日本発条 (株) 2016年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年
3月期
2015年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 640,516 601,434 6.5 -
営業利益 35,041 32,702 7.2 -
経常利益 36,111 39,075 (7.6) -
当期純利益 21,592 23,873 (9.6) -
懸架ばね事業
売上高 124,511 121,769 2.3 -自動車生産が日本で減少したものの、北米で増加したことにより、増収。
営業利益 12,062 8,779 37.4 -前年度に発生した北米での増産対応費用が減少したことにより、増益。
シート事業
売上高 296,054 266,270 11.2 -主要客先の自動車生産が国内外で増加したことにより、増収。
営業利益 9,824 11,069 (11.2) -受注車種構成の変化等により、減益。
精密部品事業
売上高 142,943 137,035 4.3 -海外での自動車生産の増加と為替効果により、増収。
営業利益 10,074 8,706 15.7 -



製品開発

CFRP製コイルばね
-ばね鋼を使った従来品に比べ重量を67%軽くした炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製コイルばねを開発した。自動車メーカーの軽量化ニーズに応える技術の1つとして実用化に向けた検討を進める。従来品と同じ強度、剛性を前提に設計し、重量を従来品の3.7kgから1.2kgに軽量化することができた。材料の直径やばね全体のサイズが大きくなるものの、大幅な軽量化が可能なことから、ばね特有の動きに対する強度や耐久性の検証を進める。懸架ばねの軽量化に向けては、材料径を変化させる方法や中空の材料を使うといった方法を開発している。(2015年11月5日付日刊自動車新聞より)

研究開発活動

-自動車の環境分野・安全分野への対応として、懸架ばねの軽量化や高周波の振動防止が可能なとつばねの開発、シートの安全機構の研究開発に取り組んでいる。また、ハイブリッド車、電気自動車、クリーンディーゼル車の部品についても研究開発を進めている。

懸架ばね事業
-燃費向上、CO2排出量低減に向けた小型軽量かつ高耐久化に注力した開発を進めている。

  • FSD化 (Fully Stressed Design: 部位によらず、応力分布を均等にする設計法)
  • FRP化 (Fiber Reinforced Plastics: 繊維強化プラスチック)

-今後の課題: 低廉な材料を用い、高強度かつ軽量化を実現する加工法および、自動化等による低コストな生産方法の開発。

シート事業
-軽量化、生体信号利用のシート応用製品、快適な動性能を持つシートの開発を進めている。

  • 射出成形CFRP (Carbon Fiber Reinforced Plastics、炭素繊維強化プラスチック) フロントシートフレーム: 現行比約20%の軽量化を達成。板金部品をFRP (Fiber Reinforced Plastics、繊維強化プラスチック) に材料置換するフレーム最適構造・構成の開発に取り組んでいる。
  • 生体信号を利用したリフレッシュシート: 改善試作と客先プレゼン、展示を実施。
  • 快適な動性能を持つシート: コーナリング時の低周波乗員挙動を予測する人体基本モデルが完成し、人体揺動低減に必要なシート特性予測に目処がついた。また、着座時のシート上圧力分布データから快適性を自動評価するシステムの構築に着手し、基本的分類アルゴリズムに目処がついた。更に精度の高いCAEシートモデルを効率的に開発するプロセスを構築した。

精密部品事業
-精密ばねについては、自動車のエンジン、トランスミッション関連部品の製品開発を実施。

  • 次世代自動車分野では、高精度プレス加工技術を基盤とした、モーター部品、燃料電池用部品、および燃費向上に寄与する軽量化技術を開発。
  • 高強度材の開発により、製品の高性能化、高信頼性化を進める一方、廉価材の開発による製品コストの低減化も進めている。



研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 16,328 15,702 13,803
対売上高比率 (%) 2.5 2.6 2.4
事業別研究開発費
-懸架ばね事業 3,199 2,707 2,148
-シート事業 6,263 6,667 5,579
-精密部品事業 3,741 3,392 3,462


-2017年3月期の研究開発費は、16,800百万円を予定。

研究開発体制

-本社研究開発本部および技術本部、各生産本部および事業本部の開発部門、技術部門、設計部門等、また各子会社の開発部門等により推進されている。

-2016年3月31日現在、研究開発スタッフは全体で1,032名であり、全従業員数の6.1%に相当。

技術受入契約

(2016年3月31日現在)
契約会社名 提携先 内容 期間
日発精密工業 (株) Acument Global Technologies, Inc. (オランダ) トルクスパンチの特許および製造技術の実施権の許諾 2014年4月23日 -
2017年4月22日
(株) スミハツ Pandrol UK Limited (英国) パンドロールeクリップのOEM契約 2008年5月1日 -
2018年3月22日



設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 27,392 20,671 20,713
事業別設備投資額
-懸架ばね事業 9,987 6,656 4,657
-シート事業 5,130 4,380 3,638
-精密部品事業 8,813 6,566 9,313


-2017年3月期の設備投資額は、26,700百万円を予定。

-2016年3月期の設備投資内容:

  • 懸架ばね生産設備: 同社横浜工場、NHK of America Suspension Components Inc.、広州日正弾簧有限公司 [NHK-Uni Spring (Guangzhou) Co., Ltd.]、New Mather Metals, Inc.
  • シート生産設備: 同社豊田工場、NHK Seating of America Inc.、NHK Spring (Thailand) Co., Ltd.
  • 精密部品生産設備: 同社伊那工場、同社駒ケ根工場、トープラ、NHK Spring (Thailand) Co., Ltd.


スタビライザー用コンパクトラインの導入
-スタビライザー用のコンパクトラインを開発し、2015年度から国内外の生産拠点に順次、導入する。コンパクトラインは従来の設備よりも、投資額や設置に必要なスペースを抑え、少量生産でも採算が取りやすいように設計したライン。生産量の変動に柔軟に対応できる強みもある。同社はコイルばね用を先行して開発し、国内外の工場に順次、導入している。スタビライザー用も開発が完了したため、15年度にメキシコ、16年度に九州子会社の工場にそれぞれ導入する。(2015年1月7日付日刊自動車新聞より)

設備の新設計画

(2016年3月31日現在)
会社名/事業所名
(所在地)
設備内容 投資予定総額
(百万円)
着手 完了予定
豊田工場
(愛知県豊田市)
シート生産設備 1,104 2016年
7月
2018年
3月
群馬工場
(群馬県太田市)
シート生産設備 935 2016年
4月
2017年
3月
駒ヶ根工場
(長野県駒ケ根市)
精密部品生産設備 1,277 2016年
4月
2017年
3月
伊勢原工場
(神奈川県伊勢原市)
工場等の新設 1,353 2016年
6月
2017年
4月
NHK Spring (Thailand) Co., Ltd.
(タイ チャチェンサオ県)
精密部品生産設備 587 2016年
4月
2017年
3月
日發電子科技(東莞)有限公司
(中国広東省)
精密部品生産設備 703 2016年
4月
2017年
3月
NHK Spring Precision of America Inc.
(米国 ケンタッキー州)
精密部品生産設備 688 2016年
4月
2017年
3月



海外投資

<ハンガリー>
-2015年3月、ハンガリーに自動車用懸架ばねの生産会社 「NHK Spring Hungary Kft. (仮称)」 を設立すると発表した。資本金は1百万ユーロ (135百万円)。オランダ子会社NHK Spring Europeが100%出資する。工場の敷地面積は約80,000平方メートルで、延床面積は約11,000平方メートルとなる予定。2015年12月に生産を開始し、生産能力は2020年度にコイルばね350万本、スタビライザー120万本を見込んでいる。(2015年3月3日付プレスリリースより)

<カンボジア>
-2015年3月、タイ子会社の日本発条 (泰国) 有限公司 (タイニッパツ) がカンボジアで自動車シートの縫製部品を製造・販売する子会社を新たに設立すると発表した。新会社「NHK Spring (Cambodia) Co., Ltd.」 (ニッパツカンボジア株式会社) の資本金は120百万バーツ (約384百万円)。出資比率はタイニッパツが75%、タイ現地法人のチャイワッタナーが25%を予定している。工場の敷地面積は約23,520平方メートルで、延床面積は約12,000平方メートル。2016年4月に生産を開始する予定。2020年度の売上高は22億バーツ (約70.4億円) を見込んでいる。(2015年3月3日付プレスリリースより)

2017年3月期の見通し

(単位:百万円)
2017年3月期
(予測)
2016年3月期
(実績)
増減
(%)
売上高 621,000 640,516 (3.0)
-懸架ばね事業 117,000 124,511 (6.0)
-シート事業 291,000 296,054 (1.7)
-精密部品事業 133,000 142,943 (7.0)
営業利益 33,000 35,041 (5.8)
経常利益 34,000 36,111 (5.8)
親会社株主に帰属する当期純利益 22,000 21,592 1.9

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

-2017年3月期の売上高は、前年比195億円の減収と予想。円高進行に伴う為替影響による減収分400億円を含むが、これを除外すると約200億円の増収。

-自動車関連は、日本では乗用車の生産増、タイの復調、米国・中国も堅調な需要があり、為替影響を除外すれば前年比増収見通し。シートは受注車種の数量増や2016年3月期立ち上げ車種の初期費用負担の減少により増益見通し。

-事業部門別の施策:

事業 重点方策
懸架ばね -新拠点 (九州・インド・ハンガリー) の円滑な立ち上げ
-軽量化・低コスト・新技術のグローバル展開
-コンパクトラインのさらなる改善
シート -新規受注車種の円滑な立ち上げ
-アジア地区を中心とした海外拠点の収益改善
-営業利益率向上へ向けた、合理化活動の推進と徹底
精密部品 -北米自動車向け事業の収益性改善
-国内精密ばね生産拠点の体制
-次世代サスペンションの量産技術の確立



中期経営計画 (2015年3月期 - 2017年3月期)

-2017年3月期に売上高を2014年3月期比17.6%増の6,700億円に増やす新中期経営計画を策定した。営業利益は2014年3月期比36.1%増の 510億円、当期純利益は同37.8%増の340億円に設定した。売上高の増加に加え、合理化効果を見込み営業利益の大幅な増加を目指す。グローバルでの供給体制拡充に向け先行投資を増やす。

-主な施策

  • 中国、インドで懸架ばねの生産能力を増強する。
  • シートは国内外で完成シートの受注を増やして収益を高める。
  • 設備投資: 3年間で前中期計画を上回る総額760億円 (懸架ばね260億円、シート171億円)。特に懸架ばねは前中期計画に対し85.7%の大幅な増加。

-中期経営計画の財務指標 (2017年3月期目標値)

  • 売上高: 6,700億円
  • 営業利益: 510億円 (利益率7.6%)
  • 経常利益: 540億円 (利益率8.1%)
  • 当期純利益:340億円 (利益率5.1%)