(株) ジェイテクト 2017年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2017年
3月期
2016年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 1,318,310 1,399,987 (5.8) -円高の影響等で販売が大幅に減少したこと等により
営業利益 77,442 81,923 (5.5) -減収及び円高の影響等により
経常利益 78,096 81,260 (3.9)
親会社株主に帰属する当期純利益 47,522 48,672 (2.4)
機械器具部品
売上高 1,161,951 1,235,140 (5.9) -円高の影響等でステアリング、軸受の販売が大幅に減少したこと等により
営業利益 67,689 71,264 (5.0) -減収及び円高の影響等により

事業動向

-同社は電動パワーステアリング(EPS)の中で装着車が増えている「下流アシスト」タイプの販売に注力する。2018年度の世界の自動車生産見通し9700万台のうち、EPSの割合は65%と、昨年時点での予想51%よりも急速に拡大すると予測。特に市場で急成長が見込まれる下流アシストタイプのシェアを大幅に伸ばして、EPS市場で主導権を握る。これによって自動車用ステアリング全体で世界最大手のポジションを維持する構え。下流アシストEPSは、エンジンルーム内にモーターやコントローラーを配置する方式。滑らかなステアリング操作感を出しやすく、経年劣化しても音や振動がドライバーに伝わりにくいといったメリットがあり、欧州車で採用するモデルが増えている。(2016年6月1日付日刊自動車新聞より)

-同社は、自動車の駆動力を機動的に配分し、ファン・トゥ・ドライブを実現する「トルクコントロールデバイス」と呼ばれる製品群を拡販する。4月の組織改正で発足した駆動事業本部がトルセンLSDや電子制御4WDカップリング(ITCC)などをシステムで提案し、同事業本部の2020年度以降の売り上げ増につなげる。トルセンLSDはコーナーリングの際、左右のトルク配分を制御するメカニカル部品で、これまで主に後輪駆動(FR)車向けに事業を展開してきた。今後、スポーティーな前輪駆動(FF)車への搭載を国内外の自動車メーカーに売り込みを本格化する。4WD車の前後へのトルク配分に用いられるITCCは、2個使いで後輪の左右トルクも最適に配分させる使い方を自動車メーカーに提案する。日産「ジューク」に採用例があり、走行ラインのトレース性を高める「ツインITCC」として今後、欧州市場向けモデルでの採用を目指す。(2016年7月16日付日刊自動車新聞より)

-北アフリカでのステアリング製品の供給体制を整備するために、モロッコ王国での生産に向け準備を開始。

買収

-同社は、Sona Autocomp Holding からSona Koyo Steering Systemsの株式49.9百万株(25.1%相当)を購入することに合意したと発表した。取引額は43億ルピー。ジェイテクトは現在Sona Koyo Steering Systemsの株式を20.1%保有しており、今回の取引により保有率を45.2%に引き上げる。ジェイテクトは、Sona Koyo Steering Systemsとコラム式電動パワーステアリング (C-EPS) システムの合弁会社を所有している。(2017年2月1日付証券取引所報告書より)

-Sona Groupは、今後3~4年の間に40億ルピーを Sona BLW Precision Forgings Ltd. (Sona BLW) に投資すると発表した。主な投資先はインド国内工場で、2018年度の投資予定額は10億ルピー。この投資により、Sona Groupの電気自動車 (EV) 部品の研究開発力を高め、インドから米国市場への部品供給の可能性をさぐる。本投資の前段階として、Sona GroupはSona Koyo Steering Systems Ltd.の持ち株25.1%を40億ルピーでジェイテクトに売却。その売却代金をもとに、三菱商事が持つSona BLWの株式25%を買収、三菱商事への依存から脱却する。 (2017 年3月8日付け各種報道より)

-同社とタチエスは、富士機工のシート事業をタチエスに移管するとともに、ジェイテクトが実施する富士機工を完全子会社化するための株式公開買い付け(TOB)にタチエスが応募することで合意したと発表した。ジェイテクトはステアリング製品事業、タチエスはシート事業をそれぞれ強化するのが目的。富士機工は東京証券取引所一部から上場廃止となる見通し。富士機工が5月中旬に子会社「TF-メタル」を新設して、シート事業を移管した後、タチエスがTF-メタルの全株式を取得する。タチエスは富士機工に24.4%出資する第2位の株主で持分法適用会社となっている。一方、富士機工に33.4%出資する筆頭株主のジェイテクトは、富士機工を完全子会社化するため、TOBの実施を公表、タチエスは保有全株式を応募する。ジェイテクトによるTOBの株式買い付け価格は1株当たり740円で、買い付け総額は約261億円となる見通し。(2017年5月11日付日刊自動車新聞より)

受注

-同社は、米国で下流アシストタイプの電動パワーステアリング(EPS)の量産を開始した。トヨタ自動車の新型「カムリ」に供給するほか、米国で生産している欧州系自動車メーカー向けにも納入する。下流アシストタイプを米国で生産するのは初めて。重量のある中・大型車種に適していることから、成長領域に位置づけており、米国では、まず下流アシストタイプを年産70万台規模で生産する計画。(2017年1月27日付日刊自動車新聞より)

中期経営計画の見直し (2016年度中期計画)

2017年3月期の実績の振り返り
-為替の影響を除くと、17年3月期までは体質は改善基調だが、18年3月期は、①単体の収益性低下、②北⽶下流EPS⽴ち上げ準備、③ADAS・IoE等の将来への弾込め費⽤等により、減益の⾒込み。
-下流EPSの事業安定・将来投資の効果回収により再び成⻑路線へ
-独禁法関連損失等により、ROA・ROEは悪化

事業戦略 (2016年度中期計画)

ステアリング事業
中期目標 -自動車用ステアリングにおいてグローバルトップシェアの維持
重要取り組み 商品力強化 -ADAS対応ステアリングの開発加速
ビジネスモデル改革 -グローバル商談・フロントローディング活動強化
供給体制整備 -グローバル供給体制の整備
・メキシコ拡張対応/北米新規プロジェクト対応
・中国での下流EPS生産増
2018年3月期予想 利益ともに伸ばすも当初⽬線に届かず
売上:グローバル市場成⻑鈍化も確実に成⻑
利益:売上減と市場競争激化、固定費増等の影響により達成厳しい
駆動事業
中期目標 -ドライブラインシステムサプライヤーとして、世界のリーディングカンパニーへ飛躍
重要取り組み ビジネスモデル変革

-グローバル商談・フロントローディング活動強化
-CVJ (等速ジョイント) 事業基盤の強化

商品力強化

-ユニット化・モジュール化
-新商品開発企画強化
・デフモジュール開発、ディスコネクト、セーリング用クラッチ、次世代トルセン

供給体制

-既存の生産能力を徹底活用した、グローバル生産拠点の再構築
-北米生産拠点のシナリオ再構築

2018年3月期予想 2016年〜2020年まで厳しい環境が続く
売上:ドライブシャフト仕事量減、北⽶電⼦制御AWD次世代対応遅れ
利益:売上減による利益ダウン
軸受事業
中期目標 -フロントローディング活動の強化、シェアトップ2ポジションの維持
重要取り組み 構造改革 -構造改革のスピードアップ
・2016年3月、亀山工場新建屋竣工、ハブユニット (HUB) のモデル工場へ。
・2016年4月、香川工場にて新鍛造機稼働。テーパードローラーベアリングの一貫加工実現。
生産 -生産性向上による競争力向上
・小ロットラインの更なる展開
・自動化、無人化ライン構築
技術開発 -グローバル開発体制の強化 (特にニードルローラーベアリング)
-電動化・ by Wire・ADASに向けた要素開発
2018年3月期予想 当初⽬標値に対し、環境変化等により⽬標を修正


中期経営計画の数値目標 (当初)

2015年3月期
(実績)
2016年3月期
(計画)
2020年3月期
(目標)
営業利益率 5.5% 5.7% 8.0%
設備投資額 684億円 750億円 750億円
減価償却費 570億円 600億円 650億円
研究開発比率 3.0% 3.1% 4.0%
ROA 3.9% 4.4% 5.0%以上
為替レート 110円/USD
138円/EUR
115円/USD
125円/EUR
95円/USD
130円/EUR

2018年3月期の見通し

(単位:億円)
2018年3月期
(予想)
2017年3月期
(実績)
増減
(%)
売上高 13,000 13,183 (1.4)
営業利益 680 774 (12.2)
経常利益 680 780 (12.9)
親会社株主に帰属する当期純利益 420 475 (11.6)


-為替変動の影響 (円高) の影響に加え費用の増加等により、減収減益を見込む。


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 48,213 46,296 41,320

研究開発拠点

<日本>

事業部 名称 所在地
ステアリング事業本部 東部テクニカルセンター 埼玉県 狭山市
中部テクニカルセンター 愛知県 岡崎市
西部テクニカルセンター 奈良県 橿原市
軸受事業本部 東部テクニカルセンター 埼玉県 狭山市
中部テクニカルセンター 愛知県 豊田市
西部テクニカルセンター 大阪府 柏原市

研究開発活動

-同社は、トランスミッション部品など小型シャフトの量産加工に特化したCNC(コンピューター数値制御)円筒研削盤「e500G」を、11、12日に愛知県刈谷市内で開催中の新商品発表会で公開、発売した。ここ数年、変速機メーカーは小型シャフトを外注するケースが増えており、新製品は、これらに対応して仕事量が増大しているティア2サプライヤー(二次部品メーカー)をターゲットに開発した。サイクルタイム、設置面積ともクラス最短・最小を実現し、現在15%の円筒研削盤のシェア向上につなげる。販売目標は年間100台。(2016年4月12日付日刊自動車新聞より)

-同社は、主に自動車の変速機への使用を想定した新構造のアンチクリープ玉軸受を開発した。クリープ (ハウジングに対して、外輪が回転してしまう現象) による摩耗に起因するハウジングや軸受の寿命低下対策として、従来一般的であった外輪厚肉化をすることなく、クリープを抑制することに成功。自動車の変速機等の軽量化やコンパクト化に貢献するという。今後、CVTやHVなどの自動車変速機用軸受として自動車メーカーや変速機メーカーへ拡販を図るほか、クリープ抑制が求められる用途向けに広く展開する予定。この製品は国内外の玉軸受工場で生産され、年間10億円の売上を見込んでいる。(2016年5月30付日プレスリリースより)

-同社は、自動車への装着で燃費を0.5%改善する効果のあるホイール用ボールハブユニットを開発したと発表した。従来製品に比べトルク(摩擦抵抗)を50%削減するとともに、寒冷地での輸送時耐磨耗性能も高めた。2017年1月に国内外の工場で量産を開始し、20年に120億円の売り上げを目指す。ホイールハブユニットは「軸受」と「シール」で構成し、それぞれ摩擦抵抗が発生する。開発品は、軸受部のグリース基油を鉱油から低粘度の合成油に変更し、軸受寿命を保ったまま摩擦抵抗を引き下げた。シール部では、泥水などの浸入防止性能を確保しながら摩擦抵抗を減らす「ダブルアキシャルシール」を採用した。(2016年6月8日付日刊自動車新聞より)

-同社は12日、フランスの欧州地域統括拠点ジェイテクトヨーロッパに、ステアリングシステムの評価や解析を行うテストコースを開所したと発表した。ダイムラーやBMWなど、欧州に開発拠点を置く自動車メーカーへの提案活動に活用する。グローバルプロジェクトへの対応や、新規ビジネス獲得に向けた新技術・製品のプロモーションを行う。同社が海外に本格的なテストコースを設置するのは今回のフランスが初めて。(2016年7月13日付日刊自動車新聞より)

-同社は、新開発したラックパラレル(RP)式電動パワーステアリング(EPS)を年末に国内で量産する。RP-EPSはモーターや減速機などをエンジンルーム内の操舵軸上に配置する下流アシスト型EPS。競合製品に比べて摩擦変動を50%低減して操舵感を高めたほか、減速機の外径を15%小型化しクラス最小サイズを実現した。新開発RP-EPSは、花園工場(愛知県岡崎市)で生産する。順次、海外の生産拠点にも展開し、グローバルで供給できる体制を構築する。高出力モデルにも適しているため、車体サイズが大柄の上級車向けEPSとして自動車各社に提案していく方針だ。また、新開発EPSではフェールセーフ機能も強化した。モーター駆動部やトルクセンサーなどを二重系統とすることにより、ユニット故障時にもアシスト力を90%以上継続できるという。高い信頼性もPRし、受注拡大に弾みをつける。(2016年11月15日付日刊自動車新聞より)

-同社は、CNC円筒研削盤をインドの研削盤メーカーMicromatic Grinding Technologiesへ技術供与を行い委託生産を開始し、1月26日より販売を開始したと発表した。販売はジェイテクトの現地法人Toyoda Micromatic Machinery Indiaが行う。目標販売台数は2017年が10台、2018年以降は年間15台。主要部品である「といし台」等は日本から供給し、他の構成品(カバーやベッド等)は現地調達する。(2017年1月27日付プレスリリースより)

-同社は、JTEKT Automotive (Thailand) Co., Ltd. (JATH) の社内スキルコンテストの内容と実績が評価され、2017年からタイ政府公認の技能評価システムとして運用されることになったと発表した。JATHは事業基盤の強化と更なる飛躍を遂げるために、サプライヤーにも参加を広げ、合計2,400名の参加実績を積上げた。2017年1月に講習およびトライアルが実施され、JATHはその講師として参画した。(2017年2月23日付プレスリリースより)

製品開発

ステアリング事業
-ボールねじ機構を介して操舵力を直接出力軸へ伝えるラックパラレルタイプ電動パワーステアリング (RP-EPS) を2017年3月期後半に量産を開始。

-自動運転の実現に向けたステアバイワイヤ (SBW) 方式のステアリングシステムの開発も推進。

駆動事業
-表面処理を改良することにより耐焼付き性が向上し、しゅう動面の面積を小さくすることが可能となり、小型軽量化を実現したトルセンを量産開始。

-インホイルモータなど将来へ繋がる技術開発も推進。

軸受事業
-低トルク化技術を用いた商品群を「LFTシリーズ」としてラインアップ。

-玉軸受では、CVTなど変速機に使用される円すいころ軸受からの置き換えを見込んだ「高アキシアル荷重対応低トルク玉軸受」を開発。

-SUVやピックアップトラック用の「低トルク・高耐摩耗性テーパードローラハブユニット」を開発。

設備投資額

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 66,438 63,140 68,409
-機械器具部品 59,029 56,524 57,884


機械器具部品
-2017年3月期は、各地域の生産拠点の設備増強等を実施した。

国内投資

-同社は、国内の自動車用ハブユニットの生産能力を増強する。約3億円を投じて今夏にも亀山工場(三重県亀山市)に軽自動車向けハブユニット専用ラインを新設、2017年の生産能力を16年比14%増の800万個に引き上げる。軽自動車向けの新規受注に対応するほか、亀山工場の余力を生かすことで、フル稼働が続く国内の他の生産拠点の生産を支援、旺盛な需要を取り込む。(2017年4月24日付 日刊自動車新聞より)

海外投資

<メキシコ>
-光洋機械工業は、8百万ドルを投資してメキシコSan Luis Potosiにステアリング中間シャフトの生産工場を新設したと発表した。子会社のKoyo Joint Mexicoが160名を雇用し、操業を行う。新工場は光洋機械工業にとって米州初の生産施設となる。(2017年5月7日付 Mexico-Nowより)

設備の新設計画

(2017年3月31日現在)
事業所名 所在地 設備の内容 投資予定
総額
(百万円)
着手 完了
予定
田戸岬工場 愛知県
高浜市
機械器具部品
製造設備等
2,600 2017年4月 2018年3月
香川工場 香川県
東かがわ市
機械器具部品
製造設備等
2,500 2017年4月 2018年3月
徳島工場 徳島県
藍住町
機械器具部品
製造設備等
2,400 2017年4月 2018年3月
ダイベア (株)
本社・和泉工場ほか
大阪府
和泉市
機械器具部品
製造設備等
1,400 2017年4月 2018年3月
Koyo Bearings North America LLC 米国
ミシガン州
機械器具部品
製造設備等
5,400 2017年4月 2018年3月