ドル。
-顧客企業による車両のプログラム変更(133百万米ドル)、ツーリング及び立ち上がりコスト(68百万米ドル)、労務費増(48百万米ドル)、及び燃料コスト増(47百万米ドル)が悪化要因。
-販売費、一般管理費は主に顧客からのエンジニアリング費用の回収の遅れ(18百万米ドル)、従業員ベネフィット関係(12百万米ドル)、及び内装品納入先組立工場の閉鎖に伴う工場閉鎖コスト(8百万米ドル)により増加。これを間接業務効率化及びコスト削減プログラムで一部相殺。
自動車内装部門 - 欧州
売上高 8,774 8,935 (1.8) -欧州部門の売上は主力顧客の数量は伸びたが、通貨換算差異(約300百万ドル)により米ドルベースでは微減。
営業利益 383 252 52.0 -リストラ費用(53百万米ドル)を除く営業利益は、対前年52%の増(前年のリストラ費用は130百万米ドル)。
-コスト削減プログラム、購買原低。その他の業務効率化の貢献が約134百万米ドル。
-販売費、一般管理費は21百万米ドルの増、主にITのインフラ整備(16百万米ドル)、及びエンジニアリング費用(5百万米ドル)。
自動車内装部門 - アジア
売上高 1,459 1,399 4.3 -アジア部門の売上は主にホンダ向けの数量が伸びたことにより全体として増加。これを一部日産向け、及び韓国のシート、内装事業の数量減及び通貨換算差異(約39百万米ドル)が相殺した。
営業利益 (28) 30 (193.3) -アジア部門では2006年度、数量減と製品ミックスの悪化、日本、韓国、マレーシアにおける新規プログラムの立ち上がり費用及びエンジニアリング費用、及び原材料のコスト上昇により営業損失を計上。
-2006年度のリストラ費用は百万米ドル(2005年度はゼロ)。
自動車バッテリー部門
売上高 3,716 2,928 26.9 -主にDelphiのバッテリー事業の買収による出荷の大幅増と、原料の鉛のコストアップに起因する販価値上げにより売上増。これを通貨換算差異(約40百万米ドル)が一部相殺。
-北米ではアフタマーケットの新しい顧客獲得と、Delphiバッテリー事業の買収によるGMへの売上増により22%の増、欧州ではアフタマーケットの需要増により17%の増、アジアではマーケットシェアアップにより114%の増となった。
営業利益 443 349 26.9 -営業利益増は、主に数量増と、以前に計上していた環境保全コスト(33百万米ドル)に係わる係争の有利な解決による。これを一般コスト上昇、特に鉛価格の上昇(72百万米ドル)が一部相殺した。

受注
-2006年4月、同社は、2007年モデルSaturn Outlook 向けにGMからシートシステムとその他の内装部品を受注したと発表した。この受注には、二列目シート"Smart Slide"も含まれている。Smart Slideは、二列目シートがすばやく簡単に動くので、三列目シートに乗りやすくなる。一連の回転ポイントにより、二列目シートのクッションが裏返り、シートバックはフロントシートの方に前進スライドする。
-2006年8月、Johnson Controls-Saft Advanced Power Solutions(JCS)は、ハイブリッド車用先端リチウムイオンバッテリーの24ヶ月の開発案件を米先端電池コンソーシアム(USABC)から受注した。同プロジェクトは、USABCが費用の50%を出資するもので、JCSが近未来のハイブリッド車向けのリチウムイオンバッテリー技術を研究する。低温時での出力増強によるリチウムイオンバッテリー技術開発の加速と、バッテリーシステムコストの低減策の創出の2点に注力する。
-2006年9月、Johnson Controls-Saft Advanced Power Solutions(JCS)は、大手自動車会社の一社とリチウム・イオン(Li-Ion)バッテリーの供給に関する意向書にサインした発表した。意向書は、開発段階に関するもので、その後量産に入ることを予定している。

-2007年度、自動車内装部門では主要市場で新規に大型プログラムを立ち上げる。
北米
-新型トヨタTundra向けにシート、オーバーヘッドシステム、インストパネル、及びドアシステムの納入を開始する。Saturn Outlook向けには、シート(上述)、電子関係、ドアパネル、オーバーヘッドシステム及びインストクラスターを供給する。 その他多くのプログラムが2007年中に立ち上がる。
欧州
-欧州ではVolvo C30向けに、シート、オーバーヘッドシステム及びトリムを、起亜自動車のCEEDにシート、オーバーヘッドシステム、及びドアシステムを立ち上げる。このほかこれまでシェアの低かった欧州メーカー向けの将来のビジネスを 獲得している。
アジア
-2007年に中国で、Mercedes E-Class及びVlokswagen Bora向けに、シート、オーバーヘッドシステム及びインストパネルを立ち上げる。

事業提携
-2005年10月、同社とSaftは、ハイブリッド車市場への関与をより深めていくため、先端技術バッテリーを対象とした合弁会社を設立する覚書に両社が調印したと発表した。合弁会社は、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車用のニッケル水素電池及びリチウムイオン電池の開発、生産、販売を世界的に行なう。両社は、2006年始めに合弁設立合意が完結すると見ており、共同販売・マーケティング活動を直ちに開始する。
-2006年1月、同社とSaftは、現行および次世代ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)向けの先端技術バッテリーを供給する新たな合弁会社を立ち上げたと発表した。新会社では世界規模で、HEVやEV向けにニッケル水素電池やリチウムイオン電池の開発、製造、販売を行なう。Saftは、ニッケル水素電池とリチウムイオン電池技術のライセンスと製造ノウハウを提供し、新会社、Johnson Controls-Saft Advanced Power Solutionsの株式の49%を保有する。Johnson Controlsは、同社の技術のライセンスや製造ノウハウを提供し、40百万ドルを現金及び資産で出資して51%の株式を保有する。軍用のHEV及びEV用バッテリーは、合弁会社の事業対象には含まれない。

企業買収
-2005年12月9日、同社はHVAC(暖房、空調、エアコン)の生産及びサービスのグローバルな大手企業であるYork International Corporation (York)の買収を完了。一株あたり56.50米ドルで、支払いは合計約31億米ドル(York保有現金除く、想定563百万ドルの負債込み)。
-この他、2006年度には6件の事業買収を完了、総買収価格は想定負債額込みで111百万米ドル。同社の連結決算に大きな影響を持つものはない。この買収に伴い、57百万米ドルの暖簾代を計上。

>>>以前の企業買収参照


合弁事業
-2006年2月同社は、東風電子科技股份有限公司(Dongfeng Electronic Technology Co., Ltd. (DETC))と合弁会社上海江森自控汽車電子有限公司(Shanghai Johnson Controls Automotive Electronics Co., Ltd.)を設立する契約に調印した。登録資本金500万ドル、出資比率は東風電子科技 50.01% Johnson Controls 49.99%。新会社は乗用車用インストメーター、情報ディスプレイ、車体コントローラー等の自動車電子部品を生産する。
-2006年12月、中国の独立系大手のCheryと新たな合弁会社の設立を発表、2008年より内装システムを供給する。同社は北京汽車、上海汽車、第一汽車といった中国の自動車メーカーに10年以上に亘りキーサプライヤーとして供給を行っており、12の製造工場がある。

事業売却
-2006年1月、同社のメキシコシティー近郊のEansa工場に関し、Gill Industriesは、この工場を買収することを内容とした覚書に調印したと発表した。このメキシコ工場取得により、Gill Industriesにはワイヤー及びチューブ曲げ加工、シートフレーム・シートスライドといった製品が追加されることになる。買収条件は非公開で、1月31日までに完了の予定。

事業再編(リストラ)

-グローバル・オペレーションのコスト削減と効率化の一環として、2006年度第3四半期にリストラプラン(2006プラン)を立ち上げ、197百万米ドルのリストラ費用を計上。2006年プランは、主に自動車内装部門とビル内装管理部門の労働力削減と工場の集約を目指し、2007年度の第3四半期末に大部分を完了する計画。
-自動車内装部門のリストラプランは、北米のインストパネル、ヘッドライナー、その他の内装部品の生産・供給における収益性の改善と、欧州のシート部品の効率化に焦点を当てている。
-2006年第4四半期中に、自動車内装部門は、北米で従業員解雇手当のために追加で8百万米ドルを計上。将来的にもその他関連のコストが見込まれるが、大きなものとはならないと見ており、その都度費用化する予定。
-2006年プランは約4,700人の人員削減を含んでいる(北米自動車内装部門2,200人、欧州自動車内装部門1,400人、北米ビル内装管理部門200人、欧州ビル内装管理部門600人、その他地域ビル内装管理部門280人、自動車バッテリー部門20人)。解雇費用は、期間中に個人別退職契約に基づき請求のあるごとに一括で支払われる。2006年9月30日現在、約350人が退職。2006年プランは更に15の工場の閉鎖(北米自動車内装部門10、欧州自動車部門3、欧州ビル内装管理部門1、その他地域ビル内装管理部門1)を含む。工場閉鎖に関連する不良資産は、割引前の現在価値に基づき決定する。
-リストラ費用は、同社の現在のコスト構造、原材料コストの急激な上昇、及び幾つかの主要顧客の経営不振といったものを見直した結果計上したもの。現在の事業を統合し、顧客に近い低コスト生産国に工場を設置する可能性を今後も継続検討する。この検討は、生産、エンジニアリング、購買等会社全体の活動の見直しを含んでいる。

環境対策
-2006年度、工場に於いてエネルギー効率化の可能性を追及する活動を立ち上げた。このプログラムは、エネルギー供給、エネルギー設備、ビルのユーティリティ、エネルギー・インフォメーション、及び法規制の遵守・環境配慮のそれぞれに焦点を当てた5段階の評価に分かれている。初年度は5つの米国の生産工場を監査。プログラムが法規制の遵守・環境配慮の段階に移行するに連れて、グローバルに展開するベストプラクティスを追求して行く。
-リサイクリングと廃棄物の削減も環境政策の柱の一つ。自動車バッテリーのリサイクリングでは先進企業。米国においては消費財のリサイクリングの最も進んだ企業であり、アルミ缶の45%、紙の50%に対し、99%のリサイクル率を持っている。同社はこの専門技術をグローバルに展開、中国においては国家発展改革委員会(NDRC)と協力し、自動車バッテリーの、環境に配慮したリサイクリングの改善プロセスを開発している。
-欧州では、自動車のインストパネル用ガラス繊維強化プラスティックを、エンジン・コンパートメントのエアダクト及びモールディングとして再利用するプロセスを開発、年間約400tのガラス繊維強化プラスティックの節約を可能にした。更に、やし殻繊維のような天然製品を上級車のシートに使用、経済的にもエコロジーの観点からも節約を達成している。

展望
売上
-2007年度に同社は、売上が対前年6%増の340億米ドルに増加するものと見ている。これはユーロの対米ドル換算率に関し、2006年度の平均である$1.23より若干ユーロ高である$1.25を前提としている。
-ビル内装管理部門の売上は対前年25%増を見込むが、これは主に、Yorkの買収の年間を通した効果、サービス部門の伸び、グローバルな展開、成長市場への浸透、共同販売やフルレンジの製品のクロス販売及びサービスの共用化といった事業買収のシナジー効果を見込んだもの。
-自動車内装部門の売上は、主に北米の減により対前年3~5%の減少を見込む。自動車産業の生産数量の減、中・小型トラックと乗用車間のミックスの悪化、及び車両ラインアップの合理化が主な原因。
-2006年9月30日現在、自動車内装部門は今後3年間で35億米ドルの新規受注を獲得しているが、うち10億米ドルは2007年度。但し、この受注には、一般的にある当該モデルの生産数量、生産開始時期の振れ、といった幾つかのリスクないし不確定要因がある。
-自動車バッテリー部門の売上は、対前年5%増を見込む。主にアフタマーケットでの伸びと鉛価格の上昇の販売価格転嫁分。

営業利益
-同社は、2007年にはリストラコスト除きの営業利益率は増加すると見ている。これはビル内装管理部門の成長とシナジーの実現による。
-鉛の価格の不安定さを除き、その他のキーとなる銅、スチール、発泡化学品、樹脂、燃料等の価格は、2007年度は若干の軟化含みで、安定すると見ている。
-ビル内装管理部門の営業利益利率は、主にYork統合のコスト面のシナジー及びリストラ効果、2006年度に発生した一過性の買収費用がなくなること、及び各セグメントにおける市場拡大努力により、2007年度には対前年で改善すると見ている。
-自動車バッテリー部門の営業利益率は、主に業務効率の改善の継続、及びDelphiバッテリー事業の統合による効果を、先進技術開発費及び前年の環境問題の解決による利益がなくなることが相殺し、前年並みとなることを見込んでいる。
-自動車内装部門の営業利益率は、主に北米における生産数量の低下、車両ラインアップの合理化、中・小型トラックと乗用車間のミックスの悪化、及びエンジニアリングコスト、立ち上がりコストの上昇といった悪化要因を、欧州に於ける好調の持続が一部相殺し、対前年若干の減少を見込んでいる。自動車内装部門は、特定の顧客とは年度原低(販価改定)を織り込んだ供給契約を結んでおり、また原材料コストアップ回収の契約を結んでいる場合もある。同部門はこれまで設計変更及び生産性向上による原低と、同社のサプライヤーと同様のプログラムを実行することにより、販価改定の相当部分を相殺することができたが、この過去のトレンドを今後も継続できると考えている。

開発動向

研究開発費用

(単位:百万ドル) 2006年
9月期
2005年
9月期
2004年
9月期
研究開発費全体 743 817 844
納入先負担分 323 402 352

新製品開発
-2006年1月、同社は、QuickTrain技術を使った同社のHomeLink Wireless Control Systemを多くの2007年式車両用に生産すると発表した。特許技術であるHomeLinkシステムは、車のオーバーヘッドコンソール、サンバイザーやリアビューミラーに統合されている。QuickTrainソフトウエアーを付加することにより、HomeLinkモジュール調整が容易になるだけでなく短時間でできる。
-2006年1月、同社は、乗り心地を向上させる新しい高耐久タイプの自動車シート用フォームパッドを開発したと発表した。同社のVibraTech Foamを使えば、快適さ、耐久性、そして製品技能が大幅に向上する。加えて、VibraTech Foamを使用することによりシートの厚さを薄くすることができ、従来のシートと同等乃至はより高い快適性が提供できる、一方で、貴重な車室内スペースを解放し自由に使えるようにする。VibraTech Foamは、現在Lexus RX330のシートに使われている。別のカーメーカー1社も、2007年モデルにVibraTech foamを使用する。

- FastForward Seating System
2列目・3列目シートを、起こすことで最大6名の乗員が収容でき、キーホールダーのボタン又は車両後部にあるボタンを操作することにより10秒以内に自動的に平らに床に折り畳むことも出来る。FastForward Seatingは、同社の"Open Seating"技術により、ほぼあらゆるシート位置で高い快適性を実現したとしている。この技術を適用することにより、フロントシートの快適性とスタイルを全てのシートに展開できる。薄型でデザイン性の高いこのシートは、背圧を広範囲に分散することに加え、前列用バケットシート並に強化した左右のサポートにより快適性を高めている。実車へは2008年モデルから採用される予定。

-Hydride Battery
7.2ボルトニッケル・金属・水素化合物バッテリーは、同社が欧州で展開しているVarta Bettery Automotive事業の技術を使用して開発したもの。Vartaは、過去10年にわたりニッケル水素化合物バッテリーをバスに供給している。Johnson Controlの新しいニッケル水素化合物バッテリーは、バスに使用されているものより進化した設計を採用し、すでに市販されているSUV及びハイブリッド車の出力要求に対応する設計となっている。


-ドアトリムモジュール・コンセプト
統合型の方法を採用したことで、かつてしばしば使用されてきたドアカセットが必要なくなり、ドアシステム全体の軽量化が図られたことが長所の一つ。各部位は、装着するだけで使用できるドアパネルに直接組み付けることができる。加えて、ドアそれ自体と同様に、組み立て工程数が削減され、組み立て過程が単純化されている。

-RIM alpha
原料物質が2種類必要だった従来の反応射出成形(RIM)技術とは対照的に、RIM alphaではアリファティック・ポリウレタン1種類のみを使用する。この新製法では、高品質で安価な成形スキンを生産することができ、さらに大きな表面積でも極めて複雑なデザインを施すことができる。

-タイヤ圧モニタリングシステム
タイヤ圧を常時監視し、四輪全てのタイヤの空気圧を簡単なディスプレーを通してドライバーに伝えるシステム。新型Renault Modusに供給。

設備投資

設備投資費用
(単位:百万ドル) 2006年
9月期
2005年
9月期
2004年
9月期
全体 711 664 817
自動車内装部門 - 北米 218 267 306
自動車内装部門 - 欧州 182 203 355
自動車内装部門 - アジア 25 56 41
自動車バッテリー部門 197 97 82