Delphi 2008年度の動向

ハイライト

業績
(単位:
百万米ドル)
2008年
12月期
2007年
12月期
増減率 備考
売上高 18,060 22,283 (19%) 詳細は下記「売上要因」を参照
また、セグメント別売上は財務データを参照
当期純利益 3,037 (3,065) - - 同社破綻の際にGMが約束した同社の債務の一部肩代わり5,,687百万ドルを実行したこと。
- その肩代わり分を除外すると、27億ドルの赤字。
※継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に関する注記
2008年度の同社アニュアルレポートにて、監査法人は同社の継続企業としての存続能力に重要な疑義を抱かせる会社更生プロセス上の不確実性が存在すると述べた。

売上要因(2008年12月期)

(1) GM向け売上 (売上全体の31%)
- GM向け売上は計5,525百万ドル
- 前年度比2,776百万ドルの減少。
- 前年度比で売上は33%減少。売上減の主たる要因は北米GMの生産数減と値下げによる。
- GMの操業休止による約636百万ドルの損失も含まれる。
- オートモーティブホールディンググループ部門での工場閉鎖や売却など複数の非中核事業を手放した影響により1,159百万ドルの売上減。
- 2007年にコンバーター事業を非連結子会社に移転したことにより45百万ドル売上減。また同じく2007年にパワートレインシステム部門の触媒事業を売却した影響で4百万ドルの売上減。
- 同社の非中核事業の製品ラインナップ、ユーザー志向、市況などの変更・変化によって、北米GM向けの台あたり平均売上高は1,149ドルとなった。これは前年度(1,562ドル)比26%の減少。

(2) その他顧客向け売上
(売上全体の69%)
- その他顧客向け売上は計12,535百万ドル
- 前年度比1,447百万米ドルの減少(10%減少)
- 為替差益を除外すると、その他顧客向け売上は前年度比13%の減となる。売上減の主な要因は、最近のユーザー志向や市況の影響による生産台数減。
- 2007年にコンバーター事業を非連結子会社に移転したことにより417百万ドル売上減。また2007年第3四半期に触媒事業を売却した影響で151百万ドルの売上減。
- オートモーティブホールディンググループ部門における工場閉鎖や売却により、350百万ドルの売上減。
- 値下げによる影響。

受注

- GM、その他米国の自動車メーカー
- 2008年5月、北米の大手自動車メーカーから、データ接続システムを受注。発注元メーカーの複数プラットフォーム向けに、新型のデータ接続システムを独占供給するもの。早ければ2010年モデルから供給開始の予定。供給プログラムに含まれるのは、USBケーブル、ポート、ヘッダーなどデータ接続システム一式。発注元では、このUSB対応の車載システムを、数種類のプラットフォームを使い2010年から2013年に生産する複数車種に順次搭載の予定。

- 2008年11月、GMが欧州で販売する新型車に同社の高速デジタル・データ(HSDD)コネクティビティ・システムを供給すると発表。

- Daimler
- 2008年2月、同社のバッテリー・ディスコネクト・セーフティ・デバイス(BDSD)がMercedes-Benzに採用されると発表。Mercedes-Benzでは「Cクラス」スポーツクーペ、「Cクラス」高級セダン、「Mクラス」SUVモデルなど、複数の新型車種にBDSDを導入する。

- 2008年11月、運転席サイドエアバッグASSYを内蔵した一体型ステアリングホイールをダイムラーの「Smart Fortwo」に供給すると発表。助手席サイドエアバック、受動乗員検知システム、ステアリングホイール用のクロック・スプリング(ステアリングアングルセンサー内蔵)、ウォッシュ/ワイパーストーク、ウィンカーストーク、 セレスピードスイッチも併せて供給する。

- 2008年12月、ダイムラーの「メルセデスベンツC250CDI」に同社のディーゼル燃料噴射システム「ダイレクト・アクティブ・コモンレール・システム」が採用されたと発表。

- Fiat
- 2008年10月、フェラーリの新型スポーツ車「カリフォルニア」に、カーエアコンシステムおよび環境負荷物質を使用しない電線を含む電気・電子コンポーネントと、無段階でリアルタイムに減衰力を調整可能な可変式サスペンションが採用されたと発表した。

- 奇瑞汽車
- 2008年1月、08年のCESで公開される中国・奇瑞汽車(Chery)の自動車にナビゲーションと高性能オーディオシステムを提供すると発表。同社は2007年に、2009年からCheryの複数プラットフォーム向けに一体統合型ナビゲーションシステム及び乗員保護システムを供給すると発表していた。

- AVTOVAZ
- 2008年8月、露DAAZからラジエーターコアを受注。同社が供給するこのラジエーターコアはAVTOVAZ「Lada Kalina」のラジエーターファンモジュール用で、DAAZが組立・納入を行う。DAAZは、2009年1月からAVTOVAZのTogliatti工場(ロシア)へラジエーターファンモジュール納入を開始する予定。Delphiは、2004年、ロシア製自動車に供給する初の空調システムとしてGM AVTOVAZ「Chevy Niva」に空調システムを開発したほか、2007年からはUAZ「Patriot」に空調システム一式を供給している。

売却(2008年12月期)

2008年、同社の再建プロセスに沿って下記複数の事業・資産の売却を行った。

- ブレーキ事業(北米)
- 2008年1月、製造用棚卸資産を含む同社の北米ブレーキ部品加工・モジュール組立工場(Saginaw工場 ミシガン州)を約4,000万ドルでTRWに部分売却したと発表。

- 統合ブレーキシステム事業

- 2008年7月、ブレーキ事業の売却を視野に、米国投資銀行W.Y. Campbell & Co.と契約した。同事業は統合ブレーキシステムを供給しており、総従業員数は1,000人超。メキシコのJuarezと中国の上海に合わせて3ヵ所の生産拠点を持つ。(2008年7月14日付プレスリリースより)

- ホイールベアリング事業
- 2008年1月、ホイールベアリング事業関連資産をResilience Capital Partnersに売却することで合意したと発表。機械設備、在庫製品、知的所有権、納入先・取引業者との諸契約、オハイオ州・Sanduskyにある生産・加工施設、人員(月給/時給ベース従業員)といった一連のホイールベアリング事業関連資産を移譲・移管する。(2008年1月17日付プレスリリースより)

- ベアリング事業

- 2008年2月、同社のベアリング事業関連資産をHephaestus Holdings, Inc.の完全子会社であるKyklos, Inc.に売却することで合意したと発表。Delphiは米国破産法に基づく手続に従い実施した入札結果を受け、Kyklosをベアリング事業関連資産の売却先に選定した。(2008年2月21日付プレスリリースより)

- ステアリングとハーフシャフト事業

- 2008年2月、Platinum Equity, LLCの関連会社へのステアリングおよびハーフシャフト事業関連資産の売却に関し、管轄下にあるニューヨーク南地区破産裁判所から正式承認を取りつけたことを発表。これにより、同社のステアリングおよびハーフシャフト事業(部門年商27億ドル)の関連資産は、Platinum Equity傘下のSteering Solutions Corporationに一括売却される。(2008年2月21日付プレスリリースより)  

- サスペンション事業(米国)

- 2008年3月、同社はTenneco Inc.に対し、同社のサスペンション事業を手がけるKettering工場(オハイオ州)の事業資産および在庫譲渡することに合意した。取引総額は約1,900万ドル(在庫買取:約1,000万ドル、一部機材:約900万ドル)。(2008年3月10日付プレスリリースより)

- 電動部品事業(グローバル)
- 2008年12月、Strattec Securityと同グループのWITTE社およびVAST社に、電動部品事業の一部資産を約6.7百万ドルで売却。買収対象となる資産のうち、北米事業はStrattec社に、欧州事業はWITTEに、アジア事業はVASTに組み入れられる。買収手続は2008年内に完了する見通し。(2008年12月11日付プレスリリースより)

- エキゾーストシステム事業(グローバル)
- 2008年12月、米連邦破産裁判所が同社のエキゾーストシステム事業の売却を承認したと発表。これにより、同事業はメキシコのBienes Turgon傘下となる。売却金額は約17百万ドル。2009年前半に手続が完了する見通し。エキゾーストシステム事業は売却するが、エア制御システム、燃料制御システム、燃焼システム、バルブトレインシステムなどエンジン制御システム(EMS)関連製品は全て、ガソリンEMS製品事業を通じ供給する。(2008年12月18日付プレスリリースより)


施設の統合

- 2008年7月、電子・安全部門のKokomo拠点(インディアナ州)のエンジニアリング・製造施設を統合すると発表。この統合に伴い、08年8月から改修、設備更新を実施する。これら一連のプロセスは、08年いっぱいで完了する見通し。同拠点では、集積回路、エンジンコントローラー、セーフティエレクトロニクス、センサー、ハイブリッド車向けパワーエレクトロニクスなど様々な部品を引き続き生産する。(2008年7月18日付プレスリリースより)

開発動向

研究開発費
(単位:億ドル) 2008年12月期 2007年12月期 2006年12月期
金額 1.9 20 20
2009年の研究開発費は約15億ドルを見込む

研究開発体制

-2008年12月31日現在、16,500名が研究開発活動に従事。同社テクニカルセンターやカスタマーセンターに所在する12,000名のうち、1/3以上がソフトウェアのアルゴリズム開発を含めた、先端電子製品の開発に携わる。

製品開発(2008年12月期)
アクティブ・セーフティーシステム
- 2008年1月、欧州の主要自動車メーカーの複数モデル向けに、アクティブ・セーフティーシステムを供給していると発表。同社が提供するのは、アダプティブクルーズコントロール(ACC)および自動ブレーキ機能を装備した衝突緩和システム。車線離脱警告やドライバーアラート(居眠り防止)といったシステムも含む。ACCは、ほぼあらゆる走行条件でレーダー・センサーにより先行車との車間を自動調節するとともに、他の衝突防止・緩和機能を付加した統合システムとして使用することが可能。自動ブレーキ機能付衝突警告システムはACCと連動し、先行車に後方から衝突する事故を未然に防止する(2008年1月7日付プレスリリースより)

デュアルビューナビゲーションラジオシステム(コンセプト)
- 2008年1月、CES2008で新しいナビゲーションラジオシステムをデモ公開した。ナビゲーション機能や衛星ラジオの機能を統合した先進のシステムで、デュアルビューディスプレイにより、ドライバーはフル機能装備の地図ナビゲーション画面、フロントシートの乗員はビデオ映像といったように左右で異なる画面を観ることができる。また、フロントシートの乗員はビデオの閲覧ができても運転しているドライバーはその画面を見ることができない仕組みとなっている。(2008年1月9日付プレスリリースより)

バッテリー監視システム
- 車両のエネルギー管理システムにIVTセンサー機能を付加した新型のバッテリー監視システムを開発した。新たに開発したのは、バッテリーの電流(I)、電圧(V)、温度(T)の計測に加え、充電量SOC(state of charge)や健全度SOH(state of health)のデータも計測、バッテリー交換、充電の必要性をドライバーに知らせることも可能な統合型システム。 (2008年3月31日付プレスリリースより)

アクティブ・スタビライザーバー・システム(ASBS)
- 新型「アクティブ・スタビライザーバー・システム(ASBS)」を開発中。新システムでは前後のスタビライザーの反力を常に最適に制御する機能を初めて採用し、前(第二)世代ASBSに比べ60%軽量かつ65%以上小型で、業界最高レベルの横転制御機能を備えているという。同社ではこの第三世代ASBSで複数車種向けの開発プログラムを受注した。(2008年7月23日付プレスリリースより)

直動式コモンレール・システム
- 次世代のディーゼル燃料用インジェクター「直動式コモンレール・システム」を投入する。同社は既にこの新型インジェクターシステムの生産に入っており、2008年後半から販売開始予定の欧州系自動車メーカーに供給する。 この直動式コモンレール・システム(特許取得済)は、自動車メーカーが課題とする排ガス規制「Euro6」に適合しており、トルク・出力の向上や燃費の低減にも寄与。(2008年9月2日付プレスリリースより) 

技術提携
- 2008年1月、同社とInfineon Technologiesは技術提携することで合意したと発表した。両社はAUTOSAR(オートモーティブ・オープンシステム・アーキテクチャー)に準拠した新世代車両制御ユニットの開発に取り組む。同社が車両制御ユニットハードウェア全般、制御用ソフトウェア、実績のある同製品分野でのノウハウを提供し、Infineonが車載用マイクロコントローラーの設計開発における技術力を提供する戦略的パートナーシップ。(2008年1月9日付プレスリリースより)

共同開発プロジェクト
- 2008年6月、同社は官民連携による新プロジェクトへの参加を発表。米国エネルギー省(DOE)主導の同プロジェクトは、ハイブリッド車向けの次世代インバーターの開発を目的としたもの。燃費効率に優れるハイブリッド車 (HEVs)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEVs)搭載用として、より小型かつ低コスト生産が可能なインバーターの開発を目指しており、長期的には燃料電池車(FCVs)への搭載も視野においているという。プロジェクトの当初予算は8百万ドル。参加企業が3百万ドルの資金を提供し、残り5百万ドルをDOEからの補助金で賄うという。チームの掲げる最終目標は、コスト、サイズともに現行品に比べ50%以上「スリム化」したインバーターの開発。(2008年6月10日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額
(単位:百万ドル) 2008年12月期 2007年12月期 2006年12月期
製品群別
電子・安全部品 166 161 180
パワートレインシステム 306 149 157
電気・電子アーキテクチャー 179 182 182
サーマルシステム 98 66 25
オートモーティブホールディングスグループ 15 3 53
共通・その他 33 19 25
廃止事業 161 66 99
合計 958 646 721
地域別
北米 261 255 253
欧州、中近東、アフリカ 373 217 275
アジア・大洋州 118 85 72
南米 45 23 22
廃止事業 161 66 99
合計 958 646 721