Pirelli Tyre S.p.A. 2015年12月期の動向

業績

(単位:百万ユーロ)
2015年
12月期
2014年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 6,309.6 6,018.1 4.8 1)
営業利益 850.3 837.9 1.5 2)
部門別売上高
コンシューマータイヤ (乗用車、二輪車) 5,048.2 4,610.3 9.5 -
産業用タイヤ (バス、トラック、農機) 1,252.6 1,397.2 (10.3) -



要因
1) 売上高
-2015年12月期の全社売上高は前年比4.8%増の6,309.6百万ユーロ。主な増収要因はコンシューマー事業 (乗用車、二輪車) の売上拡大。増収分の一部は産業用事業 (バス、トラック、農機) の減収と為替によるマイナス要因に相殺された。コンシューマー事業では、主要地域全てにおいてプレミアム製品の売上を伸ばしたが、南米とロシアでノンプレミアム製品の需要が減少したことにより増収分の一部が相殺された。産業用事業の主な減収要因は、南米市場における需要減少と中国市場の減速。

2) 営業利益
-2015年12月期の営業利益は前年比1.5%増の850.3百万ユーロ。タイヤ事業の増益分は7.9百万ユーロで、その他事業の増益分は4.5百万ユーロ。主な増益要因は製品ミックスの改善、効率化、原材料価格の低下。新興市場での売上減少、インフレによる生産への影響、一時的な再編コスト増等により、増益分は一部相殺された。

事業再編
-2015年3月23日、中国化工集団 (China National Chemical Corporation (ChemChina))が同社を買収すると発表した。買収予定価格は71億ユーロ。ChemChinaは完全子会社であるChina National Tire & Rubber Co. (CNRC) を通じ、Camfin S.p.A及びその株主とCamfinが保有するPirelli株 (全株式の26.2%相当) を1株あたり15ユーロで買い取ること、またその後予定されているChemChina、Camfin、他投資家による残りの株式公開買付けに応じることに合意した。CNRCは、中国におけるスチールラジアルタイヤ、オフロードタイヤの主要サプライヤー。また中国最大の自動車用ブレーキホースサプライヤーで、輸出先は140カ国・地域を超える。(2015年3月23日付けChemChinaニュースリリースより)

売却

-2015年2月、トルコのIzmitにある同社のスチールコード工場をBekaertが買収したと発表。これにより、同工場は「Bekaert Kartepe Celik Kord Sanayi ve Ticaret A.S.」 に名称変更する。この手続きは、2014年12月に発表済みのイタリアのFigline工場、ルーマニアのSlatina工場、ブラジルのSumare工場の買収に次ぐもの。なお、この両社の買収契約には、中国山東省にあるPirelliの兗州 (Yanzhou) 工場も含まれている。取引額は225百万ユーロ。(2015年2月6日付プレスリリースより)

中期経営計画 (2013年12月期 - 2017年12月期)

-主な施策:

  • 2016年に乗用車向け売上に占めるプレミアムタイヤの売上比率を60%に引き上げる。 (2014年は55%)
  • 中型乗用車用タイヤ分野で機能性タイヤ (冬用タイヤ、セルフシールタイヤなど) を積極的に投入する。
  • 産業用タイヤにおいては、主要市場 (南米、中東、アフリカ) でシェアを確保する。
  • 2017年末までに46の新製品および改良製品を開発: 乗用車用14製品、二輪車用21製品、トラック用11製品
  • 設備投資額: 2014年~2017年に1,600百万ユーロを計画。

-2017年12月期の財務目標:

  • 営業利益率: 15%以上 (2015年実績: 14.6%)
  • 投資利益率 (ROI): 28% (2015年実績: 20.3%)



受賞

-2015年6月、Fordより 「Green Pillar Award」 を受賞。同社のサステイナビリティへの取り組み、高品質で高性能なタイヤを生産していることが評価されたもの。

-2015年11月、中国揚州の工場が 「Quality Through Excellence Award」 を受賞。

-2015年12月、ロシアのVoronezh工場の高い品質レベルが評価され、Fordより 「Ford Q1 Award」 を受賞。

研究開発費

(単位:百万ユーロ)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
全社 214.4 205.5 199.2
売上に占める割合 (%) 3.4 3.4 3.3



研究開発体制

-従来はプレミアム製品の研究開発に注力していたが、近年はサステイナビリティへの取り組みとして環境に優しい製品の開発を強化している。

共同開発

-同社とRosneftは、2014年に締結した了解覚書 (MOU) に照らして、ロシアのNakhodkaにおける合成ゴムの研究・生産・供給に関する技術パートナーに、ポーランドの化学原料メーカーSynthosを選出したと発表。同プロジェクトにおいて、3社は石油化学製品会社Far East Petrochemical Company (FEPCO) を活用する予定。同地域でスチレンブタジエンゴム (SBR) などゴム分野の開発をさらに進める意向。 (2015年4月16日付プレスリリースより)

製品開発

トラック用モニタリングシステム 「サイバーフリート (Cyber Fleet)」
-フリート顧客向けトラック用モニタリングシステム。タイヤに搭載している路面状態を監視するためのマイクロチップを利用した車両モニタリングシステムで、トラックの運行状況をリアルタイムで管理者に報告する。

グアユールゴムを原料としたタイヤ
-天然ゴムであるグアユールゴムを原料とした世界初の高性能タイヤを開発。2年の実験期間を経て、試作タイヤをMaserati Ghibli に装着し性能試験を行ったところ、石油由来原料を使用したタイヤと同じレベルの性能を発揮したという。

「Cinturato」 オールシーズンタイヤ
-2015年に新たな 「Cinturato」 オールシーズンタイヤを発売。従来の冬用タイヤを夏季に使用した場合に見られる性能ロスがないオールシーズンタイヤ。内部シール機能により、パンク時も走行を継続することができる。方向性トレッドパターンを有し、濡れた路面や雪道でも優れた性能を発揮、タイヤノイズも低減。

設備投資額

(単位:百万ユーロ)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
全社 391.4 378.1 413.1
売上に占める割合 (%) 6.2 6.3 6.8


-2015年12月期の設備投資は前年より増加。欧州、NAFTA地域、中国でプレミアムタイヤの生産能力を拡大したことが主な要因。

-2015年12月期の生産能力はコンシューマータイヤ75百万本、産業用タイヤ6百万本。産業用タイヤの100%、コンシューマータイヤの77%は新興国工場で生産されている。さらにロシア、メキシコ、ルーマニア、中国で生産能力を拡大し、製造コストが低い地域でのコンシューマータイヤの生産割合を2017年までに80%に引き上げる予定。

-中期経営計画によると、2017年までにコンシューマータイヤの生産能力を81百万本、産業用タイヤの生産能力を6.8百万本に引き上げる予定。