ZF Friedrichshafen AG 2009年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ユーロ)
  2009年
12月期
2008年
12月期
増減率(%) 要因
グループ
売上高 9,371 12,501 (25.0) -
部門別売上(自動車関連)
乗用車ドライブライン部門 1,647 2,011 (18.1) -
シャシー部門 1,624 1,951 (16.8) -
商用車・特殊ドライブライン部門 1,166 2,235 (47.8) -
オフロード車両用ドライブライン・
アクスルシステム部門
1,128 1,955 (42.3) -
パワートレーン・
サスペンション部品部門
1,832 2,387 (23.3) -
ラバー・メタルユニット 378 489 (22.7) -
電子部品部門 208 32 - -
ステアリング部門
(ZF Lenksysteme GmbH)
1,099 1,297 (15.3) -

事業概況

乗用車ドライブライン部門
-乗用車用トランスミッションを約100万基生産。
-ZF Getriebe GmbHのドイツSaarbruecken工場ではATを約723,000基販売。売上高は、1,377百万ユーロ。
-ドイツBrandenburg工場でのMT、DCT販売数量は、前年比21%減の157,000基。売上高は、10%減にとどまって241百万ユーロで、主に高品質DCTへシフトしたことが要因。
-中国上海工場での5速・6速ATの生産は92,000基で、前年比26%の増加。
-大幅な売上高の減少により、Saarbruecken工場とBrandenburg工場で数ヶ月間、労働時間を短縮。

シャシー部門
-上半期、深刻な市場の低迷に対して、経費節減、雇用凍結、労働時間短縮など全ての可能なコスト削減を実施して対応。
-市場の経済苦境にも関わらず、アクスルシステム事業では、中国長春や瀋陽、南アフリカRosslyn拠点での売上高や販売数が予想を超え、市場の落ち込みほどの減少はなかった。
-アクスルシステム事業では、2010年、2011年に予定されている自動車のモデルチェンジの開始を控えて、現在のモデルの段階的廃止がすでに開始されたため、その影響も加わった。
-ギアシフトシステム事業の売上高は減少した。しかしながら、自動車購入助成制度や製品群の変更によりその減少幅は自動車業界全般に比べかなり小さかった。

商用車・特殊ドライブライン部門
-トラックドライブライン技術事業ユニットの売上高は、29%減の705百万ユーロ。
-バスドライブライン技術事業ユニットの売上高は、20%減の320百万ユーロ。
-ピックアップ/バンドライブライン技術事業ユニットの売上高は、25%減の77百万ユーロ。
-特殊ドライブライン技術事業ユニットの売上高は、13%減の186百万ユーロ。

オフロード車両用ドライブライン・アクスルシステム部門
-乗用車アクスルドライブ事業ユニットの売上高は、これまで数年にわたって2桁成長が続いていたものの、30%減の253百万ユーロ。
-商用車アクスルシステム事業ユニットの売上高は、1%増の247百万ユーロ。
-商用車シャシーモジュール事業ユニットの売上高は、商用車メーカーの大幅な生産縮小により48%減の166百万ユーロ。

パワートレーン・サスペンション部品部門
-パワートレイン部門の売上高は、25%減の929百万ユーロ。
-上半期、乗用車用デュアルマスフライホイール、XTendクラッチなどの製品の売上高は大幅に減少。だが、下半期、自動車購入助成制度の恩恵を受け相殺された。
-サスペンション部門の売上高は、24%減の1,007百万ユーロ。

電子部品部門
-自動車関連の売上高が占める割合は47%。
-同部門は、西欧を中心とした自動車電子部品セグメントの地理的分布状況から見れば、よく持ちこたえたといえる。

ZF Lenksysteme GmbH
-金融・経済危機の影響を避けられず売上高は、15%減。第1四半期が特に落ち込んだ。
-売上高は、西欧で減少したが中国では大幅に増加。
-商用車ステアリングシステム・コラム事業ユニットの売上は景気後退の影響を受け、年間を通して不振だった。
-ドイツ国外での売上高は約9%減。
-事業ユニット別売上高:乗用車ステアリングシステム64%、商用車ステアリングシステム・コラム10%、ステアリングポンプ12%、乗用車ステアリングコラム14%。

受注

-2009年のプレスリリースによる主な受注は以下の通り。
メーカー・モデル 搭載部品
Nova Bus 4速AT「Ecomat 4」、ローフロアアクスルシステム
Iveco「Daily Agile」 6速トランスミッション「eTronic」

Porsche「Panamera」

7速デュアルクラッチトランスミッション
マツダ「マツダ3」 クラッチ板
Daimler「Mercedes Benz SL 63 AMG Roadster」 湿式多板クラッチ
BMW「760i」 8速AT、連続可変ダンパー「CDC」、
油圧式アクティブロールスタビライザー「ARS」、
ラック&ピニオン式のパワーステアリング「Servotronic」、
アクティブステアリング
三菱ふそう「Canter Euro 5」 6速MT「Ecolite」
BMW「X1」 6速MT、6速AT、サスペンション部品、ダンパー、樹脂部品、
ラック&ピニオン式ステアリングシステム、ステアリングコラム
Bentley「Mulsanne」 8速AT、CDCダンパー、サスペンション部品
GM「Opel Astra」 「FlexRide」システム
GM「Chevrolet Equinox」 EPS(電動パワーステアリング)
Audi「TT Coupe」 EPS(電動パワーステアリング)
Volvo India「B7R」 6速AT「Ecomat」
Tata フロントアクスル「RL 85 A」

事業再編

-効率化と競争力の強化のため組織の変革を進めている。多くの海外工場が統合され、採算が取れないものについては閉鎖が進められてきている。ドイツでは、 ラバー・メタルユニットがシャシー部門に統合された。この組織の改組、同社事業を全般としてアジアにシフトさせていることの表れ。2009年、アジアでは 約500人の従業員を追加で雇用している。(2009年12月15日プレスリリースより)

開発動向

研究開発費

(単位:百万ユーロ)
  2009年12月期 2008年12月期 2007年12月期

合計

663 697 694

研究開発体制

-研究開発人員は約5,300名。ドイツFriedrichshafenにあるCorporate Research and Development にエンジニアと技術者が約750名。チェコPilsen、中国上海、東京に150名が在籍。

研究開発拠点

主要エンジニアリングセンター ドイツFriedrichshafen
ドイツDielingen
ドイツSchwaeb.Gmuend
ドイツPassau
ドイツSchweinfurt
米国Northville
エンジニアリングセンター チェコPlzen
中国上海
東京

特許

-発明の開示は700件強、前年をわずかに下回った。

研究開発活動

-大型車のハイブリッドシステムについて、路線バス用を最優先し開発を進める。複数のハイブリッドユニットの技術提案に取り組み、事業の本格化を目指す。 大型トラックなど長距離運送用の車両については、ハイブリッド化しても高い燃費改善を見込みにくい、といった技術的な課題がある。こうしたことから、発進 停止が頻繁で電気駆動ユニットの搭載による確実なメリットを見込める路線バス用に開発資源を集中する。合わせて、電気自動車の路線バスへの技術展開をにら みながら優位性の確立を目指す。(2009年9月7日付日刊自動車新聞より)

技術提携

-Continentalと商用車用ハイブリッドドライブシステムの開発および生産に向けた、戦略的業務提携に合意。同社はパラレルハイブリッドトランス ミッションを、Continentalはリチウムイオンバッテリーを供給する。量産開始は2011年の予定。(2009年5月6日付プレスリリースより)

-ISE Corporationと北米市場向け商用車用ハイブリッドシステムに関して、共同で開発と供給を行うことで合意。今回の合意により、ISEが保有する統 合エンジニアリング、サブシステム組立、販売、サービスサポートといった分野に関する技術や機能を、同社は活用していく考え。一方のISEは、ZF製品を 取り入れたパラレル式ハイブリッドシステムを開発し、自社ブランドで販売する計画。また、北米における同社製品の販売はISEが担当する。(2009年6 月23日付プレスリリースより)

製品開発

湿式多板クラッチ
-ZF Sachsは、HCCと呼ばれる新型の湿式多板クラッチを開発。このクラッチは、トルクコンバーターに代わってATのクラッチハウジング内に置かれ、素早いギアチェンジを可能にする。(2009年2月10日付プレスリリースより)

ハイブリッドユニット
- 高級乗用車をターゲットにハイブリッドシステムの技術提案を本格化する。このほど量産を開始した8速 ATをベースに開発したハイブリッドユニットで、仕様に応じ5-25%燃費を改善可能な機構を3種類設定した。最も燃費改善率の高いフルハイブリッド機構 をV型6気筒エンジン・2・5リットル車に組み合わせた場合、CO2排出量は欧州走行モード(NEDC)で127グラム/キロメートルに低減できると試算 する。駆動システムは基本的にAT本体の換装のみでハイブリッド化に対応という搭載性などを生かして、拡販に結びつける。(2009年8月6日付日刊自動 車新聞より)

8速オートマチックトランスミッション、7速デュアルクラッチトランスミッション
- 新型8速オートマチックトランスミッション(AT)および7速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)の供給を開始した。アイドリングストップ機能 を付加したことで、燃料消費量を約5%低減できるという。8速ATは油圧インパルスオイルタンク(HIS)を搭載し、エンジン停止中もトランスミッション への油圧を一定に保つ。一方の7速DCTはノンリターンバルブを装備し、油圧クラッチシステムのオイル逆流を防止する。(2009年8月13日プレスリ リースより)

小型商用車用ハイブリッドシステム
- ベース車に対し燃費を10・15モードで30%向上可能な小型商用車のハイブリッドシステムの実用化にめどをつけた。同クラスのハイブリッド車(HV)は 従来、排ガス性能には優位性がみられる半面、燃費改善率はハイブリッド化にともなう重量アップとの差し引きできわめて低いレベルにとどまっている。同社は 駆動用と発電用のモーターを兼用する1モーター式のユニットに、エンジンおよびAMT(MTをベースとした自動変速機)との協調制御を組み合わせることに よってコストを抑えながら燃費を高める。日欧を中心にニーズを開拓し、2013年の車載を目指す。(2009年8月18日付日刊自動車新聞より)

超軽量繊維複合材ダンパー
-2009 年フランクフルト・モーターショーに超軽量繊維複合材ダンパーの試作品を発表。軽量素材を使い、機能を統合することで、重量を現行のアルミダンパーの半分 に抑えることが出来る。開発はZF Sachsで、ストラット式サスペンションに統合ホイールキャリアを組み合わせている。つまりピストンロッド、内部部品、モジュールアッセンブリーの金属 部分を軽量素材にかえ、機能の統合により軽量化を実現している。なお、ヨーロッパの路面状況を想定した負荷計算を行ったところ、このプラスチックダンパー は軽量でありながら、最新のダンパー特性をすべからく備えていることが証明された。(2009年9月11日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ユーロ)
  2009年12月期 2008年12月期
グループ 516 939
乗用車ドライブライン部門 136 187
シャーシー部門 64 71
商用車・特殊ドライブライン部門 87 258
オフロード車両用ドライブライン・アクスルシステム部門 42 89
パワートレーン・サスペンション部品部門 60 168
ラバー・メタルユニット 7 18
電子部品部門 7 2
ステアリングシステム部門
(ZF Lenksysteme GmbH)
52 82

乗用車ドライブライン部門
-ドイツSaarbruecken拠点の8速ATやドイツBrandenburg拠点のDCTの生産能力増強に向けた投資が同部門における最大の投資項目。

シャシー部門
-ドイツDiepholz、Kreuztal、Damme、Dielingen、中国上海、米国Duncan、Lapeer、スロバキアLevice拠点の新プロジェクトや生産能力拡大に投資。

商用車・特殊ドライブライン部門
-現在進行中のプロジェクトのための土地、工場、機械設備の追加やドイツFriedrichshafen拠点の技術や建物の管理のための投資。その他、ブラジルSorocabaハンガリーEger、フランスBoutheon拠点に投資。

オフロード車両用ドライブライン・アクスルシステム部門
-主にドイツThyrnau、Passau、Dielingen、中国柳州、オーストリアSteyr拠点の能力を増加。

パワートレーン・サスペンション部品部門
-主にドイツSchweinfurt、スロバキアSlovakia、ブラジルSao Bernardo do Campo拠点の進行中または新プロジェクトへの能力を増強。