BorgWarner 2006年の動向

ハイライト

業績

(単位:
百万ドル
2006年度 2005年度 増減率 備考
総売上高 $4,585.4 $4,293.8 6.8% ・2006年の売上は欧州とアジアの堅調に支えられ伸びたものの、北米国内のトラック生産台数減少を背景とした販売減で一部相殺された。
・為替変動による要因は売上にも利益にもプラスに働いた。ユーロに代表されるアメリカ地域以外の通貨の影響は販売額を3,680万ドル押し上げた。 また、利益でも40万ドル貢献。
・2006年度で為替利益の影響を除く売上増は5.9%(2005年度は21.1%)。
エンジン部門
売上高 $3,154.9 $2,855.4 10.5% ・エンジン部門の売上は対前年比で10.5%の上昇。
・販売増の要因:
-アジア自動車メーカーのターボチャージャーとタイミングシステムへの需要が旺盛であった。欧州自動車メーカーからもターボチャージャーとタイミングシステムに加え排気ガス再循環(EGR)バルブとディーゼル・イグニッション・システムへの需要が旺盛。
-GMの高付加V6エンジン用の可変式カム・タイミング・システムの継続的な展開。北米でのEGRへの強い需要。世界的に好調な商用車生産によるターボチャージャーとサーマルシステム製品の販売の増加。
EBIT (金利税金前利益) $365.8 $346.9 5.4% ・エンジン部門の売上高に対するEBITの比率は2005年の12.1%に比べわずかにダウンして11.6%であった。これは米国内メーカーの生産計画が大幅に縮小されたこととニッケルを代表とする原材料費の高騰による。
ドライブトレイン部門
売上高 $1,461.4 $1,472.9 0.8% ・ドライブトレイン部門の売上は対前年比で0.8%と微増。
・デュアルクラッチトランスミッションとトルクトランスファー製品の販売が欧州地域で継続的に好調であったことなど北米以外での好成績により販売が伸びた。北米ではトルクトランスファー製品を搭載する小型トラックとSUVの生産台数が低調であったことと従来型のトランスミッション製品の販売量減少などのマイナス要因の影響を受けた。
EBIT (金利税金前利益) $90.6 $105.2 -13.9% ・売上に対するEBITでは北米の納入先で生産計画台数を大幅に削減したことと原材料費の値上がりの影響を受け2005年の7.1%から6.2%に縮小。

受注
- 2006年1月、2006年北米Car and Truck of the Yearを受賞した中型前輪駆動ピックアップトラックのHonda Ridgelineにドライブトレインとエンジン部品を供給すると発表。Ridgelineは、ホンダが米国のピックアップ分野で競争していくために開発したもので、これに同社の電子制御全輪駆動InterActive Torque Management II (ITM II)システム及びITMシステムに使用するトランスミッション、クラッチパックアッシー用の多数の部品が搭載されている。

- 2006年1月、奇瑞汽車のTIGGOに、ITM 3eトルクマネージメントシステムを供給すると発表。TIGGOは 中国で初めて国内メーカーが設計し、国内で製造されるアクティブ全輪駆動システム搭載のクロスオーバー車(COV)。

- 2006年1月、"DualTronic"湿式デュアルクラッチモジュール技術を、インドで発売開始されるSkoda Lauraに供給すると発表。また、Skoda Lauraが搭載する1900CCの直噴ディーゼルエンジンにはBorgWarner製のターボチャージャーが採用されている。

- 2006年3月、Porsche 997 Turbo 900T3 3.6リットルエンジンにハイフローエアポンプを初めて供給すると発表。このポンプは、従来までのエアポンプと比べて、空気流量が30%増加されている。

- 2006年9月、South Carolina州のSeneca工場から100万台目のT-Trac トルク管理システムをHonda Motor Company 向けに出荷すると発表。BorgWarner社とホンダにより共同開発されたこのシステムは、2000年8月初めにAcura MDX向けに生産開始されたが、当初はOntario州のAllistonで生産され、カナダホンダ向けに出荷された。ホンダPilot向けの生産が2002年4月に始まり、2005年にはホンダRidgelineにも拡大された。

- 2006年9月、InterActive Torque Management (ITM3e)四輪駆動システムが2006年型ポルシェ・スポーツ・カーに標準装備されていると発表。

- 2006年11月、業界初の同社独自デュアルトロニック・トランスミッション技術を上海汽車(SAIC)の子会社であるShanghai Automobile Gear Works Co. Ltd. (SAGW) に供給すると発表。デュアル・クラッチ・トランスミッションの開発は中国では初めてとなる。BorgWarner社は、デュアル・クラッチ、トーション・バイブレーション・ダンパー、シフト・アクチュエーション付き油圧コントロール、シンクロナイザー及び油圧ポンプの5つの生産モジュールを開発、供給する。トランスミッションの組立ての開発はSAGWとドイツのエンジニアリング会社であるGIFが共同で実施、実際の組立ては中国のSAGWで行われる。

- 2006年11月、エレクトリック・シフトオンザフライのトランスファーケースと電子制御ユニット(ECU)が、Auto Alliance Thailand Fordの新型Ranger及びEverestのAT車用パートタイム四駆に標準装着となると発表。 タイにおけるパートタイム四駆技術の初めての製品となる。2007年型車以降、BorgWarner社の四駆システムを搭載する車両は、タイのAuto Alliance工場で組み立てられ、世界の25カ国以上の市場に出荷される。

- 2006年12月、BorgWarner Morse TECはボルボ中型クラス車種、及び今後発売予定のフォードPAG車種に搭載する一連の新型エンジンの先駆けである3.2-L Volvo I-6エンジン用にタイミングチェーンアセンブリーを独占的に供給すると発表。

2007年以降、アジア地域の売上が、北米地域の売上(ともに、売上比率27%) と拮抗し、欧州は全社売上の46%となる。
VW/Audiが、2007年には、最大顧客となる見込み。

2007-2009年の新規ビジネス

米州:27%
米国のGM、Ford、Chryslerとの取引は、12%を占める。
International: ターボチャージャー
DaimlerChrysler: トランスファーケース、トランスミッションモジュール及び部品、AWDシステム、エンジンタイミング
GM: トランスミッション部品、エンジンタイミング、可変カムタイミング、トランスファーケース
Ford: エンジンタイミング、トランスミッションモジュール及び部品
John Deere: ターボチャージャー

欧州: 46%
VW/Audi: ターボチャージャー、デュアルトロニック、エンジンセンサー、エンジンタイミング、ディーゼルコールドスタート
Ford: ターボチャージャー、デュアルトロニック、エンジンタイミング、ディーゼルコールドスタート
DaimlerChrysler: ターボチャージャー、エンジンタイミング
BMW: ターボチャージャー、タイヤ空気圧モニタリング

アジア: 27%
韓国、中国の売上が、それぞれ15%、9%となる。
Hyundai: エンジンタイミング、AWDシステム、ターボチャージャー
VW/Audi: ターボチャージャー
Ssangyong: トランスファーケース
中国のカーメーカー: ターボチャージャー、サーマルシステム、DualTronic、AWDシステム
日本のカーメーカー: エンジンタイミング、エミッションシステム


企業買収
- 2006年10月、Eaton Corporation よりEuropean Transmission and Engine Controls ("ETEC")の生産ラインを買収。2006年の売上は5,700万ドルと推定される。このトランスミッションとエンジンの事業は、A/T、コモンレール・ディーゼル及びガソリン・エンジンその他のアプリケーション用の高圧コントロール・ソレノイドに特化されており、BorgWarnerのエンジン及びドライブトレイン関係の電子技術を補完する。

2007年の展望
(1) エンジン部門
ターボチャージャーとBERU製品への需要が伸び続けている欧州でのディーゼルエンジン比率の増加基調から継続的な成長ができるものと期待。北米の商用車市場ではターボチャージャーと排気関連製品の市場拡大を予測。韓国と中国への投資は売上高とEBIT増加に寄与するものとみている。こうした成長分はさらに不況が続く北米の小型車生産の落ち込み分を補うものと考えている。

(2) ドライブトレイン部門の成長は、微増となる見込み。マイナス要因は、北米市場の後輪駆動をベースとした四輪駆動システムの停滞気味な需要。プラス要因は、北米での従来型のトランスミッション製品及びA/Tのコントロールの販売増や、欧州とアジアのデュアル・クラッチ・トランスミッションの販売増加分を含むA/T製品のシェアの伸びが期待される。

開発動向

研究開発費

(単位:百万ドル) 2006年度 2005年度 2004年度
自社支出分 $187.7 $161.0 $123.1

-各事業部門はR&D組織を保有。また全社としてプロトタイプ、測定及び較正、耐久性試験、ダイナモ実験室などの設備を保有。
-全社でのR&D関連従業員数はエンジニア、機械工、技術者を含めて約800名。
-OEM各社との共同作業及び納入先の将来の製品需要を予想することによって、新しい自動車部品及びシステムの発想、設計、開発、生産を行なう。
-国内外合わせて約3,800件の特許を申請中並びに申請準備中。


製品開発
i-Trac:前輪駆動/全輪駆動(FWD/AWD)の新技術を複数製品化。これにより二つのサブ製品群 -- 安定性とトラクション及び操作性と性能--で構成される "I-Trac" FWD/AWD製品シリーズと名づけられたFWD/AWD製品群の強化がはかられる。

排気管理技術:米国環境保護庁(EPA)と、次世代排気管理技術を共同開発すると発表。このパートナーシップは、EPAがもつクリーンディーゼル燃焼(CDC)技術と高効率ガソリン燃焼技術を、自動車業界やトラック業界が活用して排気技術を開発するというもの。低排気で効率が改善できしかも商業化の可能性が高い製品技術に主に特化していく。

新しい高流量エアポンプ:強化されつつある排気と燃料節約に関する産業規準への世界的な顧客ニーズに対応するために、新しい高流量エアポンプ技術を開発中。

AUDIとの共同技術開発:Audiが最近発表した1.8リッターTFSIエンジンは、BorgWarner社との綿密なる連携の結果、誕生した製品である。この新型エンジンは、ターボチャージャー技術と燃料噴射ガソリンエンジンを統合した世界初のエンジンとしてAudiが賞を受けた2.0リッターTFSI エンジンの開発提携で培った技術を踏襲したもので、全く新らしい、スポーティーかつ高性能な、ワールドクラスエンジン開発の幕開けといえる。

設備投資

設備投資

(単位:百万ドル)

2006年度 2005年度 2004年度

設備投資

$268.3 $292.5 $252.4
売上に対する比率 5.9% 6.5% 7.2%

- 2007年度の設備投資目標は、売上の約6.5%を予定。


海外投資
- 中国:2006年3月、中国の寧波にターボチャージャーおよびトランスミッションソレノイドを組み立てる新工場を開設。新しい事務棟にはターボ・排気システム部門、Morse TEC部門、トランスミッションシステム部門の要員が配置され、更に同社の中国の全ての事業をサポートする共通業務部門の財務、情報技術、人事の担当者も配される。

- 韓国:2006年12月、エンジンタイミングシステムの需要増に対応するため、韓国平澤市にあるエンジン・グループの生産工場を倍増。90,000平方フィートの工場で、現代/起亜自動車のエンジンファミリー向けエンジンタイミングシステムを生産する。2010年には年間3百万基分になると予想されている。平澤市のエンジン・グループ工場は2003年に、現代/ 起亜自動車との事業の発展に伴い設立。現在、Morse TECエンジンタイミング製品及びTurbo & Emission Systemsのターボチャージャーを生産する。

- フランス:2006年12月、トランスミッションシステム部門がフランス・コレーズ県Tulle北方にあるEyreinで、新規に16万平方フィートの工場を着工。この投資は、欧州におけるBorgWarner DualTronicトランスミッション技術への需要が拡大してきていることや、関連してトランスミッション制御システムで新規受注があることに呼応したもの。オペレーションには、これらシステムのアプリケーションエンジニアリング、テスト、製造が含まれる。同社は現在Tulle工場でソレノイドやトランスミッション制御モジュールを生産しているが、2006年夏に新工場が完成した時点でこれに従事する従業員と生産を新工場に移管する計画。

- ドイツ:2007年2月、ドライブトレイン市場におけるリーダー的地位を確固たるものにすべく、目下進めている取り組みの一環として、ドイツのKetschに3万4千平方フィートの規模をもつ、ドライブトレインコンピタンスセンターを新設すると発表。同管轄センターはドライブトレイングループの欧州本部、ならびにテクニカルセンターの機能も兼ね、トランスミッションシステム部、トルク伝達システム部を合わせて、約120名体制。ドライブトレイングループはドイツ、フランス、モナコ、および英国に、合わせて7ヶ所の生産工場があり、欧州に強固な事業基盤をもつ。