旭硝子株式会社 2007年度の動向

ハイライト

業績
(単位:百万円) 2007年12月期 2006年12月期 増減率(%)
全社
売上高
1,681,238 1,620,540 3.7
営業利益 197,452 136,611 44.5
ガラス事業
売上高 866,031 815,335 6.2
営業利益 63,663 46,485 37.0
ガラス事業構成比
売上高 51.5% 50.3% -
営業利益 32.2% 34.0% -


2007年12月期業績の分析
  プラス要因 マイナス要因
全社 -フラットパネルディスプレイ(FPD)用ガラス基板の市況は、TFT液晶用ガラス基板を中心に堅調に推移
-化学製品の市況が回復
-
ガラス事業
板ガラス部門 -欧州の市況好調
-ロシアほか新興市場への出荷伸長
-日本及び北米においては住宅着工数の落ち込みにより軟調
自動車ガラス部門 -グローバルで自動車生産台数が堅調に推移 -ロシアを除く欧州地域の事業が低調に推移
その他ガラス部門 - -10月末にガラス繊維事業から全面撤退したため、減収。


中期経営計画 “JIKKO-2007”の総括

-対象期間:2005年から3年間

-目標: 営業利益10%以上の達成・継続

-施策:①TFT用ガラス基板を中心とするFPD事業への積極的な投資
     ②CRT事業の収益改善
     ③新興市場でのガラス事業の拡大
     ④北米事業の収益改善
     ⑤エレクトロニクス&エネルギー事業の本格的立ち上げ

-結果:北米事業の収益改善に進捗はなかったものの、FPD事業の伸長や欧州板ガラス事業の拡大、エレクトロニクス&エネルギー事業の順調な成長により、営業利益10%以上を達成。    


新中期経営計画 “JIKKO-2010”
-対象期間:2008年から3年間

-目標:2010年に株主資本利益率12%を目指し、営業利益率を2007年のレベル以上で維持・継続させる

-施策
①ディスプレイ事業
TFT用ガラス基板の収益の維持・拡大及びPDP用ガラス基盤における激しい市場変動に対応した柔軟な生産体制構築と収益維持
②エレクトロニクス&エネルギー事業
素材からの一貫生産を活かした差別化戦略の推進、量産までの時間短縮と事業運営のスピードアップ及び成長分野への集中投資
③太陽電池用ガラス事業
年率40%の成長が予想されるため、欧州、北米、日本、アジアを含めたグローバルな開発、製造、販売体制の構築、タイムリーな設備投資と技術開発の推進による生産能力拡張と高付加価値化による差別化
④北米板ガラス事業
太陽電池ガラス、自動車用素板、Low-Eガラスなどの製品の拡販及びロジスティクスの機能向上、工場自動化プログラムの推進によるオペレーションのアップグレードとコスト削減及び収益改善
⑤ガラス事業

板ガラス
-チェコ(2008年初)、ロシア(2009年初)での量産開始及び日本・アジアでの最適な生産体制の構築

自動車ガラス
-中国第2工場(2008年第一四半期)での量産開始、欧州におけるビルド&スクラップ完結ぶよる収益改善及び全地域でのコストダウン継続


事業再編
-メキシコの子会社、AGCオートモーティブ・メキシコ株式会社(AGC Automotive Mexico S.A. de C.V.)の解散を決議した。北米地域における自動車用ガラス事業の最適化を図るため、AGCオートモーティブ・メキシコ株式会社での生産を停止し、2007年下期に同社を清算する。(2007年2月2日付け同社プレスリリースより)

- AFGインダストリー社シナミンソン工場(米国ニュージャージー州)を閉鎖する。北米での需給バランスや生産設備の稼働状況の改善を図るため、特に採算が悪化しており、供給過多の状況にあるフロートガラスを生産しているシナミンソン工場の閉鎖を決定。これにより同社の北米における板ガラス生産能力は約10%削減される。(2007年2月5日付け同社プレスリリースより)

-100%子会社である旭テクノグラス(本社・千葉県船橋市)が、2008年12月末までに中山工場から全面事業撤退すると発表した。旭テクノグラス中山工場は、1996年に自動車ヘッドライト用ガラスの生産を開始して以来、理化学用ガラス製品、耐熱ガラス食器、工業用ガラスチューブなど、幅広い分野へ事業を拡大してきた。コスト・品質面での競争力向上を図るため、中山工場、静岡工場、タイ(タイ・イワキガラス社)の3拠点における生産体制を再編。 (2007年3月16日付けプレスリリースより)

開発動向

研究開発費
(単位:百万円) 2007年12月期 2006年12月期 2005年12月期
グループ全体 33,943 30,781 31,706
-ガラス事業 9,728 7,419 7,039
比率(%) 28.7 24.1 22.2


研究開発体制
-グループビジョンとして"Look Beyond"を掲げ、開口部材、表示部材、エレクトロニクス&エネルギー部材を主要領域と定めている。技術をベースとして環境に配慮しながら研究開発活動を行い、特にエレクトロニクス&エネルギー部材の領域では、ガラスとフッ素科学の2つのコア技術の活用も実施。
研究開発組織 概要
技術企画室 グループ全体の研究開発活動を統括
中央研究所 担当テーマ
(1)中長期的、基礎的なテーマや技術プラットフォームを強化するための研究テーマ
(2)新規事業創出のための研究開発テーマ
各事業部内の研究開発担当部署およびエンジニアリングセンター 担当テーマ
(1)現行事業およびその周辺における新商品、新品種の開発に関するテーマ
(2)量産技術・量産設備の開発に関するテーマを担当

ガラス事業
-板ガラス及び自動車用ガラスに関する新商品・新技術開発、板ガラスの革新的生産向上、各種自動車ガラス製品の設計・生産に関するコンピューターシュミレーション技術開発などを行っている。

-燃料電池(FC)車で発電をつかさどる心臓部ともいえる膜・電極接合体(MEA)の効率を、1.3ボルト理論電圧で従来比20%引き上げたことを明らかにした。MEAの耐久性実験で、120度の高温、50%の低湿度で6千時間近く運転しても極めて低い劣化率にとどめた。これにより開発要件が厳しい自動車用FCで、スタックの効率向上に大きく貢献するとしている。同社のMEAは、フッ素系交換膜の両側を白金・電極被服樹脂、ガス拡散層で覆った5層構造で、膜の素材により定置型FCと自動車用FCに分かれる。2004年に同分野での実証実験を開始し、それまで温度70-80度・湿度100%で行われていた運転環境を、3年間に120度・50%とより厳しくした上で、6千時間近い耐久実験を続けており、耐久性だけでなく400ミリから25ミリへの薄膜化にも成功した。(2007年7月2日付日刊自動車新聞より)

設備投資

設備投資額
(単位:百万円) 2007年12月期 2006年12月期 2005年12月期

グループ全体

231,131 252,700 204,000

-ガラス事業

98,266 79,600 73,000
ガラス事業構成比 42.5% 31.5% 35.8%

ガラス事業
-チェコにおける板ガラス製造設備新設などに投資。


2008年12月期の計画
(単位:百万円) 設備投資費用

グループ全体

240,000

-ガラス事業

98,000
ガラス事業構成比 40.8%
*上記金額は2007年12月末時点での計画金額。

-静岡、タイの両拠点にそれぞれ新鋭炉1基と生産・加工ラインを新設する。総投資額は約40億円。 (2007年3月16日付けプレスリリースより)

-ロシアにおいて、フロートガラス製造窯を増設すると発表した。投資額は約1億3500万ユーロ(約210億円)。生産能力1日あたり1000トンの世界最大の製造窯で、旭硝子グループにとってはロシアで4基目の窯。2009年初頭から量産を始める予定。ミラーや高断熱Low-E(低放射)ガラスなど、高付加価値商品への需要増に対応する。(2007年3月22日付けプレスリリースより)

-自動車用加工ガラスの新工法開発に着手した。現状の各加工工程を大幅に小型化するとともに、工程間を直結し中間在庫ゼロを実現するなど、高効率次世代生産ラインを開発する。既存工法では年間80万台とされていた損益分岐点を同10万台に引き下げる。今後の新規開拓や能力増強の中心となる新興成長市場(BRIs)の後に来る、中小規模の国・地域での局地戦に備えての生産準備とみられる。自動車用加工ガラスの生産拠点は、一般的に1工場当たり年間80万-90万台が損益分岐点とされてきたが、同社では治・工具やロボットなどの改良でそれぞれの工程を小型化するとともに、主要工程を直結させることなどで工場面積や初期投資、メンテナンスコストなども大幅に削減する設備開発に着手した。早ければ2009-10年度までに開発のめどをつけたい考え。(2007年6月28日付日刊自動車新聞より)