ZF Friedrichshafen AG 2008年12月期の動向

ハイライト

業績 (単位:百万ユーロ)
  2008年
12月期
2007年
12月期
増減率(%) 要因
ZFグループ
売上高 12,501 12,649 (1) 1)
部門別売上(自動車)
乗用車ドライブライン部門 2,011 2,070 (3) 2)
シャシー部門 1,951 2,285 (15) 3)
商用車・特殊ドライブライン部門 2,235 2,085 7 4)
オフロード車両用ドライブライン・
アクスルシステム部門
1,955 1,876 4 5)
パワートレーン・サスペンション部品部門 2,387 2,386 0 6)
ラバーメタル部門 489 521 (6) 7)
電子部品部門(注) 32 - - 8)
ステアリング部門(ZF Lenksysteme GmbH) 1,297 1,313 (1) 9)
注: 2008年11月のCherry Corp.買収により新たに加わった部門

分野別売上比率 (%)
分野 2008年12月期 2007年12月期
乗用車、軽商用車 (6トン以下) 56 62
商用車 (6トン以上) 29 24
その他 (建設、農業、船舶、航空、その他) 15 14

要因
1)
-全社の売上高は前年度比1%減の12,501百万ユーロ。
-最初の9ヶ月は好調を維持したものの、特定分野での急落など第4四半期に落ち込んだ。
-乗用車およびトラック向け部門、また建設機器部門の落ち込みは特に激しかった。

2)
-乗用車ドライブライン部門の売上高は、3%減の2,011百万ユーロ。売上減の主たる要因は、第4四半期の乗用車生産台数減少による。
-ZF Getriebe GmbHの Saarbrucken工場は、980,000基のATを生産。売上は1,786百万ユーロ。
-Brandenburg工場のMT生産は、前年20%減の199,000基。売上は、267百ユーロ。
-2008年、中国の上海工場では5速と6速ATをあわせて73,000基生産。
-Saarbrucken工場で新型8速トランスミッションの生産準備。量産は2009年より開始。
-2008年、Brandenburg工場で、Porsche向けに開発した7速DCT(デュアルクラッチ変速機)「7DT」の生産を開始。

3)
-シャシー部門の売上は、北米顧客の危機的状況によりさらに悪化。前年比15%減の1,951百万ユーロ。
-長春(中国)、Edinburgh Parks(オーストラリア)、Rosslyn(南ア)のアクスル工場は、市場軟化にもかかわらず売上高と生産数が計画を上回った。

4)
-商用車及び特殊ドライブライン部門の売上高は、7%増加し2,235百万ユーロ。
-最初の9ヶ月は売上好調を維持したものの第4四半期に大きく下降した。特に大型車用トランスミッションの落ち込みが大きかった。
-トラックドライブライン製品の売上は10%増の1,705百万ユーロ。
-バスドライブライン製品の売上は2%増の399百万ユーロ。
-ピックアップ/バンドライブライン製品の売上は22%減の103百万ユーロ。

5)
-オフロード車両用ドライブライン及びアクスルシステム部門の売上は、4%増の1,955百万ユーロ。
-しかし、同部門も年度後半で大きく売上を落とした。特にトラック用機器や建設機器の売上が減少。
-乗用車アクスルドライブ製品の売上は、3%増の359百万ユーロ。
-2008年、新開発のリアアクスルドライブ「Vector Drive」の生産準備を整え、立ち上げた。
-商用車用アクスルシステム製品の売上は、12%増の245百万ユーロ。
-商用車シャシーモジュール製品の売上は、5%増の318百万ユーロ。

6)
-パワートレーン及びサスペンション部品部門の売上は、前年とほほ同じで2,387百万ユーロ。
-ドイツでは年初にZF Sachsが、引き続き好調な商用車市場とドイツ自動車メーカーの輸出好調の恩恵を受けた。
-パワートレーン部品の売上はわずかに上昇し2%増の1,240百万ユーロ。NAFTA地域では大きく売上減。その一方で、スポーツカー向けの流体力学的油冷クラッチ(Hydrodynamically Cooled Clutch)やデュアルウエットクラッチ等の新製品が市場に定着。
-サスペンション部品の売上は、1%減の1,318百万ユーロ。連続可変減衰力調整システム(CDC)は市場に定着。今後同システムは、商用車をはじめ中型乗用車やコンパクトカーなどにも順次採用される。
-2008年春、スロバキアのVevice工場でサスペンション部品の量産開始。

7)
-ラバーメタル部門の売上は、6%減の489百万ユーロ。

8)
-2008年11月の買収によって統合した電子部品部門の売上は、連結決算へは買収時期に応じ32百万ユーロ算入。

9)
-Robert Bosch GmbHとの合弁企業ZF Lenksysteme GmbH(ステアリング部門)の売上は、第4四半期の不況によりわずか1%増の2,594百万ユーロ。折半分の1,297百万ユーロを同社売上として計上。
-ドイツ国外の売上は約3%減。
-商用車用ステアリングシステムの売上は約5%増。

売上構成は以下の通り:
乗用車用ステアリングシステム 58%
商用車用ステアリングシステム及びコラム 16%
ステアリングポンプ 13%
乗用車用ステアリングコラム 13%


受注
<BMW>
-2008年1月、BMW X3向けにマニュアルトランスミッション及びオートマチック6速トランスミッションを供給。また、同モデル向けにZF Lenksysteme製のアクスルモジュール一式と油圧式ラックアンドピニオン式ステアリングを供給。

-2008年2月、ZF Lenksystemeのアクティブステアリングが「BMW X5」にオプション搭載されると発表。

-2008年10月、ZF Sachsの乗用車用の改良型CDC(連続減衰力制御)可変ダンパーが、BMW「7 シリーズ」の「ダイナミック・ダンピング・コントロール」に採用されたと発表。

<Mercedes-Benz>
-「Mercedes C-Class」に可変ダンパーを標準装備として供給。また「Mercedes C-Class」のディーゼルモデル向けには、デュアルマスフライホイールを供給。

<Daimler Trucks North America>
-2008年2月、ZF Sachsは、Daimler Trucks North America(旧Freightliner)から大型トラック用シャシー/キャブショックアブソーバー(ツインチューブ)の供給プログラムを受注した発表。供給するショックアブソーバーはDaimler Trucks North America製の全量産車種に搭載される。

<Opel>
-2008年11月、ZF Sachsが新型「Opel Insignia」のアダプティブシャシー用にCDC(連続減衰力制御)可変ダンパーを供給すると発表。

<Volkswagen>
-2008年11月、 ZF Lenksystemeは第3世代のServolectric電動パワーステアリングを新型「Golf VI」に標準装備として供給すると発表。

<Porsche>
-2008年、Brandenburg工場で、Porsche向けに開発した7速DCT(デュアルクラッチ変速機)「7DT」の生産を開始。

<Iveco>
-2008年5月、 同社の駆動システムがIveco中型トラック「Eurocargo」の次世代モデルに採用されたと発表。新型「Eurocargo」向けに、エンジンクラスと総重量に合わせ、「Ecosplit」ないし「Ecomid」シリーズのマニュアルトランスミッションを提供。加えて、オートマチックトランスミッション「AS Tronic lite」をオプション設定。

<富士重>
-2008年4月、 同社のデュアルマスフライホイール(DMF)とクラッチが富士重工(スバル)の「ボクサーディーゼルエンジン」向けに採用されたと発表。ボクサーディーゼルエンジン搭載車は、「Legacy」「Outback」の2モデル。

<日産>
-2008年4月、新たに日産が北米市場に投入する小型商用車向けに6速ATを供給すると発表。受注した6速ATは、Gainesville工場(ジョージア州)で生産、日産のCanton工場(ミシシッピ州)に納入。2010年からの量産開始を目指す。

<北汽福田汽車>

2008年9月、Beiqi Foton Motor (北汽福田汽車)へマニュアルトランスミッション5S400の供給を行うと発表。この新型の小型商用車は2009年から中国国内で販売される予定。


企業買収
-2008年11月、Cherry Corporationを買収。Cherryは、自動車向けスイッチシステム、センサー、コントロールユニット等のメーカー。買収後、ZFグループの「電子部品部門」を構成する事業会社ZF Electronics GmbHとなる。この買収に伴い、Cherryが所有するドイツ、チェコ、メキシコ、香港、中国本土、インドの工場は同社傘下の生産拠点となる。

開発動向

研究開発費 (単位:百万ユーロ)
  2008年12月期 2007年12月期 2006年12月期

合計

697 694 602


研究開発体制
-世界の研究開発拠点で5,100名が従事。750名のエンジニア・技術者のほか、2008年11月以降新たに加わった電子部品部門の220名がドイツFriedrichshafen市にあるCorporate Research & Developmentに在籍。


製品開発
アイドルストップ機能付き8速AT
-エンジンが止まった車両を再発進させる際にトランスミッションのシフト機構に迅速に油圧オイルを注入する「衝撃オイル蓄圧タンク(hydraulic impulse oil storage )」はアイドルストップ機能を可能にし、5%の燃費改善につながる。これに加え、新開発の8速ATは従来の省エネタイプの6速ATにくらべてもさらに6%燃費が向上する、その結果、燃費は合計11%改善できる。

7DTデュアルクラッチトランスミッション
-Porscheと共同開発した7DTデュアルクラッチトランスミッションを初公開。これは高エンジン回転が必要な車両に極めて適しており、牽引力を中断することなく変速が出来るため、加速性にすぐれ、省燃費にもつながる。450トルクと700トルクの二つのバージョンがある。

乗用車用マイルドハイブリッド
-8速ATの開発中にハイブリッドバージョンがすでに検討されていた。基本モデルと比較して、電気のみで走行できるフルハイブリッドは市内走行で最大30%、また、マイルドハイブリッドは最大15%燃費が削減できる。

新型オートマチックトランスミッション「PowerLine」
-2008年9月、小型(積載量15tまで)商用車用の新型オートマチックトランスミッション「PowerLine」を開発。PowerLineは同社初の小型商用車用6速パワーシフトトランスミッションで、600-1,000 Nmのトルク容量に対応し、ガソリン・ディーゼルエンジン車に使用可能。2010年からPowerLineの量産に入る予定で、日産が初の供給先となる。(2008年9月18日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額 (単位:百万ユーロ)
  2008年12月期 2007年12月期 2006年12月期

有形資産への投資額

939

584

469

グループ全体
-連結グループベースの資産、工場、設備投資総額は、前年比約60%増加して939百万ユーロ。
-同社が対象とする全業種の業績は年初順調だったこともあり、複数の拠点での生産能力増強を重点的に進めた。

乗用車ドライブライン部門
-Saarbrucken工場での新型8速AT、Brandenburg工場でのデュアルクラッチトランスミッションの量産準備と生産能力拡大に投資。

シャシー部門
-主としてドイツ、上海(中国)、Spartan(南ア)の拠点の生産能力拡大、新製品立上げに投資。

商用車及び特殊ドライブライン部門
-Friedrichshafen(ドイツ)、Eger(ハンガリー)、Sorocaba-SP(ブラジル)およびBoutheon(フランス)の拠点に重点的に投資。

オフロード車両用ドライブライン及びアクスルシステム部門
-同部門では ドイツの3拠点Passau、ThyrnauおよびDeilingen、Steyr(オーストリア)、Sorocaba-SP(ブラジル)への投資を行った。

パワートレーン及びサスペンション部品部門
-現行品やトルクコンバーターなどの新製品の生産能力拡大に投資。対象拠点は、Schweinfurt(ドイツ)、Trnava及びLevice(スロバキア)、Saltillo(メキシコ)
-2008年、複数のハイブリッドモジュールやトルクコンバーター生産工場が操業開始。
-2008年、8速AT用新型トルクコンバーターの生産工場を建設。
-2008年、ドイツのSchweinfurtにハイブリッド車用モーターモジュールの生産拠点を開設。Mercedes-Benz S-Class等に供給する予定。このスターターモーターは「DynaStart」と呼ばれ、ZF Sachsが生産を担う。(2008年5月7日付プレスリリースより)