愛知製鋼 (株) 2017年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2017年
3月期
2016年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 212,837 214,120 (0.6) -
営業利益 7,218 5,883 22.7 -前期、知多工場爆発事故を受けた代替生産に伴うコストアップ等があったため。
経常利益 6,863 5,835 17.6 -
親会社株主に帰属する当期純利益 5,064 20 25,220 -前期、特別損失として爆発事故で損壊した設備の復旧費用など4,426百万円を計上したことなどにより。
鋼材事業
売上高 97,450 94,321 3.3 -特殊鋼では自動車関連向けを中心に、ステンレス鋼では国内向けを中心に需要が堅調であったため増収。
営業利益 5,735 6,157 (6.9) -
鍛造品事業
売上高 97,751 102,248 (4.4) -販売価格の値下がりや海外子会社の売上高が為替換算の影響で減少したことなどにより、減収。
営業利益 686 (1,217) - -
電磁品事業
売上高 13,673 13,495 1.3 -ハイブリッド車に搭載されているインバータ用放熱部品の販売数量の増加などにより増収。
営業利益 262 416 (37.0) -

生産動向

-同社は、同社の東浦工場内にユニチカから譲り受けた金属繊維 (アモルファスワイヤ) の製造設備の移管と工場建設を完了させ、製造を開始したと発表した。この製造設備の移管により、愛知製鋼の超小型高性能磁気センサー「MIセンサー」用のキー素材であるアモルファスワイヤの自社生産が可能となり、素材からセンサーまでの一貫生産・安定供給体制を構築した。工場面積は1,600平方メートルで、生産能力は年間4万キロメートルとなる。(2016年5月26日付プレスリリースより)

-同社は、次世代の革新的な鍛造技術開発を進めるため、新たにサーボ式プレスの建設に着手することを決定した。このサーボ式プレスは、従来の熱間鍛造では対応できない複雑な形状に対応できる将来技術であるため、その利点を活かした新製品・新工法の実現で、より高度な鍛造部品開発の加速を狙いとする。設置場所は同社実験工場内(愛知県東海市荒尾町)、着工は2016年11月21日、稼働開始予定は2017年6月、投資額は6億円。(2016年12月1日付プレスリリースより)

-同社は1日、CVT用シャフト部品を製造する「熱間鍛造プレスライン」2本を、同社第4鍛造工場(愛知県東海市)内に設置したと発表した。既存設備に比べて生産性が60%向上し、世界トップクラスの高速自動鍛造が可能という。生産能力は月間34万個(2ライン合計)で、投資額は38億円。(2017年2月2日付日刊自動車新聞より)

-同社は、4月1日付で「鋼(ハガネ)カンパニー」「鍛(キタエル)カンパニー」「スマートカンパニー」の製品軸3カンパニーを設置すると発表した。鋼カンパニーは特殊鋼条鋼やステンレス鋼、鍛カンパニーは鍛造品、スマートカンパニーはセンサーや磁石などを担当する。(2017年3月7日付日刊自動車新聞より)

2020ビジョン

2021年3月期、数値目標

  • 連結売上高:3,000億円
  • 営業利益:  200億円


-ビジョン実現のための施策

課題 施策
「安全・安心」 の再構築 ①よいやり易い作業への手順見直しと作業手順・ルール遵守のための徹底した教育による再発防止
②製造現場でのロックアウト化 (不意の設備起動防止) やフェールセーフ化による安心な職場づくり
③顧客工程を含む在庫の一元・一貫管理と、生産リスクに備えたBCP (Business Continuity Plan:事業継続の対応策)、BAP (Backup Action Plan:代替生産対応) の再構築
基幹事業の競争力強化

①2020ビジョン達成を見据えてのZZZ200 (*1)の着実な実行と原価の見える化の加速により、収益力を強化。

(*1) ZZZ200 (トライゼット200): 「分数経営」 という考え方。分母は原価、分子は売上・利益。どれだけムダ・ロスなく効率よく生産・販売しているかの指標。
②4Sリエンジ (Simple, Slim, Short, Straight Re-engineering) をはじめとする計画的設備投資のやり切りにより、整流化、モノづくり改革の効果を発揮する。
③開発初期段階からの顧客との協働により、 「TNGA (Toyota New Global Architecture)」 に対応した着実なモノづくりを行う。
④タイをIMV (Innovative International Multi-purpose Vehicle) の重要なグローバル供給拠点と位置付け、新しい鍛造設備を導入。
⑤日本をマザー工場として、フィリピン、インドネシア、中国、アメリカを含めた最適なサプライチェーンを確立し、BCP (Business Continuity Plan:事業継続の対応策)、BAP (Backup Action Plan:代替生産対応) を考慮した強固なグローバル生産体制を構築する。
グローバル展開の強化 ①海外鍛造拠点の限量経営 (限りある生産量、限りある資源で効率よく経営すること) の徹底による経営基盤の改革と安定収益の確保
②ウッシャー・マーティン社 (Usha Martin Limited) (インド西ベンガル州コルタカ) との提携強化により、グローバルでの鍛鋼一貫効果の実現。
新事業による収益体質強化 ①同社独自の 「オンリーワン」 技術・商品を活かした技術開発・新商品企画の積極的展開による、次世代への対応
②ステンレス商品の特性や魅力の市場への浸透により、インフラ再構築や水素社会への対応
③電磁品のブランド力・安定供給体制など強みを活かしたビジネスの発掘・拡充により収益拡大

  • 磁石事業:自動車モーターへの展開
  • センサー事業:ローム社との提携により、競争力のある磁気センサーの開発
  • HV用放熱部品:大きなシェアを保有。PHV、EV、FCVの普及につれ、数量増を見込む。



2018年3月期の見通し

(単位:百万円)
2018年3月期
(予測)
2017年3月期
(実績)
増減
(%)
売上高 223,700 212,837 5.1
営業利益 10,000 7,218 38.5
経常利益 9,500 6,863 38.4
親会社株主に帰属する当期純利益 6,400 5,084 25.9


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
鋼材事業 2,255 2,154 2,204
鍛造品事業 38 57 116
電磁品事業 1,010 1,071 1,216
合計 3,304 3,282 3,538

研究開発体制

-2017年3月31日現在、研究開発人員は約250名。

研究開発活動

鋼材事業
-特殊鋼における製造プロセスの革新

  • 新連続鋳造機を起点とした取組みを更に発展 (前後工程スルーでの品質ロス低減、生産効率向上活動の実施)
  • 分塊大形圧延工程リエンジニアリングの効果最大発揮 (物流整流化により生産能力向上、品質安定化を達成)
  • 精整検査工程の搬送設備を増強。建設中の最新精整ライン設置により、出荷リードタイム短縮と検査能力向上を図り高度化する顧客ニーズへの対応力を向上

-自動車向け特殊鋼の開発

  • 燃費改善に貢献する「トラック用高強度板ばね用鋼」を実用化
  • 燃費向上に重要なエンジン部品 (クランクシャフト、コンロッド) および駆動伝達部品 (ギヤ、シャフト) の軽量化に貢献する高強度な素材・プロセスの研究開発を推進
  • 低コスト化に寄与するモリブデン含有量を低減した歯車用鋼のレパートリーを拡充、拡販に向けた取組みを加速

-ステンレス鋼の開発及び市場創出

  • 将来の需要増が見込まれるエネルギー・インフラ分野を狙ったステンレス鉄筋バーや二相系ステンレス形鋼の商品レパートリーの拡充及びステンレス部材ビジネスの拡大
  • 水素社会に対応する高圧水素用ステンレス鋼の拡販と水素社会のさらなる拡大に向けた省合金化による低コスト化を実現する高圧水素用ステンレス鋼の実用化開発

鍛造品事業
-鍛造プロセスの高効率製造・鍛造品の低コスト化

  • CVT用熱間鍛造プレスラインを2ライン建設
    • 高速自動鍛造化により、CVT車に搭載されるシャフト部品の世界トップクラスの生産性を達成
    • 最新のFIA (Forging Isothermal Annealing) 炉を採用することでエネルギー効率を高め、省エネルギー・CO2削減を図るともに物流改善により生産リードタイムを短縮
    • 従来より進めてきた材料切断から機械加工までの全製造工程スルーでの生産性向上・エネルギー削減・生産リードタイム短縮を完了
  • 誘導加熱用コイルの保温性能向上による省エネルギー・低CO2化
  • 鍛造金型の長寿命化を目的とした表面処理技術開発と適用部品拡大

電磁品事業
-主な開発の成果は以下の通り:

  • 2016年8月に革新工法「一体射出成形技術」によるDyフリーボンド磁石マグファインで充電式チェンソー用モータに採用
  • 次世代自動車向け高効率モータ用磁性材料技術開発(NEDO委託業務研究組合)にも参画し、国家プロジェクトでの次世代磁石開発の第一フェーズを終了
  • 2017年3月期からは、実用化開発フェーズでNEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」で推進
  • 2016年3月期~2017年3月期の内閣府SIP (戦略的イノベーション創造プログラム) の「自動運転」内のプロジェクトにおいて、磁気式レーンガイドシステムの開発を行っている。この技術は、自動車に搭載されたMIセンサが道路上の磁気マーカの磁力を検知し、レーン内を自動で走行する支援を行うもの。

設備投資額

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
鋼材事業 11,250 8,942 4,721
鍛造品事業 8,739 4,752 5,967
電磁品事業 818 1,194 2,003
その他 24 520 61
合計 20,831 15,408 12,752


鋼材
-製造設備の合理化および維持更新・環境対応等に投資。

鍛造品
-生産能力増強および製造設備の合理化および維持更新等に投資。

電磁品
-生産能力増強等に投資。

設備の新設計画

(2017年3月31日現在)
事業所名
(所在地)
事業の
種類
設備内容 投資予定
総額
(百万円)
着工 完了 完成後の
増加能力
知多工場
(愛知県東海市)
鋼材ほか 製鋼設備、圧延設備ほか 11,263 2014年4月 2022年3月 *
刈谷工場
(愛知県刈谷市)
鋼材 圧延設備ほか 454 2015年10月 2018年9月 *
鍛造工場
(愛知県東海市)
鍛造品 鍛造品生産設備 11,121 2013年12月 2021年3月 *
東浦工場
(愛知県知多郡東浦)
電磁品ほか 磁石応用製品製造設備ほか 89 2016年11月 2017年12月 *
岐阜工場
(岐阜県各務原市)
電磁品 電子機能材料・部品製造設備ほか 1,550 2016年4月 2021年3月 *
関工場
(岐阜県関市)
電磁品 磁石応用製品製造設備 58 2015年11月 2017年9月 *
電子部品工場
(愛知県東海市)
電磁品 電子機能材料・部品製造設備ほか 110 2016年10月 2018年9月 *

*設備完成後の生産能力は、2017年3月末とほぼ同程度となる見込み。