BorgWarner 2007年の動向

ハイライト

業績

(単位:
百万ドル
2007年度 2006年度 増減率 備考
総売上高 5,328.6 4,585.4 16.2% -
エンジン部門
売上高 3,761.3 3,154.9 19.2% -エンジン部門では、引き続きアジアの自動車メーカーからのターボチャージャーやタイミングシステムに対する需要、欧州メーカーからのターボチャージャー、タイミングシステム、EGRバルブ、ディーゼルエンジンのイグニッションシステムに対する需要、北米ではバリアブルカムタイミングシステム装着のGMのハイバルブ V6エンジンの普及やEGRバルブの販売増、さらに世界的市場における商用車の生産増加、ターボチャージャーや熱関連製品の売上げ増などの要因で、売上げは堅調に推移
EBIT (金利税金前利益) 418.0 365.8 14.3% 2007年の当部門の税引き前利益率は、前年の11.6%から11.1%に低下。北米の納入先の生産が大幅に減少したことと、原材料、主にニッケル価格の高騰が原因。
ドライブトレイン部門
売上高 1,598.8 1,461.4 9.4% - 欧州でデュアルクラッチ・トランスミッションやトルク伝達製品の販売が引き続き伸びるなど、北米以外で好調に推移。米国では、トルク伝達部品装着の小型トラックやSUV の生産減とトランスミッションの従来製品の販売が低下したことがマイナス要因。
EBIT (金利税金前利益) 118.1 90.6 30.4% - 2007年の当部門の税引き前利益率は、前年の6.2%から7.4%に上昇。北米事業のリストラと北米以外での販売増が原因。


受注
- 2007年1月、同社のターボチャージャー、およびコールド・スターター・システム技術がHyundai初のV6ディーゼル、Sエンジンに使用されていると発表。同エンジンは新型Veracruzラグジュリーユーティリティービークル(LUV)に搭載されている。

- 2007年3月、同社は、北米および日本市場で、トヨタの小型トラック複数モデル用に二次エアポンプシステムを供給していると発表。

- 2007年4月、 同社のトランスミッションシステム部門とBorgWarnerと日本精工(NSK)との合弁会社NSK-Warner(NSKワーナー)が、Toyota「Tundra」に初めて搭載された6速A/Tに高度フリクション・クラッチ技術を提供と発表。

- 2007年8月、同社の可変タービンブレード(VTG)ターボチャージャーが、Hyundaiの新型商用バン「Grand Starex」に提供されていると発表。

- 2007年10月、中国・奇瑞汽車(Chery Automobile)に、ドライブトレイン制御システムとしてトルク伝達システムを供給すると発表。供給するトルク伝達システムは、全輪駆動システム(AWD)搭載の新型SUV車向けで、同社の特許技術NexTrac(TM)を採用した統合制御システム。

- 2007年10月、BorgWarner Morse TECがトヨタに新型HY-VOR四輪駆動(4WD)車用トランスファーチェーンを供給すると発表。この新型HY-VOトランスファーチェーンは、「トヨタ・タンドラ(Toyota Tundra)」07年モデル及び08年初旬に発売予定の高級SUVに、初めて搭載される。

- 2007年10月、同社のデュアルクラッチトランスミッションが「GT-R」2008年モデルに搭載されていることを発表。DualTronicR(デュアルトロニック)トランスミッションが日本車に搭載されたのは、日産の新型「GT-R」が初となる。DualTronicRトランスミッションは新型「GT-R」全車種に標準装備される。

2008-2010年の新規ビジネス
米州:20%
米国のGM、Ford、Chryslerとの取引は、11%を占める。
International: ターボチャージャー
Chrysler: DualTronic、AWDシステム、エンジンタイミング
GM: トランスミッション部品、エンジンタイミング、AWDシステム、サーマルシステム
Ford: トランスミッションモジュール及び部品
Daimler: ターボチャージャー
John Deere: ターボチャージャー

欧州: 50%
VW/Audi: ターボチャージャー、DualTronic、エンジンタイミング、ディーゼルコールドスタート
Ford: ターボチャージャー、DualTronic
Daimler: ターボチャージャー、ディーゼルコールドスタート、エンジンタイミング
BMW: ターボチャージャー

アジア: 30%
韓国、中国の売上が、それぞれ最大15%、10%となる。
Hyundai: エンジンタイミング、AWDシステム、トランスミッション部品、ターボチャージャー
VW/Audi: ターボチャージャー
GM: エミッション製品、エンジンタイミング
SAIC/Ssangyong: DualTronic、トランスファーケース
Renault/日産: ターボチャージャー、DualTronic
Tata Motors: AWDシステム、エンジンタイミング
Mahindra & Mahindra: AWDシステム、エンジンタイミング

企業買収
Beru AGの子会社化
2007年12月、BorgWarner Germany GmbHはBERU AGに対し、07年12月10日時点での同社によるBERU株保有率が発行済株式の75%を越えるに至った旨を通知した。これにより、BERUとの間で、完全子会社化に向けた営業譲渡契約締結への手続に入ることになる。BERU経営陣は、完全子会社化の提案を受け入れる方向で準備をすすめるという。BERUから同社への経営権委譲にともなう具体的な諸条件について、今後数ヶ月以内に決定される。

2008年の展望

全体
売上高の成長率: 8% - 10%

セグメント別
(1) エンジン部門
欧州ではディーゼルエンジンの普及がさらに進み、それに伴いターボチャージャーやBERUシステムへの需要も高まると見込まれ、また、北米では商用車用のターボや排ガス対策製品の販売も増加するため、成長はつづくものと見られる。韓国と中国への投資も引き続き売上高と利益率に貢献すると予想される。これにより、北米の小型車生産の減少を一部補うことが期待される。

(2) ドライブトレーン部門
北米の後輪駆動4WD用のドライブシステムの需要は低迷するとみられるが、北米でのAT関連製品、欧州やアジアでのデュアルクラッチ製品の伸びを含むAT車の普及、北米以外では後輪駆動4WDの増加等により、部門の売上げは微増と見込まれる。

開発動向

研究開発費

(単位:百万ドル) 2007年度 2006年度 2005年度
自社支出分 $210.8 $187.7 $161.0
-各事業部門はR&D組織を保有。また全社としてプロトタイプ、測定及び較正、耐久性試験、ダイナモ実験室などの設備を保有。
-全社でのR&D関連従業員数はエンジニア、機械工、技術者を含めて約800名。

製品開発

ディーゼル排気ガス再循環 (DEGR)バルブ
DEGRバルブは、高出力、低コスト、高耐久性といった性能特性に加え、パッケージングが自在で、かつコンパクトな設計となっている。新型DEGRバルブは、内燃機関から排出される排出ガスを吸気に戻し燃焼温度を抑えることで、NOxの排出量を効率的に減少させる。DCモーター・アクチュエーターと独自の駆動システムを組み合わせることにより、小型バルブながら優れた燃焼反応性を発揮する。新型DEGRバルブは、ホット・コールド対応で、シングル・ダブルポペットシステムで使用できるなど、多様なパッケージングオプションが可能。又、EGRガス冷却装置および冷却装置バイパスバルブとも簡単に組み合わせることができる。

NexTrac(TM)
NexTrac(TM)は、全輪駆動用トルク伝達システムであるi-Trac(TM)の最新システム。アクティブ(オン・デマンド方式)AWD用システムであるNexTrac(TM)は、軽量、競合する他製品を上回る高効率といった特性により燃費を低減しつつ、卓越した安定性、トラクションを実現する。このシステムには、同社が独自開発した制御用ソフトが組み込まれており、他の車両動体制御システムとも強調・連動する設計となっている。(10月1日付プレスリリースより)

R2SR(Regulated Two-Stage turbocharging)
同社は可変タービンブレード(VTG)技術を採用した2ステージターボチャージャーシステム「R2SR(Regulated Two-Stage turbocharging)」を開発し、フォード系列のInternational Engine Groupが製造する6.4リッターV8「PowerStroke」ディーゼルエンジンエンジン向けに供給。6.4リッターV8「PowerStroke」」エンジンは、この改良型R2S採用により、出力、トルクの向上を実現したのみならず、北米の厳しい排ガス基準に適合する優れた環境性能も兼ね備えている。2ステージターボチャージャーシステムでは、大きさの異なる2つのターボチャージャーがセットになっている。エンジン回転数に応じて排気の流路をバルブで切り替え、小型ユニット(高圧ターボチャージャー)ないし大型ユニット(低圧ターボチャージャー)が適宜作動する仕組みとなっている。高圧ターボチャージャーの作動時にはVTGが同時に機能する。同社ではVTGのガイドベーンがスピーディーかつ誤差なく調整されるよう、この最新型ターボチャージャーシステム専用の電子アクチュエーターを併せて開発した。

マイクロDCTアーキテクチャー
アジアを始めとした新興国のスモールカーをターゲットとした次世代ATの中核ユニットの開発が最終段階を迎えた。AT同様のスムーズな変速とMT並みの燃費性能を両立するユニットで、現在は高性能スポーツ車などへの搭載が中心となっている「DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)」を、低価格車向けにアレンジ。数年以内に生産を開始し、新興地域の事業基盤の強化につなげる。現在は、中国、インドといったアジアの数社の自動車メーカーと共同で開発を進めている。「マイクロDCTアーキテクチャー」と名づけた。近く基本的なメカユニット及び制御ソフトの開発が完了する見通し。

設備投資

設備投資

(単位:百万ドル) 2007年度 2006年度 2005年度
設備投資 $293.9 $268.3 $292.5
売上に対する比率 5.5% 5.9% 6.5%

- 2008年度の設備投資目標は、売上の約6%-7%を予定。

海外投資
新興国投資
- 2007年7月、同社は今後4年で、同社パワートレーン事業に、新たに1億2000万ドルを投資すると発表。中国での技術センター新設、メキシコでのドライブトレイン工場新設、ポーランドでのターボチャージャー工場新設といった一連の投資が計画されている。中国で計画している新技術センターは4階建、建坪26,000平米の規模で、同社がグローバルに展開している技術センター中で最新のもの。新技術センターではエンジンおよびドライブトレイン製品の研究・開発を行うほか、アプリケーションエンジニアや事務担当者も配される。新技術センタープロジェクトには3,500万ドルを投資する予定。メキシコに新設するドライブトレイン工場では、北米地区で初となる、デュアル・クラッチ・トランスミッションモジュールの生産を行うほか、その他のトランスミッションおよびAWD向け製品の生産を行う。同社ドライブトレイン部門がメキシコ・Saltilloinに、6,700万ドルを投資し、24,000平米の規模をもつ工場を建設する。又、1,800万ドルを投じ、ポーランド・Rzeszowに新工場を建設、ターボチャージャー年産50万台を見込む。

- 2007年5月、BorgWarner Thermal Systems(エンジン部門の1ユニット)は、中国・寧波で、新工場の建設を起工。新工場は、敷地面積19万4千平方フィート(1万8千平米)で、近隣の、小規模の既存工場に代わるもの。完成すれば同社の中国拠点では最大規模となる。新工場では、2007年12月から、ファン、VisctronicRファン駆動装置、ウォーターポンプ 、電子ウォーターポンプ 、オイルポンプの生産を開始する。BorgWarner Thermal Systemsは、BorgWarner が過半数を超える株式を所有する現地合弁会社Borg-Warner Shenglong (寧波) Co. Ltd. を通じ、中国での事業を展開している。

ドイツ
- 2007年2月、同社はドイツのKetschに3万4千平方フィートの規模をもつ、ドライブトレインコンピタンスセンターを新設すると発表。同管轄センターはドライブトレイングループの欧州本部、ならびにテクニカルセンターの機能も兼ね、トランスミッションシステム(Transmission systems)部門、トルク伝達システム(TorqueTransfer systems)部門を合わせて、約120名体制。
- 2007年5月、BorgWarnerのトランスミッションシステ部門は、ドイツ・Arnstadtのドライブトレーン工場敷地内において、デュアルクラッチ生産工場の建設を起工。新工場は2007年11月完成予定。生産施設の規模が107,000 平方フィート(10,000平米)へと倍増されるのにともない、2010年までに150名の新規雇用を予定している。同社は、今後数年で、総額約3,500ドル(2,600ユーロ)を投じ、施設拡張を行う。