(株) ジェイテクト 2019年3月期の動向
業績 |
(単位:百万円) |
2019年 3月期 |
2018年 3月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 1,520,893 | 1,441,170 | 5.5 | -日本やアジア、北米における販売増、2017年12月に富士機工グループを連結子会社化した影響等。 |
営業利益 | 66,608 | 81,391 | (18.2) | -売価水準の低下や研究開発費をはじめとする費用の増加等。 |
経常利益 | 69,658 | 82,571 | (15.6) | - |
親会社株主に帰属 する当期純利益 |
24,663 | 49,697 | (50.4) | - |
合弁事業
-より高度な自動運転の実現を目指し、アイシン精機、アドヴィックス、デンソーと、自動運転・車両運動制御等のための統合制御ソフトウェアを開発する合弁会社「J-QuAD DYNAMICS (ジェイクワッドダイナミクス) 」を2019年4月に設立。
事業計画
ー安形哲夫社長は報道各社のインタビューで、2030年度までの同社の売上高成長率の目線を、年率4%に設定したことを明らかにした。国際機関などは当面の世界の国内総生産 (GDP) 成長率を3%台と予想しており、これを上回る水準。世界最大手であるステアリングのシェア拡大や、ベアリングの競争力強化、新規事業を柱に成長力を高める方針だ。売上高に占める研究開発費の比率は5% (17年度は3.8%) を目安とする。(2019年1月11日付日刊自動車新聞より)
事業動向
ー車の電動化に対応するため、車載電源デバイス事業を強化する。国内の既存工場で2019年4月から新開発のキャパシタの生産を開始し、同年10月には月4万セルへと拡大する。また、キャパシタで培った技術をリチウムイオン二次電池の開発にも応用し、21年ごろ開発にめどをつけ、電池・部材メーカーへのライセンスを目指す。同社が開発した「高耐熱リチウムイオンキャパシタ」は、材料の工夫などでセ氏マイナス40~85度の温度環境で使用できる。車向けでは電動パワーステアリングの補助電源に使える。現在、建設機械向けなどで引き合いが強いという。(2018年5月24日付日刊自動車新聞より)
ー2018年6月、2019年から愛知県内にある2拠点で新開発のリチウムイオンキャパシタの量産を開始すると発表。同年4月に東刈谷事業場 (刈谷市) で月2千セル、秋からは花園工場 (岡崎市) で月4万セルを生産する。開発品はセ氏マイナス40度~85度の環境下で使用でき、電動パワーステアリング (EPS) の補助電源として活用できるほか、建設機械などの分野でも引き合いがある。製品は自社内と外部に納入する。(2018年6月29日付日刊自動車新聞より)
海外事業
ー同社は2019年5月29日、名古屋市内で記者会見を開き、安形哲夫社長がアフリカ市場への進出や電気自動車 (EV) 向けバッテリー製造設備の開発など、次世代の成長戦略を発表した。1ドル=95円の固定為替レートを前提として2017年度に4.9%だった営業利益率を22年度に7.5%へ引き上げる。成長が見込まれるアフリカ市場への橋頭堡として、モロッコでステアリングシステムの量産を20年9月に開始する。19年1月に工場建屋を建設し、昨年子会社化した富士機工が生産を担当する。現地の欧州完成車メーカーの工場に供給する。摂氏100度以上でも使用できる新開発のリチウムイオンキャパシタは、自動運転ステアリングのバックアップ電源としての活用や、医療用、建機、航空機など「幅広く引き合いが来ている」 (安形社長) という。近く量産に入る。(2018年5月31日付日刊自動車新聞より)
受注
-トルク感応型LSD「トルセン」の新設計品がルノー「メガーヌR.S.カップ」に採用されたと発表した。同社のLSDがルノーに採用されたのは初めて。採用されたのはスポーツタイプ向けトルセン「タイプ-B」の構造を見直したモデル。従来はサイドギアの結合部にヘルカリスプラインを採用し、トラクション性や走行時のフィーリングを向上していた。新製品は、ヘルカリスプラインをワンウェイ構造とすることで、アクセルオンの時にトルク配分比を高める一方、アクセルオフでより差動制御の効きを抑えられる。これにより、採用車種に合わせた最適なトルク配分と乗り心地の向上を実現した。新製品はベルギーで生産する。(2019年2月22日付日刊自動車新聞より)
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2019年3月期 | 2018年3月期 | 2017年3月期 | |
全社 | 63,626 | 55,267 | 48,213 |
研究開発拠点
<日本>
事業部 | 名称 | 所在地 |
ステアリング事業本部 | 東部テクニカルセンター | 埼玉県 狭山市 |
中部テクニカルセンター | 愛知県 岡崎市 | |
西部テクニカルセンター | 奈良県 橿原市 | |
軸受事業本部 | 東部テクニカルセンター | 埼玉県 狭山市 |
中部テクニカルセンター | 愛知県 豊田市 | |
西部テクニカルセンター | 大阪府 柏原市 |
-国内に2カ所のイノベーション(革新)拠点を設けたと発表した。研究者の創造性を高めたり、ベンチャーや大学など外部機関との連携を深めるなどして新規事業の創出などに役立てる。「ジェイテクトR&Dイノベーションセンター刈谷」(愛知県刈谷市)と「銀座ジェイテクトオープンイノベーションセンター」(東京都中央区)を開設した。それぞれ東刈谷事業場と東日本支社の一部を改装し、試作ラボや情報共有、共同研究のための設備を導入した。投資額は合わせて約1億円。(2019年2月7日付日刊自動車新聞より)
研究開発活動
1) ステアリング事業
- 自動運転技術・正着制御技術を開発、東京臨海地区や沖縄で大型路線バスによる実証実験を実施
- 次世代ラックパラレルEPSを開発中 (2021年度中の市場投入を目指す)
2) 駆動事業
- 前後トルク配分と後輪トルクを左右独立で制御する「トルクベクタリング機構」と、4WD走行が不要な場合には、後輪への駆動系を切り離す「ディスコネクト機構」を備えた「新4WDシステム」
- 電動化対応として、4WDシステム「eモータ後輪駆動ユニット」を開発中
3) 軸受事業
- 泥水環境下でのシール寿命の大幅な向上とトルク75%低減を同時に実現させた「低トルクハブユニット」を開発
- 電力消費率(電費)向上が強く求められるEV/HEV車の電動ユニット用に、回転トルク30%低減とシールの追随性向上を実現した「超低トルクシール付き玉軸受」を開発
製品開発
ハブユニット用低トルクシール
-CO2排出規制の強化とEV化における航続距離延長のため、ユニットの低トルク化が求められていた。今回の開発品はシール周辺構造を見直し、低トルク化と泥水環境下でのシール寿命の向上を実現したという。(2019年3月26日付プレスリリースより)
埋込磁石型 (IPM) モーター
-重希土類を使用しないモーターを開発したと発表した。希少で分布が偏在している鉱物を使わないことで、材料調達の安定性を高めコストを下げる効果がある。実用化1号として、自社生産する自動車部品用アクチュエーター向けに、東刈谷事業所 (愛知県刈谷市) で、生産を開始。今後は、耐熱性を高めて電動パワーステアリングや電動オイルポンプへの活用を目指す。新開発したモーターは、ローターにU字型の溝をつけ、ボンド磁石を埋め込んでつくる「埋込磁石型 (IPM) モーター」。重希土類のネオジムとジスプロシウムを使用しない。(2019年1月25日付日刊自動車新聞より)
制御型磁気軸受
-電磁石の吸引力を制御し、回転体を磁気によって浮かせる軸受である制御型磁気軸受に参入する。磁気軸受専業メーカーのMUTECS (大阪府寝屋川市) と共同で11月1日に新会社「光洋マグネティックベアリング」を設立。産業機械向け磁気軸受の設計、製造、販売を行う。制御型磁気軸受を商品ラインアップに加え、事業収益の柱の一つとして発展させる。2022年度に26億円の売り上げを目指す。光洋マグネティックベアリングの資本金は3千万円。ジェイテクトが90%出資している。(2018年12月15日付日刊自動車新聞より)
PPS保持器付き円筒ころ軸受
-従来よりも耐熱性、耐食性を向上させた「PPS保持器付き円筒ころ軸受」を開発したと発表した。新製品は、黄銅保持器付き軸受と比べ、軸受全体重量の約11%軽量化と、起動トルクの約10%低減を実現。油圧機器・コンプレッサなどに採用することで、コンポーネントの軽量、効率化に貢献するという。ジェイテクトの徳島、国分工場とダイベア(ジェイテクトグループ) で生産され、年間の売上目標は1億円。(2018年7月19日付プレスリリースより)
HV用モーター軸受
-二つの保持器を組み合わせて両側からボールを支持する新しい構造を採り入れた。片側のみで支える現行品と比べてモーターが高速で回転しても保持器が変形しにくく摩擦も少ない。従来製品と比べて1.3倍以上の回転数を実現できる。部品点数は現行品よりも増えるものの、HVや電気自動車(EV)用モーターの高効率化でニーズがあると見て早期の実用化を目指す。(2018年4月16日付日刊自動車新聞より)
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2019年3月期 | 2018年3月期 | 2017年3月期 | |
全社 | 75,205 | 66,642 | 66,438 |
-機械器具部品 | 63,855 | 58,753 | 59,029 |
機械器具部品
-2019年3月期は、各地域の生産能力・技術開発力の設備増強等を実施した。
設備の新設計画 |
(2019年3月31日現在) |
事業所名 | 所在地 | 設備の内容 | 投資予定 総額 (百万円) |
着手 | 完了予定 |
奈良工場 | 奈良県 橿原市 |
機械器具部品 製造設備等 |
3,516 | 2019年4月 | 2020年3月 |
岡崎工場 | 愛知県 岡崎市 |
機械器具部品 製造設備等 |
3,309 | 2019年4月 | 2020年3月 |
花園工場 | 愛知県 岡崎市 |
機械器具部品 製造設備等 |
2,418 | 2019年4月 | 2020年3月 |
ダイベア (株) | 大阪府 和泉市 |
機械器具部品 製造設備等 |
1,530 | 2019年4月 | 2020年3月 |
捷太格特轉向系統(厦門)有限公司 | 中国 厦門市 |
機械器具部品 製造設備等 |
3,200 | 2019年4月 | 2020年3月 |
国内投資
-ジェイテクトは、グループ企業の宇都宮機器が、栃木県宇都宮市の清原工業団地内にニードルローラーベアリング製造の新拠点「清原工場」を設立し、開所式を行ったと発表した。新工場の敷地面積は4万5,980平方メートルで、建屋面積は6,448平方メートル。自動車のエンジンやトランスミッションに使用されるニードルローラーベアリングを生産する。(2018年8月21日付プレスリリースより)
-ジェイテクトグループでベアリング製造を手がけるダイベア (大阪府和泉市) は、本社和泉工場 (同市) の近隣地に第2工場を建設すると発表した。2018年11月に着工し、19年10月の完成、同12月からの稼働を予定している。投資額は7億円。これまで手がけてこなかった高性能ロボットや超高級工作機械向けの高精度ベアリングの量産を開始するほか、設備の開発、点検修理や治具製造も新工場で実施する。(2018年7月25日付日刊自動車新聞より)
海外投資
<モロッコ>
-モロッコ初の生産拠点「ジェイテクトオートモーティブモロッコ」 (JAMO) とグループ会社富士機工の工場「フジオートテックモロッコ」(FAMO) の建設に向け鍬入れ式を行ったと発表した。JAMOは20年に量産を開始し、年23万台の電動パワーステアリング (EPS) を生産する。モロッコをはじめ、北アフリカ市場を中心とした新たな供給拠点と位置づけ、競争力のある生産拠点としてEPSの供給を進める。(2018年9月19日付日刊自動車新聞より)