タカタ (株) 2017年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2017年
3月期
2016年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 662,533 718,003 (7.7) -米国および欧州の子会社の一部売却、また前期比での円高が影響し減収。
営業利益 38,958 42,133 (7.5) -欧州、日本、アジアで増益となったが、米州で減益。
経常利益 42,999 35,206 22.1 -為替差益が寄与し増益。
親会社株主に帰属する当期純損失 (79,588) (13,075) - -特別損失として米国司法省との司法取引に関連する損出計上の結果純損失。
地域別売上高
日本 79,966 77,040 3.8 -乗用車の販売回復、またグループ企業向け輸出も増加し増収。
米州 269,970 319,603 (15.5) -自動車生産販売は引き続き好調維持、ブラジルも年度後半回復基調に転じたが、米国の一部子会社売却に伴う減収、さらに円高の影響もあり減収。
欧州 164,598 170,638 (3.5) -自動車生産が引き続き堅調に推移し、販売も現地通貨ベースで前期比増収なるも円高の影響で減収。
アジア 147,997 150,720 (1.8) -主に中国、インドでの自動車生産が堅調に推移した結果、販売も現地通貨ベースで前期比増加基調で推移したが円高の影響で減収。

エアバッグリコール関連

-同社グループ製エアバッグに係る一連の市場措置に関連する対応を最重要課題と位置付け、自動車メーカー各社による市場措置の実施に全面的に協力するとともに、市場措置の実施にあたり必要となる交換用のインフレーターおよびエアバッグの製造および供給に向けて、可能な限りの経営資源を投入。

-フラウンホーファー研究所とともに原因究明に向けた取り組みを実施してきたが、完全な原因究明には至っていない。これまでの分析によれば、インフレーターが長期間高温多湿の環境下にさらされ、かつ、製造上の精度のばらつき等その他の要因が複合的に重なり合う場合、一部のインフレーターが想定外の強い内圧を受けて破損する可能性があること、また、当初部品として対象インフレーターを検証・製造するにあたって自動車メーカーが策定した試験評価の枠内では、このような長期にわたる現象が起こりうる可能性を把握できなかったことが示唆されている。

-国運輸省道路交通安全局 (NHTSA) との間で合意した同意指令 (Consent Order) および同修正合意の内容をはじめとする関係当局からの要請等に全面的に協力している。

-ホンダは2017年1月、交通事故で助手席エアバッグが異常展開し、負傷者が発生したと発表した。タカタ製インフレーター(ガス発生装置)の異常作動が原因で、国内での負傷者は今回が初めて。2003年式の「フィット」で、リコール対象車だったもののインフレーターは交換していなかった。ホンダではリコール周知対応の人員増やホームページでの注意喚起を徹底することで、再発防止に努めていく。(2017年1月18日付日刊自動車新聞より)

-同社は、エアバッグインフレーターの性能検証試験に係る報告の不備の問題に関して、米国司法省と合意したと発表した。同社による支払いの内訳は、罰金が2,500万ドル、補償基金の設立に1億2,500万ドル、自動車メーカーへの賠償が8億5,000万ドル。また同社はコンプライアンス体制の強化と、今後3年間法令上および倫理上の義務を遵守しているかを監視し、米国司法省に報告する独立監査法人の受け入れについても合意している。(2017年1月14日付プレスリリースより)

-バンコクポストは2016年12月、ホンダのタイ法人Honda Automobile (Thailand)がタカタ製エアバッグインフレーターの不具合でさらに16万5,128台を追加リコールしたと報じた。今回のリコールで、ホンダ・タイのタカタ製エアバッグインフレーターのリコール合計台数は、86万5,000台になる。タカタ製インフレーターの不具合による死亡事故はグローバルで少なくとも16件、傷害件数は150件以上になるという。ホンダが今回追加リコールした対象車種は、2007-2011年型の「CR-V」、2008-2011年型の「アコード(Accord)」、2009-2011年型の「シティ(City)」「ジャズ(Jazz)」「フリード(Freed)」、「シビック(Civic)」。(2016年12月6日付Bangkok Postより)

-同社は2016年11月、2016年4~9月期連結決算で、エアバッグの市場措置に関わる訴訟への対応費用として70億円の特別損失を計上したと発表した。合わせて、米国子会社で生産した一部のエアバッグ製品に関する和解金として25億円を特別損失に計上した。一方、米国の関係会社の株式の売却益として112億円などを特別利益に繰り入れた。これにより、4~9月期の業績は増益を確保した。17年3月期の通期業績見通しも修正。前回公表(8月5日)に比べ、売上高を500億円減の6200億円に下方修正する一方、営業利益は20億円増の350億円、純利益も70億円増の200億円に上方修正した。(2016年11月5日付日刊自動車新聞より)

-タカタ製エアバッグ用インフレーター(膨張装置)のリコール範囲が拡大されたことに伴うリコールの届け出が本格化してきた。6月上旬のトヨタ自動車、ホンダに続き、30日にマツダなど5社が合計144万台を届け出た。タカタ製エアバッグをめぐっては、インフレーターの異常破裂による死亡事故が海外で続いている。事故の防止を最優先にメーカーが対応を急ぐ。リコールを届け出たのは、マツダ、三菱自動車、富士重工業、UDトラックスのメーカー4社とメルセデス・ベンツ日本の合計5社。いずれもタカタ製のエアバッグ用インフレーターを運転席と助手席、または運転席か助手席のどちらかに搭載している。(2016年7月2日付日刊自動車新聞より)

-同社が設置した外部専門家委員会は26日、一連のエアバッグのリコール問題に関する財務対応として出資者を募集するとともに、ファイナンシャルアドバイザーとして資産運用会社である米ラザードを選任したと発表した。多額のリコール費用が想定される中、財務関連の専門家を起用することで出資者を早期に決定するとともに、自動車メーカーとのリコール費用の負担割合の交渉を円滑に進めていく。(2016年5月27日付日刊自動車新聞より)



経営再建計画経緯

-タカタは2017年2月、経営再建計画の策定を依頼している外部専門家委員会が、スポンサー候補にエアバッグなどを手掛ける米キー・セイフティー・システムズ(KSS)を選定したと発表した。タカタは同委員会の選定を踏まえ、自動車メーカー各社と再建計画などを協議して正式に決定する。ただ、KSSはタカタの法的整理による経営支援を提案しているのに対してタカタは私的整理による再建を主張しており、経営再建の行方は依然として不透明だ。KSSは、2016年6月に中国の新興自動車部品メーカー寧波均勝電子グループの傘下となった中堅エアバッグメーカー。スポンサー候補だったエアバッグ最大手であるスウェーデンのオートリブがタカタを傘下に加えると独占禁止法に接触する恐れがあるため、KSSを選定した模様。(2017年2月7日付日刊自動車新聞より)

-タカタは、米国の連結子会社であるIrvin Automotive Products Inc.の全株式をIrvin Acquisition LLCに譲渡したと発表した。Irvin Acquisition LLCは、本取引のために設立された責任限定会社。米国ミシガン州を本拠とするPiston GroupのオーナーであるVincent Johnson氏が過半数を出資している。今回譲渡されるIrvin Automotive Productsはインテリアおよびトリム製品の製造・販売を行っており、2016年3月期の売上高は約485.4億円 (4.8億ドル)。今回の譲渡により、2017年3月期の第2四半期決算において約100億円 (約98百万ドル) の特別利益が発生する見込み。(2016年9月29日付プレスリリースより)

-寧波均勝電子 [Ningbo Joyson Electronic] 傘下のKey Safety Systems (KSS) がタカタからの提案によりタカタ買収の準備を進めているとDetroit Newsが報じた。タカタを買収すれば、Autolivに次ぐ世界第2位のエアバッグメーカーとなる。米当局がタカタに制裁金を課し、エアバッグ用インフレーターに硝酸アンモニウムを使用することを禁止した後、寧波均勝電子はKSSを920百万ドルで買収した。KSSは、2020年までにインフレーターの生産量を3,000万ユニット増やし、1億ユニットにする計画。また、米国、中国、メキシコ、欧州にある工場に生産ラインを増やすとしている。(2016年7月23日付Detroit Newsより)

-寧波均勝電子 [Ningbo Joyson Electronic] は、同社がタカタの買収に前向きとの報道に対し、これを否定した。同社は現在、米KSS社の株式100%取得を積極的に進めている。同社とKSS社はアクティブセーフティとパッシブセーフティの市場評価を行っているが、タカタへの出資に関しては協議していないとしている。(2016年6月6日付け会社公告より)



研究開発費

(単位:百万円)

2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
日本 2,995 2,977 2,662
米州 9,300 10,070 10,104
欧州 6,440 8,821 9,107
アジア 1,961 3,068 2,535
調整額 (138) (195) (26)
合計 20,559 24,742 24,383
売上に占める割合 (%) 3.1 3.4 3.8

研究開発体制

-研究開発拠点は、日本 (滋賀)、米国 (デトロイト)、欧州 (ベルリン) の3極に設置。さらに新興国市場向け開発を担う中国を加え、グローバルに技術開発を実施。

研究開発活動

-事故時の障害を最小限に抑える衝突時の乗員保護を目的とするパッシブセーフティの領域から、危険を予知し、衝突の未然防止あるいは衝突程度の軽減を目指すアクティブセーフティの領域を統合した安全システムの構築を追求。

-衝突形態、システム機能ごとのアプローチによる調査、研究開発

  • 前面衝突乗員保護システム
  • 側面衝突およびロールオーバー乗員保護システム
  • 歩行者保護システム
  • モーターサイクル乗員保護システム
  • 衝突回避・運転者サポートシステム 等

-保護システムを構成するデバイス (インフレーター、エレクトロニクスを含む) の開発

製品開発

-自動運転システムに不可欠な乗員センシング技術を開発。

  • ドライバーモニタリングシステム
  • ハンズオンホイール
  • イルミネーション埋め込みステアリングホイール

進化したステアリングホイールパッケージを2017年夏の量産開始を目標に準備を進めている。

設備投資額

(単位:百万円)

2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
日本 1,151 1,632 2,330
米州 8,693 13,424 11,887
欧州 4,655 7,170 12,019
アジア 4,581 6,153 9,027
合計 19,082 28,381 35,265

2018年3月期の見通し

(単位:百万円)

2018年3月期
(予想)
2017年3月期
(実績)
増減 (%) 要因
全社
売上高 620,000 662,533 (6.4) -
営業利益 21,500 38,958 (44.8) -
経常利益 21,000 42,999 (51.2) -
親会社株主に帰属する当期純利益 9,000 (79,588) - -