The Dow Chemical Company 2012年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ドル)
2012年
12月期
2011年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 56,786 59,985 (5.3) 1)
純利益 1,100 2,784 (60.5) -
EBITDA 5,591 7,785 (28.2) -
高性能素材
売上高 13,608 14,647 (7.1) 2)
EBITDA 1,036 1,748 (40.7) -

要因
1) 全社
-2012年12月期の売上高は、前年比5.3%減少の56,786百万ドル (2011年12月期:59,985百万ドル)。農業科学が前年比13%増加した以外は、すべてのセグメントおよび地域で減少。

-顧客別で見ると、36%が北米顧客、34%が欧州/中東/アフリカ、30%がアジア太平洋および南米顧客からの売上。

2) 機能性素材部門
-2012年12月期の同部門の売上高は、前年の14,647百万ドルから7.1%減少の13,608百万ドル。為替が40%下落したことおよび製品価格の6%減少が影響した。

受注

-同社傘下のDow Global Technologies (DGTL) は、米国ルイジアナ州を本拠とするAlbemarleとの間でポリマー難燃剤のライセンス契約を締結したと発表。この製品に関しては、今回が3回目で最後のライセンス契約となる。この契約により、Albemarleは押出ポリスチレン (XPS) フォームおよび発泡ポリスチレン (EPS) フォームの生産において、ポリマー難燃剤を使用する予定。Albemarleは家電、包装、建設、自動車/輸送、製薬など様々な業界向けに難燃剤を含む特殊化学品の開発・生産を行っている。なお、DGTLは2011年3月にこのポリマー難燃剤の開発に関して発表していた。(2012年4月13日付プレスリリースより)

合弁事業

-同社とアクリル繊維大手のアクサは、炭素繊維複合材料を手がける製造およびマーケティングの合弁会社「ダウ・アクサ・アドバンスト・コンポジット・ホールディングスBV」を設立したと発表した。合弁会社は、成長する炭素繊維複合材料市場で、グローバルにマーケティング活動を展開する。多岐にわたる製品と技術サービスを提供する。コスト削減を重視し、自動車などの輸送関連やエネルギー、インフラなどの産業用途を始めとする幅広い市場での採用を目指す。同時に、アクサの炭素繊維生産拠点であるトルコ・ヤロバ工場の生産設備を増設し、生産能増を図る。(2012年7月7日付日刊自動車新聞より)

事業提携

-同社傘下のDow Electrical & Telecommunicationsは、様々な応用分野における軟質ビニールの市場開発に関して、Teknor Apex Companyと提携することで合意したと発表。Teknor Apexは米国を本拠とし、ビニール、熱可塑性エラストマー、ナイロン、バイオプラスチック、特殊コンパウンドなどを生産している。今回の提携によりTeknor Apexは、同社のバイオ可塑剤「ECOLIBRIUM」を使用した軟質ビニールコンパウンドについて、北米での独占販売権を取得。消費財・工業製品・医療機器・自動車用部品・ワイヤーおよびケーブル製品向けに使用する。なお、Teknor Apexは今後、「ECOLIBRIUM」を採用した軟質ビニールコンパウンド「BioVinyl」を商品化する計画。(2012年4月2日付プレスリリースより)

海外事業

<日本>
-ダウ・ケミカル日本のピーター・ジェニングス社長は2012年7月19日、都内のホテルで記者会見を開き、今後も積極的な研究開発投資を継続するとともに、日系企業とのジョイントベンチャー事業を拡充し、アジア太平洋地域でのダウの成長を支えていく方針を示した。ダウでは、アジア太平洋地域での売上高を2015年までに11年実績の1.5倍となる150億ドルに引き上げる目標を立てており、ダウ日本が目標達成を主導する。ダウ日本は昨年、ローム・アンド・ハースを統合したため、事業規模が2倍に拡大し、売上高は2桁の成長となった。成長戦略としてジェニングス社長は「インドの自動車事業は拡大しており、大きなチャンスになる。成長するアジアやグローバルの中で、日本はテクノロジーセンターまた生産拠点として活用していく」と述べた。(2012年7月20日付日刊自動車新聞より)

開発動向

研究開発費

(単位:百万ドル)
  2012年12月期 2011年12月期 2010年12月期
全社 1,708 1,646 1,660

-2012年12月31日現在、6,800名が研究開発活動に従事している。

研究開発拠点

-子会社のDow Automotive Systemsは、スイスのFreienbachと米国ミシガン州Midlandに複合加工技術に関する開発拠点を開設した。Freienbach拠点のテクノロジーセンターは2012年4月に開設し、接合技術と組み合わせた複合材開発機能を持つ。一方、Midland拠点においては、長繊維加工、プリプレグ、予備成形、圧縮成形およびラミネート加工技術を開発する。同拠点は2012年6月に開設した。

-同社傘下のDow Formulated Systemsは、開発能力強化に向けて、英国のBirch Vale拠点にテクニカルセンターを開設した。エンジニアリングエラストマーや特殊ポリウレタンシステムなどの分野での市場拡大を目指す。また、同部門は2011年11月に、イタリアのCorreggio拠点においてポリウレタン研究開発センターを開設。同センターでは、配合システム・ポリウレタン・自動車事業向けに、ポリウレタンフォームおよび複合材料の研究・開発を行っている。(2012年4月12日付プレスリリースより)

技術提携

-Dow Automotive SystemsとFordは、自動車に使用する炭素繊維複合材料を共同開発することで合意したと発表。Fordは2020年までに、乗用車およびトラック1台あたり最大750ポンド (約340kg) の軽量化を主要な戦略としている。順調に進めば、両社が開発した炭素繊維部品は、2015年以降のFordの新型車に採用される見込み。また、この共同開発においては、Dow Chemicalがトルコの炭素繊維メーカーAKSAや米国エネルギー省のOak Ridge国立研究所と開始したプロジェクトも活用していく意向。(2012年4月12日付プレスリリースより)

-Dow Automotive Systemsは、米グラコと開発した騒音・振動、非快適性 (NVH) を低減する新たなソリューション「ベタフォーム NVH」の技術発表を行った。このソリューションは、自動車ボディー骨格の空間に採用することで、エアノイズやロードノイズを低減させる技術で、広州汽車集団とフィアットの合弁会社である広汽フィアットが生産する新型乗用車に採用される。 (2012年4月6日付日刊自動車新聞より)

-同社と米国の化学材料メーカーW. R. Grace & Co.は、ポリプロピレン生産用の新触媒を共同開発することで合意したと発表。新触媒は、Graceの「HYamPP」ブランドとして販売される予定。「HYamPP」触媒を用いることで、プラスチックの性能を向上させる樹脂の生成が可能になる。この樹脂は、フィルム・高性能パイプ・自動車用部品・家電製品などに使用される。Graceは、この新触媒を2012年に生産開始する予定。(2012年3月29日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ドル)
  2012年12月期 2011年12月期 2010年12月期
全社 2,614 2,687 2,130

-2012年、設備投資額の43%は新製品および既存製品の生産能力拡大に充当された (2011年:36%)。同20%は環境保護、安全、損失低減および工業衛生に関するプロジェクトに投資された (2011年:15%)。残余額は既存拠点の生産性向上、省エネ化および管理保全に充当。

海外投資

<サウジアラビア>
-同社は、サウジアラビアにコーティング材料の製造施設を新設すると発表した。同社は2011年7月、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコと、ジェイベル工業都市で世界規模の石化コンビナートを建設運営する合弁会社サダラ・ケミカル・カンパニーの設立を発表している。新工場では、成長市場のサウジアラビア国内および海外の工業用塗料メーカーなどに向けて、多種多様なコーティング材料を製造する。 (2012年3月31日付日刊自動車新聞より)

<タイ>
-同社は、タイのラヨーン県Ban Changにおけるアジア工業団地内に、生産複合施設を開設したと発表。Dow、SCG、Solvayによる合弁プロジェクト「Thai Growth Project」として建設された同施設には、総額30億米ドル超にのぼる資金の一部が投じられている。2006年に発表されたこのプロジェクトにおいては、DowとSCG Chemicalsの合弁会社Map Ta Phut Olefinsが運営するナフサ分解工場や、Solvay傘下でポリエチレン (SPEII)、特殊エラストマー、酸化プロピレン、過酸化水素などを生産する複数の下流施設が建設された。(2012年3月27日付プレスリリースより)

国内投資

-同社は、メタロセンEPDM (エチレンプロピレンジエンモノマー) の生産工場を建設する計画を発表した。生産したメタロセンEPDMは、「NORDEL IP」炭化水素ゴムの商標で販売される予定。新工場は米国のメキシコ湾岸地域に建設予定で、2016年に生産を開始する見込み。「NORDEL IP」は、自動車用のウェザーストリップやホース、ベルトのほか、ルーフィング膜、靴、汎用ゴム製品などに使用されている。(2012年10月24日付プレスリリースより)

-Dow Oxygenated Solvents (酸素化溶媒) 部門は、米国テキサス州のSeadrift拠点において、ブチルグリコールエーテル (BGE) の生産能力を拡大すると発表した。これは、ブチルセロソルブ溶媒およびブチルカルビトール溶媒の生産ラインのネック工程を解消し、生産能力を15%引き上げる計画の一環。計画は2段階にわけて行われる。第1フェーズは2012年3月中に、第2フェーズは2012年秋に完了する予定。なお、BGEは主に塗装剤、家庭用・産業用洗剤、ブレーキ液、インク、石油、ガスなどの生産に使用されている。(2012年3月12日付プレスリリースより)