Autoliv, Inc. 2012年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ドル)
2012年
12月期
2011年
12月期
増減率
(%)
要因
売上高 8,267 8,232 0.4 1)
営業利益 705 889 (20.7) -


要因

1) 全社
-2012年12月期の売上高 (8,267百万ドル) は、前年比でほぼ横ばいであった。本業の売上は4% (332百万ドル増) 増加したが、為替差損が3% (273百万ドル減) 、売却損 (24百万ドル減) が影響した。売上の増加率は、全世界の小型乗用車の生産台数 (LVP) の増加率7%よりも3パーセンテージポイント低かった。悪い要因としては同社の市場シェアが高い欧州の市場が悪く、市場シェアが低い日本でのLVPが増えたこと。良い要因としては、北米でのモデルミックスが良かったことと、アクティブセーフティーへの関心が高まったこと、および中国での売上が伸びたこと。

製品別
エアバッグ
-エアバッグ製品の売上は、前年度比3%増の5,392百万ドルであった。増加の要因としては、北米のLVPが伸びたこと、同社のサイドエアバッグの優位性、ステアリングホイールの市場シェアの高さおよびニーエアバッグの新規受注が上げられる。

シートベルト
-シートベルト製品の売上は、前年度比4%増の2,657百万ドルであった。欧州でのLVPの減少にもかかわらず、アジアと北米では売上を伸ばし、また高付加価値のシートベルトシステムが市場に受け入れられた。

アクティブセーフティ
-アクティブセーフティシステムの売上は、前年度比38%増の218百万ドルであった。MercedesとGMから新規レーダーシステムの受注を獲得したこと、BMWから新規カメラシステムの受注を獲得したことが主な要因。

売却

-同社は、子会社Autoliv Mekan ABをスウェーデンの非公開会社Verktygs Allians i Hassleholm ABへ売却したと発表。売却金額は260百万スウェーデンクローナ (37百万米ドル) 。同子会社は主に、Volvoのモデル向けにシート部品を生産している。スウェーデンHassleholmに位置し、従業員数は約200名。同子会社の社名は「Autoliv Mekan」から元の「Lareda Mekan」に戻る予定。 (2012年6月11日付プレスリリースより)

受賞

-同社は、スペインのエアバッグ工場がFordから「World Excellence Award」を受賞したと発表。今回、「Gold Award」を受賞したのは、同社を含めて12社のサプライヤー。なお、Autolivが2011年の実績に対してサプライヤー賞を受賞するのは、今回で11個目となる。Fordのほかに、BMW、Daimler、トヨタ、スバル、長城汽車、第一汽車、Volkswagenの中国子会社などが含まれる。 (2012年6月14日付プレスリリースより)

-同社は、スバルより「Excellence in Partnership」を受賞したと発表。同社は最近、スバル 「Outback」および「Legacy」のモデル向けに新たに受注を獲得している。 (2012年4月5日付プレスリリースより)

-同社は、Daimlerより「Supplier Award 2011」を内装部門で受賞したと発表。2011年度における納入先からの受賞は、今回で6回目となる。同社は2011年11月に、BMWから「Supplier Innovation Award」を受賞。BMW 「1 Series」および「3 Series」に納入したカメラベースの運転支援システムが評価されたもの。また、2012年2月にはトヨタより「Global Contribution Award」を受賞。最近では中国において、上海VW (Shanghai-VW) より「Gold Award」、長城汽車 (Great Wall Motors) より「Excellent Supplier Award」、第一汽車 (FAW) より「Excellent Development Supplier Award」をそれぞれ受賞している。 (2012年3月21日付プレスリリースより)

-同社は、トヨタより「Global Contribution Award」を受賞したと発表。また、トヨタの新型 「Aqua (Prius c)」向けに開発したインフレーターカーテンが評価され、「Mass Innovation Award」も受賞。このインフレーターカーテンは、50%の軽量化および40%のコスト改善を実現した。さらに同社は今回、「Excellent Value Improvement Award」も受賞している。 (2012年2月24日付プレスリリースより)

カルテルに関して米国司法省と司法取引に同意

-同社は、米国司法省との間で司法取引に合意したと発表。同社は、日本子会社が関与する2件の独占禁止法違反について有罪を認め、14.5百万米ドルの罰金を支払う予定。なお、今回の取引には、欧州委員会が現在行っている調査は含まれていない。 (2012年6月6日付プレスリリースより)

2013年12月期の見通し

-同社は、2013年12月期の売上は前年比1%から3%の間で増加、営業利益においては9%前後の増加と予測。これらは生産能力の調整費用とアンチトラスト調査の費用を除外している。

開発動向

研究開発費

(単位:百万ドル)
2012年
12月期
2011年
12月期
2010年
12月期
合計 598 568 490
売上高に占める割合 (%) 7.2 6.9 6.8

研究開発体制

-約4,700人のエンジニアが研究、製品開発、アプリケーションエンジニアリングに従事。
- 9カ国、18拠点にテクニカルセンターを保有。
-どの研究開発プロジェクトも研究開発費の3%を超えない。

研究開発拠点

-中国・上海にある技術センターを拡張すると発表した。中国において衝突試験や、パッシブおよびアクティブセーフティシステムのエンジニアリング、エアバッグ開発などの能力向上を図る計画。建屋と試験設備への投資額は約8百万米ドル。既存センターの面積は現在17,000平方メートルで、拡張後には20,500平方メートルとなる。今回の拡張では、衝撃シミュレーション用のテストコースやオフィススペースを設置し、技術者130名超を増員する予定。なお、同社の中国拠点では、従業員7,200名のうち6%の430名が同センターをはじめとするエンジニアリングおよび製品開発に携わっている。これは、世界の拠点で研究・開発・エンジニアリングに関わる従業員数の10%にあたるという。 (2012年10月19日付プレスリリースより)

-米国マサチューセッツ州のLowell拠点を拡張すると発表。同拠点では死角検知システム、前方衝突警告システムなど、レーダー・運転支援製品の開発を行っている。今回増設されるのは、30,000平方メートルのオフィススペースと、30,000平方メートルの生産・エンジニアリング・試験スペース。この拡張は、2012年2月に完了する予定。 (2012年1月11日付プレスリリースより)

研究開発活動

-運転者アルコール検知システムの開発プログラム「Driver Alcohol Detection System for Safety (DADSS)」において、第2フェーズの参加企業に選出されたと発表。このDADSSは、米運輸省道路交通安全局 (NHTSA) と自動車交通安全協議会 (ACTS) が共同スポンサーとなっている。同社はこのプログラムにおいて、血中アルコール濃度の測定に赤外分光法を用いる予定。なお、このプロジェクトの第2フェーズは、2年以内に完了する見込み。 (2012年1月11日付プレスリリースより)

製品開発

シートベルト
-シートベルトの新コンセプトを開発した。従来の3点式シートベルトのサポートとして、2点式ベルトを取り付けることで乗員の両肩を固定するもの。これにより、衝突時にかかる負荷を広範囲に分散することが可能になる。また、側面衝突に対しても安全性が向上。乗員がいる位置と反対側に衝突した際、3点式シートベルトでは締められていない方向に体が投げ出されたり、滑り出たりすることを防ぐ。同社は、この垂直型シートベルトの使用により、こういったケースにおける重傷・死亡の危険を約30%軽減できるという試験結果を発表した。なお、このシートベルトコンセプトは現在、Renaultの新型EV 「Twizy」に採用されている。従来の3点式ベルトを車両の左側に設置し、2点式ベルトをドライバーの右肩にかかるように取り付けている。 (2012年5月7日付プレスリリースより)

エアバッグ
-新型エアバッグインフレーター「APG (Autoliv Passenger-inflator Gas)」を開発したと発表。このインフレーターは、火薬の代わりに水素・酸素・不活性ガスを用いてエアバッグを展開する。このため、エアバッグが膨らむ際に発生する廃棄粒子や排出ガスはゼロで、副産物は通常の水蒸気のみ。また、水素と酸素の化合はエアバッグの布製クッション内で行うため、従来のエアバッグインフレーターで使用するスチール製容器が不要となる。これにより、従来に比べて20%の軽量化を実現した。同社によれば、同社が生産しているエアバッグの4分の1にこの技術を採用すると、年間1,000トンの金属消費量を削減することが可能になるという。なお2012年に入って、欧州高級車メーカーの助手席用エアバッグ向けに、この新型インフレーターの生産が開始されている。 (2012年2月28日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ドル)
2012年
12月期
2011年
12月期
2010年
12月期
合計 360 357 224
売上高比率 4.4 4.3 3.1

-同社は、2013年の設備投資額として売上高の4.5%を見込む。主に中国およびその他成長地域の生産能力の強化にあてる。

海外投資

<インドネシア>
-同社は、インドネシアJakarta近郊のCibitungに、新たにシートベルトの生産工場を開設した。同社の2011年のインドネシアにおける売上額は12百万米ドル。新工場の開設により、既に受注済みの契約を含めると2015年までに売上額は25百万米ドルに拡大する見込み。さらに工場のフル稼働時には50百万米ドルに達するとみられる。新工場は、インドネシアにある既存工場に取って代わる予定で、同社の主要顧客であるトヨタ、ダイハツ、日産などに供給する。床面積は約2,500平方メートルで、敷地面積は11,000平方メートル。設備投資額は3百万米ドルとなった。新工場はまず従業員170名で稼動するが、全員が既存のインドネシア工場からの異動となる予定。なお、同社は2002年にインドネシア市場に参入した。 (2012年12月4日付プレスリリースより)

<米国>
-同社は、エアバッグ用ガス発生剤の需要増に対応するため、米国ユタ州のPromontory拠点において、6つ目の加工施設を設置すると発表した。今回の増設により、同社の世界全体におけるガス発生剤の生産能力は20%拡大するとみられる。これに要する設備投資額は約13百万米ドルの見込み。現在、同拠点では同社が1年間に米州で生産する50百万超のエアバッグ (運転席・助手席エアバッグ、サイドエアバッグ、インフレーターカーテン) 向けにガス発生剤を生産している。同社はこの他にも、ユタ州のTremonton拠点を拡張し、エアバッグやシートベルトに使用されるイニシエーターおよびマイクロガス発生器の生産能力も増強する予定。投資額は5百万米ドルで、33,000平方フィート (3,065平方メートル) を拡張する。今回拡張される面積の大部分を、複数の新生産ラインが占める予定。完成後のフル稼働時には最大30%の生産能力拡大が見込まれる。現時点ではまず、2013年に2本の生産ラインが完成し、イニシエーターの生産能力は10%増強となる。これらの拡張が完成する2013年には、2拠点で従業員約50名が増員される見込み。 (2012年11月22日付プレスリリースより)

<中国>
-同社は中国において、アジア市場向けのエアバッグに使用するプロペラント (推進剤) の生産工場を着工したと発表。投資額は総額33百万米ドルの見込みで、同社にとって同国で12番目の生産拠点となる。新工場は上海から200kmの位置に建設され、面積は約20万平方メートルの予定。これまで同社は、中国向けのエアバッグ用プロペラントに関して、米国からの輸入に頼っていたが、新工場の建設により同社のプロペラントの生産能力は約25%拡大する。また、長期的には25-30百万ユニットを超えるエアバッグを生産することが可能になるという。 (2012年10月19日付プレスリリースより)