大同メタル工業 (株) 2017年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2017年
3月期
2016年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 85,073 81,400 4.5 1)
営業利益 5,103 7,114 (28.3) 2)
経常利益 5,427 6,796 (20.1) -為替差損が大幅に減少したものの減益。
親会社株主に帰属する当期純利益 2,635 3,919 (32.8) -連結子会社であるエヌデーシー株式会社の土地、および Daido Industrial Bearings Europe Ltd. の製造設備等の固定資産について減損損失を計上したため減益。
自動車用エンジン軸受事業
売上高 59,365 55,003 7.9 -国内は軸受生産の海外グループ会社への移管や、国内生産台数減少の影響を受けたが、ターボチャージャー用軸受や高付加価値エンジン軸受の増加などにより微増。
-海外は、北米、アジアの中国・タイを中心に受注が好調に推移したことで、為替の影響で減収となった欧州をカバーした。
営業利益 6,939 7,593 (8.6)
自動車用エンジン以外軸受事業
売上高 12,757 12,976 (1.7) -自動車用エンジン軸受同様、国内は軸受生産の海外グループ会社への移管が進み、海外は為替影響(主に欧州通貨)を受けて売上高が減少したことなどから減収減益。
営業利益 2,744 2,829 (3.0)

要因

1)
-国内自動車メーカーによる国内生産台数の微減や、船舶・建設機械分野の落ち込み等による影響を受けたものの、新分野の電気二重層キャパシタ用電極シート等が伸長したことに加え、第4四半期より株式会社飯野ホールディングが連結対象となり、売上高に寄与した。
-アジアは、中国、タイにおける増収が大きく貢献、北米は建設機械分野は落ち込んだものの、メキシコにおける予想を超える自動車用エンジン軸受の生産増加により増加。一方、欧州(ロシアを含む)は、自動車分野のビジネスの拡大により現地通貨ベースでは増収となったものの、為替の影響を受けて減収。

2)
-船舶・建設機械分野の世界的な市場の低迷から、高付加価値製品の国内外の需要が落ち込んだこと、およびメキシコにおけるユーザーからの大幅かつ急激な増産要求に応えるべく、品質、納期を優先した対応に伴う製造および物流コストの増加により減益。

買収

-同社は、飯野ホールディングの株式100%を同社の株主であるアイ・シグマ事業支援ファンド2号投資事業有限責任組合から取得すると発表した。取得金額は101.9億円。飯野ホールディングは、自動車用エンジンやトランスミッション周辺の高精度・高品質部品 (曲げパイプ、ノックピン、NC切削品など) の製造・販売を行っている。フィリピン、米国、メキシコ、中国において製造・販売拠点を保有するほか、インドネシアには販売拠点を保有している。2016年3月期の連結売上高は65.95億円。株式取得手続きは2016年11月末に完了する見込み。(2016年9月27日付プレスリリースより)

-同社は、自動車用エンジンやトランスミッション関連部品を製造する飯野ホールディング(東京都千代田区)を買収すると発表した。すべり軸受け以外の自動車向け精密金属加工部品の製品ラインアップを拡充し、提案力を強化する。飯野ホールディングの株主のアイ・シグマ事業支援ファンド2号投資事業有限責任組合から株式を100%取得して子会社化する。今後、両社の海外拠点を連携させることで、調達や物流の効率化、現地の人材交流やノウハウの共有化による技術力、生産力向上、運営体制の効率化を図り、グローバルで事業拡大を目指す。(2016年10月7日付日刊自動車新聞より)

-同社は、旭テックの子会社ATAキャスティングテクノロジージャパン (ACJ) を124億円で買収すると発表した。ACJと、その子会社であるATAキャスティングテクノロジー (ACT)は、タイで自動車向けアルミダイカスト製品を製造しており、主に自動車メーカーや自動車部品メーカーに供給している。アルミの溶解から鋳造、加工、検査、出荷を一貫して手がけており、タイに進出している日系アルミダイカストメーカーとしては最大規模。大同メタルはACJ、ACTを買収することで、人材交流や技術、ノウハウの共有化、生産力向上、運営体制の効率化を図る。大同メタルとしてすべり軸受け以外の自動車向け製品ラインアップを拡充することで、自動車メーカーなどへの製品提案力を強化、事業の多角化を図る。譲渡実行日は来年1月の予定。(2016年12月27日付日刊自動車新聞より)

国内動向

-同社は、国内でエンジン用すべり軸受の生産能力の増強に乗り出す。岐阜県関市に第三工場を新設して、世界的に需要が拡大しているエンジン用すべり軸受の供給体制を強化する。新工場には、製造ラインの長さを従来の半分にした新開発のコンパクトラインを導入。国内新車市場の大きな成長が見込めない中で、初期投資や製造コストを抑えながら国内生産能力を増強する。自動車用エンジン軸受を製造する子会社の大同プレーンベアリングの敷地内に新工場を建設する。2017年4月に建屋が完成する予定で、同年7月に本格稼働する。新工場で製造したすべり軸受は国内外の自動車メーカーに供給する。投資額は工場建屋の約22億円にラインなど設備導入にかかる費用が加わる。(2016年10月17日付日刊自動車新聞より)

海外動向

<中国>
-同社は、中国事業の強化に乗り出す。中国でエンジンすべり軸受の生産能力を増強するため、2017年にも製造拠点を蘇州に新設する。同時に、中国の地場系や欧州系自動車メーカーとの取引拡大を目指して、中国にエンジニアを常駐する体制を構築、現地でのサポート体制も充実させる。自動車メーカー各社が生産台数を増やしている中国での製品供給体制を増強するとともに販売活動を強化することで、シェア拡大に結びつける。同社はエンジン用すべり軸受の15年の世界シェアが約3割で、中期経営計画では17年度までに4割に引き上げることを目指している。(2016年11月7日付日刊自動車新聞より)

受賞

-Robert Boschより2014年から3年連続で「Preferred Supplier of the Bosch Group」を授与されたと発表した。過去数年にわたる優れた製品性能・品質・サービスが総合的に評価され、戦略的に重要なサプライヤーとして認められたもの。(2016年4月8日プレスリリースより)

中期経営計画 (2013年3月期~2018年3月期)

-世界で唯一のすべり軸受け総合メーカーとしての、すべり軸受世界トップシェア(同社推定)の持続
-すべり軸受のコア製品である自動車用エンジン軸受のさらなるシェア拡大と世界トップシェア(同社推定)の堅持
-既に世界トップシェア(同社推定)にある大型船舶を除く舶用・建設機械用・回転機械用等の非自動車各分野における軸受世界トップシェアの獲得
-国内外の売上拡大に対応した世界5極体制の整備・増強
-技術立社としての技術的優位性の持続と世界各地域のニーズに応えるための研究開発強化
-強固な財務基盤の構築

チャレンジ目標 (第2ステージ)

2016年3月期
(実績)
2017年3月期
(実績)
2018年3月期
(予想)
2018年3月期
売上高(億円) 814 850 960 1,110
営業利益(億円) 71 51 70 167
営業利益率(%) 8.7 6.0 - 15以上



世界市場シェア

2010年暦年
(中期経営計画立案前)
2015年暦年 第2ステージ
最終目標値
(2018年3月期)
自動車エンジン用半割軸受 30% 31.8% 40%
ターボチャージャー用軸受
(スモールターボ)
26% 32% 40%

*シェアは同社推定


第2ステージにおける主な施策と課題

  • 北米事業の早期黒字化
  • BBL Daido Private Ltd. (インド) における自動車用エンジン軸受事業の立ち上げ
  • Daido Metal Russia LLC (ロシア) におけるトラック用軸受および外資系自動車メーカー向け軸受事業での業績面での貢献
  • バイメタルの生産能力増強のため、2015年4月に設立した大同メタル佐賀株式会社にて2016年8月より量産開始
  • 2015年10月に米国に北米テクニカルセンターを設置
  • 2016年4月よりグローバル事業管理室を新設
  • 2016年4月より業務改革推進室を新設
  • 2017年1月チェコの欧州テクニカルセンターの設計担当エンジニアを、ドイツ シュツットガルト郊外へ移転
  • 大同メタルU.S.A.INC.における急激な受注増に伴い発生した、生産拠点である大同メタルメキシコS.A.DE C.V.でのラインの混乱とそれに伴うコスト増加の問題において、2017年3月期には黒字化を計画
  • エヌデーシー株式会社で、国内自動車メーカーによる国内生産台数の減少傾向を受け、大規模な用途別生産再編を加速、早期の黒字転換を計画

2018年3月期の見通し

(単位:百万円)
2018年3月期
(予測)
2017年3月期
(実績)
増減率 (%)
売上高 96,000 85,073 12.8
営業利益 7,000 5,103 37.2
経常利益 7,100 5,427 30.8
親会社株主に帰属する当期純利益 4,200 2,635 59.4


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
合計 1,821 1,667 1,559

研究開発体制

-2015年10月、米国に北米テクニカルセンターを開設。

研究開発活動

アイドリングストップおよびハイブリッド機構など低燃費対応エンジン用軸受の開発
-耐摩耗性、耐焼付性を向上させフリクションを低減させる新樹脂オーバレイを開発。

新鉛フリーオーバレイ付軸受の開発
-欧州鉛規制に対応する、世界最高水準の軸受性能 (耐疲労性、耐焼付性、耐摩耗性) を有する自動車エンジン用アルミ合金軸受を開発し、提供中。
-劣悪環境下での使用に耐え得る新鉛フリーオーバレイおよび銅合金軸受材を開発し、提供中。

レース用軸受の開発
-F1レース、NASCARに使用される、超高速回転に対応する信頼性に優れた軸受を開発し、継続的に納入。

新樹脂材系軸受材料の開発
-自動車用部品や一般産業用部品および発電機用部品などにおいて、さらなる性能向上を図るべく、新樹脂系軸受材料を開発。

ショックアブソーバー用軸受乗り心地向上材料の開発
-自動車のショックアブソーバー用軸受における乗り心地 (操舵安定性、振動吸収など) 向上に寄与する鉛フリー樹脂系軸受材料を開発。さらに性能を向上させるため、継続して材料開発を推進中。

設備投資額

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 12,329 14,802 10,597
-自動車用エンジン軸受・自動車用エンジン以外軸受 6,970 7,598 6,947
-バイメタル (軸受材料) 製造設備 3,363 5,084 327



2017年3月期の設備投資

対象 内容
自動車用軸受・自動車用エンジン以外事業
-加工専用設備 -同社および国内連結子会社 (大同プレーンベアリング (株) とエヌデーシー (株)) において生産能力増強を目的とした設備投資を実施。
-海外連結子会社では、アジア拠点、欧州拠点、北米拠点での生産能力を増強するための設備投資を実施。
-バイメタル (軸受材料) 製造設備 -国内および海外生産拠点で使用するバイメタルの大半を同社が供給。同社および国内連結子会社 (大同メタル佐賀 (株) において生産能力増強、生産性向上を目的として、設備投資を実施。



設備の新設計画 (自動車用軸受メタル部門)

(2017年3月31日現在)
事業所名
(所在地)
設備の内容 投資
予定
総額
(百万円)
着手 完了
予定
犬山工場
(愛知県 犬山市)
半割軸受製造設備 628 2015年2月 2017年7月
バイメタル製造所
(愛知県 犬山市)
バイメタル (軸受材料) 製造設備、工場用建物 4,126 2014年4月 2017年9月
生産技術センター、研究開発センター
(愛知県 犬山市ほか)
その他設備 475 2015年5月 2017年6月
大同プレーンベアリング(株)
(岐阜県 関市)
半割軸受製造設備 3,438 2012年9月 2017年8月
同晟金属株式会社
[Dong Sung Metal Co., Ltd.]
(韓国 永同郡)
半割軸受製造設備 236 2015年6月 2017年9月
Dyna Metal Co., Ltd.
(タイ国 チャチョーンサオ)
半割軸受製造設備 113 2016年11月 2017年6月
大同精密金属 (蘇州) 有限公司
[Daido Precision Metal (Suzhou) Co., Ltd.]
半割軸受製造設備 640 2016年9月 2017年12月
Daido Metal Czech s.r.o.
(チェコ共和国 ブルノ市)
半割軸受製造設備 283 2013年7月 2017年5月
Daido Metal Mexico S.A. de C.V.
(メキシコ ハリスコ州)
半割軸受製造設備 1,097 2016年1月 2017年5月