愛知製鋼 (株) 2019年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2019年
3月期
2018年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 257,315 236,237 8.9 -主力製品である鋼材・鍛造品の堅調な需要により増収。
営業利益 11,119 11,813 (5.9) -販売数量の増加や販売価格の値上がり、海外子会社の利益増等の増益要因があったものの、原材料・副資材・エネルギー価格の上昇や減価償却費の増加等により減益。
経常利益 11,324 11,774 (3.8) -
親会社株主に帰属する当期純利益 6,503 8,182 (20.5) -

 

受賞

-2018年5月、上海で行われた「国際ステンレススチールフォーラム (ISSF) 」で、高圧水素用ステンレス鋼が「Best New Technology Award(新技術開発賞)」の銅賞を受賞したと発表。2014年に、トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI」の水素充填口用の高圧水素用ステンレス鋼「AUS316L-H2」を開発。燃料電池車の安全性・信頼性の向上に貢献してきたことが評価された。

 

研究開発費

(単位:百万円)
2019年3月期 2018年3月期 2017年3月期
鋼(ハガネ)カンパニー 2,268 2,560 2,255
鍛(キタエル)カンパニー 353 36 38
スマートカンパニー 1,370 1,179 1,010
合計 3,992 3,777 3,304

 

研究開発体制

-2019年3月31日現在、研究開発人員は約250名。

 

研究開発活動

自動運転の実証実験向けに「磁気マーカーシステム」を提供
-磁気マーカーシステムは、路面に埋め込んだ磁石に沿って自動運転バスを走らせる技術。超高感度磁気センサー「MIセンサー」を応用し、自車位置を高精度に検出する。2020年の実用化を目指す。

<主な提供事例>
-国土交通省が北海道で実施する自動走行サービスの実証事業に磁気マーカーシステムを提供すると発表した。磁石を1メートル間隔で路面に埋め込み、自動運転バスが停留所にスムーズに横付けできるかどうかなどを試す。同社はこれまでも国の実証事業に磁気マーカーシステムを提供し、GPSが届かない場所などの自動走行に役立ててきた。国交省は、北海道の道の駅「コスモール大樹」 (広尾郡大樹町) で18日から約1カ月間、自動運転バスの実証事業を行う。(2019年5月16日付日刊自動車新聞より)

-磁気誘導に用いる車両の位置推定技術を高度化する。路面に敷設するマーカー側に電子タグを埋め込み、車両側で絶対位置や交差点への接近情報などを読み取って制御に活用する。立体駐車場などの自動駐車 (バレーパーキング) に向くほか、経路設定の自由度が高まったり、他の測位技術と組み合わせてマーカーの敷設コストを大幅に減らせる。まずは大規模駐車場や構内の自動運転用などに売り込む考え。昨年からすでに国の実証事業で使われ始め、GPS電波が届かないトンネル内や、カメラが誤作動しやすい悪天候下でも確実に車両位置を推定できる性能が確かめられた。同社は、国による「ラストワンマイル自動走行」などの実用化に備えてセンサーの完成度を高める一方、路車協調型の利点を生かして応用範囲を広げることにした。(2019年4月26日付日刊自動車新聞より)

-同社とSBドライブ、先進モビリティ、全日本空輸など6社は10日、1月15~25日に羽田空港で自動運転バスの実証実験を行うと発表した。航空機や特殊車両が走行する空港内で自動運転バスを安全に走らせる要件を検証し、実用化の課題を抽出する。磁気マーカーを走行ルートに沿って埋め込み、車両がこれを読み取りながら走行する。マーカーはRFIDタグつきで、車両の位置情報を逐次把握できる。(2019年1月11日付日刊自動車新聞より)

-東日本旅客鉄道(JR東日本)や愛知製鋼など7社は7日、JR東日本主催の「モビリティ変革コンソーシアム」で自動運転バスの実証実験を東北地方で行うと発表した。 実証期間は今月12日~2019年3月8日まで。大船渡線・竹駒駅周辺のBRT(バス高速輸送システム)専用道約400メートルの路面に磁石「磁気マーカ」を設置。「日野リエッセ」をベースに改造した車両に磁気センサーを取り付け、自車位置を特定しながら最高時速40キロメートルで走らせる。磁気マーカにはRFID(無線ID)を付け、車側に区間情報を送って、精度向上につなげる。実証に使う「磁気マーカシステム」は愛知製鋼が提供する。(2018年12月8日付日刊自動車新聞より)

 

製品開発

駆動モーター内部の回転ユニット「ローターアッシー」
-電動車の駆動用大型モーターを初めて試作した。同社は駆動モーター内部の回転ユニットである「ローターアッシー」の製品化を目指しており、試験評価のためにモーター全体を製作した。これをもとに課題を探り、モーターユニットメーカーや自動車メーカーへの提案につなげる考えだ。試作したモーターは高回転によるコンパクト設計を特徴とする。駆動用モーターについては、モーター全体ではなく内部のローターアッシーの専門メーカーとしての参入を想定している。(2019年1月23日付日刊自動車新聞より)

  

設備投資額

(単位:百万円)
2019年3月期 2018年3月期 2017年3月期
鋼(ハガネ)カンパニー 11,096 9,952 11,250
鍛(キタエル)カンパニー 7,298 6,529 8,739
スマートカンパニー 2,490 2,458 818
その他 30 81 24
合計 20,914 19,020 20,831

 

国内投資

-ディファレンシャルリングギア用の熱間ローリングミルラインを同社の鍛造工場 (愛知県東海市) 内に新たに建設したと発表した。同社の主力鍛造品の一つであるディファレンシャルリングギアの生産能力、品質、納期、コスト面における競争力向上が狙い。ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車などの次世代車領域において、グローバルでの需要拡大が見込まれる駆動系部品戦略の強化につなげる。ラインを新設した鍛造工場を「マザー工場」と位置づけ、新生産ラインの構築をさらに進める方針。 (2019年3月14日付日刊自動車新聞より)

-岐阜工場(岐阜県各務原市)内に電動車のインバーターに使う放熱部品「パワーカードリードフレーム」を造る新生産ラインを竣工したと発表した。建屋と設備を含めた投資額は約30億円で、月間の生産能力は180万個(車両6万台分に相当)。トヨタ自動車が電動化戦略を推進する中、次世代車向け部品の生産能力を増強して対応する。岐阜工場に新ラインを導入したことで、同部品の生産体制は知多工場(愛知県東海市)と合わせて2拠点体制となる。新生産棟の建屋面積は約4200平方メートルの2階建て。パワーカードリードフレームは、ハイブリッド車(HV)などに使うインバーターに組み込むパワーカードの主要構成部品。製造した後、デンソーに納める。愛知製鋼のトヨタ向けの同製品のシェアは100%。今後、もう1ラインを導入できるスペースを残す。(2018年11月9日付日刊自動車新聞より)

海外投資

-中国における磁石事業の強化を目的として、2018年2月に出資を行った浙江愛智機電有限公司に800万元の増資を行うと発表した。この増資による生産能力の強化で、現在の中国国内向けパワーシートモーターのほか、新たにEVモーター市場への参入も視野に入れるという。(2019年3月25日付プレスリリースより)

 

設備の新設計画

(2019年3月31日現在)
事業所名
(所在地)
事業の
種類
設備内容 投資予定
総額
(百万円)
着工 完了 完成後の
増加能力
知多工場
(愛知県東海市)
鋼(ハガネ)カンパニーほか 製鋼設備、圧延設備ほか 14,969 2015年11月 2022年9月 *
刈谷工場
(愛知県刈谷市)
鋼(ハガネ)カンパニー 圧延設備ほか 683 2015年10月 2021年10月 *
鍛造工場
(愛知県東海市)
鍛(キタエル)カンパニー 鍛造品生産設備 6,997 2013年12月 2022年3月 *
東浦工場
(愛知県知多郡東浦)
スマートカンパニーほか 磁石応用製品製造設備ほか 13 2019年2月 2019年11月 *
岐阜工場
(岐阜県各務原市)
スマートカンパニー 電子機能材料・部品製造設備ほか 1,512 2018年6月 2025年10月 *
電子部品工場
(愛知県東海市)
スマートカンパニー 電子機能材料・部品製造設備ほか 310 2018年8月 2020年12月 *

*設備完成後の生産能力は、2019年3月末とほぼ同程度となる見込み。