MICHELIN
(Compagnie Generale des Establissements Michelin S.C.A.) 2015年12月期の動向

業績

(単位:百万ユーロ)
2015年12月期 2014年12月期 増減率 (%) 要因
全社
売上高 21,199 19,553 8.4 1)
営業利益* 2,577 2,170 18.8
乗用車・小型トラックタイヤ部門
売上高 12,028 10,498 14.6 2)
営業利益* 1,384 1,101 25.7
トラックタイヤ部門
売上高 6,229 6,082 2.4 3)
営業利益* 645 495 30.3

*特別損益算入前

要因
1) 全社売上高
-2015年12月期の売上高は前年比8.4%増の21,119百万ユーロ (2014年は19,553百万ユーロ)。主な増収要因は以下の通り。

  • 為替の影響は1,453百万ユーロ (7.4%増)。米ドル、中国人民元、英国ポンド、タイバーツ、カナダドルなどに対するユーロ安が影響した。
  • 販売本数が市場の伸びを上回り、624百万ユーロの増収 (3.2%増)。
  • ブラジルの大手デジタルフリート管理・貨物セキュリティ会社Sascar、ドイツの卸売販売業者Ihle、英国のオンラインタイヤ小売業者Blackcircles.comを連結会社化したことにより256百万ユーロの増収
  • 価格変更に伴う減収分は687百万ドル (3.4%減)

2) 乗用車・小型トラックタイヤ部門
-2015年12月期の乗用車・小型トラックタイヤ部門及び関連事業の売上高は前年比14.6%増の12,028百万ユーロ (2014年は10,498百万ユーロ)。高級ブランドの売上安定が貢献したもので、特にMICHELINブランドは前年比6%増、17インチ以上のタイヤは前年比13%増。他ブランドは10%増。原材料価格の下落により競争は激化したが、同社は為替変動による利益を引き続き享受した。2015年に買収したIhleおよびBlackcirclesの連結化も売上増の要因。

3) トラックタイヤ部門
-トラックタイヤ部門及び関連事業の2015年12月期売上高は6,229百万ユーロ (前年比2.4%増)。為替の影響、年初からSascarを連結子会社化したこと、トラックタイヤ世界市場の上昇幅を上回る販売量の増加 (前年比0.3%増) などが主な増収要因。

欧州事業の再編

-2015年11月、同社は欧州事業の再編を発表。265百万ユーロを投じて、生産設備および物流ネットワークをアップグレードする。同社の欧州事業は全社売上高の40%を占め、生産拠点40カ所、従業員数65,000名以上を抱える。(2015年11月3日付プレスリリースより)

<イタリア>
-同社のイタリア拠点は欧州生産の10%以上を占め、従業員数は4,000名以上。同社はイタリアで5年間のプロジェクトを立ち上げた。180百万ユーロを投じてCuneo拠点とAlessandria拠点を増強し、2020年までに同国における乗用車・バン・トラック用タイヤの生産量を大幅に引き上げる計画。

  • Cuneo拠点では、乗用車・小型トラック用タイヤの生産量を2020年までに20%増加させる。
  • Alessandria拠点ではトラック用タイヤの生産に特化し、生産量を同年までに20%引き上げる計画。同拠点の再生タイヤ事業は2016年半ばまでに終了する。
  • Fossano拠点 (半製品を生産、従業員400名) は、2016年下期に閉鎖する予定。

<英国>
-英国の大手タイヤメーカーであるMichelin Tyre PLCは、1905年操業、現在の従業員数は2,500名。乗用車・小型トラック用タイヤ、再生タイヤなどの成長市場に注力し、2020年までに85百万ユーロを投じる計画。

  • Ballymena拠点 (トラックタイヤ生産) を2018年半ばまでに終了することが提案がされた。同工場には、従業員860名が勤務している。
  • Dundee拠点 (乗用車タイヤ生産) には69百万ユーロを投じる。これにより、2020年までに生産量は30%増加するとみられる。

<ドイツ>
-Pneu Laurent拠点 (Oranienburg) の操業を停止し、 2016年末までにフランスのAvallon拠点に移管する。

海外事業

<インドネシア>
-2015年5月、Barito Pacific Groupと合弁で環境に優しいタイヤ原材料生産会社をインドネシアに設立。同社の投資額は55百万ドルで出資比率は47%。スマトラ、ボルネオ、大メコン圏の森林破壊地88,000haでゴム植林事業を展開する予定。

新製品

CrossClimate 冬タイヤとしても認定された夏タイヤ
-2015年、「MICHELIN CrossClimate」 タイヤ (雪道走行用としても認定された夏タイヤ) を3年の開発期間を経て発売。新ゴム配合技術やトレッドデザインにより、ドライ、ウェット、雪面走行でも高いグリップ性能と安全性を実現するとともに、EverGripトレッド自己再生技術も採用。販売開始直後から予測を上回る高い売り上げを達成。

-2015年3月、「MICHELIN CrossClimate」 を欧州で発売した。両立が難しいとされてきた夏タイヤと冬タイヤ技術を一体化することに成功。欧州ドライバーの65%が通年同じタイヤを使用しており、この革新的なタイヤ技術により最適な方法で安全性を高めることができる。2015年9月時点での販売本数は2百万本。フランクフルトモーターショーではOEM、販売会社からも高い関心を集めた。売上予測は当初の予測より33%引き上げられた。

BFGoodrich オールテレーンタイヤ
-2015年6月、BFGoodrichオールテレーンタイヤブランドより、「BFGoodrich All-Terrain T/A KO2」 タイヤが発売された。高いグリップ性能、優れたロバスト性能、耐久性を実現したタイヤで、2015年7月1日に欧州で発売。Mexican Bajaなどのオフロードレースコースでも性能が実証された技術をベースに開発されたタイヤで、CoreGard技術を採用した初のオールテレーンコンシューマータイヤ。サイドウォールの耐傷性は卓越している。

-BFGoodrichブランドはKO2およびCOMP-2シリーズのリニューアルによりマーケットシェア奪回を目指す。北米、南米、アフリカ、中東、東南アジアで発売された中型トラック用タイヤの販売が好調。

SIAMTYRE Highway Radial 大型トラックタイヤ
-2015年3月、タイSIAMTYREが東南アジアで 「SIAMTYRE Highway Radial」 を発売、廉価版タイヤ市場に参入した。平均的なバイアスタイヤに比べ製品寿命、安全性、燃費性能を向上したラジアルタイヤ。1987年に設立されたSIAMTYREは高品質、高信頼性タイヤを供給。国際的な知名度を持つローカルブランド。

Uniroyal カナダ市場向けトラックタイヤ
-2015年4月、Uniroyalはカナダで6種の新型タイヤを発売すると発表した。長距離走行、市内走行、オンロード/オフロード走行全てに適した低価格タイヤ。うちRS20とLS24タイヤは優れた低燃費性能でEPA (Environmental Protection Agency) 基準をクリアし、SmartWayプログラム認定を取得。

高付加価値トラック・バスタイヤ 「X One」 シリーズ
-2015年9月、日本ミシュランタイヤは高付加価値トラック・バス (TB) タイヤ 「X One」 シリーズの販売を拡大する。X Oneはトラックの後輪に装着されている2本のタイヤ (ダブルタイヤ) を1本にすることができるワイドシングルタイヤ。2016年中に新商品を投入すると ともに、軽量化によって積載量が増やせるメリットを運送会社などトラックユーザーに広く伝える。これによりX Oneの販売量を17年をめどに現状比5倍に引き上げたい考えだ。 (2015年9月15日付日刊自動車新聞より)

受注

Pilot Super Sportタイヤ
-2015年9月、「MICHELIN Acoustic technology」 を採用した 「MICHELIN Pilot Sport 3」 タイヤを発売。タイヤ内部から発生する転がりノイズを削減し、15~20%の防音性能を実現することで高いタイヤ性能と快適な乗り心地を両立させた。タイヤ内部のポリエチレンフォームが凹凸路面走行時に発生するノイズを吸収する。量産開始前ではあるが、欧州ではすでにMercedes AMGの 「S-Class」 セダン及びクーペ向けに5,000本が供給された。

-2015年5月、BMWの新型 「X5 M」 および 「X6 M」 向けに、ホイールサイズ21インチの同社製タイヤ 「MICHELIN Pilot Super Sport」 を独占供給すると発表した。タイヤサイズは、フロントが285/35ZR21 105Y、リアが325/30ZR21 108Y。このウルトラハイパフォーマンスタイヤには、マルチコンパウンドのトレッドや、可変接地パッチ 「Variable Contact Patch 2.0」 など、同社のさまざまな技術が用いられている。(2015年5月20日付プレスリリースより)

-2015年5月、Porscheの新型 「911 GT3 RS」 に、同社のウルトラハイパフォーマンスタイヤ 「MICHELIN Pilot Sport Cup 2」 が採用されたと発表した。タイヤサイズは、フロントが265/35 ZR20、リアが325/30 ZR21となる。(2015年5月20日付プレスリリースより)

Energy Saverタイヤ
-2015年3月、「MICHELIN Energy Saver」 がFord 「Focus Electric」 2015年モデルのOEタイヤとして装着される。同モデルにはタイヤに加え、MICHELINガイドをプレロードしたSYNC2インフォテイメントシステムが搭載される。「Focus Electric」 全車に採用される 「MICHELIN Energy Saver」 215/55 R 17タイヤは、高い安全性、快適性、操作性を実現するとともに、低転がり抵抗により、電池寿命、航続距離を向上する。

-2015年5月、同社製タイヤ 「MICHELIN Energy Saver +」 がPeugeotの1.6L BlueHDiエンジンを搭載した新型 「208」 に標準装着されたと発表した。また、低転がり抵抗タイヤ 「MICHELIN Energy Saver +」 および 「MICHELIN Primacy」 を、Peugeot 「208」、「308」、「508」、「2008」、「3008」、「5008」 向けにも納入しているという。(2015年5月5日付プレスリリースより)

KLEBER SUVおよびクロスオーバー向けタイヤ
-2015年10月、KLEBERブランド初のSUV、クロスオーバーモデル用タイヤが発売された。日常走行の安全性を高めたオールシーズンタイヤで、欧州3工場 (フランスCholet工場、Roanne工場およびポーランドOlsztyn工場) で生産されている。補強ケーシングが都市部走行における排水性能を高め、ハイドロプレーニング現象を抑制。分散された剛性、緩やかな摩耗速度、あらゆる路面環境の高グリップ性能が製品寿命を向上。3PMSF* 、M+S**表示のオールシーズンタイヤは夏用としても冬用としても認定されており、一年を通して使用できる。高いロバスト性、実用性、コストパフォーマンスを実現、18サイズ (幅) 展開。日産 「Qashqai」、VW 「Tiguan」、トヨタ 「RAV4」、Skoda 「Yeti」 など、SUVおよびクロスオーバー用に適している。

MICHELIN X Line Energy転がり抵抗タイヤ
-2015年11月、同社製タイヤ 「MICHELIN X Line Energy Front」 (タイヤサイズ385/55R22.5) と 「MICHELIN X Line Energy Drive」 (タイヤサイズ315/70R22.5) が、2016年1月に出荷開始となる 「Mercedes-Benz Actros」 の新型トラックに採用されたと発表した。これらのタイヤは転がり抵抗性能 「AAA」 を獲得しており、「BBA」 グレードの 「MICHELIN X Line Energy」 タイヤに比べて、100kmの走行で1Lの燃料消費削減、2.66kgのCO2削減が可能になるという。(2015年11月20日付プレスリリースより)

研究開発費

(単位:百万ユーロ)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
合計 689 656 643

研究開発体制

-研究開発費の年間予算は700百万ユーロ超、研究開発人員は6,000名、特許数は過去10年間で3倍に増加。

-同社は下記3分野の研究開発を進めている:
1) 将来の車両: 燃料電池や自律走行車プロジェクトなど
2) 将来のモビリティ: 高度道路交通システム (ITS) や相乗り、カーシェアリングなど、新たな利用トレンド支援とタイヤソリューションの統合
3) 都市部のモビリティ改革: 2030年までに世界人口の60%が都市部に居住すると予想した場合の主要課題

技術提携

金属用3Dプリンター
-2015年9月、高付加価値機械メーカー大手のFivesと合弁でFives Michelin Additive Solutionsを折半出資で設立。新会社はClermont-Ferrand (フランス) に本拠を置き、金属用3Dプリンター技術を使った産業用機械の開発、生産、販売をグローバルに手掛ける。金属用3Dプリンター市場規模は2014年時点で600百万ユーロに達しており、自動車、宇宙、ヘルスケアを含む様々な分野で販売拡大が期待される。

研究開発拠点

  • リサーチセンター: Ladoux (フランス)、群馬県太田市 (日本)、Greenville (米国)
  • 試験場: Almeria (スペイン)

-2015年、Ladoux (フランス) にあるグローバルR&Dセンター開業50周年に伴い、Urbaladに新センターを設立。2018年までに約270百万ユーロを投資してセンターの開発機能をさらに強化する予定。

Clermont-Ferrand本社の再編
-2016年3月1日、Clermont-Ferrand本社 (フランス) の事業再編計画を発表した。再編によりグループの研究開発能力、先進技術分野、および意思決定などの本社機能を強化する。

-新投資計画: 2020年までに90百万ユーロを投資する

  • 2013年に着手した産業用タイヤ事業強化戦略に基づき、Clermont-Ferrand拠点を先進技術や高付加価値製品分野の中核として位置付ける。近隣に開設したLadouxグローバルR&Dセンターとのシナジー効果を狙う。
  • Combaude拠点は新製品の開発サポート業務に注力する。再生タイヤモールド、繊維補強材、特殊な生産ツールなど、産業・技術革新を目的とした設計開発分野を強化する。物流拠点としての機能も維持。
  • Cataroux拠点に設備投資し、レースタイヤ及び関連部品を中心とした生産技術の研究開発能力をさらに強化する。
  • Gravanches拠点に投資し、高性能乗用車やバン向けタイヤの最先端技術を進化させる。

-2018年末までに開発部門を再編

  • 研究開発人員はグループ全体で2,400名。フランスの1,100名のうち、970名がClermont-Ferrand拠点に在籍。
  • グループ全体の生産技術向上を目的とし、Manufacturing Engineering (ME)に特化した子会社を設立。本拠をClermont-FerrandのCarmesに置く。新会社はグループ内の開発方針管理、調整を担当するとともに、Ladouxセンターと協力して革新技術の開発に携わる。
  • この再編により2018年12月末までにClermont-Ferrandで164名の人員削減 (任意退職) を見込む。

設備投資費

(単位:百万ユーロ)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
全社 1,804 1,883 1,980


-2015年は3工場で生産能力を拡大:

  • Itatiaia (ブラジル) 乗用車・小型トラックタイヤ
  • Chennai (インド) トラックタイヤ
  • 瀋陽 2拠点 (中国) 現地での乗用車・トラックタイヤ生産能力の大幅な拡充

-生産能力増強、生産性向上、製品ライン刷新などのプロジェクトを下記拠点で実施:

  • 乗用車・小型トラックタイヤ: Roanne (フランス)、瀋陽 (中国)、Pirot (セルビア)、インドネシア
  • トラックタイヤ: Tours および La Roche-sur-Yon (フランス)、瀋陽 (中国)、タイ

-2015年11月、欧州事業の再編に265百万ユーロを拠出すると発表。
>>> 欧州事業の再編を参照

-新興国市場における生産性を高め、メガプラントの能力をさらに拡大することにより、乗用車・トラックタイヤ工場の平均生産能力を2018年までに96,000トンに引き上げ、競争力をアップする。これらの工場の年間生産量は2020年までに合計400,000トンに達する見通し。