サンコール (株) 2016年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年
3月期
2015年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 36,730 35,816 2.6 -自動車関連部品は、米国・中国での販売が大幅に増加。
-日本:新車販売台数が低迷した影響を受けたが、弁ばね材料等の輸出販売は底堅く推移した。
-北米:高需要が続いた自動車市場を背景にエンジン用やミッション用の部品販売が伸長。
-アジア:中国子会社ではエンジンやミッション用の部品販売が高水準を維持、タイ子会社も堅調。
営業利益 2,113 2,557 (17.4) -メキシコ子会社の量産準備費用増や、不採算製品の受注量増等により減益
経常利益 1,522 3,352 (54.6) -第4四半期の急激な円高による為替差損や、海外合弁会社の立ち上げ遅れに伴う持分法投資損失が発生し減益。
当期純利益 1,042 2,143 (51.4) -
精密機能材料
売上高 4,185 4,299 (2.7) -国内販売は減少したが、堅調な海外向け販売と円安効果により、前年同水準となった。
精密機能部品
売上高 22,484 20,443 10.0 -国内では自動車販売台数低迷の影響を受けたが、海外拠点の販売はエンジン用やミッション用部品を中心に好調に推移。



中期経営計画

-2016年5月に中期経営方針を発表。2019年3月期に連結売上目標500億円、営業利益率10%を目指す。M&Aを含めた投資も想定し、3年間累計の投資金額を120億円に設定。

自動車関連事業の拡大
-弁ばね用材料事業の拡大
 エンジン/ミッション系精密機能部品は、拡大するグローバル市場を見据え、中国、メキシコの自動車用線材生産能力を引き上げ、日本を含めた3拠点による生産効率化の追求と最適生産・供給体制の構築を進める。

  • メキシコ: 北米市場向け、需要旺盛で2016年に垂直立ち上げ
  • 中国: 中国・東南アジア市場向け、2015年後半から販売量増加
  • 日本 (京都): フル操業

-材材料から製品まで一貫生産の強みを活かす

  • シー トベルト用ぜんまいばね (リトラクター) と材料のシェア拡大: 同製品のシェアは現状8% (同社調べ)。材料の年間供給能力を2015年時点の約2,600トンから2018年に約4,000トンに増強。材料生産拠点を韓国合弁会社に移管し、材料の外販も伸ばす。ぜんまいばねは速水発条との合弁会社を通じて、北米市場に参入する。
  • ミッション用高強度ばね (ダンパースプリング) の事業拡大: ATミッションの多段化、アイドリングストップ対応などで高強度材料の需要が拡大。弁ばね用材料の転用、自動化ラインへの変更による採算向上などで、事業拡大を図る。
  • ハイブリッド車用弁ばね材料の開発: 高出力エンジンに比べて低強度で、低廉化対応の新製品を開発。

-HV・EV・PHV・FCV向け新製品開発と自動車以外への展開
 安全、環境、運転支援技術の開発による自動車の電動化、軽量化が加速し、電子化製品の需要増加と素材転換が進む中、同社は精密塑性加工技術と電子情報通信部品製造技術を応用し、HV・EV・PHV・FCVに搭載されるキーパーツの開発と量産化を進め、将来の中核事業へ育成していく。また、既存製品に代わる素材の研究開発に取り組んでいる。

  • シャントonバスバー: バスバー一体型の電流センサー。リチウムイオン電池の大電流まで高精度に検出可能。シンプル構造で低コスト、一体型で省スペース。
  • バスリング: 1本の銅の平角線からの成形でプレス金型不要、小ロット対応可能。モーターの配線作業を大幅に簡素化。
  • ワイヤレス給電コイル: 大電流用の非接触給電コイル。異形断面線によりコイル厚は丸線の約半分、加工後塗装により高い耐電圧性、安定形状により周波数安定。
  • 角線マグネットワイヤー: モーターコイル用のマグネットワイヤー。同社の特許、圧延技術による角線を使用。角線使用によるモーターの小型化、アルミ製による軽量化、耐熱性向上。



研究開発活動

1) 開発グループ
シャントonバスバー
-200~800アンペアもの大電流を直接測定し、構成どな電流計測を可能とする電流センサー。KOA (株) と共同開発。バッテリーの管理用途として電気自動車やハイブリッド自動車などに採用が期待されている。

2) 精密機能材料
表面性状改善精密ピストンリング線材
-ピストンリングは鋳物製からスチール線材 (精密異形線) が主流となり、今後さらなる性能向上およびコスト低減のため、線材形状精度および表面清浄を極限まで高め、リング成形後の機械加工廃止および低減 (ニアネット線材) が要求されている。同社は従来引抜線材の課題であった線材性状を改善する新工法を開発し、量産供給を開始した。

3) 精密機能部品
新可変動弁機構用ぜんまい
-次世代エンジンの新可変動弁機構用部品として、弁ばねと同等の高品質を有する異形断面材を用いたぜんまいバネの開発を行ってきたが、国内外自動車メーカーでの採用が決定し、2014年5月から国内大手自動車メーカー向けに量産開始。その後、同メーカーの他エンジンにも展開され、2015年9月には外国自動車メーカー向けの量産も開始。また、次期モデル用の開発にも着手。

シートベルトリトラクター用高反発ぜんまい
-高トルクぜんまいバネ用異形圧延材の開発により、トルク値を現行比10%高めることに成功。これにより、ぜんまい材の薄板化と全長削減が実現でき、重量軽減によるコスト低減が可能となる。2016年3月期の製品量産化とその後の拡販を目指し、顧客と開発推進中。

研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 940 823 735



設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
-精密機能材料 (日本) 330 310 180
-精密機能材料 (北米) 941 1,031 -
精密機能材料 計 1,271 1,341 180
-精密機能部品 (日本) 1,078 1,119 1,015
-精密機能部品 (北米) 1,007 527 192
-精密機能部品 (アジア) 340 566 343
精密機能部品 計 2,425 2,212 1,550
その他 934 304 440
合計 4,630 3,857 2,170



設備の新設計画

(2016年3月31日現在)
会社名
事業所名
(所在地)
設備の内容 投資予定額
(百万円)
着手 完了予定
同社
(京都市右京区)
生産設備
(精密機能材料)
441 - 2017年
3月
生産設備
(精密機能部品)
516 - 2017年
3月
サンコールエンジニアリング (株)
(山梨県南アルプス市)
生産設備
(精密機能部品)
121 - 2017年
3月
サンコール菊池 (株)
(熊本県菊池市)
生産設備
(精密機能部品)
131 - 2017年
3月
Suncall Technologies Mexico, S.A. de C.V.
(メキシコ アグアスカリエンテス州)
生産設備
(精密機能材料)
329 - 2016年
12月
生産設備
(精密機能部品)
399 - 2016年
12月
Suncall America Inc.
(米国インディアナ州)
生産設備
(精密機能部品)
156 - 2016年
12月
Suncall High Precision (Thailand) Ltd.
(タイ チョンブリ県)
生産設備
(精密機能部品)
170 - 2016年
12月



2017年3月期の見通し

(単位:百万円)
2017年3月期
(予想)
2016年3月期
(実績)
増減
(%)
全社
売上高 39,000 36,730 6.2
営業利益 2,000 2,113 (5.4)
経常利益 1,700 1,522 11.6
親会社株主に帰属する当期純利益 1,100 1,042 5.5
自動車関連事業
売上高 28,300 26,669 6.1

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

-売上高: 自動車関連事業は主要客先の生産台数は堅調に推移、北米、中国で受注増。メキシコ子会社の量産開始、日本におけるミッション系部品の受注増などにより増収。
-営業利益: 為替レート変動による影響、メキシコ事業会社の固定費増加により減益見通し