クラリオン (株) 2017年3月期の動向
業績 |
(単位:百万円) |
2017年 3月期 |
2016年 3月期 |
増減率 (%) | 要因 | |
全社 | ||||
売上収益 | 194,841 | 216,227 | (9.9) | -米州、中国におけるOEM(相手先ブランドによる生産)製品の売上伸張があったが、前期比での円高による為替影響を大きく受け減収。 |
営業利益 | 11,367 | 11,551 | (1.6) | -原価低減活動推進による経費の抑制に努めたが、その他の収益減少等により減益。 |
税引前当期利益 | 10,992 | 10,495 | 4.7 | - |
親会社株主に帰属する当期利益 | 7,727 | 7,743 | (0.2) | - |
要因
<日本>
-セーフティアンドインフォメーションシステム関連製品の売上は増加しているものの、既存製品の売上減少により前期同期比16.3%の減収。
-原価低減活動推進、北米向け製品の生産増による操業度改善等により、前期同期比32.1%の増益。
<米州>
-米国での好調な自動車販売、OEM市場向け製品の伸張等により売上規模は拡大したものの、前期比での円高による為替影響を吸収できず、前期同期比3.5%の減収、前期同期比25.5%の減益。
<欧州>
-売上拡大を上回る前期比での円高による為替影響により、前期同期比3.7%の減収、61.7%の減益。
<アジア・豪州>
-中国でのOEM市場向け製品の売上拡大がありましたが、為替影響やタイでのOEM市場向け製品の売上減少等により、前期同期比14.3%の減収、12.3%の減益。
受注
-フォルクスワーゲングループジャパン (VGJ、愛知県豊橋市) が日本で発売する「Golf」と「Golf Variant」向けに駐車支援カメラシステム「サラウンドアイ」を、VGJと共同開発したと発表した。純正オプション品として発売開始した。今回共同開発したサラウンドアイは、車体に装着した4台のカメラで車両の周囲を真上から見たように表示する。後退時はフォルクスワーゲンの純正インフォテインメントシステム(ディスカバープロ、コンポジションメディア)の画面に、車庫入れや縦列駐車がしやすい4種類のカメラパターンを映す。一部車種で標準装備する「オプティカルパーキングシステム」と組み合わせることで、センサーによる警告音と画像表示で車両周辺の安全確認をサポートする。(2016年5月18日付日刊自動車新聞より)
海外動向
-中国でナビゲーション用ソフトウエア開発会社の武漢光庭信息技術と知能端末のソフトウエア開発合弁会社を5月に設立すると発表した。クラリオンは中国でソフトウエア開発体制を強化するとともに、新規顧客の開拓、商品企画力向上を図り、グローバル市場のニーズに迅速に対応する。合弁会社は6月から事業を開始する。新設する合弁会社は「武漢楽庭軟件技術」で、本社は湖北省武漢市に置く。資本金は1千万元(約1億6700万円)で、光庭が75%、クラリオンが25%をそれぞれ出資する。董事長には對馬宏隆氏、総経理に蔡幼波氏が就任する。従業員数は設立時が113人。光庭は、ナビゲーション用ソフトウェア開発や車載系・通信系組み込みシステムのソフト・ハード開発、ナビゲーション用地図データのオーサリングソリューションを提供している。クラリオンと光庭は従来から車載機向けソフトウエア開発で協力関係にあった。(2016年5月25日付日刊自動車新聞より)
2018年3月期の見通し |
(単位:百万円) |
2018年3月期 (予測) |
2017年3月期 (実績) |
増減 (%) | |
売上高 | 200,000 | 194,841 | 2.6 |
営業利益 | 10,500 | 11,241 | (6.6) |
税引前利益 | 10,000 | 10,992 | (9.0) |
親会社株主に帰属する当期利益 | 7,000 | 7,727 | (9.4) |
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2017年3月期 | 2016年3月期 | 2015年3月期 | |
全社 | 17,338 | 19,509 | 17,536 |
研究開発活動
(1) コックピット向け統合HMIの開発
-OEM向け事業で培った高いHMIソフトウェア・ハードウェア開発力、オーディオ製品を支えている音響技術、ユーザー体験を実現するデザイン力、市販製品事業でのアプリケーション・サービス開発の経験、次世代HMIの研究開発力などのコア技術により、車室 (コックピット) 内の機器を連携・統合したHMIにより高い顧客価値を提供する。
(2) 自動車向けクラウド型テレマティクスサービス「Smart Access」の拡充
-日立グループの協力を得て立ち上げ運用する独自の自動車向けクラウド情報ネットワークサービス「Smart Access」の拡充を継続して行う。
-2015年3月期、車載情報機器の音声操作対応および対応言語の拡大を図り、北米と欧州に対応した。さらに、自動車メーカーに対して次世代インフォテイメントシステムと位置付けた新たなサービス提供を開始。
-2016年3月期には日立グループで開発したセキュアーなプログラム更新機能に対応、Googleのオートコンプリート技術やストリートビュー画像などを活用した機能開発を行った。
(3) セーフティアンドインフォメーション事業における技術、商品開発
画像処理ECU、カメラ等による運転支援技術
-画像認識や制御連携技術に加え、単体カメラを使った高度な物体検知技術や、映像信号のデジタル伝送による高精細「SurroundEye」画像を用いた精度向上型の認識技術を追加して、自動駐車システムの実用化に取組んできた。
-顧客にシステム評価を依頼、自動車開発の視点で指摘された内容を改善することで、2015年度は本格的な量産開発を開始。さらに高度なシステム要求があることを見越し、経路誘導技術のブラッシュアップやセンサーフュージョン、周辺検知距離の拡大、通信システムとの融合に取組んでいる。
-2016年3月期では本格的な量産開発、2017年のCES(Consumer Electronics Show)に日立オートモティブシステムズと共同でドライバーが車外で操作するリモート自動駐車を出展。
-「SurroundEye」は業務用車両でも採用が始まり、グローバルな商品展開を進めている。
-2020年前後に商品化されると言われる自動運転に関しては、高精度な位置検出機器であるMPU及び新たな画像認識技術や車載通信技術分野で日立グループと連携してこの分野に進出することを狙っている。
車載通信技術
-乗車前のエアコン制御など利便性への応用だけでなくロシア市場でのエマージェンシーコール実現といった安心・安全も目的としたTCUモジュールの本格生産と納入が、2015年秋から始まった。
-将来の交通環境下では車両間あるいは車両と道路インフラ間で通信して安全情報を提供する機能も計画されており、車両側でこれを実現するC2Xプラットフォームの開発を日立グループと連携して進めている。
(4) 多様化する車室内音響技術への取り組み
-2015年6月にスマートフォン用の自動音響チューニングアプリ「Intelligent Tune App」をリリース。
(5) フルデジタルスピーカー
-2015年末に車載スペックに対応した高出力型のフルデジタル駆動回路 (LSI) を開発。2016年4月よりハイレゾ音源に対応した次世代カーオーディオシステムとして販売を開始。
(6) その他
-4分割した画面のサイズを指で触れて変更できるカーナビゲーションシステムを開発、2017年度に市場投入する。ナビやメニュー設定など複数の機能を1画面に表示、ユーザーが操作したい機能を直感的に選択できるようにした。車載カメラで接近車両を検出した際、自動で関連画面を大きく表示するなど安心・安全機能も盛り込む。多様な情報を自在に操れる新たなHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)として提案する。(2017年1月19日付日刊自動車新聞より)
-日立オートモティブシステムズと同社は、スマートフォンを用いた遠隔操作により、車外から並列・縦列駐車や車庫入れ・出庫を自動で行う、リモートパーキングシステムを共同で開発したと発表した。このリモートパーキングシステムは、クラリオンの周辺監視カメラシステムであるSurroundEyeと、日立オートモティブシステムズの車両制御ユニットやステアリング、ブレーキなどのアクチュエーター制御技術を連携させた自動駐車システムで、スマートフォンにより遠隔操作で車両を駐車する。(2016年12月22日付プレスリリースより)
-振動や音声で運転者に車両周辺の状況を伝える座席「インフォシート」を開発、自動車メーカーへの提案活動を本格化する。運転席に搭載したスピーカーを、他車両の接近など危険が迫った時に作動させることで運転者に警告する仕組み。自動運転車で必要となる近傍の安全確保を実現する先進運転支援システム(ADAS)の一つとして、自動車メーカーやシートメーカーから受注獲得を目指す。(2016年10月6日付日刊自動車新聞より)
技術導入契約 |
(2017年3月31日現在) |
相手先 | 国名 | 内容 | 契約期間 |
Discovision Associates | 米国 | 光学系ディスクプレーヤーの製造技術 |
1994年12月01日- |
一般財団法人道路交通情報通信システムセンター | 日本 | VICS技術情報の使用に関する契約 | 1995年11月28日- 両当事者での 終了確認日 |
Google Inc. | 米国 | 音声認識および検索技術の使用に関する契約 | 2016年09月1日- 2019年08月31日 |
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2017年3月期 | 2016年3月期 | 2015年3月期 | |
日本 | 1,549 | 1,527 | 1,319 |
米州 | 761 | 547 | 782 |
欧州 | 258 | 374 | 151 |
アジア・豪州 | 1,295 | 1,439 | 2,746 |
合計 | 3,865 | 3,888 | 4,999 |
国内投資
-自動運転技術の開発に対応する実験棟を東北事業所 (福島県郡山市) に新設したと発表した。セーフティー&インフォメーションシステム (SI) 事業の強化が目的。新設した実験棟は、画像認識など車両周囲の空間認識に必要なキャリブレーション技術の開発に対応する施設で、大型バスも収容できる。(2017年2月20日付日刊自動車新聞より)